『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第14話

8月1日。

修行を終えた一護たちは浦原が尸魂界への門を作るまでの間、しばしの休息となった。

隣互の……隊長格の実力を知っている身としてはまだまだ不安だが、下手に追い込んで体調を崩す方が良くないと隣互からも説得され、友人たちと共に日常を送ることとなった。

 

「……僕は浅野くんや小島くんとは友人という程親しくないんだが……」

 

「だったらこの機会になっておけ。日常の緩急は大事じゃぞ?

 弓の弦も張りつめっぱなしでは劣化する。

 時に緩めて張り替えねば、いざという時に使い物になるまい」

 

「あぁっ!あなたが一護のおねぇさん!?美人だ!!」

 

「かっか、そう素直に褒められては悪い気分はせぬな。黒崎隣互じゃ。よろしくな」

 

「へぇー、一護と双子だって聞いてたから、正直もっと背が高いと思ってましたよ。

 僕と大差ないくらいなんですね」

 

「見た目で騙されんなよー?

 そんななりでも、あたしが一本すら取れたことないバケモンだからな」

 

「片腕でインターハイ優勝したたつきも相当だと思うんじゃがなぁ」

 

「ちぇっ、この怪我が無ければアンタに挑めるいい機会だったのに」

 

「……日本最強の女子高生が手も足も出ない武闘家……」

 

「いや、姉貴は剣術家で無手はオマケだ」

 

「「バケモンだぁーーー!!!」」

 

「かっかっか」

 

今日は隣の市で開かれる花火大会。

隣互も一護の友人たちに混じって無駄話をしながら歩いて向かう。

 

「もーこの辺で良くない?あんま会場に近いと出店とかで人多いし」

 

「それが若者の言うことかぁーー!!」

 

「でもたつきちゃんの言う通り、人が多いと花火見るのも大変じゃない?」

 

「その点は心配いらん」

 

隣互は指で輪を作り、口に添え、力強く指笛を鳴らす。

遠くまで響き渡る甲高い音。

暫くすると遠くからカラカラガラガラと音を立てながら何かが猛スピードで近づいてくる。

 

「隣互ォー!」

 

その正体は黒崎家の大黒柱。

衝突する瞬間隣互は彼をひらりと躱し、結果後ろにいた一護が巻き込まれて河川敷の坂道を転げ落ちていった。

 

「ぎゃーーーー!!!」

 

「えぇと……なぜ一心さんがここに?」

 

「儂らとは別口で、家族でも花火を見に来る予定だったらしいでの。

 特に父上が意気込んで朝から出かけて行ったので、儂らの分も場所の確保を頼んでおいた。

 我が家の家族と一緒で良ければいかがかな?」

 

「特等席を用意してあるぞ!母さんたちも待ってる!」

 

「マジっすか!」

 

「やったー!!」

 

「すまぬが、儂らは3人は後から向かう。ちと話があるでの」

 

そういって隣互は織姫とたつきの肩を掴む。

 

「よっしゃ!それじゃ行くぜ!ヤロウ共!!」

 

走り出した一心たちを追って、野郎たちが走り出していった。

残るは野郎ではない隣互たち女子3人。

騒がしかった連中が急にいなくなって、この場が静かになった。

 

「……さて、たつき。儂に聞きたいこととはなんじゃ?」

 

「……あのさ、隣互。

 よくわかんないけど……アンタら、戦いに行くんだよね?

 多分、この間の見えない化け物みたいな奴らと。

 一護だけじゃない、織姫も……」

 

「たつきちゃん!?」

 

「流石、戦士の嗅覚というやつじゃな。

 相手はちと異なるが……お主にとっては似たようなものか」

 

「そっか、じゃああたしは足手まといだ。

 ……悔しいなぁ。ちょっとは強くなったつもりだったけど、まだまだアンタは遠いや」

 

たつきは悲しげに笑って草むらに座り込んだ。

 

「……たつき、右手を出せ」

 

「はぁ?……はぁ!?」

 

言われるままにギプスに覆われた右手を差し出すと、隣互はギプスを掴んで粉々に砕いた。

そして気づけば折れていたはずの腕の痛みがない。

軽く動かすと、完全に治っているとわかった。

 

「来い」

 

隣互がそう呟いた瞬間、周囲から聞こえていた虫の声が一斉に止まった。

まるで強大な何かから必死に自分たちの存在を隠そうとするように。

 

「……うりゃぁっ!!」

 

気迫に飲まれかけたがそれを押し殺し、たつきは右腕で渾身の突きを放つ。

彼女の攻撃は……隣互の左手の小指一本で受け止められていた。

そして隣互は右手の中指を親指で押さえた、いわゆるデコピンの構えをたつきに向ける。

 

「いぃっ!?」

 

直接当たってはいなかった。

しかし彼女が指を弾いただけで暴風が生じ、たつきは吹き飛ばされ、草むらを転がる。

無意識に受け身をとって顔を上げる。

攻撃を放ったまま静止していた隣互の姿が遠くに見えたが、気づけば一瞬で目の前に移動していた。

予想外の事態に硬直してしまうたつきの耳に、花火の音が届いた。

 

「ぬ?予定より早くはないか?」

 

威圧感を解いた隣互はたつき、織姫の順に移動して二人を両脇に抱え、そのまま何十メートルも跳躍した。

 

「よっと。どうじゃ?ここなら良く見えるか?」

 

彼女が着地したのは河川敷から遠くに見えていた巨木の枝の上。

目の前一杯に花火が広がっている。

呆けていたたつきは、やがて堪えきれずに笑い出した。

 

「……あっはははは!なるほど、こりゃあかなわんわ!」

 

「かっかっか。そして織姫はこの儂が手ずから鍛えてやったのよ」

 

「そっかそっか!じゃああたしの出る幕はないね!

 まさか織姫に先をいかれることになるとはねぇー」

 

「さ、流石に隣互ちゃんほどじゃあないよ?」

 

「……ん、わかった。待っててあげる。

 だからちゃんと、帰ってきなよ?」

 

「……うん!」




たつきも参戦させられないかと考えましたが、原作の設定上不可能だと判断しました。
代わりにちゃんと明かして、安心させてから出発します。
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