『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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『当たり前のことだけどユウナが助かるかもしれないとわかってから、空気が軽くなった気がした。
 疎外感とか感じなくなったし、皆心から軽口や冗談を叩いてるとわかった。
 スピラの皆には悪いけど、この楽しい旅がもっと続けばいいのにって、そう思ったんだ』


第20話

 

ロンゾ族は血の気が多いだけではない。実に勇敢な一族だった。

彼らの中でも最優の戦士であるビランと、それに次ぐエンケの言葉を信じ、目の前の小娘が圧倒的強者であると理解してなお迷わず恐れず果敢に挑みかかった。

 

だが一人。また一人。

小さな暴力の化身に成す術もなく打ち倒されていく。

 

相手は彼らが信仰を捧げる霊峰ガガゼトへの侵入者でもある。

命を捨てる覚悟で食い止めようとした。

しかし命を費やしてもなお、その牙は届かなかった。

間もなく全ての戦士が倒れ息絶えた。

 

そして屍が転がる真っ白な雪の戦場跡の上を、白い炎が走り覆い尽くした。

 

 

「「「……!?」」」

 

「目が覚めたか?ほれ、もう一度じゃ」

 

「っ、ガァァァァァーーッ!!」

 

 

 

「……なぁ、アイツら確かに死んじまってたよな……?」

 

「ホントに生き返った……うわぁ、蘇生術ってマジなんだ……」

 

「でも、殺してしまうなんて……!」

 

「違う、ユウナ。ロンゾの戦士は手足が千切れようと牙だけで敵に食らいつく。

 力づくで止めるには命を奪うしかない。

 何より、敵に加減されるのは戦士にとって死に勝る屈辱だ」

 

「連中をあしらうついでに彼女自身の実力を見せつけるためのデモンストレーションと言ったところでしょうか。

 実に合理的ですね。そうは思いませんか、ケルク老師?」

 

「シーモア……!」

 

ロンゾの戦士たちと小柄な少女の戦いを後目に、召喚士ユウナ一行とケルクが向かい合う。

ケルクもまさかロンゾが誇る屈強な勇士たちが小娘一人にいいように弄ばれるとは思ってもいなかっただろう。

しかし彼もまたロンゾの長。例え一族が悉く殺されようともスピラに仇名す反逆者を討つ覚悟はあったが。

 

「挑発しないで、シーモア。

 ……ケルク老師。我々は『シン』を倒すため、ザナルカンドに向かいます」

 

「反逆者と呼ばれながらも、己の命を捨て『シン』を討つというのか……?」

 

「いいえ。ユウナを死なせず、『シン』を倒す。

 そして『シン』の脅威のないスピラを作る。

 我々はその覚悟で旅を続けています」

 

「……詳しく聞かせてもらおう」

 

ヒノカミが動けないときに交渉事を受け持つのはアーロンかルールー。

今回は何故かアーロンが口を閉ざしているのでルールーが前に出た。

彼女はヒノカミの能力を改めて伝え、その計画を全て明かした。

 

「我々が望んで反逆者となったわけではないことはご理解いただけるはず。

 我々はスピラに仇なすつもりなどありません。

 どうかガガゼトを通り、ザナルカンドへと向かう許可を」

 

「…………」

 

無言のケルクはシーモアとアーロンを見る。

シーモアは薄ら笑いを浮かべたままで、アーロンは視線を逸らした。

そこでケルクも気づいた。

ユウナや若きガードたちはこの二人から何も聞いていないのだ。

だから彼らの語る計画とやらが根底から破綻していることに気付いていない。

 

「通してやればよいではありませんか、ケルク老師」

 

「シーモア……貴様、わかっておるのであろう?」

 

「えぇ。ですが興味がありませんか?

 大召喚士ブラスカの娘と、生身で『シン』を退けた討伐隊の鬼人。

 彼女らがスピラの真実を知り、どのような決断を下すのか」

 

「…………」

 

シーモアとアーロンが未だに何かを隠していると知っている一行は、しかし問い詰めても無駄だとわかっているから今は何も言わずにいる。

ケルクは脇に視線をずらした。

いつの間にか鬼の鎧姿に変貌していた少女が、ロンゾが誇る屈強な戦士たちをちぎっては投げちぎっては投げ。

なお、比喩ではない。時々本当に千切れた戦士たちの四肢が飛び交っている。

鬼が鮮血と共にまき散らす白い炎を浴びて再生しているから、敵も味方も気にすることなく戦い続けているが。

 

 

「……者ども。道を開けぃ」

 

どちらにせよあれほどの化け物が力づくで押し通ろうとすれば止める手段はないのだ。

それこそ『足止め』すらできない。そして何より。

 

「御山は強き者を好む。

 あれほどの強者と、それを従える召喚士。

 そして強者と肩を並べるガードであれば、御山は受け入れようぞ」

 

「ありがとうございます。……ヒノカミ!」

 

「お、話がついたか?」

 

「「グルゥァァァーーーーーーッ!!」」

 

「縛道の四、『這縄』」

 

鬼の手から霊子で作られた縄が飛び出し、ビランとエンケに巻き付き拘束した。

死神の世界で学んだ鬼道という技だ。

ヒノカミは回道以外は不得意……いや回道に執着しすぎていたから『不得意と思い込んでいる』が、持ち前の記憶力で詠唱は全て暗記しているし一番台なら詠唱破棄でも余裕で発動できる。

そして一番台でも十分なほどに彼女とビランたちの間に差があった。

最初から縛り上げて終わりにしなかったのは、力を示さなければ認めてもらえないと考えていたからだ。

それだけの理由で彼女は理不尽にロンゾの戦士たちをボコボコにした。

 

「しかしこれだけ潰しても折れんかったのは予想外じゃな。

 ……まぁ、『シン』の次くらいには厄介な相手じゃったよ、ロンゾの諸君」

 

「「「グルルルルルル…………!」」」

 

鬼の鎧を消した少女に対し彼らは揃って牙をむき出しにして唸るが、拘束されていないロンゾの戦士たちもそれ以上手出しはしなかった。

族長であるケルクが認めたということもあるが……確かに目の前の相手は、卑劣な手段を一切使うことなく正面から自分たちを圧倒して見せたのだ。

霊峰ガガゼトも強者たる彼女らを認めるであろう。

それはそれとして心底腹立たしく小憎らしいので、自分たちはその強さ以外を認めるつもりはないが。

 

「ゆくがよい、若き召喚士よ。

 そして……スピラの未来のため、正しき選択を行うことを願う」

 

「……はい」

 

旅の過程でユウナはエボンの闇を知った。

そしてどうやらアーロンやシーモア、ケルクの口ぶりから、ザナルカンドと究極召喚にも何かとんでもない秘密が隠されている。

だから確かめるのだ。自分の目で。

頼もしく心強く愛しい仲間たちと共に。

終わりを迎えるためではなく、未来へ辿り着くために。

 

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