本戦参加者は9名だった。しかし当日集まったのは8名。
音の忍びだったドス・キヌタが不参加となったらしい。
よってトーナメント表が大きく見直されたことが、当日朝になって観戦者と他の参加者たちに通達される。
「本当にお前の仕業ではないんだな?」
「違うわよ。とっくに捨てた駒が勝手に動いて勝手に消えただけよ」
特別観覧席に並んで座る火影の綱手が、隣の風影……に扮した大蛇丸に話しかける。
綱手が自来也を連れて大蛇丸と対面し、情報交換を行ったのは中忍試験本戦が行われる今日という日の早朝。
綱手は大蛇丸が連れて来た白髪の青年を確かに治療し、代わりに木の葉崩しの概要を記した書を受け取った。
もちろん内容に偽りがないかを問い詰め肯定を受け取り、嘘でないと確証を得ている。
この中忍試験に当たり、各国の忍びの入場数は厳格に制限され監視されている。
だから現時点で木の葉に入り込み潜んでいるのはこの中忍試験に関わる砂の下忍3人とその担当上忍1人、風影とその護衛2名。他は一般市民に紛れて潜入した数名だけ。
戦力の大部分である砂の大部隊は木の葉外周部に待ち構えている。その数、およそ100。
まずは東口から大蛇丸が口寄せした大蛇を進撃させ、その隙に砂の忍びが逆側から侵攻する手はずになっているらしい。
とはいえ彼らは陽動や邪魔者の排除が役割であり、計画の本当の目標は火影である綱手の排除だ。
主戦力はこうして風影と入れ替わって潜入した大蛇丸と受験生である『尾獣の人柱力』である我愛羅。
後者が試合をめちゃくちゃにして里の中枢で暴れまわっている内に前者が綱手を仕留める。そういう計画になっていた。
襲撃者当人である大蛇丸自身にやる気がないので失敗が確定している計画だ。
だが襲撃自体は行われる。
大蛇丸が木の葉に味方する形となったのはただの利害の一致にすぎない。
今は小さな里を率いる彼にも立場があるので、彼は計画の通りに動くし綱手との密約も砂には明かさない。
大蛇丸……というかダンゾウが描いた計画では、入れ替わる際に本物の風影を始末することになっていた。
しかし砂との契約通りに手出しをしておらず、風影は大蛇丸が提供した拠点の一つに普通に隠れ潜んでいる。
今回の計画失敗で木の葉や周辺国から突き上げを喰らいまくって散々な目に遭うだろうから、どちらにせよ責任を取らされて自刃することになりそうだがそれは自業自得と飲み込んでもらう。
ともかく、砂と音に好き放題にやらせては甚大な被害が出る。蘇生ができぬ者も必ず出るだろう。
なので少しでも襲撃に備える時間を稼ぐために、計画の引き金となる我愛羅の出番は少しでも遅らせたい。
そこで綱手は火影としての強権を駆使して、不参加者が出たことを理由に急遽トーナメント表を変更させた。
「まぁアレのおかげで、我愛羅の試合を最後に回す口実ができたんだもの。
そう考えれば褒めてあげてもいいわねぇ」
中忍試験に参加していた音の忍びは大蛇丸にとっての捨て駒。
計画での活躍も期待しておらず、大蛇丸が『音の担当上忍』の振りをして木の葉の潜入や試験の観戦ができた時点で既に役割を終えていた。
そして唯一本戦に勝ち残ったドスは大蛇丸の考えに気付き、大蛇丸がご執心のサスケよりも己の方が優れていることを証明しようと考えた。
中忍試験本戦での直接対決にて打ち倒す、しかしトーナメント表でサスケとぶつかるのは当分先。
その前にサスケが敗退する可能性もある。特に彼の初戦の相手である我愛羅は恐ろしい強者だ。
故に本戦前に我愛羅を暗殺しようとしたドスは、しかしあっさりと返り討ちに遭う。
更に計画実行前に目立つことを嫌った砂の担当上忍が、戦闘の痕跡とドスの遺体を消してしまった。
その事実が発覚したのも木の葉の暗部であり音のスパイとしても動くカブトからの報告によるものだった。
「さ、消えた奴なんてもうどうでもいいでしょ?
そろそろ始めてちょうだい」
「……そうだな」
ドスは大蛇丸からの命令ではなく、自分の意思で我愛羅を殺そうとして命を落としたのだ。言い訳のしようもない自業自得である。
大蛇丸ほど冷淡にはなり切れないが割り切った綱手は、椅子から立ち上がり火影として宣誓する。
「皆々様、この度は木の葉隠れ中忍選抜試験にお集まりいただき、誠に感謝する!
これより予選を通過した8名による本戦を開始する!
どうか最後までご覧いただきたい!」
本戦試合は予選と同様、一対一での戦い。ルールは無用。降参か審判の判断で勝者を決める。
相手の殺害は控えるよう命じられるが禁止ではなく、その場合は生き残った側が勝者となり死者は即座に綱手により蘇生される。
一回戦第一試合はうずまきナルト対日向ネジ。
二人と審判の上忍一人を残して、6名は会場外の控室へと引き上げる。
「ぜってー勝つ!」
「それはこちらのセリフだ。……見極めさせてもらうぞ」
「何をだってばよ……!?」
「貴様がヒナタ様に相応しい男かどうかをな!」
「……はぁ?」
ヒナタがいつもナルトの後ろをくっついているのは木の葉では周知の事実。
跡目から外されたとはいえ優秀な忍びの一族である日向宗家のご息女となればお相手の家柄も相応でなくてはならないが、ナルトは四代目の息子でありそれを知る日向一族の大人たちからの反対意見は皆無だ。
そして子供だからナルトの出自を知らないネジは、分家を含めた日向の大人たちの反応に不満を抱いている。
ナルトは全く理解していないが観戦しているヒナタは赤面しており、別の場所に座っているヒナタの父日向ヒアシは腕組みをして真剣な眼差しをナルトに向けていてその隣にいるヒナタの妹のハナビは首を傾げていた。
「あー、まー、ともかくだ……第一回戦、始め!」
審判役の特別上忍不知火ゲンマは頭を何度か掻いた後、投げやり気味に宣言した。