『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第15話

夏祭りを終えた後も、一護たちは尸魂界への門……穿界門が出来上がるまで引き続き休息となる。

しかし隣互は夏祭り翌日から浦原商店へと戻り、尸魂界への突入に当たって浦原たちと綿密な打ち合わせを行っていた。

 

隣互は斬魄刀を持っているが死神ではない。

おそらく個性の影響だろうが、彼女は幽体離脱ができなかった。

正確にはそうしようとした瞬間に魂が消えそうになってしまう。霊体が肉体から抜け出た瞬間にOMTが発動するのだろう。

そもそも霊体で自由に活動できるのは死神である一護だけ。

雨竜たち他の協力者のためにも、穿界門には物質を霊体へと変換する『霊子変換機』を組み込んである。

これでOMTが発動しないことはすでに実験済みだ。

そして門を尸魂界へ繋げられる時間はわずか数分。

その間に現世と尸魂界の間にある『断界』を抜けなければならないが……これは隣互がいれば問題はないだろう。

彼女の身体能力をもってすれば、他の全員を抱えても1分足らずで駆け抜けられる。

よって打合せの内容は尸魂界に到着してからの話が主体となる。

 

「西流魂街についたら、まずは志波家の方々に接触してください。

 門からの侵入はまず不可能でしょう。

 瀞霊廷へ突入するには、彼らの花鶴大砲で空から飛び込むしかありません」

 

「繋ぎは儂がしてやる。顔なじみじゃからな」

 

「本家の方々か……父上の子である儂らに協力してくださるだろうか?

 何より侵入者……『旅禍』じゃったか?それに手を貸したと知られればさらに待遇が悪くなるのでは?」

 

「案ずるな。空鶴はその程度のことを気にするような性格ではない。

 ただ面倒にはなりそうじゃから、お主らが志波の関係者とは伝えぬ方が良かろう」

 

「……一護が余計なことを言わねばよいが……」

 

門がつながる場所は普通の霊が暮らす『流魂街』。

尸魂界の中心に位置する死神達の拠点『瀞霊廷』との間には防壁と結界があり、それを超えて侵入するには流魂街一の花火師を自称する『志波空鶴』の助力が必要となる。

かつて彼らは『五大貴族』と呼ばれた、尸魂界でも特に力ある一族だった。

しかし現在では没落している。その要因の一つは分家の人間である『志波一心』が出奔したことだ。

現在の当主である空鶴にとって、隣互たちはイトコであると同時に家を貶めた原因の子となる。

父親の旧姓と同じ名であるため伝えずとも感付くかもしれない。

ボロを出すかもしれないが、あらかじめ一護に伝えて口止めしておいた方がいいだろう。

 

「瀞霊廷に突入したら懺罪宮へ……中央付近の高く白い塔です。一目でわかる。

 極囚ならおそらくここに捕らわれているはず。

 ですが我々の目的が彼女の奪還だと知られれば確実に待ち伏せされる。

 そこで……」

 

「先んじて儂が単独で侵入し、陽動を兼ねて騒動を起こすわけじゃな」

 

「戦力の分散は避けたいが、やむを得ぬか」

 

隊長格と渡り合える隣互の離脱は痛いが、彼女だからこそ一人で行動してもおそらく生き延びることができる。

『瞬神』とまで呼ばれた夜一の隠密機動術を学び、OFAという高い身体能力を持つ彼女に追いつけるのは隊長格でも一握りなはず。

滅却師の『静血装』と回道による自己再生を得意とする彼女は生存能力にも長けている。

そして何より、彼女は『自由に瀞霊廷に出入りができる』。

……陽動と本隊を逆にした方がルキア奪還の成功率は高くなるだろう。

陽動を務めた一護たちは間違いなく全滅するが。

 

「ま、後は臨機応変に行くしかありませんが……問題は『奴』がどう動くかですね……」

 

「……『藍染』とやらか」

 

それは浦原たちに汚名を着せ、彼らが尸魂界から追放される原因となった死神。

人当たりの良い善人の振りをして暗躍し続け、己の欲望のために数々の死神を犠牲にしてきた大悪党。

尸魂界の死神はすべて奴の斬魄刀の力である『完全催眠』の影響下にあるため対処ができず、それを差し引いても単純な実力だけで他の隊長たちを圧倒するであろう強者。

過去に尸魂界で起きた不可解な事件のほぼすべてに奴が関わっているらしい。

父が力を失うきっかけになった特殊な虚の出現もおそらく。

当初は尸魂界に向かうことを渋っていた隣互だったが、今回の件も藍染の仕業である可能性が高いと聞かされ掌を返した。

 

「『個性』なんてものを持つ隣互サンが奴に捕らえられれば、絶対に碌なことにはなりません。

 アナタの力を解析するためにと実験を繰り返し、多大な犠牲を出すでしょう。

 ……最悪の場合は」

 

「わかっておる。自決用の仕掛け、確かに埋め込んだ」

 

隣互に組み込んだのは『逆霊子変換機』とも呼べるもの。

尸魂界で彼女の肉体を強引に霊体から実体に戻せば、強制的に幽体離脱状態となりOMTが発動する。

藍染の手に落ちる前に転生して逃げるための仕掛けだ。

 

「……スイマセン……」

 

「藍染を放置すればいずれ現世の我らも被害を被ることになろう。言いっこ無しじゃ」

 

完全催眠の影響下に無い自分なら藍染を打ち倒せるかもしれない。

だから浦原たちから藍染の話を聞いた隣互は、隊長格に匹敵する力を手に入れながらも修行を続けてきた。

せめてあと数年あれば藍染を倒せる力を手に入れられたかもしれないが、事態が動き出した以上は力不足であろうと行動に移るしかない。

 

「作戦を整理しましょう。

 瀞霊廷に突入したら、夜一サンは一護サンたちと一緒にルキアサンの奪還に。

 隣互サンは陽動を行いつつ……『味方に引き込めそうな隊長に接触』してください。

 こちら、アタシが知る限りの隊長たちの情報です。最終的な判断は隣互サンにお任せします」

 

死神たちとて馬鹿ではない。一連の事件を不審に思い、藍染を訝しむ者もいるはずだ。

護廷十三隊の中から信頼できる者を選び説得するのが、隣互が受け持つもう一つの役目。

 

「……覚えた」

 

隣互は小さな火を起こして資料をすべて燃やした。

 

そしてついに門が完成し、尸魂界へ突入する日がやって来た。

力と決意を胸に、勇士たちが門の前へと集う。

 

朽木ルキアの処刑執行まで、あと十三日。




主人公は別行動となります。
まぁ原作でもみんなすぐにバラバラになったけど。
ちなみに最後に使ったのは『赤火砲』です。回道以外の鬼道は下手なので恋次が無詠唱で使ったものより更に小さいです。ライターくらい。
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