大蛇丸が木の葉に戻ってきたと聞きつけた自来也は直ちに里に戻り綱手との面会を求めた。
綱手が最も詳しいだろうという程度の考えだったが、自来也は想定外の事実を伝えられる。
「大蛇丸と……交渉しただと……!?」
「あぁ、絶対に口外するなよ。同席したジジイ以外には知らせておらん。
砂の忍びに悟られそれで引き下がるならまだしも、自暴自棄になり制御不能になられたらかなわんからな」
「信用するのか。奴を」
「するわけないだろう。だが嘘はついていなかった。
ジジイが暗部に確認を取らせているが、砂が不穏な動きをしていることも間違いないようだ」
ヒノカミの火種を受け取り育て上げた綱手は直感が大幅に強化されている。
そこに忍びとしての洞察力を組み合わせれば相手が嘘をついているかどうかは100%の精度で判別できる。
だから『大蛇丸が木の葉崩しを望んでいないこと』、『木の葉に協力する意志があること』は間違いないと断言できる。
『今のところは』という枕詞がつくが。
「……奴とは会えるか?」
「再度面会し情報を受け取るのは、詳細が確定した木の葉崩し実行直前だ。
私が奴の部下を治すのもな。それまでは互いにやり取りはしないことになっている」
「妥当だのォ。その場にはワシも同席させてもらうぞ」
「条件を呑むならばな。奴が約束を反故にせぬ限りは手出しも口出しも避けること。
そして貴様も当日まで木の葉に留まり防衛に参加することだ。
万全の備えはするが、衝突そのものは避けられん。猫の手も借りたい」
「言われずともわかっとるわい。木の葉を守るためならば、否やはない」
「よし……あぁそうだ、一つ尋ねたい。
お前は『うちはサスケの師』とやらに心当たりはあるか?」
「いや、知らんが?何故接点のないワシに尋ねる?」
「ということは貴様ではないのか。
あの小僧はナルトと、日向の娘と共に修行している。
その娘が『螺旋丸』を使ったからお前かと思ったのだが……」
「…………あー」
自来也は思い至った。
ナルトの中にいる四代目のことを知っているのは、木の葉ではナルトと彼が明かした者だけ。
しかし木の葉の外まで広げればそれを成したヒノカミと、頻繁に連絡を取っていた自来也もそこに含まれる。
「予想はついた。だが約束があってのォ。悪いが秘密とさせてもらおう」
「なんだと?」
「『その方がカッコイイから』、で伝わるかのォ?」
「……ヒノカミの関係者か。アイツが関わってるなら悪いことにはならんだろうが……」
「施政者として受け入れがたいか……そうだのォ。
はたけカカシにならば明かしてよいか。
ナルトとサスケの担当上忍なのであろう?」
「ふむ……わかった。奴が納得したならば私もそれ以上追及すまい。
今ならナルトとサスケの修行に立ち会っているはずだ」
「それは好都合。早速向かうとするか」
火影の執務室を出た自来也は、ナルトの気配を感じ里外れの空き地へと向かう。
自来也が辿りつくとナルトはヒナタと模擬戦を行っており、サクラは怪我をした場合に備えて観戦。
サスケとカカシは少し離れた場所で写輪眼を使った戦い方について話し合っていた。
「よぉ、やっとるようだのォ」
「あ、エロ仙人」
「こ、こんにちは……」
「自来也様!?これはこれは……」
「サスケくん、あの人が?」
「あぁ。綱手様と大蛇丸に並ぶ木の葉の三忍、最後の一人だ。
……女のお前は近づかない方がいい。ナルトのあだ名の通りの奴だ。
何しろカカシの愛読書の原作者らしいからな」
「……『アレ』の……!?」
「本人を前に堂々とけなしおってからに。腹の立つ小僧だのォ~~」
尚、イチャイチャシリーズには恩人であるヒノカミも関わっているが、それを話題にするとサスケは聞こえないふりを貫いたりする。
「そんで、ナルトの初戦の相手は日向分家の小倅だったか」
「おう!なんでヒナタに相手してもらってたんだってばよ。
でも全部躱しきるのは難しいから、やっぱ全身をチャクラの鎧で覆っちまうのが確実かなってさ」
「でもそれだとあの『回天』ってのを貫くのは難しいんでしょ?」
「そこなんだよなぁ~~……正面からアレを潰そうと思ったら帛手割砕しかねぇ。
でもそしたら鎧が薄くなって逆に隙を突かれて貫かれちまうってばよ。
オレもヒナタくらい螺旋丸が上手けりゃなぁ~~……」
ナルトが試しに皆の前で螺旋丸を作り出して見せる。
だが本来は片手で作るべきところ、ナルトは両手が必要だ。それに作り上げるまでに数秒かかっている。
「いやいやナルト、Aランク忍術だよソレ?
オレたち上忍でも難しいってのにホイホイやられちゃ立つ瀬がないって」
「そのことなんだがのォ……ナルト、お前の『師』と話がしたい」
「「「「!?」」」」
「は……?自来也様では?」
カカシは今日までナルトの師は自来也だと誤解していたようだ。
カカシだけでなく他の木の葉の忍びも綱手すらもだが。
「その反応ではうちはの小僧だけでなく嬢ちゃんたちも知っとるようだのォ。
……お主らの担当上忍であるカカシには伝えておくべきと判断した。
今この周囲に他の気配はない。頼めるか?」
「……わかったってばよ。こっちもカカシ先生とは話したいみたいだったしな」
「へ?」
ナルトは己の胸に手を当て、高らかに宣言する。
「『憑依合体』っ!」
溢れたモヤのようなものが体を包み、ナルトの気配が変わる。
そして印を組み、変化の術を使った。
「……うん。やっぱり格好だけでも合わせた方が動きやすいね」
「なっ……!?」
「うわぁ~~……顔岩で毎日見てるけど、本物はずっとカッコイイですね!
ナルトも将来こんな感じになるのかしら?」
「ははは、どうだろう。今のところナルトは母さん似なんだ。
……久しぶりだねカカシ。元気そうで何よりだ」
「ミナト……先生……!?」
サスケとヒナタは何度かその姿を見せてもらっているし、話を聞いているサクラも動じない。
普段は額当てで隠している写輪眼すら表に出して、カカシはナルトが変化した恩師を凝視する。
戦闘まで行わなければナルトの体への負担は少ないため、そのままミナトがカカシに説明する。
九尾の事件にてミナトの蘇生が叶わなかった理由。
ナルトとミナトの今の状態。
サスケとヒナタに術を教えていたのも己であることなど。
「なるほど……ってことは昔の木の葉で小さい頃のナルトが受けていた扱いも……」
「いや、その頃はまだ今みたいに意識を表に出せなかったからね。
人づてに聞き及んだだけだ」
「……腹立たしいとは思うでしょうが、ホッとしてます。
もしアレをミナト先生が見てたとしたら、木の葉の忍びの何割かは腹を切りかねません。
……オレも今まさに掻っ捌きたくなってるくらいですから」
「はははは……駄目だな。うまく笑えそうにないや。
俺はもう死んだ人間だ。火影じゃない。
だからこの奇跡のような時間は全て、息子のために使うと誓った」
「そうしてください。オレらもこれ以上先生に恥ずかしいところは見せられませんので」
「カカシよ、ミナトについては綱手にも知らせておらん」
「了解です。秘匿は守りますよ」
「っとそうだカカシ。サスケくんの修行をお願いしていいかな?」
「は?先ほどまではそのつもりでいましたが、ミナト先生がいらっしゃるならオレはお役御免じゃないですか?」
「先生、オレは先生から……」
「俺では写輪眼を使った戦い方を教えることはできない。
それにサスケくんは火遁だけじゃなく雷遁にも適性があるみたいだ。
そして何より、頻繁にこうして表に出るのもナルトの負担になるからね。
ナルトも本戦に備えての修行が必要だし」
「……わかりました」
「雷遁……なるほど、そういうことですか」
「……ヒナタさんと、サクラさんもごめんね。
君たちの修行を見るのはしばらく待ってほしい」
「いっ、いえ!大丈夫です!」
「ナルトとサスケくんには私たちの分まで活躍してほしいですしね!」
「自来也先生にも、ナルトの修行相手をお願いしてもよろしいでしょうか?
俺にはもう体がありませんから……」
「……任せよ」
自来也はミナトに近づき、カカシも聞こえぬほどの小声で語り掛ける。
(中忍試験を利用して、砂と音が結託し木の葉を襲う腹積もりらしい)
(!?)
(音の里の主は大蛇丸だ。だが奴自身は木の葉を潰すつもりはないらしい。
綱手に交渉を持ち掛け被害を減らすべく動くようだが……どう転がるかわからん。
情けないが、お主を頼ることになるかもしれん。まぁどうせお主もいざ里の危機となれば動かずにはおれまい?
それとナルトには伝えるな。アイツは隠し事が下っ手くそだからのォ)
(……わかりました)
そして一ヵ月という時間は瞬く間に過ぎ。
各国の有力者が集まる会場にて、中忍選抜最終試験が執り行われる。