『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第23話 『最果ての地』ザナルカンド

 

長い思い出話を終えて、一行は未来に向けて歩き出す。

おそらく高架道路だったのだろう道をひたすらに進み、巨大な半球状の建造物『エボンドーム』に辿り着く。

あまりに濃密な幻光虫の密度。間違いなくここがザナルカンドの中心地。

かつてヒノカミはこの入り口に降り立ち、中に入ろうとしたところで現れた老僧の死人に阻まれた。

荒らすつもりはなく、話を聞きたいだけだと言葉を尽くしたが交渉の余地すらなかった。

 

今回も同じように老僧が現れたが、彼は召喚士ユウナの顔を見て受け入れた。

 

『ガード衆共々、ユウナレスカ様のみもとに向かうがよい』

 

老僧はドームの外へと立ち去りながら消えていく。入れ替わるように一行は中へと入る。

すると間もなく、彼らの傍に幻が現れた。

 

『スピラを救うためならば、私の命など喜んで捧げましょう。

 ガードとして、これほど名誉なことはありません。

 ですからヨンクン様……かならずや『シン』を倒してください』

 

そして幻の二人が消える。

 

「何!?今の何~~~!?」

 

「かつてここを訪れた者だ。

 幻光虫に満ちたこのドームは、巨大なスフィアも同然。

 想いを留めて残す……いつまでもな」

 

『ヨンクン』とは歴代の大召喚士の一人。なるほど、ここに訪れたことがあるはずだ。

 

(……ガードが、命を捧げる?逆ではないのか……?)

 

ヒノカミは幻の発言を反芻しながら、仲間たちに続いて奥へと進む。

そして再び幻が現れる。特徴的な髪型をした子供と、おそらくその母親の幻だ。

 

『いやだ!やだよかあさま!かあさまが祈り子になるなんて!』

 

『こうするしかないの。私を召喚して『シン』を倒しなさい。

 そうすれば、みんなあなたを受け入れてくれる……』

 

『みんななんてどうでもいいよ!

 かあさまがいてくれたなんにもいらないよ!』

 

『私にはもう、時間がないのよ……』

 

そして消えた。全員の視線がとある一人を向く。

 

「……堪えるものですね。かつての己の愚かさを突きつけられるというのは」

 

「!?じゃあ、やっぱり今のは!」

 

「えぇ。私と母です」

 

「シーモアさん、アナタはザナルカンドを訪れていたんですか!?」

 

「私に召喚士としての素養があると知った母は、病で残り僅かな命をさらに削り、私を大召喚士にしようとしました。

 誰にも受け入れられずまもなく一人取り残してしまう私に、せめて名誉だけでもと考えたのです。

 ですが幼い私は有象無象の評価などより一分一秒でも長く、母と共にいたかった」

 

「けれど、よく二人でここまで……」

 

「ジスカルが陰ながら私たちを支援していたからです。

 本人は罪滅ぼしのつもりだったのかもしれませんが……私には『厄介者の私と母にさっさと死んでもらおう』としていたようにしか思えませんでした」

 

「……あれ?じゃあシーモアはもう究極召喚を手に入れてるの!?」

 

「もしかして、ルカで呼び出したあのでっけぇ召喚獣か!?」

 

「違うんじゃない?だってシーモアは生きているもの」

 

「あ、そっか。なぁ結局どうなんだよ?」

 

「……フフフフ」

 

シーモアは胡散臭い笑みで追及を誤魔化そうとした。

 

 

「……待て!!」

 

 

ドームに大声が響き、仲間たちの視線がそちらに集中する。

 

「まさか、『そう』なのか!?

 究極召喚とは、『そういうこと』なのか!?」

 

「え、え!?どうしたのさヒノカミ!?」

 

先ほどのヨンクンのガード、そして幼いシーモアの幻の発言で、ヒノカミの中のピースが全て埋まった。

彼女はシーモアに詰め寄るが彼は薄ら笑いを浮かべるだけで、アーロンに視線を向けたが彼も無言で俯く。

その反応で、ヒノカミは己の推測が正解だと確信した。

そしてかつてここを訪れたときに門前払いされた理由もはっきりした。

 

召喚術はシャーマン能力と似通っている。なのでおそらく自分も召喚士として高い素養を持っているはずと、ヒノカミは考えていた。

だから大召喚士になりうる自分ならば話だけでなく、あわよくば究極召喚も手に入れられるのではないかと期待していた。

しかし拒絶された。それをヒノカミは『自分の力量が足りないから』と受け止めていた。

だが違った。ヒノカミが追い返されたのは、当時の彼女が『一人』だったからだ。

 

「くそっ!くそ、くそっ!!ふざけるな!

 どこまで儂らを、スピラの民を愚弄すれば気が済むんじゃ!!!」

 

「おい、落ち着けって!」

「何かわかったの!?」

 

「あぁ、アーロンが口を閉ざしてきた理由が嫌というほどにな!

 ……もうすぐなんじゃろ?」

 

「試練の間を超え、守護獣を倒せば、祈り子の間だ」

 

「……行くぞ。ユウナレスカとやらが全て語ってくれる」

 

苛立ちを隠さないままずんずんと進むヒノカミに仲間たちは困惑したが、真実を知るアーロンとシーモアは彼女の態度を理解し後に続く。

つられて少し歩くと、また幻が。

 

ブラスカとジェクトと、若い頃のアーロンだった。

ジェクトが残したスフィアでは旅に熱心だったアーロンが、死にに行くブラスカを止めようとしていた。ガガゼトで彼が語った通りだった。

 

『私のために悲しんでくれるのは嬉しいが……私は悲しみを消しに行くのだ』

 

ブラスカたちの幻に続き、ユウナたちもまた先へと進み、試練の間へと入る。

ここまで来て、と面倒に感じながら謎を解き、現れた守護獣を倒すと、地下へと降りる装置が現れる。

この先は祈り子の間。

究極召喚を受け取るためにと、ユウナが一人で地下へと降りていく。

 

だが間もなくユウナが戻ってきた。アーロンたちの予想通りに。

 

「皆来て!」

 

ユウナに言われるがままに全員で装置に乗って降りると、彼らの目の前の祈り子像は色を失っていた。

 

「これ、祈り子さまじゃない!ただの石像なの!」

 

『その像は、すでに祈り子としての力を失っておる』

 

ドームの入り口にいた老僧が再び現れた。

 

『史上初めて、究極召喚の祈り子となったゼイオン様。

 そのお姿をとどめる像にすぎぬ。

 ゼイオン様はもう……消えてしまわれた』

 

「消えたぁ!?」

「究極召喚も無くなっちゃったの!?」

 

『ご安心なされい。

 ユウナレスカ様が新たな究極召喚を授けてくださる。

 召喚士と一心同体に結び付く大いなる力を……』

 

「…………やはりか」

 

「え?」

 

『奥に進むがよい。ユウナレスカ様のみもとへ……』

 

ヒノカミの呟きに応えず、言うべきことを言い終えた老僧は再び消えた。

 

「アーロン、アンタ知ってたんだよな?」

 

「あぁ」

 

「シーモアと……ヒノカミもか?」

 

「えぇ」

「先ほど気付いた」

 

「どーして黙ってたの!?」

 

「お前たち自身に、真実の姿を見せるためだ」

 

「儂らからよりもユウナレスカから聞いた方がいい。行こう」

 

促されて、光の扉を超える。

その先は廃墟に似つかわしくない荘厳できらびやかな部屋。

正面奥にある扉が開き、幻光虫を従えた美女が現れた。

 

「ようこそ、ザナルカンドへ。

 長い旅路を超え、よくぞ辿り着きました。

 今こそ授けましょう。我が究極の秘儀、『究極召喚』を」

 

ユウナレスカ。寺院で何度も見た像の通りの姿だ。

 

「……さぁ、選ぶのです」

 

「「「……?」」」

 

発言の意図が分からず、何も知らぬユウナたちは困惑する。

対してアーロンとヒノカミは視線を鋭くし、シーモアは口角を釣り上げる。

 

 

 

「貴女が選んだ勇士を一人、私の力で変えましょう。

 そう……貴方の究極召喚の『祈り子』に」

 

 

「「「!?!?!?!」」」

 

 

「想いの力、絆の力、その結晶こそ究極召喚。

 召喚士と強く結ばれた者が祈り子となって得られる力。

 二人を結ぶ想いの絆が『シン』を倒す光となります」

 

 

生贄は、『二人』必要だった。

 

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