『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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『何度だって違和感はあった。機会もあった。
 だからオレは『知らなかった』んじゃない。
 きっと『知ろうとしてなかった』んだ』


第17話 ビーカネル島

 

突如現れた種族も立場もバラバラな一団に、アルベド族たちは当然警戒し銃を向けたが、慌てて前に出たリュックが説得した。

彼女はマカラーニャで彼女のアニキやアルベド族と戦ったので警戒されるかと思っていたが、どうやら彼女はアルベド族の中でもムードメーカーで愛されているらしく、あっさりと迎え入れてもらうことができた。

そして一同はアルベド族の族長『シド』と対面する。

彼はリュックと同じく公用語を習得していたためそちらで話をさせてもらった。でなければリュックとヒノカミ以外は通訳が必要になるので。

 

「……事情はわかった」

 

リュックから一通り説明を聞いたシドは眉間に皺を寄せたまま言葉を発した。

 

「討伐隊の連中には、ミヘン・セッションで世話んなった。

 他の連中も文句は言わねぇだろ。猫の手も借りてぇ状況でもあるしな」

 

アルベド族は次の『シン』との決戦に備えて発掘した兵器の整備を進めていたらしい。

人手が足りず、機械に詳しくなくともできる仕事はたくさんある。機械の扱いに慣れてもらう点でもむしろ好都合だそうだ。

 

「グアドの連中にゃあ思うところはあるが……オレぁ『エボンの民』ってのが嫌いでよ。

 寺院の連中の意趣返しになるんなら呑みこんでやらぁ」

 

ジスカルが族長になってからマシにはなったが、元々グアドは排他的で高圧的な種族だった。

かつてはアルベド族も辛酸をなめさせられており、高齢の彼はその時代を知っている。

交渉は難航すると思われていたが、シドの大雑把さと気前の良さに救われた形だ。いい意味で予想外だった。

 

 

 

「……だが、ユウナにゃ旅を止めてもらう!そこは譲れねぇ!!」

 

 

しかし彼の出した条件は悪い意味で予想通りだった。

召喚士を拉致してでも旅を止めさせるのはアルベド族の総意ではあるが、一番の熱意を持っていたのは族長のシドだとリュックから聞いている。

 

「どうしても旅を止めさせるつもりか?」

 

「当たり前よ!定めだかなんだか知らねぇが、黙って姪っ子を死なせられっか!」

 

喧嘩別れする形になった妹の忘れ形見とあれば、無理もないのかもしれないが。

 

「姪……!?じゃあユウナは、アルベドと血がつながって……!?」

 

「……お母さんがね、そうなの。

 だから召喚士の旅に出る前に、お父さんは寺院から追い出されてて……」

 

「……ワッカ、わかってるとは思うけど」

 

「!?あ、あぁ。ユウナは、ユウナだもんな!」

 

ベベルでの一件で信仰が揺らいだようでワッカは素直に受け止めることができていた。

だがシドの発言に別の形で反応した者がもう一人いた。

 

 

「だからさ、なんで『死ぬ』なんて話になるんだよ?

 そりゃ危険な旅かもしれないけど、アーロンやヒノカミもいるし。

 オレたちガードがちゃんと守れば、召喚士は死なないって!」

 

「っ!?テメェ、ふざけん……!?」

 

少年の発言に激昂し殴り掛かろうとしたシドの前にヒノカミが立ちはだかる。

無防備に両手を広げた少女を前に、流石のシドも動きを止めた。

 

 

「……ユウナ、ここまでじゃ。これ以上はもう伸ばせぬ。

 まだ決意が定まらぬというなら儂の口から伝えるが?」

 

「待って!……ちゃんと、私から……言います」

 

事情を知るガードたちが顔を伏せる中、ユウナはゆっくりと少年の前に立ち、彼の目をまっすぐに見上げる。

 

 

 

「『究極召喚』を使うと…………召喚士は、死んじゃうの」

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

「……本当に知らねぇのか、小僧。

 たった数年のナギ節のためにスピラが『シン』に差し出す『生贄』……そいつが、召喚士だ」

 

 

 

 

「…………知らなかったの、オレだけか?」

 

他に誰一人驚かなかった。

誰も少年と目を合わせなかった。

それが答えだ。

 

少年は目の前のユウナの両肩を勢いよく掴む。

 

「知らなかったの、オレだけかよ!

 オレだけか!?なんで隠してたんだ!!」

 

「私が皆にお願いしたの!

 キミには知らせないでって、だから……!」

 

「オレ、何にも知らないでさぁ!

 『早くザナルカンドに行こう』って!『『シン』を倒そう』って!

 倒した後のことも、いっぱい、いっぱい!

 なのになんで、ユウナっ……笑ってたんだ……!」

 

「……ううん、嬉しかった。

 キミの話す未来には、いないはずの私がいて。

 まるで本当にそんな未来がもうすぐやってくるみたいで。

 ……ありがとう。キミのおかげで私、笑いながら旅が、できてたよ」

 

「…………!」

 

ついに少年は言葉を失い、膝から崩れ落ちてしまった。

 

 

「……このまま旅を続けたら、ユウナは必ず死んじまう!

 そんなふざけた話があるか!?」

 

「私たちだってユウナを死なせたいはずがないでしょう!?

 何度も止めた!他に方法があるならなんだってするわ!!」

 

「だがなぁ、考えてる間に『シン』がなんもかんも持ってっちまう!

 スピラには時間がねぇんだよ!!」

 

「だからって、ユウナんだけが犠牲になるなんて!」

 

 

 

「…………」

 

秘密にしてきた時間が長すぎた。そして明かす機会が悪すぎた。

居合わせた大勢が感情のまま口論になり、これでは事態を収集できない。

 

だがヒノカミはこの展開に至る可能性を想定していた。

 

 

 

 

「ユウナを犠牲にせずに済む方法があるかもしれない」

 

 

 

 

だから彼らを説得する言葉も用意していた。

 

「「「……え…………?」」」

 

「あくまで可能性じゃ。確証はない。

 そもそも儂がザナルカンドを目指していたのはその確証を得るためじゃ。

 ぬか喜びさせることになるかもしれんから言いたくなかった。

 じゃが儂ははじめから、ユウナを犠牲にするつもりはない」

 

「「「!?」」」

 

「……ハッ!お嬢ちゃん、口だけなら何とでも言えんだよ」

 

 

パァン!

 

 

「儂は実績も示してきたつもりじゃが?」

 

「っ!?テメェが、ミヘン・セッションの!?」

 

勢いよく掌を叩くと、少女が鬼鎧の大男に変貌した。

直接目にしたのは初めてだったが、その特徴的な風貌から彼女が何者なのかに気付いたシドが言葉を詰まらせる。

彼女はすでに『究極召喚もなしに『シン』を退ける』という、スピラの歴史上初の快挙を成し遂げているのだ。その言葉には無視できない重みがある。

 

「……聞かせろ。犠牲を出さねぇ方法ってのは何だ?」

 

「重ねて言うが、これはあくまで可能性。

 その前提で今しばらく耳を傾けてもらいたい」

 




ヒノカミは覚悟を抱く者を尊重しますが、スピラが『まだ子供のユウナすら死を覚悟せざるを得ない環境』であるため、覚悟しているからと放置はしません。
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