『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第19話

 

「サクラぁ!立て!走れぇっ!!」

 

「…………っ」

 

「サスケ!オレが足止めする!サクラちゃんを!」

 

「いやねぇ、私はサスケくんの方に興味があるのだけど。

 ……アナタは邪魔ね」

 

敵は足手まといを排除することでサスケをこの場にとどめようとした。

超速で打ち出された苦無が震えて動けないサクラに迫る。

 

キィンッ!

 

「舐めんなよ……サスケとの勝負はまだちょっとだけオレのが勝ち越してるんだってばよ!!」

 

修行により展開速度が早まったナルトの帛手割砕が巨大な壁となり苦無を弾き飛ばす。

その隙にサクラの傍にまでたどり着いたサスケが彼女を抱えて飛び去る。

 

「九尾の子……アナタは欲しいと思わないわ。

 でも随分と面白い成長をしてるみたいねェ……!」

 

(速ェ!パワーよりスピードだ、手数を増やせ!)

 

蛇のように木々をうねりながら迫る敵を前にして、ナルトは左腕に集めていたチャクラを右腕にも分散し一回り大きい程度まで圧縮したチャクラの両腕を作り出す。

前屈みになり両腕を地面につけたナルトは心の中でアカデミー時代からの悪友の姿を思い浮かべる。

 

(技を借りるってばよキバ!!)

「見様見真似、『四脚の術』!!」

 

「アラ素敵。もっともっと楽しませてちょうだいな……!」

 

 

 

 

サスケは戦場からいくらか離れた距離にある大きな木の洞に動けないサクラを押し込める。

 

「お前はここに隠れてろ!オレはナルトの援護に戻る!」

 

「待って!私も、何か……!」

 

「お前はこのチームの生命線だ!

 危険な状況だからこそ、自分の安全を一番に考えろ!」

 

「っ……」

 

一人置き去りにされる不安もあっただろう。サクラは食い下がるがサスケに叱られ動きを止める。

サクラとて今まで何もしてこなかったわけではない。

彼女なりに確かな成長を遂げており、この第二の試験においても足手まといにはならないと自他ともに認めている。

だがそれでも『直接的な戦闘能力』ではナルトとサスケには遠く及ばない。

そして今回の襲撃者の実力は、そのナルトとサスケを大きく上回る。今はまだサクラにできることはない。

 

 

ドォォォン!

 

 

「!?」

 

「っ、オレは行く!いいか、動くなよ!!」

 

「あっ……」

 

サスケは轟音が聞こえた方、ナルトがいる戦場へと飛び去っていった。

サクラが伸ばした手は空を切る。彼女はゆっくりと降ろした腕を脚のホルスターへと伸ばし、一本の苦無を取り出した。

試験前にナルトから借り受けたものだ。妙な刻印が刻まれており、彼が言うには『お守り』だとか。

 

ゴォォォォォ!!!

 

サクラの視線の遥か先で赤い光が走った。おそらくサスケの火遁の術だ。

 

(お願い……サスケくん、ナルト!どうか無事で……!)

 

サクラは両手で苦無を包むように握りしめ、目を閉じて強く祈る。

その間にも遥か先からは絶え間なく戦闘音が響き続けていた。

 

バチィッ

ドサッ

 

「!?」

 

しかし突如としてサクラのすぐ傍から音が聞こえた。

瞼を開けると彼女の眼の前には。

 

「ナルト!?」

 

傷だらけのチームメイトが転がっていた。サスケはおらず彼一人だけだ。

 

「なんで……血が!こんな……!」

 

状況が理解できず慌てふためくサクラは完全に冷静さを失っていた。

 

 

 

「『落ち着くんだ、サクラさん』」

 

 

 

「……!?」

 

この場にそぐわぬ静かで穏やかな声がサクラの意識を呼び戻す。

 

「ナ、ナルト……?」

 

「『よし、落ち着いたね。ではまずナルトの体を治してくれ。

  可能な限りチャクラも補充してほしい』」

 

「え、えっ……?」

 

声はうつ伏せから仰向けへと姿勢を変えたナルトから出ていた。口も動いていたので間違いない。

だが口調と雰囲気がまるで違う。なぜか別人の声が重なって聞こえるような気もする。

 

「『急いで。サスケくんが抑えてくれているが、あの人が相手だと長くは持たない』」

 

「は、はいっ!」

 

サクラは言われるがままに傷だらけで横たわるナルトへと『医療忍術』を行使する。

波の国にてカブトから基礎を教わり、里に戻ってからも独自に鍛錬を続けていた彼女の新たな力。

最高の医療忍者である綱手が火影となり里全体へと広めたため、今の木の葉では忍びが医療忍術を学ぶことは難しくなかった。

そしてサクラ自身に高い適性があったため、彼女の才能は瞬く間に開花し医療忍者を名乗れるだけの力を手に入れた。

 

「……ふぅ、今はこれが精一杯です」

 

「『十分だ。ありがとう、サクラさん』」

 

静かに立ち上がったナルトを、サクラは座ったままは呆然と見上げる。

目の前にいるのは間違いなくナルトだ。だがサクラはなぜか敬語を使わなくてはいけないような気がしていた。

 

 

「『じゃあ行ってくる。大丈夫、すぐ戻るよ。サスケくんを連れてね』」

 

「えっ……」

 

 

バシュッ

 

サクラが預かっていた物と同じく妙な刻印が施された苦無を構えたナルトは、彼女の眼の前で姿を消した。

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ……」

 

一方サスケは一人、襲撃者を相手に奮戦していた。

両手に構え口に咥えた大量の苦無。それと同じものが周囲にも散らばっている。

 

「フフフフ……本当に驚いたわぁ。まさか『飛雷神の術』を覚えているなんて。

 インターバルも使い方もまだまだだけど……♪」

 

マーキングした場所に逆口寄せを行い己を転移させる、かつて二代目火影が作り出した時空間忍術。

サスケは周囲にちりばめた苦無を対象として発動することで敵の攻撃を躱し、致命傷を避けながら時間を稼いでいた。

どうやらサスケの実力を見定めることが敵の目的だったらしいからこそ成立している戦いだ。

そうでなければとっくに殺されている。それほどに力の差があると、サスケは痛感していた。

 

「やっぱり私、君が欲しいわぁ……でもそろそろ時間切れかしら?

 色々と楽しかったわよ」

 

「ぐっ!?」

 

だがついに敵が本気になった。金縛りの術を使われサスケの動きが止まってしまう。

数秒あれば解除できるがその数秒が戦場では命取りになる。

敵が印を結ぶとその首がろくろ首のように伸び、牙をむいた頭がサスケへと迫る。

 

 

ザクザクザクザクッ!

 

 

だがその眼前に大量の苦無が突き刺さり大蛇丸の行く手を阻む。

 

「『そこまでにしてもらいましょうか』」

 

「「!?」」

 

いつの間にか戦場に戻ってきていたナルトがサスケの前に立ちはだかる。

サスケの金縛りが解け、敵は首を元の長さへと戻した。

 

「『よく持たせたね。後は俺に任せてくれ』」

 

「……はい!」

 

「傷が……なるほど、あの小娘は医療忍者だったのね。

 けれど何度やっても無駄なことよ。君では私には及ばない」

 

「『今のナルトならそうだろうね。だがすぐに貴方よりも強い忍びになるさ。何しろ……』」

 

 

 

 

「『俺の息子だからね』」

 

「!?」

 

 

ドゴォッ!!

 

サスケを遥かに上回る速さで『飛雷神の術』を使いこなしたナルトは、敵の顔面を思い切り殴り飛ばした。

 

「がはっ……!?」

 

「『試験や任務には手も口も貸すつもりはなかった。ナルトのためにならないからね。

  だが貴方が相手となれば話は別だ。大蛇丸』」

 

「!?」

 

ナルトはサスケが周囲にちりばめていたマーキング済みの苦無を使って連続で転移し、体術と苦無を使って『大蛇丸』と呼んだ敵を嬲る。

あまりに速過ぎて、先ほどまで圧倒的な強さを見せつけていた大蛇丸ですらされるがまま。その光景はまさしく。

 

「『黄色い閃光』……!」

 

サスケは己の師の異名を口にし、師の強さを目の当たりにして感動で打ち震えていた。

 

 

 

「ぐっ……馬鹿、な……!」

 

「『やっぱりナルトの体だとやりづらいな。リーチも威力も足りない。だけど……』」

 

度重なる攻撃で顔を覆っていた皮がはがれた大蛇丸の目の前で、ナルトは腕を前に出し掌の上にチャクラの球体を作り出す。

『乱回転するチャクラを圧縮しぶつける』、彼自身が開発したAランク忍術。

 

「『この技ならば、威力に不足はない』」

 

「『螺旋丸』……!?やはりお前は……!」

 

かつて四代目火影として木の葉を率い、九尾との戦いで散った天才忍者『波風ミナト』。

肉体も命も失い魂だけとなった彼は『憑依合体』により己の息子の肉体を借り、今一度戦場へと舞い戻った。

 




ヒノカミは忍びが嫌いなので、ナルトに忍術は教えていません。
忍術以外は色々教えてたりします。
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