『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第24話

第十回戦 秋道チョウジ 対 ドス・キヌタ

 

こちらは一つ前の試合と違いあっさりと、そして穏当に終わった。

全身を肥大化させ巨大な肉団子と化し突撃するチョウジにただ音をぶつけても無意味ではあるだろうが、人間の肉体には音を伝達する『水分』がいくらでも含まれている。

触れた状態で音を送り体内で増幅させれば、爆音にやられて目を回すチョウジがその場に残った。

 

これで第三の試験、予選は全て終了。

勝ち残った受験生は以下の9名。

 

うちはサスケ

油女シノ

カンクロウ

テマリ

奈良シカマル

うずまきナルト

日向ネジ

我愛羅

ドス・キヌタ

 

一列に並ばされた彼等の前で本戦の説明が始まる。

試合はトーナメント方式で行われるが、優勝した一人だけが中忍になれるというわけではない。

試合を通じて『中忍を名乗るに相応しい実力を有している』と判断されれば敗退しても合格となるし、そうでなければ優勝しても不合格となる。

全員合格する可能性もあれば全員不合格になる可能性もあるとのこと。

とはいえ勝ち残ればそれだけアピールする機会が増え合格する可能性が高まるので勝利を目指す理由は十分にある。

 

本戦が行われるのは1カ月後。

各国の大名や忍び頭に『本戦開催』を連絡し集まってもらうために必要な時間であり、試験に参加する下忍たちにとっての準備期間でもある。

今までの試験で集めた情報から対戦相手への対策を練り、修行で己を高め、休息で体を休めと、やれることはいくらでもあるだろう。

最後にトーナメントのくじ引きを行ってもらい、この場は解散となる。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

中忍試験、第三の試験予選を終えたその夜。

綱手が里外れの崖際に足を運ぶと、そこには先客の影があった。

 

「久しいな。大蛇丸」

 

「えぇ、そうねェ」

 

大蛇丸が第二の試験にてアンコを通じて持ち掛けてきた『交渉』。

その日時と場所の指定が今この瞬間だった。

 

「でも酷いじゃない。『互いに一人だけで』とお願いしたはずでしょう?」

 

「『どうしても』と言ってきかんのだ。悪いが大目に見てくれ」

 

「……大蛇丸……!」

 

大蛇丸は一人。だが綱手の傍には元三代目火影であり、大蛇丸と綱手の師でもあった猿飛ヒルゼンが忍び装束で立っている。

 

「殺気立つな、ジジイ。手出しも口出しもしないという条件で同行を認めたんだぞ?」

 

「わかっておる……!」

 

本当ならこれでも護衛が少なすぎるくらいだ。大蛇丸の実力は五影に匹敵し、一人で小国を落とすとさえ言われている。

そんな相手が指定してきた場所にノコノコと向かうなど命知らずもいいところだが……生憎と綱手に限って言えば例外である。

彼女は自然エネルギーの化身である化け物から薫陶を受けた歴代最強の火影。

たった一人で、彼女を除く木の葉の全戦力に匹敵するとも言われる最大の防衛戦力だ。

しかも医療忍者であり『死なないこと』に関してはエキスパート。

たとえ大蛇丸が軍勢を率いて待ち構えていたとしても、倒せるかはともかく力づくで突破して離脱することならできるという自負がある。

 

「本当かしらぁ?ボケた振りをして襲ってこない?もうトシだものねぇ」

 

「…………」

 

「挑発するな、大蛇丸。……それで、取引とは何だ?お前は何を求めている?

 中忍試験でうちはサスケにちょっかいをかけていたと聞いているが、『あの子の身柄を寄越せ』などと言うつもりではあるまいな?」

 

綱手は五代目火影だ。そして火の意志を再び木の葉に宿そうと今日まで尽くしてきた。

サスケは木の葉の忍びであり里の家族。どんな条件を出されようと応じるつもりはない。

 

 

「それはもういいわ。諦めたから」

 

「…………は?」

 

「私の力を見せつければイタチへ復讐するための力を求めて私の下に来てくれるかもと期待していたのだけれど、思ったより闇も少ないし……何より師匠が『アレ』じゃあ靡いてくれるはずもないものねェ」

 

「サスケの……師匠じゃと?一体誰のことだ……フガクではないのか……!?」

 

「……あら?あらあらあらぁ!?

 どうやら二人ともご存知ないようねェ……!

 フフフフ、じゃあ秘密にしておくわぁ。

 この交渉には関係のないことだし、その方が面白そうだもの」

 

「チィ……!」

 

「ではお前の望みは何だ?」

 

「……私の可愛い可愛い部下を一人、治してほしいのよ。

 不治の病が見つかって、余命いくばくもなくてねぇ……」

 

大蛇丸は脳裏で一人の少年……『君麻呂』を思い浮かべる。

己に絶対の忠誠を誓う忍びであり、強力な血継限界を持つ『器』候補。

願うならイタチ、そうでなければサスケを狙っていたが、そのどちらも難しい以上は三番手である彼で妥協するしかなかった。

それに元々器とするために育てて来た君麻呂の方が余計な抵抗も苦労もない。

最近になって突然死病が発覚したが、死者すら蘇らせる綱手ならば容易く治すことができるはず。

今日の試合で死に体のリーを即座に治した様子を見て確信した。

 

「ふむ……ではお前はこちらに何を差し出す?」

 

綱手は医者だ。善人であろうと悪人であろうと、救える命なら救いたい。

大蛇丸がその『可愛い部下』とやらを使ってどんなろくでもないことを企んでいるかはわからないが、綱手は提案を前向きに受け取り続きを促す。

 

 

 

「『木の葉崩し』に関する情報よ」

 

 

 

「『木の葉崩し』、じゃと!?」

 

「……詳しく話せ」

 

「最近できた音の里……アレは私が作った里でねぇ。

 この中忍試験の前にその勢力を見せつけて、砂に声をかけたのよ。

 『共に木の葉を討つ気はないか』とね」

 

「貴様ぁ……!」

 

つまり大蛇丸は『自分の要求をのまなければ木の葉を滅ぼす』と脅している。

そう解釈した綱手は怒りを露わにして腕に力を籠める。

 

「勘違いしないで頂戴な、綱手。これは私が描いた絵ではないわ。

 ……そうでしょう、猿飛先生?」

 

「……ダンゾウの練っておった計画だ。

 暗部に情報が残されておった……うちはの件と同じよ。

 先の大戦で木の葉に敗れ恨みと憎しみを抱えることとなった砂の里を将来的な障害と見なし、敢えて決起させ返り討ちにして、完全な木の葉の属国とするつもりだったようだ」

 

「またかダンゾウ……死んでまで足を引っ張り続ける!」

 

「奴の計画は終戦直後から動いていたわ。

 砂に紛れ込んだダンゾウの手の者が、長い年月をかけて砂の民の木の葉への憎しみを育てていたのよ。

 そしてダンゾウは消え計画は中断されたけれど、できてしまった流れは消えなかった。

 仮に私が声をかけずとも砂隠れの里は何らかの形で爆発していたはずよ。

 私がダンゾウの残した計画に沿ったことでまだマシな方に向きを定めてあげたのだから、むしろ感謝してくれてもいいんじゃないかしら?」

 

「……つまり交渉に応じるのなら、貴様は『砂を裏切り木の葉につく』と?」

 

「完全に木の葉につくわけではないわ。まぁ事実を知れば砂はそう思うでしょうけどね。

 音の里はまだまだ小さい……木の葉の属国なんて受け入れられないわ。

 だから計画の情報を全て横流しして、計画に参加する私の手勢には積極的な攻撃はせず適当なところで引くよう命じてあげる。

 それなら木の葉の被害を徹底的に抑えたまま乗り切ることが可能でなくて?

 もちろん、そっちが本気で私と私の部下たちを殺そうとしてくるなら話は別だけど」

 

「フン、してこないと踏んでいるくせに」

 

「ウフフフフ、『木の葉の忍びは不殺を貫く』んだものねェ」

 

「……何故じゃ、大蛇丸。お主は木の葉に……儂に恨みを抱いていたのではないのか?」

 

第三次忍界大戦にて里に多大な活躍をし四代目火影に立候補したが受け入れられず、木の葉から追放された大蛇丸には木の葉を憎み滅ぼす理由がある。

そう周知されているからこそ砂の忍びも彼の計画に乗ったのだ。

 

「悲しいわぁ。先生なら私が恨みなんかで動かないと、理解してくださっていると信じていたのに。

 ……私は木の葉崩しなど望んでいないわ。

 だから仮にこの交渉が決裂したとしても、里が滅ぶほどの被害を出すつもりはないの。

 私の目的のためには、木の葉が完全に消えてしまうのは面白くないのよ」

 

「目的……?先ほどの病人の件ではあるまい。何のことだ?」

 

「フフフ、内緒♪」

 

大蛇丸の目的は未知の追求。それを成すため時間の猶予、すなわち『永遠の命』だ。

既に仮初の形にはなっているが完全と言うには程遠く、より高みに至るためにも綱手の持つ『蘇生術』の情報は何としても手に入れたい。

しかし今の綱手の力は大蛇丸と自来也に比べ頭一つどころか一馬身以上の差がある。力づくで奪うのは無理だ。

だから何らかの弱みを握るか、今回のような交渉を通じて信頼を勝ち取るか。

いずれにしても大蛇丸は綱手との関係を維持し続けなければならない。

 

 

「けどそうねぇ、敢えて言うとすれば……」

 

大蛇丸は恨みでは動かないが、木の葉に恨みを持っていないとは言わない。

彼は非道な実験を行っていたことで木の葉より追放されたが、研究の成果は木の葉にもしっかりと還元していた。

里を抜け出した当時の自来也や綱手よりもよほど里に貢献していた自負があるし、己の研究にはダンゾウも噛んでおりそのダンゾウは己以上の非道を繰り返していたのに無罪放免となっていたのだから。

綱手とヒルゼンがこの場で大蛇丸への手出しを控えているのも、ダンゾウの悪事を把握したことで全ての非が大蛇丸にあるわけではないと理解したからでもある。

 

 

「動いているものを見るのは面白い……。

 折角綱手が大きな風を吹かせてくれたんだもの。

 回り始めた風車をもう少し眺めていたいと思っても不思議ではないでしょう?」

 

だが今の木の葉は違う。

害でしかなかったダンゾウは死に、裏で実権を握っていた老害共が一掃され、木の葉は方針を変え『不殺』という苦難の道を歩み始めた。

ただの平和ボケした考え方とは言えない。木の葉の忍び達は命を懸けて命を守ろうとしている。

長年続いた忍びの社会の在り方に、国を挙げて真っ向から喧嘩を吹っ掛けているのだ。

 

見事成し遂げ新たな火の意志とやらを掲げることができるのか、あるいは力及ばず諸共燃え尽きるのか。

どちらに転ぶか見ものではないか。

折角特等席があるのに急いで立ちあがるなんて勿体ない。

 

「さぁ、サービスするのはここまでよ。選んで頂戴。

 私の手を取り木の葉の全てを守り切るか、私の手を振り払い木の葉を守るために多大な犠牲を払うか」

 

「…………」

 

軽く右手を前に出す大蛇丸へと、綱手は一歩ずつ近づいていく。

 

 

 

ガシィッ!

 

 

 

「土壇場で私まで裏切るようなら潰す。肝に銘じておけ」

 

「フフフ……!交渉成立ね♪」

 




原作生存キャラ死亡を避けるためにどうやって大蛇丸との落としどころを作るか悩んでいたんですが……よくよく考えたら本作の綱手率いる新生木の葉隠れなら、大蛇丸が滅ぼそうとする理由がほとんどないんじゃないかと。
ダンゾウは消えてるし、ヒルゼンを除く老害は軒並み落ちぶれてるし、君麻呂が健在なら綱手との縁を切り捨ててまでサスケに拘る理由もない。
実際原作でもイタチを手に入れることは断念しているので、同じようにサスケのことも諦め妥協するかと。

そして察したと思われますが、本章は木の葉崩しにて完結となります。
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