『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第14話 ガトー

 

水分身をあっさりと切り捨てたサスケの実力を、『確かに下忍になりたてのガキとしては高いようだ』と、再不斬は評価した。

だが水分身の力は再不斬本人の10分の1程度しかない。

それを一体倒した程度で粋がり、仲間たちの手を借りずに『一人で相手をする』などとほざいたサスケは、再不斬から見ればやはりただのガキだった。

続けて生み出した大量の水分身を殺到させればそれで片が付くと考えていた。

 

ズバババババッ!

 

だがサスケは己を取り囲む10体近い分身全てを一瞬で切り裂く。

そして顔を上げ、『三つ巴が浮かぶ真っ赤な瞳』で再不斬を睨みつけてきた。

 

「写輪眼!?こんなガキもだと!?」

 

(サスケはもう開眼してたのか!?)

 

暫くの付き合いだが碌な任務もなく、任務外での触れ合いも皆無なカカシは把握していなかったが、卒業試験であるサバイバル演習の時点でとっくに開眼済みだったりする。

あの時ナルトとの戦いがもう少し長引いていたら、隙を突いた彼に鈴を掠め取られて試験が終わっていた。カカシの逃走は実は英断であった。

 

そして今日までカカシの前で使う機会がなかったサスケの忍術が、初のお披露目となる。

 

「『火遁・豪火球の術』!」

 

「チィッ!」

 

サスケの口から吐き出された炎は再不斬としても警戒する威力であったがここは水場。

術により大量の水を操り壁としたことで火球は消滅。あたりに蒸気が充満し、再不斬が作り出した霧がより一層濃くなった。

 

「……フン、やはりガキか」

 

再不斬は音だけでターゲットの動きを察知し始末する無音暗殺術の達人。

そして写輪眼は瞳術。互いの視界を塞げば不利になるのは後者の方だ。

相性も考えずただ強力な術を放っただろうサスケを、再不斬は愚かと断じた。

 

シュバババッ!

 

「無駄だ」

 

ガキキキィン!

 

霧の向こうから大量の苦無が飛んできたが、再不斬は背中の大剣を掴んでかざし難なく弾く。

カカシを捕らえている再不斬はその場から動けないため、見えずとも狙うことはできるだろう。だが再不斬なら風切り音もあれば十分。

遠方からチマチマと攻撃を続けてきてもその全てに対処できるという自負があった。

しびれを切らして突っ込んできたところで直接切り伏せてやればよい。

武器の間合いは明らかにこちらが上。内側に入った瞬間に仕留める。そのつもりで身構えていた

 

「……!?」

 

だが再不斬はサスケの接近を許してしまった。

 

何故なら彼が気付いた瞬間には、既にサスケは己の背後にいたのだから。

 

「っらぁっ!!」

 

サスケは宙に浮いたまま、再不斬が弾き彼の周囲に滞空していた苦無の一つを蹴り飛ばす。

再不斬がこれを躱すには身を捻り、『カカシを捕らえていた水牢から腕を引き抜く』しかなかった。

 

「……ンのガキィっ!!」

 

「へっ!」

 

だがサスケは既に攻撃を仕掛けた直後に再不斬から距離を取っており。

 

ガバァッ!

 

「ぐぅぁっ!?」

 

岸にいたナルトが伸ばした巨大な腕が彼を握りしめた。

 

「なぁサスケ。『手』を出すタイミングって、今でよかったよな?」

 

「フン……上出来だ!」

 

「このォ……」

「動くな」

 

長く伸ばしているためナルトの帛手割砕は再不斬の胴を掴む程度の大きさしかなく、その力も決して強くない。

再不斬がその気になればすぐに引きちぎれるだろう。だが牢から解放されたカカシが苦無を突きつけ動きを阻む。

 

「サスケ、ナルト。よくやった。

 まさかお前らがここまでやれるとはな……嬉しい誤算だった」

 

どうやって再不斬の背後を取ったのかは知らないが、サスケが火遁を打ち出したのはカカシを捕らえたことで薄くなってしまった霧をもう一度出現させ視界を防ぎ、自身の初動を感知されないようにするため。

そしてナルトに『まだ手を出すな』と告げたのは、彼の技であるチャクラの腕を使うベストな状況を自分が整えるという合図でありナルトもその意図を速やかに理解した。

あれだけ濃密な殺気を受けて尚、ここまで冷静に動ける下忍などそうはいまい。

 

「だったら普段からちゃんとコミュニケーション取れ」

 

「部下の能力も把握できてねぇなんて隊長失格だってばよ」

 

「…………面目ない」

 

(私もそこまで知らないんだけど……!?)

 

散々カッコつけてあっさり捕まり、しかも守るべき隊員に助け出されてしまった。流石のカカシも堪えたようだ。

そして同じ班員でありこちらはコミュニケーションを取ろうとしているサクラだが、彼女の場合は実力差がありすぎてナルトとサスケの訓練を見ても何がどこまでできるかさっぱりわからないのだ。

カブトは臨時の応援なので例外である。

 

 

シュッ!

 

 

ザクザクザク!

 

「いぎっ!?」

 

「「「ナルト!?」」」

 

弛緩した空気の中を飛翔してきた何かがナルトの肩へと突き刺さる。

痛みで腕に込めていた力が緩んでしまい、再不斬は拘束から脱出して岸の木陰に立つ。

 

「しまっ……くっ!」

 

カカシは再不斬を追うよりもナルトの安否を優先し、サスケもそちらに続いた。

 

「いってぇ~~……っ!」

 

「これは……『千本』?」

 

「先生!再不斬の上に!」

 

ナルトに突き刺さっていたのは細長い針のような暗器で、再不斬が背を預ける木の上には仮面をつけた小柄な人影があった。

 

「アイツがやったのか……あの仮面は、『霧隠れ』の追い忍?いや……」

 

追い忍なら再不斬の敵であるはず。だが再不斬を捕らえていたナルトを攻撃したということは。

 

「よくやった、白。……あの写輪眼のガキの動きは見えたか?」

 

「申し訳ありません再不斬さん。ボクの観察する限りでも突然背後に現れたとしか」

 

「やはり再不斬の部下か……!」

 

情報収集に勤めさせていた『白』という少年は再不斬にとっても切り札であり、初会合でいきなり頼ることになるとは思ってもいなかった。

仮にそうなるとしても『抜け忍を狩りに来た追い忍』の振りをさせて自分を回収させる手はずになっていた。

だがチャクラの腕に捕まれカカシと小僧の二人に囲まれた状況では不可能と判断したのだろう。それは自分の失態だ。

 

「見ての通りあのガキ共、かなりやる。オレがカカシを仕留めるまで抑えろ」

 

「はい」

 

「仕切り直しか……すまんが、お前らを頼らせてもらうぞ」

 

「上等ォ!サクラちゃんとカブトにいちゃんはタズナのじっちゃんを頼むってばよ!」

 

「気を付けてね、ナルト!サスケくん!」

 

「タズナさん。ボクらの後ろから一歩も前に出ないように」

 

「う、うむ、超任せるわい」

 

「カカシ。アンタこそ、またヘマすんなよ」

 

「だいじょーぶ。流石に同じ手に二度もやられはしないさ」

 

互いに武器を向け合い一触即発の状況。誰が真っ先に動くか、隙を伺い鋭く睨み合う。

この硬直は何秒、あるいは何分続くか。長期戦を覚悟した面々だがしかし均衡は突如として破られる。

彼等の誰かが焦って動き出したからではなく。

 

 

 

「はいそこまで」

 

 

 

「「「「「!?!?!?」」」」」

 

彼等の丁度真ん中に突如として第三者が現れたからだ。

 

「よぅナルト。久しぶりじゃの」

 

「ねぇちゃん!?それと……」

 

「ひっ、ひぃぃ……っ!」

 

「アイツは……ガトー!?」

 

気付けば自然体ですぐそこに立っていたヒノカミは右手に小太りの男をぶら下げており、当人は再不斬を見つけた途端に暴れながら怒鳴り散らす。

 

「おっ、おい!再不斬!さっさとこいつを始末しろ!

 何のために高い金を払って貴様を雇ったと思っとるんだ!!」

 

「っ、このガキがテメェの言ってたバケモンだと……!?」

 

地位を失い資産を大きく減らしたガトーがそれでも大金を払ってまで再不斬を始めとした霧隠れの忍び達を雇ったのは、波の国を暴力で支配するためだけではない。

一年前に自分を破滅させたヒノカミを始末させるためだった。

ガトーが用意できる最大の戦力が、水影暗殺にあと一歩まで迫った再不斬たちだったというわけだ。

 

「お嬢ちゃん!そのガトーはどうしたんじゃ!?」

 

「おぉタズナ殿。またこやつが悪だくみをしておると耳にしたのでな。

 とりあえず拠点は潰して手勢も殲滅してきた。残るはこやつの命だけじゃ」

 

「「「なっ……!?」」」

 

「あんだけみっともなく命乞いするから一度は見逃してやったというのに、学習せんな。

 まぁ馬鹿なことをしでかしたのはこの国の大名もじゃが。

 裏取引の証拠も押さえたんで後から公開するとしよう。

 ……そんで、再不斬じゃったか?もうコイツは一文無しじゃぞ。

 雇われただけならこれ以上戦う理由はないと思うが?」

 

「……そうもいかねぇ。前金はもらっちまってるし、雇われは信用も大事だしなぁ。

 それにテメェが本当にバケモンなのか、興味があるしよォ……」

 

再不斬の敵意が完全に乱入者の方へと向く。

見た目は少女。だがサスケとナルトに一杯食わされた彼は『見た目が幼い子供だから』と油断することはもはやない。

 

 

「戦ってみりゃあわかるよなァ!!」

 

 

にらみ合う二組の間に降り立ったヒノカミは目の前にいる。

再不斬が一歩踏み出すだけで彼が手にした刃が届く。

巨大な剣はヒノカミの左腕側、ガトーを掴んでいない方へと振り下ろされた。

 

 

「そりゃ無理じゃな」

 

 

そして左手の人差し指一本で受け止められた。

 

「…………は?」

 

「『戦い』とは実力が近しい者同士でしか発生しない。

 メダカが龍に挑めるものかよ。身の程を知れ雑魚が」

 

人差し指を押して刀を弾き飛ばしたヒノカミは左手の形を変え、折り曲げた中指に親指を添える。

 

 

パァン

 

 

突き出した左手の中指がはねた途端、再不斬の姿が消えた。

間もなく観客たちも再不斬が石の水切りの要領で水面を何度も跳ねながら遥か遠くへと飛んでいく有様に気付く。

直接当てたわけではなく、衝撃波だ。もし直撃していたら再不斬の体は爆散し周囲に血と肉片をまき散らしていただろう。

 

「再不斬さんっ!?」

 

白は敵を倒すではなく主君を追いかけようと動き出すが。

 

 

「『大氷海嘯』」

 

バキキキキキィ……

 

 

「「「「「な……!?」」」」」

 

「……やっぱねぇちゃんは加減を知らねーってばよ」

 

見渡す限りの景色が全て、一瞬で凍り付いていた。

水の上を走っていた白も巻き込まれており氷像となっている。

 

 

「これが、ヒノカミ……イタチを圧倒した、五代目火影の師匠……!」

 

「なるほど……綱手様がボクらに敵対を禁じるわけですね」

 

「あ……あぁぁ……っ」

 

「さてガトーよ。言い残すことはあるか?」

 

「たっ、助けてっ!助けてくれぇぇーーーっ!!」

 

「儂は気が短いのでな。三度も待たぬ」

 

ヒノカミが掴んでいたガトーを上空に放り投げた。

そして彼女の体からあふれ出した炎が巨人となる。

 

 

『…………』

 

「あぁぁぁぁーーーーーっ!!!」

 

 

グチャリ

 




ヒノカミは『うっかり滅ぼしたくなる衝動に駆られるから』と五大国の忍びの里からは距離を取っていますが、それ以外の場所で見かけた外道悪党は普通に処します。
そして忍びに対しては評価が低いので口が悪いです。
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