『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第17話 第一の試練

 

それぞれの決意を胸に中忍選抜試験会場へと向かう第七班の三人だったが、彼らを待ち受けていたのは先日の砂の忍びに負けず劣らずの濃い面々。

 

『見どころのない者を振るいにかける』と妨害する自称先輩たち。

試験そっちのけでいきなりサクラに求愛する一年上の先輩。

その担当上忍だというゲジマユ激オカッパな自称カカシのライバル。

先に会場入りしていた同期と、多種多様な姿と年齢の下忍たち。

下忍ということになっている暗部のカブトとも再会した。潜入任務らしい。

開始時刻になると同時に大勢の補助要員を連れて現れた第一の試験の試験官『森乃イビキ』もカタギとは思えぬいかつい顔をしていた。

 

そしてイビキより明かされた第一の試験の内容とは。

 

 

「ペッ、ペーパーテストォォォーーーーー!?」

 

 

思わず絶叫を上げてしまったナルトだが、咎める者はいなかった。

声にこそ出さなかったが受験生たちはみな大なり小なり同じ気持ちだったのだろう。

 

受験生の初期の持ち点は10点。問題は全10問で一問間違えるごとに減点1。

0点になった受験生及びそのチームは失格。

またカンニング行為を確認した場合一度につき2点減点とするため、採点前に失格となるケースあり。

試験時間は1時間。

 

「始めろ!」

 

目の前の紙を裏返し問題に目を通した受験生たちはすぐに気付く。

『こんなもの、下忍が解けるレベルの問題じゃない』

そして『中忍ならばこれくらいはできて当然』というレベルでもない。一問もわからなくて当然だ。

おまけに『10問目は開始から45分後に試験官より出題する』などと書いている有様。明らかにまともな試験ではない。

 

このテストを乗り切るならカンニングするしかない。

しかしカンニングがバレれば一度につき減点2……ここで受験生たちも気づき始める。

これはペーパーテストの形式を取った『カンニングを推奨した情報収集戦』だ。

『忍びらしくバレないように情報を集める』能力を計られており、だからこそ4回までのカンニングが許容される。

 

秀才であるサクラは自力で全ての問題を解く学力をもっていた。

サスケは他の受験生の動きを丸ごと写輪眼で模倣することでペンを動かし続ける。

他の受験生もそれぞれの能力とチームワークを駆使して挑み、失敗した者たちが次々と会場から引きずり出されていく。

 

そして肝心のナルトはと言うと……。

 

「高さが7mでこの角度なら、正弦と余弦は……。

 あと重力加速度……まさか空気抵抗まで考慮しろとか言わねぇよな?

 だとすると手裏剣の射出速度はこうなるから平面時、水平方向だと……うぎぎぎぎ……!」

 

試験の意図などまったく理解しておらず、自力で問題に挑んでいた。

ナルトは『火影を目指すなら事務処理能力は必須だ』と諭され、ヒノカミと旅をしていた頃に彼女から勉強も教わっていた。

彼女は忍びではなかったから忍び特有の常識や暗号や歴史についてはさっぱりだが、世間一般常識や学問はかなりのレベルまで修めている。

よって算術の知識で対応できそうな一問に全身全霊を注ぎ、何とか0点だけは回避しようとしていた。

 

(ナ、ナルトくんスゴイ……)

 

偶然ナルトの隣の席になったヒナタは彼の真っすぐさと意外な能力の高さにときめいていた。

ちなみに彼女はとっくに『白眼』という日向一族固有の能力を使い9問目までの回答を全て埋め終えている。

 

 

そして試験開始から45分が経過し、イビキが声を上げた。

 

「これから第10問目を出題する」

 

カンニングがバレずに生き残っている受験生たちが緊張で顔をこわばらせる。

 

「……その前に最終問題にルールの追加をさせてもらう。

 これは……『絶望的』なルールだ」

 

まず受験生にはこの第10問目を『受ける』か『受けない』かを選んでもらう。

もし『受けない』を選択した場合即座に持ち点0。班員共々失格とする。

そして『受ける』を選択し問題に正解できなかった場合。

 

「その者については今後永久に中忍試験の受験資格をはく奪する!」

 

「「「!?!?!?」」」

 

当然受験生たちは猛抗議するが、イビキは『オレがルールだ』と譲らない。

取り付く島もなく選択を迫る。

 

「『受けない』者は手を挙げろ。ここから出てもらう」

 

9問目までの問題の難易度を考えれば10問目もそれに準ずるものだろう。

試験官たちの無言の圧力に押されて一人が手を挙げる。すると意志の弱い者がつられて一人、また一人と脱落していく。

10問目が出ても正解する自信があるサクラは手を挙げる理由はなかったが……彼女以外はそうではない。

ナルトと……万が一にもサスケが間違えれば彼らは永久に中忍に昇格する機会を失ってしまう。

意地になって引き下がれない彼らに代わり、自分が身を引くべきではないか。

全く手を挙げる様子のないナルトの後ろ姿を見つめながら、サクラはそう考え始めた。

 

 

 

「……やっぱおかしいってばよ。絶対嘘だ」

 

 

 

するとナルトが呟いた。

静寂に包まれていたこの場にいる全員の耳に彼の言葉が届く。

 

「……おい小僧。このオレが嘘をついているだと?

 よほど失格にされたいらしいな?」

 

「だってありえねぇもん。どんだけ考えても絶対にねぇ」

 

凄むイビキに、ナルトは動じることなく返す。

ナルトは五代目火影である綱手の弟弟子だ。そして綱手より『次代の火影になる男』と目されており、色々なことを聞かされている。

彼女の傍仕えであるシズネを除けば、木の葉の誰よりも綱手との交流が深いのはナルトだ。

だから綱手の性格と火影としての仕事を知るナルトは断言する。

 

「忍びの里の中忍や上忍の数は、それぞれの里の戦力を現すバロメーターだ。

 他の国の人が依頼を出す時にどこを選ぶかの指標になるし、忍び個人じゃなくて里の盛衰にも関わる重要な案件だってばよ。

 なのに木の葉だけならともかく他里と合同で行う試験で一試験官がそんな権限持ってたら、いくらでも贔屓ができちまう。

 他の里から猛抗議が来るし、下手すりゃ里同士の戦争になっちまうってばよ」

 

「「「「「…………!」」」」」

 

「……聞いていなかったのか?今年は、オレがルールだ」

 

「だから、他里との交友関係でいつも頭悩ませてる綱手のばあちゃんが『他国の忍びから永久に中忍受験資格をはく奪するような権限』をおっちゃんに預けること自体がありえねーんだってばよ。

 もしおっちゃんや他の試験官の連中が独断でやってたとしたら、それこそばあちゃんが許すはずがねぇ。

 全員ぶん殴って忍びを辞めさせて木の葉から叩き出すってばよ」

 

一度木の葉を離れ各地を巡る過程で『忍びの里』を外側から見た視点。

姉弟子である綱手から聞かされる里の長としての業務と苦労。

その二つを併せ持つナルトは彼なりに答えを導き出しそれを確信していた。

 

 

「……他に『受けない』者はいるか?」

 

イビキはナルトを無視して他の受験者に語り掛ける。

だが彼らはナルトの説明を聞いてイビキの発言に疑問を持ち始めており、促されても応じる者はでなかった。

 

これ以上は時間の無駄と判断したイビキは通達する。

 

 

「では、ここに残った全員に……『第一の試験』合格を申し渡す!」

 




第一の試験は別に原作と同じ展開でもよかったんです。
しかし火影がヒルゼンではなく綱手であり、ナルトの能力や性格の差異を考えると試験官に啖呵を切る展開にはならないと判断しまして。
ナルトは多少頭が良くなってますが『10問目が何であっても確実に正解する』レベルではないので、サクラが手を挙げてしまうかもしれない。
よって色々理由をつけてこんな展開にしました。
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