『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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まだ完結まで用意できていませんが、先延ばししすぎてもグダグダになりそうなので更新再開します。


第26話 集う戦士たち

 

千年間スピラを維持してきた究極召喚は、ユウナレスカの失意と共に消えた。

しかし引き換えにスピラは新たな希望を手にした。永遠のナギ節という希望を。

 

転移でビーカネルのアルベド族ホームに戻ってきたユウナ一行は、即座に各団体のトップのみを収集し報告を行う。

 

アルベド族族長シド。

討伐隊チョコボ騎兵隊隊長ルチル。

グアド族族長シーモア。

そして巻き込んだ以上事の顛末を伝えておくべきだろうと、ガガゼトからロンゾ族族長ケルクにもご足労頂いた。

 

「究極召喚を使わずに『シン』を倒せば……マジでそんな単純なことだったのかよ!?

 いや、じゃあ『できるか』って言われたら返しづれぇがよ……」

 

「えぇ、言うは易く行うは難し。

 しかしヒノカミ殿がいらっしゃる今、人類にはそれを実現できるだけの戦力が揃っている……!」

 

「ですが『シン』はミヘン・セッションの時よりも強くなっていると聞きます。

 アルベド族と討伐隊と、協力を申し出てきたアルベドに保護された召喚士たち。

 そこに我がグアドの兵を足したとして、果たしてそれで足りるものやら」

 

「ロンゾの戦士たちにも声をかけよう。

 スピラの命運をかけた一大決戦。これに胸を滾らせぬ者はロンゾにはいない」

 

「わかった。後で飛空艇を迎えに行かせる。

 同行して説得してくれや。頼むぜケルクさんよ」

 

「承知した」

 

 

 

「……お主ら。当たり前のように話しておるが、わかっておるのか?」

 

ザナルカンドでの経緯を説明するや否や、彼らは『シン』と戦うための議論を始めた。

そこにユウナ一行の代表として参加している参謀役のヒノカミが会議に水を差す。

 

ミヘン・セッションの時は討伐隊とアルベド族たちの熱意はともかく、ヒノカミは追い返すために戦った。あわよくば倒したい、その程度の意気込みだった。

だが今回は違う。少年とジェクトには悪いが、本気で殺しに行く。

スピラを滅ぼしうる『シン』と、同等の力を持つ巨神が全力でぶつかるのだ。

戦いの余波は桁違いとなるだろう。勝っても負けてもスピラが滅びる可能性すらある。

そんな怪獣大決戦にただの人間が入り込めばどうなるか。

 

「とんでもねぇ犠牲が出るっつうんだろ?ソイツがどうした。

 スピラはオレたちの世界だ。テメェの力を借りてるだけでも恥だってのに丸投げなんざできっかよ」

 

「今度こそ『シン』を倒す。

 そのためならば我ら討伐隊、再び命をかけて戦う所存です」

 

「ユウナレスカと究極召喚は失われたのです。

 貴女一人に託して失敗すれば、今度こそスピラは滅ぶ」

 

「ならば少しでも勝利の可能性を上げるため、我らも死力を尽くさねばなるまい」

 

4つの組織の代表は躊躇うことなく返した。

彼らの助力が不要かと言えば……そんなことはない。

『シン』は今のヒノカミでも確実に勝利できるとは断言できない強敵。戦力は多ければ多いほど良い。

ヒノカミは彼らが参戦した場合の結果をシミュレートし始める。贔屓目に見積もったとして……。

 

(……3割、か)

 

損耗率がではない。残存戦力が3割だ。

グアドからの参戦は兵士だけだが、種族全体で参加を決めているアルベドとロンゾに至っては種の存続すら危ぶまれる事態に陥るかもしれない。

そして厄介なのは、今この集団は寺院というスピラ最大の勢力と未だ敵対関係にあるということ。

ケルクもまた、反逆者となったユウナとシーモアをガガゼトに通した際に老師を辞職し寺院と決別している。

作戦開始前に余計な横やりを入れてくる可能性だけではない。

仮に勝利したとして、半ば瓦解したこちらに攻め入り全ての功績をかすめ取ろうとする可能性すらも考慮しなければならない。

 

「貴女が危惧していらっしゃることおおよそ推測できる。寺院の動向でしょう?」

 

「む……」

 

シーモアがヒノカミの考えを言い当て、続けていつものように笑みを浮かべる。

 

 

「……慮ってやる必要がおありですか?」

 

「む?」

 

「この場にいるものは『シン』を倒すため、命を懸ける『覚悟』をしております。

 対して、寺院の僧兵にはそんなものはないでしょう。既得権益に縋りつく輩ばかりですので。

 ……ですが彼らには『覚悟』は無くとも、『義務』があるのではありませんか?」

 

『スピラを守る』というお題目であらゆる不正を行いそれを正当化してきた連中だ。

そして権利には相応の義務がつきもの。

 

「くくく……道理じゃな」

 

『スピラを守るため』と権利を行使してきた寺院には。

『スピラを守るため』にその全てを費やす義務がある。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

鬼人からの襲撃を受けて以降、ベベルは揺れていた。

自分たちだけは特別で絶対安全だと信じ込んでいた寺院の高僧たちが、ようやく突きつけられた現実を理解したからだ。

鬼人が再び襲撃してくる可能性に怯え、自分たちの保身を最優先とした連中は、スピラ中の寺院の戦力をベベルに結集させていた。

 

すると当然、それぞれの街とそれをつなぐ街道を守る戦力がいなくなる。

平時なら討伐隊がその代役を担ってくれただろうが、彼らは寺院に反逆者と認定され姿を消している。

彼らのおかげでしばらくの間『シン』が出てこないとしても、魔物はいる。

街や村にも自警団くらいはあるが彼らだけで対処できるはずがない。

 

寺院は『シン』に手傷を負わせ民衆を守ってくれていた討伐隊を放逐するように仕向けておきながら、自分たちの戦力はベベルに引き上げさせ自分たちだけを守らせようとしているわけだ。

民衆はもちろん、各地の寺院に務める僧たちからも不満があふれ出している。

信仰心は無条件・無制限に湧き出てくるものではない。一度失われた信頼は容易に取り戻せない。

長きにわたりスピラを支配していた寺院は、その事実を忘れてしまっていた。

 

加えて反逆者となったシーモアに加え、ケルク・ロンゾすらも寺院から去ってしまった。

マイカとキノックも能力はあるのだが圧倒的に指揮側の人数が足りない。

およそ千年という歴史上、これほど寺院の支配体制が揺らいだことはなかっただろう。

 

しかしこの日。ベベルにそれを遥かに上回る衝撃が走ることになる。

 

警邏の僧兵が悲鳴を上げる。

騒動を聞きつけたキノックが現れ、部下に促されるままに天を見上げる。

 

そして無様に腰を抜かし、必死に後退りする。

 

ミヘン・セッションにて『シン』とすら渡り合った巨神が、炎の光輪を背負いゆっくりとベベルに降下してきた。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「フフフフ、実によい眺めですね」

 

『おい、まさか悦に浸りたいがために儂を使ったわけではあるまいな?』

 

「交渉の基本は何らかの力を背景にして圧をかけ精神的に優位に立つこと。

 であれば討伐隊の巨神の姿を見せるのが最も合理的でしょう?

 ……まぁ、連中を見下したい気持ちがなかったとは言えませんが」

 

「ねぇ!ベベルの砲台やら何やらが全部こっち向いてるよ!?大丈夫なの!?」

 

『熱は全て儂が制御しておる。どれほど引き金を引こうと火薬に火はつかん。

 ……が、この巨体を維持したままこれほどの数と範囲を操るのは儂でも面倒でな。さっさと降りるぞ』

 

掌に召喚士ユウナ一行とシーモアを乗せた巨神が、ベベルグレートブリッジ前に音を立てて着地した。

ベベルはかつてない衝撃に、大きく揺れた。

精神的にも。物理的にも。




原作知識がなく、展開を省略してきたしわ寄せがここで来ます。
『シン』がマカラーニャ寺院には向かわず、マカラーニャの崩落イベントも起きていないため、ユウナ一行は『『シン』は祈りの歌を聞くと一時的に大人しくなる』という事実を把握しておりません。
加えて自陣に力づくでどうにかできてしまう戦力がいるため、他の方法を考えようという発想自体が浮かび上がりません。
よって本作では全力の『シン』とのガチバトルとなります。
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