『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第16話 尸魂界突入

「「「うわぁぁぁぁぁぁあっ!!」」」

 

「ほい、到着っと。

 ……えー、ご乗車ありがとうございまーす。

 終点、尸魂界でーす」

 

頭に夜一、前に織姫、両腕に一護と雨竜、背中に茶渡をくっつけた隣互が尸魂界上空に現れた孔から飛び出し着地した。

現世から尸魂界までの断界、常人なら門の稼働限界時間である4分で辛うじて間に合うかという距離を、彼女は30秒で通過した。

具体的には全力のジャンプ1回。

 

「交通機関を気取るなら、安全運転を心がけてくれないかい…!?」

 

「安全じゃよー?あんな場所をちんたら進むよりはよっぽど安全じゃ。かかか」

 

「はぁ……全員、無事か?」

 

「……問題ない」

 

「大丈夫だよ、くろっ……い、一護、クン!!」

 

弟と少女のやり取りをわるーい笑顔で見つめる隣互。

修行開始時に姉弟で混同するからと隣互が全員に下の名前呼びを強制したのだが、いまだに織姫は弟を『一護』と呼ぶことに慣れていない。

その度に顔を赤らめるのだ。初々しくて、実に良い。

 

「いやー、若いっていいのぉ師匠ー」

 

「儂に言わせれば、貴様も若い部類じゃがな」

 

「なんのなんの。師匠もまだまだ行けるでしょうに」

 

隣互は意識を切り替えて、周囲を見渡す。

……江戸時代の小さな集落か何かか?

土がむき出しの通りに、木や石で作られた小さなあばら家が点々と建っている。

向こう側には舗装された道としっかりとした建物があるが、そこは瀞霊廷の内側。

尸魂界の中心であり、死神達が居住するエリアだ。

 

「なんつーか……えらく殺風景な場所だな……」

 

「儂らは侵入者……彼ら風に言うなら『旅禍』じゃ。

 皆警戒して引きこもっておるのじゃろう。

 それを差し引いても、とても天国には見えんがな」

 

「確かに。死後にたどり着くのがこんな場所だと知っていたら、少なくとも僕は来たいと思わないね」

 

「無駄話はそこまでだ。

 尸魂界はすでに我らの侵入を感知している。

 すぐにでも警戒態勢を取るだろう……噂をすればだ」

 

瀞霊廷を覆うように、空から巨大な壁……瀞霊壁が音を立てて落下してくる。

あっという間に瀞霊廷全体が隙間なく囲まれてしまった。目には見えないが上空や地下も霊力を分解する障壁、『遮魂膜』で覆われているらしい。

門は見えるが門番がいるはず。その向こう側には大量の死神が待ち構えているだろう。やはり真っ当な方法では侵入不可能だ。

 

「……では師匠、一護らを頼む」

 

「うむ。そちらも気を付けるのだぞ」

 

「姉貴……本当に一人で大丈夫なのか?」

 

「くかか、それはこちらの台詞じゃ……死ぬなよ」

 

手筈通りに、隣互は一護たちと別れ移動を開始した。

今から彼らが志波空鶴の家に行き、説得を行ったとして、突入は早くとも明日の朝。

であれば自分は夜のうちに侵入しておきたい。

そしてできる限り彼らがいる西流魂街から距離を取らねばかく乱にならない。

あらかじめ用意しておいた携帯食料をかじりながら、瞬歩とOFAを駆使して瀞霊廷の外壁に沿うように走り続ける。

 

「……この辺りにするか」

 

全速力で走り続けること数時間。

門からは遠い、何の変哲もない外壁の一つの前で立ち止まる。

浦原の地図によれば壁の向こう側には特に重要な施設はないはず。

厳重な警備が敷かれているということはないだろう。

体力を回復するために暗くなるまで隠れて休憩し、夜中に行動を開始する。

 

「さぁて実験済みではあるが、緊張するのぉ……今更引けぬが、なっ!」

 

隣互は瀞霊壁を飛び越える勢いで大ジャンプ。そして遮魂膜にぶつかる前に。

 

「破っ!」

 

勢いよく掌を叩きつけ、個性『領域』を発動する。

彼女の個性は霊力によるものではなく、『霊子』を含まない。

遮魂膜を個性の結界で上書きできることは浦原との実験で確認済みだ。

一度発動した結界を動かすことはできないが、結界内でなら自由に移動はできる。

なので膜の内側になる場所にまで移動してから個性を解除すれば……。

 

「……侵入成功」

 

何の変哲もない建物の上に、音も無く着地する。

予想通り眼下の通りには巡回の持つ光がいくつか見えるくらいで、人影はほとんどない。

隣互の侵入に気付いた様子もなさそうだ。

 

「では……やるか」

 

彼女は自前の和服ではなく、浦原に仕立ててもらった死覇装を身に着けている。

彼女の斬魄刀は特徴的な真紅の刀身が目立つので黒い布でくるんで背負っている。

これから使う武器は腰に下げた小太刀だ。

そして浦原商店から拝借した木彫りの鬼の仮面をつけて顔を隠す。

 

「……疾っ!」

 

こちらに気付いていない巡回の死神の背中へ向けて、風のように駆け出す。

 

翌日、一番隊隊舎に護廷十三隊の隊長たちが集められ、隊首会が開かれた。

議題は『北流魂街近辺で発生した襲撃事件』について。

昨晩、正体不明の人物により巡回警備の死神が次々と襲われ、重傷を負わされたとの報告があった。

被害者の中には上位席官クラスも混じっており、ただ者ではないと警戒を強めるよう通達される。

現時点で判明している情報はわずか。

性別は不明で、小柄ながら凄まじい剛力を誇り、瞬歩と気配を消す術に著しく長けていること。

そして下手人が『ヒノカミ』と名乗っていることだけだった。




第一章では主人公以外のキャラのイベントもそれなりに書き込みましたが、申し訳ありません。ここからは主人公以外はほぼカットです。
他のキャラたちのイベントが多少減ったくらいで、原作との大きな差異は起きていないと思ってください。
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