2つだと2人だけで協力して終わりになっちゃうんですよね。
再びナルトたちに説教されるが、カカシは必死に聞こえない振りをしながら時計を置き何かを掲げる。
「ここに鈴がある。これをオレから昼までに奪い取ることが課題だ。
奪えなかったやつは昼飯抜き。そして任務失敗ってことで失格だ。
学校に戻ってもらうことになる。つまり……」
「鈴は、一つしかないから……!?」
「合格率1/3以下ってそういうことかよ!?」
最初から3人の内1人しか合格できない仕組みであり、下手をすると全員失格。
敵はカカシだけではない。他の二人も同時に出し抜かねばならない。
「じゃ、よ~~~い……スタート!」
合図と同時にサスケとサクラが姿をその場から消える。
忍びたる者、基本は気配を隠し隠れるべし。
「……なんだけど」
「いざ!尋常に勝~~~~~~~負!」
ナルトは動かず、堂々と正面からの戦いを望んだ。
「あのさぁ、お前ホントにアカデミーの成績よかったの?」
「へっ!忍者の基本くらいわかってるっての!
けど合格できるのが一人だけなら、他の二人が出し抜く準備を済ませる前にソッコーで終わらせんのが一番だってばよ!」
「む、一理ある」
「それにオレがなりたいのは、どんな壁も策も正面からぶっ壊していく強さを持った忍びだ!
そういうわけで……いきなり全力でいくぜ!」
ナルトは指で十字を組み、己が最も得意とする忍術を発動する。
「『多重影分身の術』!」
ボボボンッ!
「ほぉ、噂にゃ聞いてたが見事なモンだ。
密度も数も十分。確かに並みの下忍は超えてるね」
「「「うぉりゃぁぁぁーーーーーっ!!」」」
10人近いナルトが一斉にカカシへと襲い掛かる。
その動きも中々のもの。体術トップは伊達ではないようだ。
(ま、それもあくまで『アカデミーの生徒』としてはだ)
里の上忍、更にその中でも選りすぐりである凄腕の忍者であるカカシには通じない。
強い衝撃を受けて影分身は一体、また一体と消えていく。
「……ん?」
「はぁぁぁぁぁーーーーっ!!」
良く見ればおそらく本体であるナルトは最初からその場を動いておらず、左腕を引いて半身になりチャクラを集中している。
印は結んでいない。ただ彼が生まれ持つ膨大な量のチャクラを左腕一本に集約している。
(なんだ!?チャクラが実体を持つほど高密度に……!?)
「へっ!これがねぇちゃんがオレに教えてくれた、数少ない技の一つ……!」
ナルトは影分身で時間稼ぎをしている間に作り上げた、巨大なチャクラの左腕を掲げる。
「『帛手割砕』だってばよぉ!!」
振り下ろした腕は勢いよく伸び、影分身の処理を終えたカカシへと迫る。
「くっ!」
ドォォォン!!
叩きつけられた腕は地面に巨大なひび割れを作った。
速度はもちろん、それ以上に威力がすさまじい。カカシから見ても脅威だ。加えて。
キンキンキンッ!
「なっ!?」
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
カカシが退避しながら投げた手裏剣はわずかに輪郭を揺るがすこともできず全て弾かれた。
『速さ』よりも『力』よりも『頑強さ』に優れた腕が今度は横薙ぎで振るわれ、周辺の木々を破壊しながらカカシへ迫る。
カカシは再び進む方向を変えることで軌道上から逃れるが、すると異形の左腕は掌を広げ大地を力強く掴む。
「もらったぁーーっ!」
「っ!?」
左腕を起点にしたスイングバイによりナルトの本体が背後からカカシへと迫る。
チャリン
「くそっ、惜っしい!」
ナルトがすれ違う瞬間、カカシは身をよじって攻撃を躱す。
だがその右腕がカカシの腰にぶら下げた鈴にかすった。
つかみ取るまではできず音を鳴らすに留まったが、確かに触れた。
(忍術じゃなく、馬鹿みたいな量のチャクラを圧縮して……!?
なんて力任せで頭の悪い技だ!忍びが使うもんじゃないだろ!?)
最近は温い任務ばかりでなまっているという自覚はあった。
だがそれでも所詮下忍候補でしかもまだ12歳の子供。
どれほど優秀であろうと後れを取るはずないと、さっきまでは思っていた。
(それにライバルってことはサスケもこのくらいに……冗談じゃないぞ!?)
流石に上忍である自分を出し抜けるほどではない。『一人ならば』だ。
ナルトを倒せば終わるわけでなく隙を突いてくるだろうサスケとサクラにも対処せねばならない。
というかナルトがこれなら同格のサスケと連戦すれば敗北する可能性すらあり、それを乗り切っても余力がなくなりサクラに出し抜かれて終わる。
この試験において、担当上忍は基本的に『鈴を奪い取られてはならない』というのに。
(このままでは……ッ!)
追い詰められたカカシは迷うことなく、忍びとして最も合理的な行動を取った。それ即ち。
シュッ
「…………へ?」
シ~~~~ン……
「……逃げたァ~~~~~!?!?!?!?」
――――……
「……ダメだ、まったく気配を感じねぇ」
「どーーすんのよナルト!アンタのせいだからね!!」
「うぅぅ、ごめんってばよぉ……」
ターゲットが見つからないのではどうしようもない。
カカシを見つけ出すまではとサスケとサクラも協力するしかなくなったが、しかし見つかるはずもない。伊達に上忍を務めてはいないのだ。
もし第七班の3人目が春野サクラではなく日向ヒナタであったなら、白眼によりあっさりと見つけ出されていただろう。カカシは九死に一生を得た。
「まずいな……もう時間がねぇ」
「今からカカシ先生を見つけ出して、その上で鈴を奪うだなんて……!」
もはや合格は絶望的。このままでは3人揃ってアカデミーに逆戻りだ。
「う……ぐぐぐ……あ~~もぅっ!しょうがねぇってばよ!!」
ナルトは覚悟を決めた。せめてあのスカシた奴に一矢報いてやると。
(冷静になったら、我ながら大人げなさすぎだよなぁ)
カカシが隠れ潜んでいるのは何と地面の中。
流石に息苦しいが訓練は積んでいる。正午の合図が鳴り響くくらいまでなら問題なく維持できる。
(『制限時間内に本気で隠れてる上忍を探せ』って、アカデミー卒業生にやらせていい試験じゃないし。
こりゃ後で絶対綱手様から怒られるよなぁ……ん?)
なんだか地上が騒がしくなってきた。振動が伝わってくる。
(一体何が……)
「「「「「うぉぉぉーーーーーーっ!!!!!」」」」」
ドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタ
「いたか!?」
「いねぇ!」
「こっちもだ!」
「足跡は!?」
「ねぇぞ!」
「動いてねぇのか!?」
(!?!?!?)
残るチャクラ全てを費やして、演習場を埋め尽くす勢いで増殖した影分身ナルト軍団が山狩りを敢行していた。
「こんだけ暴れても見つからず動いてねぇなら、きっと近づいても見えねぇ場所だ!」
「木の上とか藪の中じゃねぇってことだな!?」
「洞穴とかあったか?」
「ねぇってばよ!」
「んじゃ穴でも掘ってるとか!」
「なるほど……ってこの辺の土微妙におかしくねぇ?」
「言われてみりゃ踏んでる感じも微妙に……」
(まずっ!?)
ボコォッ!
「脱出!」
「「「「「いたぁーーーーっ!!!!」」」」」
最低限のチャクラしか込められていない分身体は脆く、カカシが地面を吹き飛ばす余波に巻き込まれ大勢が消し飛んでしまった。
だが『カカシの居場所を見つける』という役目は果たした。
演習場全体に散っていたナルト軍団が叫び声を聞いて次々と集まってくる。
とはいえそちらも大した力は持っていないのでカカシにとって問題ではなかったが、数が多すぎるので撃退よりも制限時間までの逃げ切りを選択した。
そして追い立てられたカカシの目の前にナルトではない何者かが立ちはだかる。
「っ、サスケ!?」
サスケは凄まじい早さで印を組む。……馬、虎、この忍術は。
(火遁・豪火球の術!?)
ここまでカカシを追い詰めたナルトのライバルであり、ナルトよりも忍術が得意だというサスケが使う術となれば、カカシと言えど無視できる威力ではあるまい。
彼は後ろを追いかけるナルト軍団から目の前のサスケへと意識を向ける。
そして大きく息を吸ったサスケは。
ボフンッ
「べーーーーーっ!」
「なっ、サクラっ!?」
シュッ
チャリンッ
「しまっ……!」
サスケがサクラに変化し、突如速度を上げカカシから鈴を奪ったナルトの一体がサスケに変化する。
いや逆だ。サクラがサスケに変化してサスケの動きを完璧に模倣しカカシの注目を惹きつけ。
ナルトの影分身の一体に変化していたサスケがカカシの隙を突いて背後から迫り鈴を奪い取った。
ジリリリリリリリリ!!
そしてカカシがセットした時計が正午を告げる。
「っしゃーーーんなろーーー!!」
「出し抜いてやったってばよぉーーー!!」
「……フン!」
最初の大暴れで力を使い果たしたナルトと、他の二人との力量差を自覚したサクラは、『自分たちではカカシから鈴を奪うことができない』という事実を受け入れた。
だから唯一勝機を残したサスケを勝たせるために動いた。
たった一人の合格者枠を、忍びになれる可能性を、仲間のために費やした。
(これだ……この『チームワーク』が見たかった!)
意図的に対立を煽り足を引っ張り合う状況を誘発した上で、それでも己の利害を捨てて仲間のために戦える者。
仲間を大切にする者。それこそが『火の意志』を継ぐ木の葉の忍びを名乗るに相応しい。
「お前ら、3人とも合格♪」
尚、遅刻した件と演習中にガチ逃げした件はしっかり綱手に伝えられカカシはガッツリ怒られた。
ナルトは原作より焦っておらず、サスケとも既に友達で、サクラは最初からサスケ至上主義。
それぞれの技術を生かしたチームワークを考えたらこんなのになりました。