『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第36話 戦争遊戯

 

『皆さん、おはようございます!

 いよいよ戦争遊戯(ウォーゲーム)当日がやってまいりました!

 実況を務めるのはガネーシャファミリア所属、『火炎爆炎火炎(ファイヤー・インフェルノ・フレイム)』イブリ・アチャーでございます!

 そして解説は我らが主神ガネーシャ様……に普段ならお願いするところなのですが……』

 

『ヘルメスでーす。この度ヘスティアの傘下に入ったんで、皆も僕の子たちを応援してねぇ~』

 

『神ヘルメス様にお願いしています!

 本来はどちらかの陣営に属する方に解説をお願いするべきではないのですが、今回の戦争遊戯は色々と特殊なのは皆さまもご存知のことかと。

 なのでオラリオの皆さんにしっかりと説明できる方をお呼びする必要がありましたのでご足労いただきました!』

 

 

「オレがガネーシャだぁぁぁぁーーー!」

 

 

『どこかから幻聴が聞こえたような気がしますが、気にせず進めていきましょう!

 ……ではヘルメス様!早速お尋ねしたいのですが!!』

 

『はいはい?』

 

バベルの上にある神々だけが座ることを許された広間に、神の瞳が向く。

街の酒場や広場、各ファミリアのホームの執務室など、至る所に神の瞳が見た映像が映し出されるのだが……。

 

 

 

『あ、あんまり見ないでおくれぇぇぇ……』

 

 

 

『アレホントにヘスティア様ですか!?』

 

『アッハッハッハ!間違いなくヘスティアさ!』

 

人々が知るヘスティアは子供かと思えるほどに小柄で、ごく一部だけがダイナマイトな女神だった。神々からのあだ名は『ロリ巨乳』である。

だが映し出されているのは胸の大きさ相応に背が高く、真っ赤なドレスを身に着け、フレイヤにも劣らぬ美貌を誇る肢体を恥ずかしそうに両手で隠す初々しい美女。

特徴的だったツインテールも長く下ろした髪の両脇に小さく残るのみ。髪の先端は炎のように赤く揺らめいでいる。

衝突を避けるためフレイヤとその傘下となった神々は離れたところに固まっているが、その中からでさえ、傍にいるフレイヤではなくヘスティアに視線を奪われる者が続出していた。

声と顔に面影が残っていなければ別神ではないかと疑うところだ。いや、イブリを始めとした一部は今も疑っているが。

 

『いやぁ、しかし何度見ても美しい!

 アルテミス、アストレアにも劣らぬ美貌だ!

 もうキミたちが美の三大女神を名乗ってもいいんじゃない?』

 

『こらぁっ!いつまで映してるんだいっ!さっさと進めなよ!』

 

『おっと確かに、間も無く正午です!

 ヘスティア様の変貌への興味は尽きませんが……』

 

『試合の間にしっかり解説しよう』

 

『ありがとうございます!では試合開始の銅鑼を……』

 

 

「オレがガネーシャだぁぁぁぁーーー!!!」

 

 

『……時間押してるんでさっさと鳴らして下さいません?』

 

「あ、はい」

 

己の眷属に雑な扱いを受け、傷心の象頭の神は大きな銅鑼を叩いた。

 

 

ゴォォォォーーーン!!

 

 

『戦争遊戯、開始です!!』

 

 

神の瞳の映像が、オラリオから離れた荒野を映し出す。

巨大な城はそれでもフレイヤ連合の軍勢を全て受け入れることはできず、フレイヤファミリアの眷属以外は城の外で警戒と防衛に当たっていた。

その数、数百人。通常は一つのファミリア同士で行われる戦争遊戯でこれだけの人数が参加するのは前代未聞だ。

 

そして荒野の高台から城とその周囲の敵を油断なく、しかしどこか余裕をもって眺める一団があった。

構成人数20人足らずの、ヘルメスファミリアの冒険者たちだ。

 

「やれやれ……ようやく日の当たるところでお披露目できるってのに、やることが露払いだなんてね」

 

「不平不満は許しません。我らが師より受けた数々の恩……わずかでもお返しできるとしたらこの戦場を置いて他にない」

 

「わかってますって団長。……あぁくそ、見てて欲しかったなぁ……!」

 

「皆同じ気持ちです。だからせめて、届くほど苛烈に。

 ……ヘルメスファミリア、吶喊します!!」

 

「「「「「うぉぉぉぁぁぁあああーーーーっ!!!!」」」」」

 

崖から飛び降りた一団がまっすぐに敵陣へと突っ込んで行く。

策を弄し、実力を偽り、人前に姿を晒すことすら避けて来た彼らが、その全てを捨ててただひたすらに走る。

当然気付いたフレイヤ連合は矢と魔法を浴びせかけるのだが、前に並ぶ盾持ちが全てはじき返すと信じて、止まることなく突き進む。

そして一団はついに敵集団の眼前へと迫り、先頭集団と激突した。

 

そしてぶち抜いた。

 

「「「!?」」」

 

外縁部を受け持つ冒険者たちはほとんどがレベル1や2だ。強いかと言われればそんなことはない。

だが団長のアスフィ以外は同じくレベル1と2の冒険者で構成されたヘルメスファミリアに、ここまで一方的に押されるはずがないのだ。

 

 

 

『なんということだぁーーーっ!まさに鎧袖一触ぅ!

 フレイヤ連合の冒険者たちが次々と吹き飛ばされていきます!

 ヘルメス様、これは一体!?』

 

『あぁ、今日まで黙ってたけどアスフィはレベル5だしねぇ』

 

『!万能者が、第一級冒険者!?』

 

『団員の子もレベル3、ほとんどレベル4だよ。

 レベル1や2の子供たちじゃあ相手にならないって』

 

『レ、レベル詐称……!?いいんですか!?そんなにあっさり認めて!!』

 

『負ければ本当にオレは終わりだからね。不退転の覚悟ってヤツさ。

 ……っと、動きがあったね?』

 

『っ、フレイヤ連合の冒険者たちが迎撃に集まってきました!

 レベル3や4の冒険者の姿も多数見受けられます!流石にキツイか!?』

 

『そんなことはないさ……今のあの子たちは、そのくらいじゃ絶対にとまらない……!』

 

映像の中で、ヘルメスの眷属たちの体から炎が立ち上った。

すると彼等の受けていた傷が目に見える早さで塞がっていき、フレイヤ連合の大軍勢に押され減速していたはずがまた押し返し進み始める。

 

『こっ、これは一体……!?』

 

『『力の火種』さ。とはいえオレの恩恵との相性はヘスティアに遠く及ばないし、手に入れてたったの数日じゃあベル君たちみたいには使いこなせないから、一瞬だけ自己治癒に当てるのが精いっぱいだけどね』

 

『な……!?火種とやらは、ヘスティア様を始めとした一部の神の恩恵にしか適合しないはずでは!?』

 

『あぁ。以前オレの子たちも試したけど、無理だったよ。

 オレの恩恵とヒノカミの火種は適合しない。だけど……』

 

 

 

『『ヒノカミと同化したヘスティアの火種』なら適合するとわかったんだ。

 オレだけじゃなくどんな神の恩恵ともね』

 

 

 

『…………は?同化?』

 

『ヒノカミはもういない。この世界を旅立ったんだ。

 己の力の全てをヘスティアに託してね』

 

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