『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第25話

虎徹勇音から伝えられたのは藍染の陰謀と、市丸・東仙の裏切り。

中央四十六室はすでに殺害されており、朽木ルキアの処刑は彼の偽りの命令により行われていたこと。

藍染の斬魄刀の能力は完全催眠。

その力を使い、藍染は遥か昔から暗躍し尸魂界を脅かし続けていたこと。

 

「……ようやく尻尾を掴んだみてぇだな」

 

「!?貴公、知っておったのか!?」

 

「あぁ。俺らが暴れている隙に、藍染の野郎が黒幕だっつう証拠を掴むのが、卯ノ花の役目だ。

 どうやら、日番谷のガキも居合わせてたらしいな」

 

「……なぜだ……東仙!!」

 

山本の卍解発動を察知して離れた二人にも当然伝信は届いていた。

 

「……こういう、ことか」

 

「あぁ……此度の一件だけではない。

 浦原と我が師の罪も、父の失踪の原因も、すべては藍染が仕組んだこと」

 

隣互は倒れ伏したまま山本の呟きに答える。

彼女は虎徹の声が聞こえた瞬間に、前のめりに倒れこんだ。

山本もすでに始解を解除している。

 

「藍染の術中に落ちた尸魂界の死神たちでは対処ができぬ。

 故に浦原は外部の存在である我らに託した。

 しかし真っ向からそなたら護廷十三隊に挑んで勝てるはずもなし。

 よって儂は少しでも奴の思い通りにならぬよう瀞霊廷をかき乱しつつ、藍染に組している可能性の少ない者たちに接触して助力を求めた。

 藍染の遺体が偽物であると証明できたことで、卯ノ花・京楽・更木・浮竹が儂らに協力してくれたのじゃ」

 

隣互は震えながらも腕で体を持ち上げ、うつ伏せから仰向けに姿勢を変えた。

 

「貴公が黒でないことはわかっておった。

 そして藍染の遺体が偽物であるという証明程度では、説得には不十分だとも。

 残念なことに、儂はまだまだ口車が達者ではなくてな。かかか」

 

それは痛烈な皮肉だったが、事実だった。

卯ノ花が明確な証拠を手に入れたと確信し、こうして瀞霊廷全土に向けて宣言しなければ、戯言をと切って捨てたことだろう。

 

「京楽……浮竹……」

 

山本が我が子のように可愛がっていた二人は尸魂界に弓引いたのではなく、本当に尸魂界の平和のために戦っていたのだ。

それを信じることができず頑なに譲らなかった自分を恥じるばかりだ。

 

「何のためかは知らぬが、奴が何らかの目的があって朽木ルキアを殺そうとしていることは事実。

 僅かでも彼女に詫びる気持ちがあるのなら、決して死なせるな。

 ……早く行け。すまぬが儂は、今しばらくの……」

 

言うだけ言って、隣互は目を閉じた。

気を失ったようだ。むしろここまで良く持たせたというべきだろう。

気付けば山本の後ろに、離脱していた狛村たちが戻ってきていた。

 

「……狛村、更木。供をせい」

 

「御意!」「へっ」

 

山本は朽木ルキアの霊圧と、そのすぐ傍に藍染の霊圧が現れたことを感じ取り、視線を向ける。

 

「護廷にあだなす……逆賊を討つ!!」

 

 

 

 

同時刻、双殛の丘。

 

「……聞こえたか、白哉」

 

「……あぁ」

 

一護の勝利によって決着がついた彼らにも、虎徹の伝信は届いている。

 

「姉貴が言ってた、ルキアを殺そうとしてる本当の黒幕……それが、藍染ってやつだったってことか」

 

「そうか……(けい)の姉はそこまで掴んでいたか」

 

正体を隠しているようだったが、白哉は瀞霊廷を乱す『ヒノカミ』とやらが何者かを察していた。

それでも確証が持てないから、事実だとしても何も変わらないからと自分に言い訳をして、今日まで誰にも推察を明かさなかった。

 

「……旅禍の少女よ、すまぬが私の傷も癒してもらいたい。

 刀を握れる程度で構わぬ」

 

「あ、はい!」

 

「何を斬るつもりだ?」

 

「決まっている。

 掟を利用し、ルキアを奪わんとする……護廷の敵をだ」

 

「……行こうぜ」

 

 

 

中央地下議事堂。

 

「……各戦力、藍染へと向かっているようです」

 

「ちゃんと言葉は届いたようですね……どうですか?日番谷隊長」

 

「わりぃな……だいぶマシになった」

 

卯ノ花たちは姿を現した藍染たちと相対し、日番谷は彼から雛森を護ろうとして重傷を負った。

藍染たちが転移でその場から消えた後、卯ノ花は副隊長の虎徹に護廷の死神達への連絡を任せ、彼の応急処置を行っていた。

 

「ごめん……ごめんねぇ、シロちゃん……!」

 

「……これくらい、どうってことねぇ」

 

雛森が藍染に攻撃されたのは、卯ノ花から聞いた話を信じ切れずに、生きていた藍染の姿を見て思わず駆け寄ってしまったから。

そして日番谷は突き付けられた刀と彼女の間に割り込み、その身を盾にした。

 

「勇音、彼らを任せます。私は藍染のもとへ」

 

「!?待て、俺も!」

 

「四番隊として、重傷者を戦場へ連れていくわけには参りません。

 雛森副隊長もここに。

 今のアナタ方は、戦えない」

 

「あ……の、藍染、隊長は……」

 

「……あれは我らの……アナタの敵です。辛いこととは思いますが、受け止めなさい」

 

「う……あ……あぁぁ……っ」

 

「雛森……ちくしょう!」

 

「……松本副隊長。アナタは?」

 

「行きます。隊長たちの代わりに、あたしが見届けます」

 

「……急ぎましょう」




原作との差異

・山本元柳斎

浮竹たちがあいまいな正義でなくちゃんと尸魂界の正義を考え動いていたので自分の不覚を痛感。
必死に抗っていた隣互をボロボロにしてしまったことで罪悪感も激増。
反動で藍染への怒りが天元突破。

・朽木白哉

最初から卯ノ花が証拠集めに動いていたため、連絡が少し早い。
なので事態が発覚したのは敗北を認めた直後。まだ一護の傍にいた。
この作品では彼は現世で一護を傷つけておらず、一護も白哉なりにルキアを救おうしていたと恋次から聞いていたため、敵である以上に友人の兄と認識されている。

・雛森桃

卯ノ花から真実を告げられても受け入れられず。
しかし議事堂は卯ノ花の予想通りの惨状で、変貌した藍染を暫くの間目の当たりにすることになったため、原作よりショックが少な目。
日番谷に庇われ、彼らの間のわだかまりも消える。
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