「……鏡花水月の能力が完全催眠ねぇ」
「では、藍染の遺体は!?」
「間違いなく偽物じゃろうな」
「いや確かに彼の斬魄刀の能力が君の言う通りならできるだろうよ?
しかしなんだかんだ、彼とは数百年一緒にいるんだ。
君が浦原の使いであることは間違いなさそうだけど、突然何もかも藍染の仕業だなんて言われてもなぁ……」
「その反応が正しかろう」
やはり簡単には信じてもらえるはずもない。
もし信じてもらえるならこんな面倒な方法は取らなかった。
「しかし、悪いが証拠もない」
「それじゃあ流石に……」
「証拠ならあるじゃねぇか」
ここまで沈黙していた剣八が割り込んできた。
「こいつはその完全催眠ってのにはかかってねぇんだろ。
だったら藍染の死体をこいつに見せりゃいいじゃねぇか」
「!?確かに……いや、結局判別できるのが彼女だけでは……」
「いいじゃない、やらせてみようよ。七緒ちゃん、彼の遺体はどこに?」
「四番隊に……卯ノ花隊長が検死に当たっていると」
「……その卯ノ花殿は信用しても良いのか?」
情報では彼女については底の知れない人物だとあった。
ただ者ではないらしいが、藍染の手勢である可能性もある。
「ありえねぇよ。あの女が陰謀に加担するなんざ」
「……わかった。お主を信じよう」
領域を解いた隣互を連れて、全員で四番隊隊舎へと向かう。
浮竹と京楽が友人であることは有名だが、その場に戦闘狂で悪名高い更木剣八が混じっていたため、見慣れない死神にまで意識が向く者は現れなかった。
「う、浮竹隊長!?京楽隊長に、更木隊長まで!?」
「やぁ勇音ちゃん。ちょっと藍染隊長について調べたいことがあってね。
彼の遺体を見せてほしいんだよ。いいかい?」
「あ、はい!今卯ノ花隊長に確認を……」
「その必要はありませんよ、勇音」
曲がり角から卯ノ花が現れた。彼女は浮竹たちの来訪を察知していたらしい。
「……どうやら見慣れぬお客人もいらっしゃるようですね」
「!あぁ、いやこれは……」
「……いえ、構いません。正直に言えば猫の手も借りたいところでして。
藍染隊長の遺体に違和感を覚えているのですが、それが何かがつかめず難儀していたのです」
「……違和感、ねぇ……」
全員が卯ノ花に医務室へと案内された。台の上には藍染の遺体が置かれている。
「……藍染……」
浮竹は顔をゆがめ、京楽は編み笠を目深に被る。
「……どうしました?」
卯ノ花は、見知らぬ死神が藍染の遺体に妙な視線を向けていることに気付いた。
「主らにはこれが藍染の遺体に見えているのか?」
「っ!?違うのか!?」
「あぁ……儂には、刀が一本置かれているようにしか見えぬ」
「「「!!?」」」
卯ノ花だけでなく浮竹や京楽、彼らの副官も藍染の遺体に駆け寄り観察する。
「これが……刀!?莫迦な!?」
「どういうことです!?」
「いやぁ……実際に言われても信じがたいねぇ。
ボクらが騙されているんじゃなくて、キミが騙されていると思いたくなる」
「騙される……?幻覚か何かですか!?」
「どいてろ」
気付けば剣八が修復されたばかりの斬魄刀を抜いて、彼らの後ろに立っていた。
「更木……!?」
「観察だなんだとまだるっこしい。
……これが一番手っ取り早ぇ!!」
剣八が藍染の遺体を両断した。
胴体を真っ二つ。遺体から血が飛び散り、生々しい肉の断面が覗くが……。
「……ちげぇな。こいつは人じゃねぇ」
返り血を浴びた剣八がにやりと笑う。
流石の鏡花水月も、生粋の人斬りである彼の感覚までは騙しきれなかった。
「あーあ……もうちょい調べれば色々わかったかもしれんのに」
隣互が足元に転がって来た刀の切っ先の部分を摘まみ上げ、ふらふらと動かす。
死神達の眼には藍染の下半身に見えているそれの動きは、明らかに隣互の指の動きに合っていない。
剣八の言葉と隣互の動作により彼らの中の違和感が増幅され、ついに幻覚が砕け散った。
「刀に……なった……!?」
「まさか本当に……!?」
「……決まり、だねぇ」
台の上に残っていた上半身は刀のもう半分に、飛び散った血は消えてなくなった。
決定的な証拠を見せられ、浮竹たちも隣互の言葉を信じるしかなくなった。
「……どういうことか、説明していただけますか?」
「わかってるよ。
隣互チャン、念のためさっきのまた頼めるかい?」
「大きいのを維持するのは苦労するんじゃ。全員部屋の中央に寄れ」
新たに卯ノ花隊長と虎徹副隊長を加えた10人が、台を囲むように集まる。
そして隣互が掌を叩き、傍聴を防ぐ防壁を作り出した。
「これは……!?」
「気になるとは思うけどそれは後で。
簡潔に言うよ。
今回の一件、いやここ数百年に起きた不審な事件の首謀者は藍染だ」
剣八が話し合いに参加するという状況に違和感……。
しかしオールマイト然り、主人公は筋の通った狂人との相性が非常に良いです。彼女も程よく狂ってるので。