ナルト、サスケ、サクラは晴れて木の葉の忍びとなり、第七班として活動していくことになったのだが……下忍になったばかりの下っ端に任せられる任務などたかが知れている。
この世界における忍びとは『金さえもらえば何でもやる傭兵』であり、里は傭兵団を抱えた一つの街。
外部や火の国から依頼される要人の護衛任務や悪事を働く武装集団の殲滅などの華々しい任務もあれば、里の忍びでない一般市民から依頼される畑仕事の手伝いや失せもの探しや隣町までのお使いなど、その辺の子供でもできそうな任務もある。
当然ながら新人に与えられるのは後者だ。
一応これにも意味はある。
チームメイトになったばかりの戦友や担当上忍との交流を深め、互いにどんな性格でどんな能力があるのかを把握したり。
小銭稼ぎでも確かに報酬が支払われることで自分が忍びであることを自覚させようとしたり。
任務を通じて『木の葉の忍びになった』と里の民に知ってもらう顔繋ぎの期間であったり。
『忍者』というものに夢を見ていた少年少女には受け入れがたいだろうが、確かに意味はあるのだ。
よって第七班にも同様に最底辺のDランク任務が割り振られるわけだが……。
「……なぁナルト、もう少しゆっくりしてもいいんだぞ?」
「へへ~ん!立ち止まってる暇なんてねぇってばよ!
オレってばすぐに火影になんなきゃいけねぇんだからな!」
ナルトたち第七班は凄まじい勢いでDランク任務を消化していった。
このままでは他の下忍に割り振る任務が無くなってしまいそうなほどに。
主戦力はナルトだ。元々イタズラ小僧だった彼は手先が器用で、旅をしている最中に色々とヒノカミに仕込まれたらしく、料理に修理に計算にとちょっとした雑用の類は一通りこなせてしまう能力があった。
それが影分身の術により数十人に増えるのだ。人手が必要な任務ならばナルト一人がいるだけでコストと時間を極限まで短縮できる。
そして調子に乗りがちでところどころ抜けているナルトのフォローを務めるのが彼を良く知るサスケであり、膨大な知識を持つサクラが知恵を貸し指示を出す。
班員はそれぞれの役割を分担しており連携も十分だ。
そして何より、里でのナルトの知名度は既に桁外れ。
彼への罪悪感を抱えた里の大人たちは少しでもナルトと和解したくて、積極的に彼と交流を持とうと第七班への指名依頼を出してくるほど。よって顔を売る必要もない。
「ばぁちゃん、ばぁちゃん、次の任務は!?
なんならもっとスゲー任務でも大歓迎だってばよ!」
「綱手様、身内びいきかと思いますが……こいつらならCランク任務でもこなせるのでは?」
同席するイルカが火影である綱手へと進言する。綱手が視線を送るとカカシも無言で頷いた。
ナルトとサスケの実力は本物だ。戦闘力だけなら中忍レベルの上位にすら食い込む。戦闘を主体とした任務ならCランクだろうと問題なくこなせるだろう。
サクラの実力がどうしても劣るが、それこそナルトとサスケがフォローすればよい。それができてこそのチームだ。
だが意を決した綱手の発言は彼らの予想の更に一歩上を行く。
「よかろう。第七班には『Bランク』の任務をこなしてもらう」
「「「はぁっ!?」」」
下忍の新米にBランクなどいくら何でも無茶が過ぎる。
イルカもカカシもナルトたちも目を剥き声を張り上げた。
「私もそう考えていたが、決心がついた。……入ってくれ」
ガラリと扉を開けて隣室から顔を覗かせた人物は、ハチマキを巻いた老人だった。
「……タズナのじっちゃん!?」
「おう!超久しぶりだのぉ小僧!」
「誰?ナルトの知り合いなの?」
「ねぇちゃんと一緒に旅してた時に波の国で会ったんだってばよ!」
「彼が今回の任務の依頼人だ。
ランクが高いので悩んだが……互いに事情を知るナルトに任せるのが良かろう」
「小僧以外にも自己紹介させてもらおうかの。
儂は橋作りの超名人、タズナというもんじゃわい。
お主らには儂が国に帰って橋を作り上げるまで超護衛をしてもらう」
「護衛?なんでじっちゃんにそんなもんが必要なんだってばよ?」
「……チィと厄介なことになってのぉ」
ナルトがヒノカミと共に波の国を訪れたのは、今から3年ほど前になるだろうか。
丁度タズナたちが暮らしている漁村が豪雨に襲われていた頃で、ヒノカミはナルトと共に災害復興に手を貸した。
タズナや彼の家族であるカイザ、イナリと仲良くなったのもその頃だ。
2年前にナルトが木の葉に戻る前にも一度顔を出し、再会を約束していた。
そんな貧しくも平和な波の国に、悪人の魔の手が忍び寄る。
世界有数の大金持ちと呼ばれ、裏ではギャングや忍びを使い麻薬や禁制品にまで手を出して財を成す極悪人。
海運会社の大富豪『ガトー』という男が波の国に目をつけたのだ。
島国である波の国は、海上交通網を封鎖するだけで富の全てを独占できる。
一年前に波の国に拠点を移したガトーは財力と暴力を使い、国そのものを支配しようとした。
「……あれ?失礼ですが、あの男は確か少し前に……」
「そう、超捕まった……丁度ふらりと波の国を一人で訪れた、ヒノカミの嬢ちゃんのおかげでのぉ」
「ねぇちゃんが!?」
綱手もガトーほどの大物があっさり捕まったのが何故か気になっていたが、敬愛する彼女らの師が関わっていたと聞いて納得した。おそらく波の国に訪れたのもガトーの悪行を察知したからだろう。
何しろ火影である自分以上の実力者。そしてヒノカミは忍びの里には近寄らないし忍び同士の争いにも不干渉を貫いているが、ガトーはただの商人だ。力の行使を躊躇う理由がない。
そして彼女が相手ではガトーがどれほどの戦力をかき集めたとしても勝ち目はない。
むしろ殺されず捕まるだけで済んで幸運だったと言えるだろう。
だが問題はその後だった。
来訪者であり余所者であるヒノカミは、ガトーの身柄と裁きを波の国の司法に任せてまた旅立った。
そして寿命が尽きるまで牢獄の中から出られるはずがなかったガトーは、大量の金を積んで波の国に交渉を持ち掛けた。
貧しく金を持たない波の国の大名は目先の大金に目がくらみ、その裏取引に応じてしまった。
「ガトーの奴は極秘裏に釈放されたらしい。
どうやら懲りずに再起するための力を蓄えておるようじゃ。
そして再起の為には、儂が今作っとる橋が超邪魔になる」
「タズナ氏が建設中の橋が完成すれば波の国までの『陸路』が出来上がるからな。
火の国との交流も始まるだろうし、木の葉の里も潤う」
そして一度繋がりができてしまえば橋を破壊する真似もできなくなる。
波の国だけでなく他国も関わるため、国際問題に発展するからだ。
犯人探しが始まればすぐにガトーに辿り着き、今度こそ打ち首だ。
「なので木の葉としては全面的にタズナ氏を支援したいのだが……里の戦力を動かすなら相応のランクとして取り扱わねばならず、当然依頼料も跳ね上がる。
ツケにするわけにもいかん。前例を作れば同じように願い出る依頼者が続出するからな」
「橋が完成すればすぐにそれ以上の利益が得られるからと、村の皆も超協力してくれたが……Bランクを依頼する額を用意するのが精一杯じゃった」
「よって中忍以下の忍びしか動かすことはできないので誰に任せるか悩んでいたが……依頼者と顔見知りであり、橋を建設するための人手としての活躍も期待できるお前に白羽の矢が立ったというわけだ。
これは火影である私から、うずまきナルトへの指名依頼となる。受けてくれるな?」
「おう!任せとけってばよばぁちゃん!」
「フン、オレらはオマケか。だがBランク……面白そうだ」
「うっ、ちょ、ちょっと自信ないんだけど……!?」
「……いや待ってください!理由は分かりましたが、危険すぎます!
ナルトたちはまだ下忍で、しかも忍びが敵なんですよ!?
保護者がカカシさん一人では……!」
「その懸念は尤もだ。よって、ジジイに応援を用意してもらった」
「え?……三代目にですか?」
今の猿飛ヒルゼンは暗部の長だ。
よって彼が動かせる忍び……綱手に促されて部屋の隅から歩み寄ってきた青年は、暗部の者ということになる。
「この男は木の葉の下忍……ということになっているが、実際の戦闘力は上忍レベルだ。
医療忍術にも長けている。万が一の事態に備えてコイツをお前たちの班に同行させる」
「よろしくおねがいします。
と言ってもあまり目立つと暗部としての今後の活動に支障をきたすから、本当にどうしようもない事態にならない限りは手を出さないからそのつもりで。
あと言うまでもないけれど、僕が暗部なのは秘密にすること。いいね?」
「へへん!出番なんてこさせねーから安心してくれってばよ!
オレ、うずまきナルト!兄ちゃんの名前は?」
ナルトが差し出した右手を、眼鏡をかけどこか胡散臭い笑顔を浮かべた青年が握り返す。
「『薬師カブト』だよ。よろしくね、ナルトくん」
カブトはダンゾウとも繋がりがあり、原作でも木の葉の暗部として活動しているようでした。
よって暗部を掌握済みである本作では彼を木の葉の忍びとして動かすことができるとします。