『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第24話

「おう、待たせたなやちる」

 

「剣ちゃん!それと……」

 

「くそっ……離せ、更木!」

 

「わんわん!」

 

「『わんわん』!?」

 

東仙と狛村を倒した剣八が、狛村を引きずってやちると合流した。

 

「東仙の野郎はコイツとやり合ってるうちに逃げやがった。

 できりゃあアイツの方を抑えておきたかったんだが……。

 っと、やっぱもう始まってやがるか」

 

剣八は狛村を抑え込みつつやちるの隣に座り、小高い丘の上から眼下の戦いを見つめる。

 

「……すげぇな」

 

「うん、すごいよ」

 

「元柳斎殿……!」

 

護廷十三隊総隊長と、旅禍の少女が戦っていた。

 

山本の卍解は周囲への被害が大きすぎるので安易に発動できない。

よって山本は始解、隣互は卍解で戦うが、それでも圧倒的戦闘力の差は覆せない。

千年以上研鑽を続けた最強の死神の名は伊達ではないのだ。

それを理解している隣互は最初から、まともな方法で戦おうなどとは思わなかった。

 

取り込んだ双殛の熱と、相手の山本が放つ熱を卍解の発動と維持に当てて霊力を節約。

静血装による防御を頭部と臓器などの重要な部位に絞り出力を強化。

負った傷は回道で即座に修復。

手足を切り離されても滅却師の技術である乱装天傀で操り、戦いながら断面を無理やり合わせて強引に接合。

斬られても斬られても、彼女は倒れない。

 

「剣ちゃんみたいだね!」

 

「確かになぁ……アイツと『剣八』の名を懸けてやり合うのも面白そうだ。

 ……おっと」

 

剣八は無理やり動き出そうとした狛村を抑え込む力を強める。

 

「楽しそうに喧嘩してんだから横やり入れようとすんじゃねぇ。

 俺だって我慢してんのによ」

 

「ぐぅ、喧嘩だと!?楽しむだと!?

 ふざけるな!儂が元柳斎殿をお助けせねば!!」

 

「だぁから、邪魔すんなっつってんだろ。

 じじぃを良く見ろ」

 

「……!?」

 

山本は……笑っている。

彼は加減など一切していない。一刻も早く隣互を殺すつもりで刀を振るっている。

しかし一向に倒れない彼女を前に苛立ちを募らせるどころか、少しずつ口角が吊り上がっていく。

 

「おじいちゃん楽しそう!」

 

「莫迦な……なぜ、この状況で……!?」

 

「じじぃも莫迦の一人だってことさ。

 むしろここまで良く我慢したもんだぜ。

 肩書、立場、称号。雁字搦めで己の力を振るう機会もなけりゃあ鬱憤は溜まる。

 それを無視して真っ向から挑んでくる莫迦が現れたとなれば……滾んねぇわけがねぇよなぁ」

 

「……」

 

「こりゃアレだ、『喧嘩友達』って奴だ。

 神輿として担いでくれる奴ばっかりじゃあつまんねぇ。

 男にゃ競い合ってぶつかり合って、時々酒でも酌み交わす莫迦が必要なのさ」

 

「隣ちゃん女の子だけどねー」

 

「がはは!そういやぁそうだった!」

 

もはや狛村は反論できなかった。

なぜなら彼らの言う通り、山本があまりに楽しそうだったから。

どれほど己が彼に忠義を尽くしても、あのような笑顔を見せてくれたことはなかったというのに。

 

「……強く、なりてぇなぁ……」

 

「……あぁ」

 

狛村は剣八の呟きに、無意識に同意してしまった。

 

そんな彼らの会話は山本にも届いていた。

普段なら戯言をと怒鳴りつけるところだが……否定しきれない自分がいた。

瀞霊廷へと侵入し、部下を次々と襲い、ついには双殛まで奪い取った憎むべき悪であるというのに、この少女はどこまでも武人だった。

死力を尽くして最強たる己へと挑んできた。

認めよう。久方振りに心躍る時間であったと。

 

しかしそれも間もなく終わる。

妙な力と恐ろしい卍解によりここまで粘られてしまったが、すでに彼女の霊力は枯渇寸前。

瞳の焦点が定まっておらず、呼吸はか細く、強引に繋げた手足は歪んでいる。

 

「黒崎隣互よ。まったくもって見事である」

 

山本は彼女への敬意と感謝を込めて、己の全力にて葬ると決めた。

一瞬だけならば尸魂界への影響も大きくはないだろう。

幸い付近にいるのは……余波でくたばるような連中ではない。

 

「貴様の名、我が胸に刻もう。

 そして貴様もまた、その身に焼き付け散るがいい」

 

山本の霊圧が爆発的に増した。

まさかと思い、狛村と剣八たちは急いでその場を離脱した。

隣互には余力などなく、霞む目で静かに相手を見つめている。

 

「……卍解」

 

それは尸魂界を滅ぼしうる究極の卍解。

 

「『残火の……』」

 

その名が宣言される直前に。

 

『護廷十三隊各隊長及び副隊長・副隊長代理各位、そして旅禍の皆さん!』

 

脳内に声が響き、動きを止めた。

処刑場に参列しなかった四番隊の副隊長、虎徹勇音の声だ。

 

『これは四番隊隊長卯ノ花烈と十番隊隊長日番谷冬獅郎、および各副隊長からの緊急伝信です。

 どうかしばしの間ご清聴願います。

 ……これからお伝えすることは、すべて真実です』




主人公をヨイショしすぎた感はありますが……同じ炎熱系の斬魄刀かつある意味自分を超える能力を見せ、全力を振るう機会もなく鬱憤溜まってる身に武人として真っ向から挑んできて、しかも普段の山本総隊長は子供には優しい好々爺らしいから、総合すると好感度爆上がりするかなと。
とはいえ卍解は我ながらやりすぎ……いい感じに盛り上げようとして盛りすぎました。
『長時間解放し続ければ尸魂界自体をも滅ぼしかねない』設定らしいので、周囲に誰もいない一瞬くらいなら使う可能性もあるかなと。
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