『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第36話 永遠のナギ節

 

「先輩……先輩……!まさか、死人に!?」

 

「ははは、違うぞ。しっかりと生身の体だ」

 

「でもなんで、他の皆も……!?」

 

「信じられないか?だがなぁガッタ。

 こんなことができそうな奴が、一人だけいると思わないか?」

 

「……まさかっ!?」

 

「異界でアイツから話は聞かされたが、未だに俺もよくわかっていなくてな……。

 さぁ探しに行こうか。そしてキッチリと説明してもらおう」

 

 

 

 

 

「スピラ・セッションでの死者が蘇っている……?

 間違いなく本人なのですか?死人でもなく?」

 

「ハッ!少なくとも我らがグアドの兵の帰還者から聞き取りを行った限りでは。

 加えて、いずれからも幻光虫を感じないとのことです」

 

(死者の蘇生と言えば、彼女以外にはありえない。

 だができないと言っていた。できるならば戦後すぐに行っていたはず。

 それに彼女は少し前にスピラを去ったと監視していた部下から連絡が……)

 

 

「シーモア」

 

 

「…………かあさま?」

 

 

 

 

 

「おいおいおいおい!何がどうなってやがんだ!!」

 

「わからないわ。でも『シン』との戦いで殉職した者たちが蘇っているというのは、間違いないみたい」

 

「オヤジからも連絡来たよ!いなくなったアルベドの皆もどんどん見つかってるって!」

 

「ロンゾの同胞より、ビランとエンケの姿も見たと聞いた!!」

 

「兄ちゃん!みんな!」

 

「チャップ!一体何が起こってんだ!?」

 

「詳しくはわかんねぇ!だけど生き返った奴の何人かが『異界であの人に会った』って話をしてるんだ!」

 

「あの人……ヒノカミのこと!?でも私たちはさっきまで一緒にいたわ!どうして異界に!?」

 

 

ピィーーーーーーーーーーッ!

 

 

「…………!?」

 

「何、今の音……笛……?」

 

「っ!!」

 

「「「ユウナ!?」」」

 

 

 

 

 

あの戦いで死んだ者が次々現れていると聞いた時、もしかしたらと思った。

すると音が聞こえて、都合のいい夢ではないかと疑った。

それでも衝動を抑えきれずユウナは駆け出す。

死者が蘇るという騒動の中でも『シン』討伐の立役者であり最後の大召喚士であるユウナに気付く民衆は多く、彼女の後ろを走るガードたちにつられてその後を追う者も現れた。

 

ピィーーーーーーーーーーッ!

 

また聞こえた。幻聴じゃない。

息を切らしながら音が響いてくる方へと走り続けたユウナが辿り着いたのは、ルカの外れにある海を臨む寂れた小さな埠頭。

 

ピィーーーーーーーーーーッ!

 

その先端に立ち、背を向け海に向かって指笛を鳴らし続ける誰かの背中。

ずっと自分を守ってくれていた大きな背中。

ガードたちは信じられずに思わず立ち止まったが、ユウナは止まらなかった。

 

ユウナが飛び込み、少年は振り向いた。

今度はしっかりと触れられた。しっかりと受け止められた。

 

 

「……夢じゃ、ない?」

 

「夢、だったんだけど……夢じゃなくなったっていうか……」

 

「……もう、消えない?」

 

「らしいッス……」

 

「らしい?」

 

 

 

「消えぬよ。儂が消滅しようとな」

 

 

 

「「「!?」」」

 

そこでようやくユウナとガードたちも、傍に積まれているコンテナの上に腰かけている人影に気付いた。

見慣れぬ姿、だが見慣れた顔と聞き慣れた声を持つ、炎の光輪を背負う女性がいた。

 

「久しぶりじゃのー。まぁお主ら目線だと数分じゃし、儂もこっそり覗いておったんじゃがなー」

 

「え、え?どちらさま……?」

 

「ヒノカミらしいッス……スピラを離れて旅を続けて、十万年くらい経った後の……」

 

「「「えぇ!?」」」

 

「よっと」

 

数メートルの高さからひょいと飛び降りた彼女は先ほどまでの小柄な少女ではなく、ルールーにも負けないスタイルを誇る大人の女性。

彼女の相棒だった三つ脚の烏が右肩に留まり、白い大蛇が左腕に巻き付いている。

何もしていないのに、ただそこにいるだけで感じる圧力。

ユウナたちならともかく、野次馬のように集まっているスピラの民は近づくことも声を上げることもできなくなっている。

 

ユウナたちが問いかけるまでもなく、未来のヒノカミはつらつらと語り続ける。

 

旅の果てに故郷に辿り着き、そのまま成り行きで神様になってしまったこと。

やがて少年を救えると確信できるほどに成長したので、今から数年前のスピラに戻り異界に潜んでいたこと。

その少年の救う方法とは『エボン=ジュと祈り子の代わりをヒノカミが丸ごと務める』という力技であったこと。

幻想体として召喚した後に肉体を構成し与えたので、今の少年はスピラの民となんら変わらぬ人間になっていること。

今の彼女なら鮮明に記憶している者なら魂の欠片さえあれば蘇生できるので、少年のついでにスピラ・セッションの死者も一人残らず蘇生しておいたこと。

 

「今の儂なら祈り子でも死人でも、自我がはっきりしていれば問題ない。

 なんでやろうと思えばジェクトとアーロンも蘇生できたんじゃ。

 しかし『お主らに合わせる顔がない』と断られた。

 異界に作り直したものじゃが折角ザナルカンドに戻れるんじゃし、先に異界に行ってたブラスカを連れてって案内してやるそうじゃ。

 そんでお主らに彼らからの伝言。『当分こっちにはくるな』とさ」

 

「気付いたら元通りのザナルカンドにいてさ。

 もう何が何だかって思ってたら祈り子やオヤジたちと一緒にコイツが来てさ。

 よくわかんないままルカに連れてこられちゃってさ……。

 ともかく、今のところオレとザナルカンドは大丈夫ってことらしいッス」

 

「ザナルカンドの方は永遠に、とはいかんがな。

 儂が抱え込んだ記憶がベースじゃから儂が維持を放棄すれば即座に崩壊する。

 そうでなくとも、そこに住まう思い出の住人たちの魂は少しずつ摩耗していく。

 自然消滅までの猶予は短くてニ、三千年。最長でも一万年ほどじゃろう」

 

「でもその間、ずっとアンタが維持しなきゃいけないんだろ?ホントにアンタは大丈夫なのか?

 祈り子は千年で『夢を見るのに疲れた』って音を上げてたんだぞ?」

 

「億年だろうが兆年だろうが問題ない。

 今の儂はそういう『モノ』じゃ。

 分霊の一つでも作って異界に置いとくさ」

 

「「「…………」」」

 

「とまぁ伝えとくべきはこんなところか。

 さて、ここまでご清聴頂いたいたが……お主らから儂に言いたいことはあるか?

 もう遠慮なく尋ねてよいぞ?」

 

情報の処理が追い付いていないユウナは少年の胸の中で硬直している。ガードたちも同様に。

だがいち早く再起動した一人が前に出て、女神に食い掛る。

 

 

「……そのスタイルは何だぁ~~~っ!

 アンタだけは味方だと思ってたのに、この裏切り者ぉ~~~~っ!!」

 

「不可抗力じゃよ!それにいいじゃろこんくらい!

 神様は見栄張ってナンボじゃもの!

 つーかお主はまだ将来に希望があるじゃろ!!」

 

「そうそう、アタシもあと5,6年……ってそれとこれとは話が別だぁ~~っ!」

 

大人の姿になったヒノカミはリュックと子供のような喧嘩を始める。

以前は子供のような姿でも頼れる大人だったのに。

だがふざけていても彼女が発する気配と力は神を名乗るだけあって並外れており、距離を取って一行を取り囲み話を聞いていた民衆が思わず祈りを捧げている。

だが肝心の彼女はリュックとの取っ組み合いに集中しており、また厄介な宗教が生まれそうになっていることに気付いていない。

 

 

「つぅかさ、変わったよな」

 

「そりゃあ色々あったからなぁ……聞きたいか?」

 

「おっ!?聞かせてくれんのか!?」

 

「アタシも聞きたい!急いでたから聞きづらかったけど、ホントは他の世界ってのがどんなのかずっと気になってたんだよねぇ~」

 

「でも、十万年分でしょう?……長くなりそうね」

 

「ユウナ、もうすぐ式典だ。ケルク大老たちも待っている」

 

「あ、そっか。じゃあ……『全部終わってから』、だよね?」

 

「そうそう!焦る必要ないって!だってさ……!」

 

 

 

このナギ節はもう終わらない。

スピラには、いくらでも時間があるのだから。

 




『ファイナルファンタジーⅩ』、これにて完結となります。

本章は初のゲームを原作とした世界。
もし外伝が10作目まで続いたら『10番目』繋がりで書き始めると、それこそ本編完結と外伝の構想が見えてきた当たりから決めていました。そのくらいに好きだった作品です。
PS2時代に寝食忘れる勢いでやり込んでたしswitch版も買ってからやったので行けると思ったんですが……気軽に読み返せない、思い返せないというのは中々辛かった。原作のセリフはあまり手を加えず組み込むつもりで、しかし一言一句覚えてるはずもなく、他の人のプレイ動画見ながら話を書いてました。
加えて原作リスペクトとして『ティーダ』という名前を出さないようにしたりザナルカンドに辿り着くまでは彼のモノローグを入れたりと余計な縛りを己に課したためハードルがぶち上がり。
トドメに1年くらい前から忙しくなった仕事が収まるどころか更に忙しくなり、その過程で体調を崩してと散々な目に合いました。途中で休載挟んじゃったし。

キャラの明るい性格や美しいグラフィックに隠れがちですが、とんでもなくヘビーでハードなスピラという世界。
成長したヒノカミなら何とかできるはずと物語を考え始めたら、何とでもできすぎてしまいまさに『お話にならない』と結論づけ、しかし過去のヒノカミにはハッピーエンドに繋げる力が足りない。
散々考えた結果『過去のヒノカミ』と『未来のヒノカミ』を両方連れてきて押し切ることとし、最終話直前までのシリアス気味なストーリーは何だったのかとツッコまれそうなご都合主義極まるラストに繋げました。
ですが……申し訳ありません。これが本作です。ご都合主義は仕様となります。

そして仕事の方ですが、当分収まる気配が見えません。
平日はまるで時間が取れず、休日は疲れを取ることに専念しないと身が持たない。
一話短編ならともかく今までのように書き溜めてから連続投稿、というのは当分できそうもないと判断しています。
というか、物語を考える余裕もない。頭の中にあるいくつかの候補はどれも中盤までしか思いついていません。
よって次の再開時期は未定とさせていただきます。ご了承ください。
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