『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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門の前でのいざこざが起きず、あらかじめ突入作戦の概要を知らされていたことで、一護たちの突入までの時間が1日短くなっています。
結局処刑が早められるので、物語に影響はありませんが。


第17話

「……来たか」

 

夜明け頃、ヒノカミは建物の屋根の上に隠れながら空の向こうから突っ込んでくる珠を見ていた。

一護たちはあの中にいるはず。

珠は瀞霊廷を覆う遮魂膜に激突し貫いて……。

 

「……ぬぁ!?」

 

貫いて、いない。

膜の内側には入ったようだが、そこで防壁らしき霊力がほどけて渦を巻き始めた。そして。

 

「4つに……別れた!?えぇい!!」

 

何らかの理由で失敗したらしい。

一つは影が小さかったのでおそらく夜一。そちらは問題ないだろう。

しかし残る3つに分かれた弟たちが心配だ。

彼ら全員でかかれば隊長格相手でも何とかなるが、一人では副隊長に勝てるかどうかというところ。

早速死神たちがそれぞれを追って散り始める。

彼らの危険を減らすためには、これしかない。

 

「「「!!?」」」

 

ヒノカミは隠していた霊力を開放した。

師匠から隊長格に匹敵するとまで言われた全力をだ。

当然気づかれる。眼下の死神たちが、一斉にこちらを向いた。

自分が襲撃事件の犯人だと気付いたのだろう。全員が刀を抜く。

 

(……一つ、でかいのが向かってくる……何番隊かは知らぬが隊長か)

 

弟たちへの追手を減らすためにこの身を危険に晒したが、予想よりも近くに隊長格がいたらしい。膨大な霊力が凄まじい速さで近づいてくる。

幸いにもこの場で自分に襲い掛かろうとする死神に大した実力者はいない。一番強い奴でも四席か五席だろう。

急いでこの場を切り抜けなければならない。ヒノカミは小太刀を抜く。

昨晩の襲撃では、できる限り後を引くような怪我は負わせないよう気を付けていた。

掟とは言え仲間を切り捨てる死神の在り方を認めるつもりはないが、彼らが現世の平穏を護り、命を懸けて虚と戦う勇士たちであることは事実。恩はあるし敬意もある。

藍染に利用されて敵対することになったが、流石に殺したいとまでは思わない。

……目の前で自分の神経を逆なでするようなことを言わなければだが。

 

「すまんが……あまり加減はできんぞ」

 

聞こえないように呟いた直後、ヒノカミの姿が消えた。

気付けば死神達の集団の中に彼女が立っていて、近くにいた者へと攻撃を仕掛けていく。

斬魄刀をへし折り、手足の腱を斬り、殴る蹴るで吹き飛ばし。

30人くらいはいたが、倒しきるまでに5分はかからなかったはず。

……しかし彼らは確かに命がけで、ヒノカミの数分を奪った。

 

「そこまでだ!」

 

その間に件の隊長がこの場にたどり着いてしまった。

 

(よりにもよって……!)

 

相手は十三番隊隊長、浮竹十四郎。

ルキアの上司であり死神達の中でも穏健派。

おそらく、最も説得が容易だったはずの人物だ。

ヒノカミが倒してしまった足元の死神達の中には、彼の部下である十三番隊が混ざっていた。

印象は最悪。この状況では説得など不可能だ。彼はすでに刀を抜きこちらに向けている。

ヒノカミは知らぬことだが彼は病弱であるため、本日行われていた隊首会を病欠していた。

そして今いる場所は十三番隊の管理区域に隣接しており、彼女の霊圧を感じて一足先に辿り着いてしまったという訳だ。

 

「昨晩から隊士たちが襲われる事件が起きていると聞いた。

 君が下手人だな?」

 

「……いかにも」

 

「なぜこんなことをした!」

 

この状況に至ってもまだヒノカミの話を聞こうとするとは。

人の好さが滲み出ている。心情的にもやはり彼と敵対することは避けたい。

 

「……尸魂界の闇に潜む巨悪をあぶり出すため」

 

「!?」

 

彼との致命的な決裂を避けるにはどう答えるべきかと考え、絞り出したのがこれだった。

誰が聞いているかわからない状況で馬鹿正直にすべてぶちまけるわけにはいかない。じきに他の死神達も集まってくるだろうから口車で乗り切る時間の余裕もない。

 

「何を知っている……まさか、ルキアの件にも関係があるのか!?」

 

しかしヒノカミは彼の心に楔を打ち込むことに成功した。どうやら思い当たる節があったらしい。

浮竹はルキアへの罰の軽減を願う嘆願書を提出した。六番隊隊長である朽木白哉と共にだ。

しかし隊長二人の意見は一考すらされず、双殛を用いての殛刑など明らかに過剰。

 

「お主とは戦いたくない。いずれまた会おう。

 仲間に刃を向ける覚悟があるのなら、その時に全て明かすと約束する」

 

「!?逃がすと思うか?」

 

「今ならまだ助かるぞ」

 

それが周囲に転がっている隊士たちを指しているのだと気づき、彼はそちらに視線を逸らしてしまった。

その一瞬でヒノカミは姿を消していた。霊力の探知もできない。

 

「莫迦な……俺がこの距離でも追えなくなるほどの隠形の使い手なのか……!?」

 

浮竹は驚愕で硬直したがすぐに気を取り直し、自分を追って来た部下たちと共にけが人の救助に当たった。

自身が病弱なので医術に精通している彼は、隊士たちの傷が意図的に急所を避けてつけられていると気付いた。おかげで見た目ほど傷は深くない。

彼らはけが人を救護塔へと連れて行った。その迅速な動きのおかげで。

 

「……ぷはぁ」

 

この場に誰もいなくなるまで、領域を維持することができた。

何のことはない。彼女は物陰に隠れて領域で自分の霊力を遮断していただけだ。

 

「ちぃと胡散臭すぎたかの。……さて、どうするか」

 

一護たちの救援に行きたいが、自分の悪名が広がりすぎた。

合流すればむしろ巻き込んでしまうかもしれない。

 

「信じるしかないか……これからは襲撃相手も選んで……あぁくそ。

 役割がヴィランなのに、ヒーローを気遣わねばならんとは。

 やりにく過ぎじゃ、まったく」




朽木白哉が少しだけマイルドになっています。
ただ諾々と従うのではなく、掟の範囲内でルキアを助けられないかと動きました。
助命嘆願書を出すくらいはしています。
当然聞き入れられませんでしたが、ルキアと恋次からの好感度がちょっぴりアップしています。
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