特に九島烈とか他の十師族とか魔法師とかに。
ですがそれは、この世界がそのくらいにどうしようもない世界だという情状酌量の余地があるためです。
外伝6のガンダムSEED編にて最終的にウズミに拳を叩きつけなかったように、彼女としては受け入れられずとも当人の状況を鑑みればやむを得ないと判断したなら手出しを控えめにします。
例えその過程で罪を犯すとしても、必死に生きようと足掻き続けることは正しい行いだと信じているので。
同時に、人間だった頃に簡単に命を投げ捨てていた自分を恥じてもいます。
国立魔法大学付属第一高校入学式。
六道は一人の教師として席に座り式の進行を見ていた。
彼女の正体は性別と年齢以外一切不明にしていたため、生徒は彼女を一人の教師としか見ておらず噂の六道家当主だとは気づいていないだろう。
式の前に顔合わせをした教師陣は流石に分別はついているようで、チラチラと彼女の方に視線を送るだけで露骨な振る舞いはしていない。
(……なんじゃこりゃ)
周囲の教師たちの視線を無視して、六道は内心でとことん呆れていた。
席は自由であるはずが前は一科生、後ろは二科生ときっちり別れている。
今日が入学式だと言うのに既に一科生は二科生を小馬鹿にするような視線を向け、二科生はそれに憤りながらも押し黙る。
合格発表から随分と経っているはずなのに、中には未だに己が二科生であることを受け入れられず絶望している者すらいる。
そしてこの明らかな差別が行われている状況を、教師たちは『当たり前』と認識し気に留めすらしない。
(『
一科生と二科生に見分け方は簡単だ。制服の左胸に八枚の花弁の校章があるか否か。
始まりは『国の方針で急遽生徒の数を倍にせねばならず、制服の用意が間に合わなかったため校章の刺繍を省略した』だけの話だった。
それが勝手に『才能が花咲いた優秀な一科生』と『花も咲かぬ補欠の二科生』を現す差として扱われ、学校側は以降もその流れを変えることなく今日まで続けている。
教師側にも二科生は予備でしかないという考えが蔓延しているのだろう。
魔法科高校は年に100人の優秀な卒業生を輩出することが国から支援を受けるためのノルマであり、一科生100人が全員無事に卒業するならば二科生はいない方がありがたいのだ。
希少な人手と資金を割かずとも済むのだから。
(むしろ芽吹かせ花咲かせるのが教師の仕事であろうが……人手不足を怠慢の言い訳に使いおって。
こりゃ学校全体に危機感を持たせねば)
何より六道自身が誰よりも才能のない雑草の中の雑草だ。
そして今の彼女の実力から見れば一科も二科も目糞鼻糞。彼らに数十数百の開きがあったとしても、億どころか兆を超えている彼女からすれば誤差でしかない。
(ま、目立つのはやはり奴らか)
しかしその中でも際立つのは十師族の血筋だ。
生徒会長『七草真由美』。
部活連会頭『十文字克人』。
『続きまして新入生答辞。新入生代表……』
(『四葉』……いや『司波深雪』か。
……画像でも思ったが、実物は予想以上に母親似じゃの)
壇上に登った美少女に、生徒だけでなく教師も視線を奪われている。
だがいくつもの視線の中でただ一つ、明らかに違う感情が込められたものがある。
そちらを辿っていけば、制服に花弁を持たぬ一人の男子生徒の姿があった。
(そんであれが、『司波達也』。
……ん?何か深雪と違わんか?)
オーラは似ている。
似ているが……実の兄としては少し違和感があるし外見は大きく違う。
双方共に相当に『手が加えられている』らしいので、兄妹と言うには遺伝子上の差異が大きいのはわかるが、だとしてもだ。
『新入生を代表し第一高校の一員としての誇りを持ち……。
皆等しく!勉学に励み魔法以外でも共に学びこの学び舎で成長することを誓います!』
六道が思考を巡らせている内に深雪の答辞は終わってしまった。
選民思想の激しい魔法科高校の入学式に用いるには際どい内容であったが、生徒の大半は彼女の美貌にやられて陶酔していた。
(っと、出番か)
例年なら『国立魔法大学付属第一高校』の入学式はここで終わるところだ。だが今年は違う。
『最後に、本年度より第一高校に赴任しました六道教諭に挨拶を頂きます』
白衣を着た気だるげな美女が新入生代表と入れ替わるように壇上に上がる。
ただの新任教員ならこんな特別扱いは無いが、彼女は十師族六道家の当主『
その自己紹介は必須だろうと、学校側に強引にねじ込まれたのだ。
六道としては、どうでもいいのだが。
『……ただいま紹介に与った。
儂が今年度よりこの第一高校に赴任した、六道リンネである』
生徒たちは驚愕で目を剥く。
無理もない。彼女の名は誰もが知っているがそれ以外の情報は『熱量制御と治癒魔法の最上位』であり、『女性』であり、『年齢は50代』であることくらい。
だが壇上に立つ女性の姿は20代と言っても通用するほど若々しく美しい。
(さぁ~~て……話してええもんかのぅ)
予め当たり障りのない草案を用意してはいる。
だがこの場で浮かび上がった感情は全く異なる。草案の通りに話せば嘘になってしまう。
しかしかといって、思うままに言葉を紡げば相当に荒れるだろう。
(まぁ仕方ないか。嘘はつけん)
一瞬のためらいの後、六道はどちらを口にするかを決めた。
『……『勉学に励み魔法以外でも共に学び』。
儂も同じ考えじゃ。よくぞ言ってくれたと思う』
「「「!?」」」
六道はまず、先ほどの新入生代表挨拶を切り抜いた。
改めて口にされてその内容の危うさに注目が集まる。
感情と表情の薄い達也ですら目を剥き口を歪ませる。
『数多の魔法師の社員を抱える財閥の長として、はっきり言うぞ。
儂は魔法に優れている『だけ』の人間は、正直いらん』
「「「「「!?!?!?」」」」」
魔法力至上主義の頂点に立つ十師族の当主が、大勢の魔法師の卵の前で魔法社会の在り方を真っ向から否定した。
打ち合わせと違う挨拶の内容に、教師陣と生徒会役員たちが慌てふためいている。
彼等が制止しようとする前にと六道はたたみかける。
『魔法師としてわかりやすい指標であり、国の方針でもあるとはいえ……昨今は多くてな。
魔法力以外が、人としての最低ラインにすら届いていない者が。
よって儂は今の流れを変えたいと願い、こうしてこの場に立っている。
儂は『養護教諭』兼『魔法の臨時講師』であるが、魔法以外のこともどんどん尋ねてほしい。全力で応じよう。
『学びたい』と願う生徒に道を示し機会を用意するのが、教師の義務であるからの』
続けて多忙と人手不足と生徒の自主性を理由に不干渉を貫く教師陣に対しての痛烈な皮肉を放つ。
『重ねて言う。魔法を学ぶのは良い。だが魔法『だけ』を学ぶな。
CADの不調や不携帯、環境や状況、敵の妨害により魔法が使えない事態は必ず訪れる。
後天的に魔法を失う可能性も決してゼロではない。
魔法が使えなくなった途端に『何もできない』と慌てふためくような情けない人間にはなるな。
……以上じゃ』
言いたいだけ言い終えた六道はさっさと壇上を降りた。
どかりと元の席に座った後も、驚愕で動けぬ生徒や教師の視線を無視して云々と唸り続ける。
(……入学式というめでたい席で言うことではなかったなぁ。
しかし早めに釘を刺しておかねばならんし……むぅ)
憧れの高校に入学したばかりの子供に強く言い過ぎたという自覚がある彼女は、ほんの少しだけ自己嫌悪に陥っていた。
だが彼女の想いはすぐに裏切られることとなる。悪い意味で。
「なんであれだけ言って早々やらかすかなぁ……!」
入学式を終えて翌日の放課後。
六道は校門の前で揉める集団の中に飛び込み、魔法で他の生徒を攻撃しようとしていた男子生徒を力づくで取り押さえていた。
ある程度話考えた後で気づいたんですけど、第一高校には『安宿』先生なる保健医さんがいたんですね。
今から大筋変えるのは難しいので彼女の代わりに居座る流れで話を進めます。