『修行場の準備ができた』と言ってヒノカミが4人と1柱を案内したのは、ヘスティアファミリアホームである教会地下の更に奥。
勝手にヒノカミが増設した一室の厳重な扉を開けると。
「え、狭い。なにこれ?」
「半透明の……筒?」
「ほれ、中に入れ。使い方は後で教えるから」
促されてまずベルが入り、筒の外側に取り付けられた金属の板の表面をヒノカミが叩くと。
「消えたっ!?」
「ベルくん!?」
「ベル!?」
慌てたヘスティアとアイズが筒の入り口を開けて中に入るが、やはり先ほどまでいたはずのベルの姿がない。痕跡すら。
バタン
「「へ?」」
「お二人なら小柄じゃからまとめていけるので」
二人が入ったまま入り口を閉めたヒノカミが再び板を叩けば、ヘスティアとアイズの姿も同じように消える。
「ま、また消えた……!?」
「ヒノカミ様、結局これはいったい何なのです?」
「転移装置……では伝わらんか。
簡単に言えば遠くにおいてある別の機械まで一瞬で移動できる機械じゃ」
ここしばらく時間をかけてヒノカミが用意していたのは、ドラゴンボールの世界でブルマが発明した転移カプセルの複製品だった。
この世界の素材では作り出せず、しかし神々の視線が厳しいオラリオでは『刻思夢想』が使えないので、一度転移でオラリオの外に出てから部品を具現化し、改めて持ち込み組み立てるという手間をかけて作り出した。
なぜこんなものをわざわざ用意したかといえば、これも『刻思夢想』が使えない理由と同じで神々の視線がうっとうしいから。
特にバベルの上に居座っている
ここヘスティアファミリアのホームは厳重な覗き見防止対策を施してあるが、流石に狭すぎる。
となれば修行場はオラリオの外、できる限り遠く離れた場所でなくてはならず、だが毎回ヒノカミが転移で連れ出すのも手間がかかるし彼女が付きっ切りでなければならない。
よってベルたちが自分で使える転移装置を用意することにしたが、ヘルメスドライブは人を対象とするので場所から場所へと移動するには不向き。
例えば今のように全員がオラリオから離れてしまうと戻ることができなくなってしまう。
なので最終的に転移カプセルに頼ることにしたが、この設定作業が難航した。
別の世界なので色々と条件が違うということもあるが、これの発明者であるブルマほどの頭脳がヒノカミにはないからだ。模倣ならできるが手を加えるのは難しい。
何度も自分を使って実験し、転送に失敗して地面の中に埋まったり肉体の一部が欠損したりを繰り返しながら調整して、ようやく安心安全に使用可能になった。
同じようにヴェルフを送り出し、最後にヒノカミがリリルカと一緒に中に入り、全員が移動を終える。
「師匠!ここって……!」
「うむ。儂らの住んどった場所の傍じゃ」
カプセルが隠された小さな小屋の外に出ていたベルが気づいたようだ。
ここはベルがメーテリアとゼウスの3人で暮らしていた村から少し離れた人気のない森の中。
ヒノカミが二人の弟子と暮らしていた場所だ。
「ベル」
「「「!?」」」
愛しい甥御の気配を察し急いでやってきたくせに、それを悟られぬよう努めて冷静に振舞う灰色の女性。
ヒノカミの同居人であり弟子の一人。
「アルフィア伯母さん!」
「『
「うぼぁぁっ!?」
「たった一月そこらでもう忘れたかベル。私のことは?」
「あ、アルフィアお姉さん……」
「よろしい」
早速久しぶりの洗礼を受けたベルは発言を訂正してから意識を失った。
『静寂』のアルフィア。
元ヘラファミリアの眷属であり、15年前の時点でレベル7。
そして現在のレベルは……10。
「この人が15年前の最強の一角……リヴェリアたちが言っていた……!」
「フン、本当にあの道化の眷属か……まぁいい。
事情は聞いている、ついてこい」
「『ついてこい』も何もザルドと一緒に待っときゃよかったじゃろ。
儂がすぐ連れてくと伝えておったではないか。
そんなに早くベルに会いたかったんか?」
「『
ベチン
「げらげらげら。かわいい照れ隠しじゃの」
「チッ……」
アルフィアを代表する、僅か一言で発動する高威力・長射程の攻撃魔法『サタナス・ヴェーリオン』。
ベルに放ったものとは違い手加減無し、レベル10の全力を込めた一撃をヒノカミは羽虫でも払うかのように霧散させた。
攻撃系統ではないが魔法を取得し研鑽を積んできたリリルカは今の高度なやり取りに戦慄し。
攻撃魔法を習得しているがそんなことよりも自分が抱えようとしたベルをアルフィアが先に背負ってしまったことに対しアイズはあざとく頬を膨らませることで不満を表明し。
ヘスティアは親馬鹿な気配を漂わせるアルフィアに親近感を抱いていた。
新参で実力も足りないヴェルフは完全に置いてけぼりで、歩き出した一行の後を追う。
間もなくベルも目を覚まし、恥ずかしがってアルフィアの背から降りて歩き出す。
やがて一行がたどり着いたのは4,5人なら暮らせるサイズの立派なログハウス。
だがよく見れば外壁は一般的な素材ではなく。
「ヒノカミ様……これ何でできてます?」
「オリハルコン。窓や扉は『不壊属性』を持たせた。
儂らはこの近辺で修行しとるんじゃが、このくらいの強度でなければ巻き添えですぐ壊れてしまうでな」
「最硬金属!?超高級素材じゃねぇか!
それを……家の素材に!?贅沢すぎんだろ!!」
「儂には物質生成・複製能力がある。
希少品を一度に大量にというのは苦しいが、時間があればいくらでも量産できる。
この森もアルフィアらの修行で何度も破壊してしまうんじゃが、その都度元通りにしておる。
家も同様に再生できるんじゃが中に色々物があるせいで復元が手間での」
「だからって、黄金より貴重な素材で……」
「……実は以前、アルフィアが『ジェノス・アンジェラス』をぶっぱなした際にこの家を巻き込み、中で休んでたザルドごと吹き飛ばしてな」
「コイツがすぐ癒せるのだから問題あるまい」
「問題あるに決まってるだろうが!!」
言い返したのは一行ではなく、扉を開けて小屋の中から出て来たザルドだった。
この小屋は対アルフィア用に防音性能が著しく高いのだが、彼女との付き合いが長く音に対し神経質な彼にはかすかに会話が聞こえていたようだ。
「ザルドおじさん!」
「おうベル、元気そうだな」
目元に深い傷跡を残す筋骨隆々の大男。
ヒノカミの同居人でありもう一人の弟子。
『暴食』のザルド。
元ゼウスファミリアの眷属であり、現在のレベルはアルフィアと同じく10。
「客人と神さまもよくきてくれたな。上がってくれ。
茶と茶菓子は用意してあるからよ」
しかし彼の振る舞いは二つ名や逸話からかけ離れた気さくなものだった。少なくともアルフィアよりはよほどとっつきやすい。
ある程度情報は明かされていたものの不安が勝っていたヴェルフは、ようやく出て来たまともな大人に安堵する。
広いリビングに通され、大きなテーブルを囲んで全員が椅子に座る。
「さて落ち着いたところで、話を始めるとしよう。
新参もおることじゃし初めからな」
アルフィアとザルドのキャラの読み込みが浅いので、性格や設定に違いがあるとは思いますがどうか広い心でお目こぼしをお願いします。