『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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『皆は明るい気持ちでザナルカンドに向かおうとしてたけど、実はオレ、この時少し足踏みしそうになってたんだ。あんなに望んでたはずなのに。
 ヒノカミの計画が失敗する可能性がじゃなくてさ。
 ……廃墟になったザナルカンドを見ることが、怖かった』


第19話 ガガゼト山

 

一行はシドの説得に成功し、討伐隊・アルベド族・グアド族の対エボン同盟が締結された。

これより急いで各地の討伐隊とグアド兵をビーカネルに集めねばならない。

この島に来た時と同じようにヒノカミが方々を巡って次元刀で連れて行こうと考えていたが、そこにシドが待ったをかけた。

現在ホームでは、海底より発掘された『飛空艇』をアルベド族総出で修復中だという。

あと数日もあれば動かせるようになるはずだから、これでスピラ各地を周り彼等が人々を集めておくのでさっさと旅を再開しろとのこと。

大いに助かるが、聞けばどう使うかは何となく分かるが原理も仕組みもサッパリだとか。

発掘した今までの他の機械も同じだったらしく、それで使いこなせている辺り凄くはあるのだが、あまりに危なっかしい。

ヒノカミが実物を見せてもらえば彼女でも理解できる程度のものだったので、修理を引き受けた。

これにより数日を予定していた作業期間が一晩に短縮された。

 

先にマカラーニャに返したチャップを通じて各地の討伐隊に状況を伝えておくよう指示してある。

グアド兵はシーモアの一声でグアドサラムを離れ討伐隊の主部隊と合流しアルベドの迎えを待つ。

 

しかし肝心のシーモアは。

 

 

「私たちの旅に……!?」

 

「えぇ。私もユウナ殿と共に、ザナルカンドへ参ります」

 

兵のまとめ役はトワメルに任せたそうだ。

エボンがビーカネルまで攻め入る可能性は低く、アルベド族や討伐隊と揉め事さえ起こさなければ充分。

シーモアがビーカネルに留まる理由は薄い。

 

「……何を企んでいる?」

 

「フフフ、企むなど。

 ……私の望みはかねてより『スピラの悲しみを消すこと』。

 そのために皆さま方と共に行くことが最良と判断したまで」

 

「……嘘はついておらんな」

 

ヒノカミは嘘をつかず、嘘に敏感だ。

未だに淀んだ感情を抱いている様子ではある。シドとの対話の最中に彼が無言でヒノカミに向けてくる視線は鋭かった。

だが今の彼の発言そのものに嘘はなかった。

 

「どうするユウナ。決めるのはお前だ。

 目の届くところに置いていた方が安全、という考え方もあるが?」

 

「え、えぇと……」

 

「別にいいんじゃねぇの?

 アーロンの言う通り、オレたちが見てないところで何かされてる方が怖いし」

 

「邪魔しねぇって言うんなら好きにすりゃいいさ」

 

究極召喚による召喚士の死というスピラの宿命。

何も知らなかった少年は事実を知らされ、知る者たちも改めて事実を突きつけられ、死が迫っているユウナ当人も含めて皆失意に沈んでいてしかるべき状況だ。

だが今の彼らには異邦人より示された希望の光がある。

その反動のせいか、彼らの中では空元気で取り繕っていた以前よりも気楽な空気ができあがっていた。

 

「あまり気を抜かないでちょうだい。まだうまくいくと決まったわけじゃないのよ?」

 

「ルールーの言う通りじゃ。

 しかしシーモアの在不在はそちらの成否に直結せぬ。

 ……いや、エボンの老師でスピラに詳しいならむしろ成功率が上がるか?」

 

「!?だったら一緒に来てもらおうよ!」

 

「……わかりました。よろしくお願いします」

 

「ありがとうございます。こちらこそ」

 

薄気味悪い笑みを崩さぬシーモアが新たな同行者として迎えられた。

 

旅を再開するにあたり、ビーカネル島からどこに戻るか。

修行の旅なのだから一度離れたマカラーニャの森の泉から再開するのがベストではある。

しかしそのすぐ先はベベルだ。すでに反逆者と公表されているであろうユウナたちが近づくのはあまりに危険。

だからベベルを挟んでザナルカンド側に当たるナギ平原へと転移した。

 

ここは代々の大召喚士が究極召喚で『シン』と戦い、ナギ節が生まれる場所。

平原を超えればガガゼト山。その向こうが最果ての地、ザナルカンド。

シーモアと寺院の余計な騒動に巻き込まれ寄り道させられたが、ようやく彼らの旅のゴールが見えてきた。

 

ガガゼト山はロンゾ族の地。彼らを束ねるのはエボン四老師の最後の一人、『ケルク・ロンゾ』。

どうやら今はベベルを離れガガゼトにいるとか。

 

「老師ではありますが私やマイカやキノックとは違い、不正を好まぬロンゾらしい輩です。

 己の地位やエボンの権威よりもスピラの安寧を望んでおり、教えや機械は必要悪と割り切っているが好ましくは思っていない。

 反逆者であろうと相応の誠意と利を見せれば、交渉で切り抜けるやもしれませんね」

 

「まだまともな老師か……いやしかし、比較対象がお主とアレらではなぁ」

 

「フフフ、これは手厳しい」

 

「ケルク大老は皆が認めるロンゾの長だ。

 卑劣な手段は使わない」

 

「へぇ、キマリが言うなら信じて良さそうだな」

 

一行はガガゼト山の入り口へとたどり着く。

そしてケルクが率いるロンゾの戦士たちが、敵意をむき出しにして彼らを待ち受けていた。

 

キマリやシーモアが言う通り、ケルクは真面目で堅物だった。

そんな彼の前で起きた先日の事件。

 

シーモアの父殺しの発覚。

その不正を訴えた召喚士の秘匿死刑の強行。

討伐隊の鬼人のベベル襲撃。

迎撃のためにと過剰に機械兵器を持ち出し結果的に大被害を被った街。

 

彼がベベルを離れガガゼトに戻っていたのは、度重なる事態でキャパシティオーバーし迷いを抱えた彼が偉大なる御山に道を尋ねるためだった。

だと言うのにそのシーモア当人が、敵対したはずの召喚士と共に乗り込んできたのだから警戒するのは当然だろう。

 

とはいえ、シーモアがいなければ大丈夫だったかと言えばそれもないだろう。

 

「「「ガルルルルルル…………!」」」

 

以前幻光河近くでヒノカミにぶっ飛ばされたビランとエンケが、ロンゾの若い衆を引き連れ牙をむき出しにしているのだから。

 

「あー……皆、なんかすまん」

 

「キマリ、説得できる?」

 

「無理だ」

 

「じゃよなぁ……アレは儂が責任取ってなんとかしてくる。

 その間にケルクと話をつけておいてくれ」

 

そういってヒノカミは一人で無防備に前に出る。

彼女の剛力を知るビランたちは警戒し、少し距離を取るが。

 

 

「ほれ、かかってこい図体だけのガキどもめ。

 格の違いというものをわかりやすく教えてやろう」

 

「「「……ガァァァーーーーーッ!!!」」」

 

 

小娘に見下され露骨に挑発され、誇り高く沸点の低いロンゾ族の戦士たちは一斉に飛びかかった。

 

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