『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第36話

 

「ハロー、スターズの諸君」

 

「「「「「!?」」」」」

 

六道の森の中を進む、USNA軍が誇る精鋭部隊スターズの一団。

彼等の前に立ちはだかったのは、たった一人の男子高校生。

 

「他人の家の敷地に、勝手に入ってはならない。

 ここ日本のみならず、国際社会の常識だと思うのだがね」

 

「シバ、タツヤ!?」

 

六道を篭絡するための足掛かりとするはずの、第一高校の生徒。

何故この場にいるのかという疑問は後回しにして、スターズの魔法師は邪魔者を排除するため彼に攻撃を仕掛ける。

 

しかしCADから放たれた光は、達也の目前で霧散した。

 

「!?」

 

「伝えたはずだ、リーナ。『六道に魔法は効かない』と」

 

何の備えもなくただ馬鹿正直に姿を現すはずもない。

今の達也は天神武装を模した強化魔法に加え、オリジナルの天神武装を全開にして身にまとっている。

干渉力での圧倒による魔法の無効化は健在であり、仮になくともその防御力と抵抗力の前では並みの攻撃魔法などそよ風と大差ない。

 

「六道……まさか、タツヤは!?」

 

「改めて名乗るとしよう。俺の名は『六道達也』。

 六道家の末席にその名を連ねる者だ」

 

「最初から、グルだったってことね……!」

 

アンジー・シリウスの正体がアンジェリーナ・クドウ・シールズだと、六道リンネのみならず達也にまでバレてしまったことなどもうどうでもよかった。

リーナは殺意を込めて十文字槍を模したCADを構え、殺意を込めて達也へと向ける。

 

「アナタも六道だと言うのなら、捕縛あるいは排除の対象よ。

 命が惜しければ大人しく投降しなさい」

 

「……はぁ……」

 

「っ、何よ、その態度!」

 

目を伏せ深々とため息をついた達也に、苛立ちを込めてリーナが叫ぶ。

 

「呆れもするさ。当主にあれだけ脅されて、まだ力尽くでどうにかなると考えているとは」

 

「なんですって!?ワタシは、十三使徒の……!」

 

「それがどうした」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

開かれた達也の眼から放たれた鋭い眼光がスターズの魔法師たちを射抜く。

彼の視線にもまた、殺気が込められていた。苛立ちを抱えていたのは彼も同じだ。

六道は彼らの恩人であり保護者。彼等兄妹がようやく手に入れた安息の居場所。

そこに土足で踏み入り、守るべき新たな家族を奪おうとする。

 

目の前の連中は敵だ。敵は、全て排除する。

 

「吠えるなよ、たかが『戦略級魔法師』風情が。

 教えてやる。六道の名を背負うとはどういうことか。

 ……そして貴様らの身の程をな」

 

達也が天神武装を大きく燃え上がらせる。

憤怒の炎が彼の全身を包み、そして実体となった。

 

 

 

「天神武装……『鬼相纏鎧』」

 

 

 

それは鬼の顔を持つパワードスーツ。

六道の扱うオリジナルとは違い、達也の体形に合わせた細身の全身鎧。

だがその特性は同じく『熱の吸収と出力への変換』。

 

「武装の瞬間装着!?そんな技術まで持っているの……!?」

 

これが科学によるものと誤解しているリーナたちを放置して、達也は目の前で舞い散る木の葉の一つを掴み、握りつぶす。

 

 

「『質量爆散』」

 

 

そしてたった一枚の木の葉を膨大な熱エネルギーへと変換し余すことなく鎧へと吸収する。

鬼人の背中の炎が大きく燃え上がり、鎧の隅々まで力がいきわたる。

併用する強化魔法により、己の思考速度を極限まで強化した達也は。

 

 

 

ドォォン!

 

 

 

スターズの集団のど真ん中を駆け抜けた。

音速を超えたことで生じるソニックブームが、人間をまるでボーリングのピンのように吹き飛ばす。

 

「がっ……はっ……!?」

 

「ふむ、まだ速過ぎて対応しきれないな。もう少しスピードを落とすか」

 

振り向いた達也が目にしたのは、たったの一合で全滅したスターズの精鋭部隊たち。

かろうじて意識があるのはリーナくらいで、既に絶命している者もいる。

 

「……やれやれ」

 

鬼人が腕を振るうと白い炎がほとばしり、包み込まれた人間たちが困惑しつつも起き上がる。

 

「っ!?痛みが……これが、回復魔法……一体どういうつもり!?」

 

「なに。偉大な当主に倣おうかと思ってね」

 

達也が思い起こすのは、入学間もない頃の第一高校での騒動。

剣道部と剣術部を相手にした、『正体不明』六道リンネの大立ち回り。

 

「壊して治して壊して治して、また壊してまた治す」

 

「「「「「!?」」」」」

 

それは効率的な『心のへし折り方』。

 

「まだこの大きすぎる力に慣れていなくてね。

 新たな分解と再生を試すには、お前たちはちょうどいい練習台だ。

 ……簡単に駄目になってくれるなよ?」

 

「ひっ……」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「ようこそ、六道の地へ」

 

「「「!?」」」

 

ほぼ同時刻、深雪もまたもう一方の侵入者の前に立ちふさがっていた。

武装した軍人や魔法師の前でもその余裕を崩すことなく、優雅なカーテシーを披露する。

 

「お客人であれば丁重にもてなさぬわけには参りませんが、どうやら皆さまはアポイントメントを取っていらっしゃらないご様子。どうかお引き取りくださいませ」

 

「司波、深雪……?馬鹿な、『四葉』がなぜここに……!?」

 

驚愕の声を上げたのは国防軍に混じって彼らを先導していた、七草弘一の側近である名倉という男。

彼はどうやら弘一から『司波兄妹』が『四葉』と聞き及んでいたらしい。

弘一は深雪を見ただけで『四葉深夜の娘』と確信していたが、実際に四葉の周辺を調べて確固たる証拠を掴んだというわけではなかったので、『ブック・オブ・ジ・エンド』の改変対象から外されていたようだ。

 

「……四葉?なんのことでしょう。

 私は『六道』。『六道深雪』です」

 

「っ、六道だと!?」

 

「えぇ、ご理解いただけましたか?

 では改めて、お引き取りを。

 でなければ皆様方を侵入者として処断せねばなりません」

 

「「「…………」」」

 

返答は無言で向けられた無数のCADと銃器の銃口だった。

 

「仕方ありませんわね……では、お掃除させていただきます」

 

いつの間にか深雪は真っ白な刀を持っていた。

正体は分からないがおそらくCADだと認識した魔法師と軍の兵士たちは攻撃を開始しようとした。

 

だが少女はそれよりも早く、臆することなく宣言する。

 

 

 

「天神武装。『白霞罸(はっかのとがめ)』」

 

 

 

瞬間、全てが凍り付いた。

魔法の源である想子と霊子すら動きを止める世界で、残された巨大な氷塊の中には、武器を構えた勇ましい姿と表情のままの兵士たちが閉じ込められていた。

 

 

「おやすみなさい。全てが終われば六道当主が起こしてくださるでしょう。

 ……いつになるかはあなた方の主次第でしょうが」

 

 

純白の髪をなびかせ真っ白な装束を身に着けた深雪が、冷酷な言葉で突き放す。

だがその声が氷像と化した『モノ』に届いているはずもなかった。

 




・天神武装『鬼相纏鎧』

達也の天神武装。
強力すぎて使い勝手の悪い『質量爆散』の活用法を考えていたところ、相談を受けた六道により己の武装の模倣を提案された。
既に格闘技を修めている彼の動きが阻害されぬよう、筋骨隆々だったオリジナルと比べて細身の体形になっている。
達也自身が手軽に膨大な熱量を用意できるため、活動時間は実質無制限でその出力は天井知らず。
魔法ではなく単純な『パワー』だけで、軍も魔法師も国家でさえも等しく破壊し尽くす暴力の権化。

・天神武装『白霞罸』

深雪の天神武装。
六道となって一層強くなった兄の隣に立つ力を求めて六道に相談し、死神の世界の『朽木ルキア』の卍解の模倣を提案された。
発動は一瞬のみだが最大出力はその分高く、全力の達也ですら氷漬けにしてしまえる。


普通ならゆっくりと習熟し己に適した武装を模索するところですが、達也と深雪は六道の因子を受け継いだため天神武装に一気に適合してしまい、あとは望む武装をイメージして具現化するだけという段階に達してしまいました。
よって二人は手っ取り早く、六道の膨大な引き出しから合いそうな物を選び取ることにしました。
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