『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第34話 宣戦布告

 

神々や冒険者の間に広まっていたヘスティアへの敵意を利用したのか、あるいは煽動していたのはフレイヤだったのか。

いずれにせよ、フレイヤはその感情を利用して他の神々をまとめ一大勢力を作り上げた。

そしてヘスティアファミリアに戦争遊戯を挑んだ。

 

フレイヤ側からの要求は『ヘスティアの眷属のフレイヤファミリアへの移籍』、そして『ヘスティアの天界への強制送還』である。

ベルとリリルカを己のファミリアに移籍させれば、フレイヤは主神として二人に火種の破棄を命じることができる。

火種を失えば二人はただの新人だ。他の神々にとって大した価値はない。

彼等はヘスティアさえいなくなればそれでいいのだ。

ヘファイストスの恩恵も火種と適合すると判明しているがヘファイストスファミリアは探索系ではなく生産系。

放置しても大きな問題にはならず、それどころか彼女を失うのはオラリオにとって損失が大きい。

仮に問題になれば同じように戦争遊戯でも仕掛けるつもりだろう。

 

 

「『三日後に返事をもらう』て、完全に最後通牒のつもりかい。胸糞悪い」

 

「ヘスティアの恩恵は黒竜討伐の要だというのに……まさかここまで反発があるなんてね」

 

「ぅおのれぇぇぃ……フレイヤめぇぇぇぇ~~~!

 我が愛しのベル・クラネルを奪うために、この私の宴を利用するとはぁぁぁーーー!」

 

「誰が『我が愛しの』だい!ベルくんはボクの家族だぞアポロン!!」

 

「己も病気かい……まぁ、ウチかて欲しい思うほどえぇ子ではあるけどな」

(アイズたんが嫁にもらわれるくらいなら婿に来てくれんやろか……)

 

「でも意外ねアポロン。貴方は気に入った子がいると無理やり奪い取ってしまうと有名だけど?」

 

「やっぱお前もフレイヤ側ちゃうやろな?」

 

「そんなわけがあるかっ!!」

 

折角開いた神の宴が、フレイヤ軍勢の宣戦布告と一斉退出で台無しになってしまったアポロンが叫ぶ。

今はそれぞれの連れて来た眷属を別室に待機させ、ヘスティア・ロキ・ヘファイストスと彼の4柱のみが一室で議論していた。

 

「……あの『スピリット・オブ・ファイア』とやらは私も目にした。

 それ以上の説明が必要か?」

 

「「あぁーー……」」

 

「ん?どういうこっちゃ?」

 

「火の権能を持っている神だと、わかるのよ。

 『アレ』のヤバさがね……」

 

「まして火に『関わってる』だけのボクらとは違い、アポロンは『太陽神』だ。

 ボクらの感じた圧も尋常じゃなかったけど、アポロンはそれ以上だろうさ」

 

(そん中に堂々踏み込んだドチビが言うことかい)

 

緊急神会にアポロンが参加しなかったのは、あの大精霊を見て怯え引き籠っていたからだ。

思い返せば『火』に関する神はあの時ほとんど参加していなかった。フレイヤ側の軍勢にもだ。

 

「だがだからこそ解せぬ。フレイヤが凶行に走った理由が。

 すでにヒノカミとやらに二度も痛い目にあわされているのだろう?」

 

「……その二度で、隙に気付いたゆうことやろな。

 確証もないに賭けに走る辺り狂っとるのは間違いないが……」

 

「どういうこと?」

 

「……ヒノカミくんは、自分に一つのルールを課してるんだ」

 

 

『公正公平なルールには従う』。

 

 

戦争遊戯は神々により制定されたオラリオの法だ。

勝者の要求も、敗者への罰も、誰もが当たり前のことだと認めている。

だから恩恵を持たず眷属でもないヒノカミは干渉ができない。

15年前にゼウスらに挑んだ時も、フレイヤがヒノカミを巻き込むまでは彼女は手出ししようとしていなかった。

 

とはいえ、戦争遊戯は互いの承諾があって初めて成立する。そしてヘスティア側に受ける理由はない。

だが拒絶すれば執拗な嫌がらせを始めるだろう。

違法行為ならやはりヒノカミが出てくるが、オラリオのファミリアの大多数を占める勢力ならば合法的にでもいくらでもやりようがある。

 

もしヘスティアが応じて戦争遊戯が始まることになれば、そのルールもまたフレイヤ側が決めることになるだろう。

神会の基本は多数決。弱小ファミリアの神なら大手ファミリアの神に逆らうことを恐れ従うが、向こうのトップはロキと双璧を成すフレイヤだ。ロキとヘファイストスの圧は通用しない。

 

「ヒノカミに隙を作らんように、ルール自体は公平なモンにするやろうな。

 せやけど公平なルールの中で、最も自分たちに有利なモンを選択する」

 

「……『攻城戦』ね。最も人数差が勝敗を左右する戦いになる。

 そして参加資格は両ファミリアとその傘下ファミリアに限定。

 さらに『ギルドに冒険者登録されている者のみ』とでも制限をつけて、アルフィアとザルドの参戦も封じ込めてくるはずよ」

 

「卑怯者めがぁぁぁ……!」

 

「キミが言うかいアポロン……」

 

あの二人は都市追放処分を受けているためギルドに登録されておらず、今から登録するのも障害が多い。

だが彼らは恩恵だけでレベル10だ。戦争遊戯に間に合わずとも後から全てをひっくり返す力がある。

ヘスティアが送還され恩恵を失ったとしても、火種を消して他の神の恩恵を受ければよい。

そしてヘスティアの敵討ちを兼ねてオラリオに攻め入り、フレイヤも他の神々も全て殲滅するだろう。

それを防ぐためにも、連中はベルの身柄を押さえる必要があるのだ。彼等に対する人質として。

 

「……まともにぶつかって、勝てる?」

 

「ベルくんはレベル8相当……向こうの『猛者』と互角だ。

 リリくんもレベル6くらいになってるけど、それじゃあ幹部一人と相打ちで終わりになっちゃう」

 

「せやろなぁ……となりゃ、選択肢は二つしかあらへん」

 

アルフィアたちを呼び寄せて何もかも殲滅すると言う手もあるが、ヘスティアが選ぶはずもない。

戦争遊戯も、不利なルールでの戦いも避けられない。

となればほぼ負けが決まっている戦いに挑むか。

 

 

「オラリオから、逃げ出すかや」

 

「「「……!」」」

 

 

ギルドには所属する冒険者のオラリオからの出入りを制限する権限がある。

だがギルドそのものから脱退し事実上のオラリオ追放処分を受け入れるというのなら止める権限はない。

勿論、オラリオに所属する他のファミリアにも。

 

フレイヤに与する神々の望みはヘスティアがいなくなることだ。ヘスティアが自主的に立ち去るなら止めようとはしないはず。

ベルに執着するフレイヤの妨害は予想されるが、違法行為でくるならヒノカミの管轄対象だ。彼女が撃退して力尽くで押し通ればいい。

ギルドを抜けオラリオを離れればアルフィアとザルドとも堂々と合流できる。

修行し黒竜を倒せば世界を救った英雄として大手を振ってオラリオに戻ることもできるだろう。

……遠い未来になるだろうが。

 

「どっちを選ぶにしても、手は貸したる。

 お前が決めるんや。ヘスティア」

 

「…………」

 

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