そしておちゃらけていても成績優秀であり、サスケの数少ない友人というポジションなのでサクラからの敵愾心もありません。
アカデミーの卒業生は男子・女子合わせて27名。
今後は三人一組で班を作り、担当上忍が一人宛がわれることとなる。
そして本年度の班分けをどうするかで、里の上層部は揉めに揉めた。
「やはり例年通り、戦力が均等になるように……」
「ですがこの二人を分けるのは……」
議論の中心は卒業生のツートップ、うちはサスケとうずまきナルトの扱いだ。
忍術ではサスケが、体術ではナルトが勝り、座学の成績もそれなりに高い。
普通に考えるならこの二人は別の班にするべきだ。
だが彼等は友人であり修行仲間であり何よりライバル。そして他の卒業生と比較して突出しすぎている。
別々の班にしてしまうと互いに競い合う相手がいなくなり、二人の成長は鈍化してしまうだろう。
うちは族長うちはフガクの息子であり悲劇の抜け忍うちはイタチの弟。
四代目火影波風ミナトの息子であり九尾の人柱力。
どちらも木の葉の里の未来を引っ張っていくことになる優秀な忍びの卵だ。そんな彼らを腐らせていいのか?
「二人をまとめるしかないだろう」
最終的に五代目火影である綱手の鶴の一声により、サスケとナルトは同じ班にすることが決まった。
後は三人目と、担当上忍を誰にするか。
バランスを考えればくノ一から選ぶべきである。
更に言うなら男子のツートップがいる班に加えるのだから、何か一つの分野だけでも彼等に見劣りしない者が望ましい。
候補は二人、『春野サクラ』と『日向ヒナタ』。
前者は座学だけならばサスケとナルトを超える天才で、後者は女子の中では総合成績が最も高く男子を含めてもサスケたちに次ぐ第三位。
加えてヒナタはナルトが戻ってきてから彼らと共に修行をしている姿が見受けられている。
班での連携を考えれば彼女にすべきとの意見もあったが、結局はサクラが選ばれた。
理由は担当上忍への負担。
本年度のトップスリーが集まり、しかも全員がやんごとなき血筋となれば流石に面倒が大きくなりすぎる。
その点、サクラは一般家庭出身の普通の女の子だ。これが決定打となった。
(……ま、男子二人だけでも大変なことになりそうだけどね)
ナルトたち3人……第七班の担当となった『はたけカカシ』が彼等の下に向かいながらぼやく。
だが面倒くさがっていてもやる気に満ち溢れている。
今まで担当した全ての卒業生を不合格としてきた彼だが、今回は命じられてイヤイヤではなく自分から第七班の担当を志願したのだ。
ナルトとサスケの実力は既に下忍レベルを大きく逸脱していると聞く。
特に五代目火影と自来也の信頼も厚い。よほどのことが起きない限り『全員不合格』とはならないだろう。
そして今度こそ、カカシは先生となる。
カカシはかつて波風ミナトを担当上忍とし、うちは一族の少年を友としていた。
そのどちらももとっくの昔に失ってしまったが。
いや、三人一組と担当の計4人。だが生き残っているのはもはやカカシ一人だけだ。
(……先生。リン。オビト。
オレもようやく、少しだけ前に進めそうだよ)
亡き盟友たちに思いを馳せ立ち止まったカカシは。
そのまま遅刻した。
「いくらなんでも遅すぎだってばよ!
どんだけ強くてもどんだけ偉くても、『約束破る奴は最低だ』ってねぇちゃんが言ってたぞーーーーっ!!」
「そ、そうですよ!他の皆も先生もいなくなっちゃったし、『私たち何か悪いことしたのかな』って不安だったんですからね!?」
「………………チッ」
「いやーー、ちょっと人生と言う名の道に迷って……はい、ごめんなさい」
正論をぶつけられ、冷たい視線を向けられ、流石にちょっと反省して素直に謝罪した。
アカデミーから場所を変えて屋外。カカシは子供たちに気だるげに語り掛ける。
「まずは、自己紹介してもらおう」
「……どんなこと言えばいいの?」
「そりゃあ好きなもの、嫌いなもの、将来の夢とか……ま!そんなのだ」
「だったらまずそっちにお手本見せてほしいってばよ」
「あー、オレか?オレは『はたけカカシ』だ」
「「っ!?」」
「えっ、えっ?どうしたのサスケくん、ナルトも……」
「アンタが写輪眼使い、『コピー忍者』のカカシ……!」
「『白い牙』って呼ばれてたスゲー忍者の息子で、四代目火影の教え子だった奴だってばよ!」
「そ、そんなすごい人なの!?見た目胡散臭いけど……」
「……ほっほぉ~~う。ご存知とは光栄だ」
3人は遅刻してきた頼りない上忍に対する警戒度を引き上げ、カカシもまた子供たちへの興味を更に強めた。
(写輪眼はともかく、まさか父さんのことまで把握しているとは……どうやって知った?)
確かにカカシの父は高名な忍びだったが、それは一時期の話。
最期は仲間を庇って重要な任務を失敗し、里中から責められ石を投げつけられるような惨めなものだった。
当時既に大人だった忍びでもなければ父の事など覚えていないはずだが。
「知ってるならオレの自己紹介はもういいな。そんじゃお前らの番だ」
「私、結局名前しかわかんなかったんだけど……」
「オレさ、名前はうずまきナルト!
好きなものはラーメンとねぇちゃん!
嫌いなものはお湯を入れてからの3分間と嘘つきや約束破る奴!
将来の夢は……『火影』になる!そんでこの忍びの世界を変えてやるんだってばよ!」
(……世界を変える、か。大きく出たな)
「オレはうちはサスケ。好きなものは……母さんが作るおむすびかな。
嫌いなものは納豆と、ウザイ奴だ。
将来の夢、なんて言えるような綺麗なモンじゃないが……オレの目標はある男を倒し、超えることだ」
(……やはり知らされていない、か)
「そんじゃ最後、女の子」
「私は春野サクラ。好きなもの……ていうか人……将来の夢は……キャーーーーッ!」
「…………?」
(この年頃の女の子は忍術よりも恋愛だな)
「よし、自己紹介はそこまでだ。明日から任務やるぞ。
……『サバイバル演習』だ」
「「…………」」
「演習?そんなの忍者学校で散々……」
「どうやら、ナルトとサスケは知ってるようだな」
「いや私はわかんないんですけど!?」
「ほら、説明してやんな」
「チッ……いいか、サクラ。この演習が本当の『卒業試験』だ。
失敗した奴はアカデミーに戻される」
「えっ!?」
「合格率は3割……オレらの代の卒業生は27人だから、下忍になれるのは多分9人までだってばよ」
「えぇっ!?」
「そのとおり!いやー、本当に優秀な奴らだ!説明の手間が省けて助かるよ」
「演習内容までは知らねぇ。担当や年代によって変わるんだろ?」
「今の内に明かせることはこのプリントに書いといたから読んどいて。
それと遅刻しないよーに。
あと朝飯は抜いてこい。……吐くぞ」
「『吐く』って……そんなにキツイの!?」
プリントを手渡したカカシはさっさと立ち去ってしまった。
ナルトとサクラは真剣な眼でプリントに何度も目を通し、サスケは読み終えた紙をグシャリと握りつぶした。
そして翌朝。
カカシは遅刻した。
原作16巻にて、カカシは『いつも慰霊碑の前でオビトの事を思い遅刻してしまう』という描写があります。
ただサバイバル演習は慰霊碑のある場所で行っているため……この回だけは一切の言い訳のしようもない遅刻ということになりますよね。