今日明日は2回投稿します。
「……そんなに怒らないでよ……母さん……」
「……?」
試合開始と共に距離を取るサスケに対し、我愛羅は額を押さえて妙なことを口走り始める。
「さっきは……不味い血を吸わせたね……ゴメンよ……。
でも……こんどはきっと……美味しいから……!
………………来い」
すると今度は急に大人しくなる。
しかしどうやら我愛羅は本気でサスケを殺すつもりで来ているらしい。
綱手が見守る状況なら万が一もないだろうがこれは試合。
負けるつもりも殺されるつもりもない。勝つつもりだ。
「シッ!」
牽制の手裏剣を投げた直後、サスケは走る。その動きを我愛羅の砂が追う。
砂による自動防御は確かに厄介で、これを打破する方法は大きく二つ。
『強力な攻撃で砂をまとめて消し飛ばす』か『砂が追いつけない速さで攻撃する』かだ。
強力な忍術を操るサスケならば前者も可能かもしれないが彼の得意とする火遁では砂との相性が悪く、どれほどのチャクラを消耗するかわかったものではない。
よって選択すべきは後者。そして予選での戦いから、最低でも重りを外したリーと同等の速度がなければ戦いは成立しない。
「っらぁ!!」
ゴスッ!
そしてサスケは今日までの1カ月でその速さを手に入れていた。
カカシの指導の下、体術を重点的に磨いてきたサスケの拳が我愛羅の頬を捕らえる。
砂の鎧に阻まれ本体には届いていないが、砂の鎧の維持にはスタミナとチャクラを消耗する。
「まだまだァ!!」
砂を搔い潜りサスケの猛攻は続く。
彼は何年も前から体術を得意とするナルトと日常的に組手をしており、予選では体術のスペシャリストであるリーの戦いを目の当たりにしたのだ。
参考には事欠かない。本体の動きが鈍重な我愛羅は滅多打ちだ。
だが体術だけでは我愛羅を倒せないことはリーが証明してしまっている。
「!?」
我愛羅は砂の盾も鎧も解除し、自分を完全に覆って球体となってしまった。
サスケは訝しんで苦無を投げつけたが、刺さるではなく弾かれた。
響いた甲高い音から推測するに、相当な密度と硬度になっているだろう。
とはいえこれでは我愛羅から攻撃などできないはずだが、ただ無意味に試合を引き延ばすためにこんなマネをしたとも思えない。砂の中で何かの備えをしていると見るのが妥当だろう。
「ちょうどいい……オレのコイツも、時間がかかる……!」
効かないとわかっていながら苦無を投げつけつつ舞台の端まで距離を取ったサスケは、己の左腕にチャクラを集中させる。
コピー忍者カカシ唯一のオリジナル忍術。
肉体活性により生み出した強大なチャクラを一点に集中した『ただの突き』。
『写輪眼』による優れた動体視力がなければ扱う当人すらも周囲の動きが見渡せず敵にぶつけることもできなくなるほどの、雷の速さで繰り出される雷すらも切り裂く究極の一振り。
千の鳥の地鳴きにも似た音を放つ、故にその技の名は『千鳥』。
そしてこれはそこから更に改良を加えた『サスケのオリジナル忍術』だ。
サスケから我愛羅が潜む砂の球体までの道の両脇には、先ほどサスケがばら撒き砂に弾かれた苦無が等間隔で突き刺さっている。
時空間忍術である飛雷神の術を応用し、サスケは自分自身の体から発する雷遁のチャクラをこれらの苦無にまで届かせ雷の道を作り出す。
苦無が発する雷が磁力となり、同じ磁力を持つサスケの肉体を更に更に加速させる。
異界の知識を持つヒノカミが見ていれば、こうつぶやいただろう。
『レールガン』と。
そしてサスケは『雷神に付き従う神鳥』に倣いこの技に名を付けた。
「『
両脇の苦無に引き寄せられたチャクラが翼のように広がり、雷を纏う鳳となったサスケは嘴である腕を砂の球へと深々と突き刺す……だけに留まらない。
ドォォォン!!!
砂の壁を砕き、雷と暴風がその破片を全て吹き飛ばし、中に隠れ潜んでいた我愛羅は鳳に咥えられて飛んでいき舞台の壁へと叩きつけられる。
バリバリバリバリッ!!!
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!」
続いて突き立てられたサスケの指を通じて体の中に電流を流し込まれ、初めて我愛羅が明確な悲鳴を上げた。
間もなくサスケが離れると全身から煙を噴き出した我愛羅が壁から剥がれ地面に倒れ伏す。
「いっ……が……血……オレの血がぁ……っ!?」
血液の誘電率は非常に高い。そして人の肉体を動かすのは脳からの電気信号だ。
サスケの雷遁で全身を無茶苦茶にされた我愛羅は意識はあれど肉体をまともに動かせない。砂を操ることも同様だ。
「……勝者、うちはサスケ!」
地面の上で痙攣を続けるばかりで起き上がれない我愛羅を見て、審判のゲンマが戦闘続行は不可能と判断した。
やがて観客席からの喝采が響く。
「ば、馬鹿な……我愛羅が……!?」
「負けた……!?」
「どうすんじゃんよ!?こんなん、『計画』どころじゃ……!」
周囲の狂騒も無視しテマリとカンクロウが血相を変えて上官へと問い詰めるが、彼も気が気ではあるまい。
砂の里の誰もが手に負えなかった人柱力、木の葉崩しの計画の要が、うちは一族とはいえ同年代の子供に敗北したのだ。
例えまだ『尾獣』の力……『砂の守鶴』を解放していないとしても……。
「「「!?」」」
あれだけ響いていた歓声が波のように引いていく。
違和感に気付いた砂の忍び達が顔を上げると、会場全体に無数の鳥の羽根が降り注ぎ観客たちが次々と眠りについていく。
同時に隠れ潜んでいた音の忍び達が一斉に動き出し木の葉の忍びを襲い出した。
特別観覧席では風影が部下を伴い、火影の綱手と共に遠くへと離れていく。
「始まっちまった……!?」
「くっ……行くぞ!」
「我愛羅っ!!」
「そこまでだよ」
だが彼らの前に木の葉の忍びが立ちはだかる。はたけカカシだ。
良く見れば音の襲撃者にはゲンマやガイ、アスマや紅を始めとした木の葉の上忍たちが冷静に対処に当たっている。
「まさか……貴様ら!?」
「そ。ぜぇ~~んぶ筒抜けだよ。
潜入してる奴らは暗部が監視してたし、西口と東口にも戦力を配置してある。
……木の葉崩し、破れたりってねぇ」
「ぐぅっ……!」
更に自力で幻術を破ったヒナタとシカマルが同じ班の仲間たちを目覚めさせ集結する。
「聞かせてもらったぜぇ……木の葉崩しだぁ!?
全部オレたちがぶっ倒してやんよぉ!」
「アンアンッ!」
「キバ、その男はオレに任せてもらおう。
なぜなら、元々コイツの相手はオレだったからだ」
「だ、駄目だよ。危ないから連携しなさいって、紅先生が……」
「あーーったくめんどくせぇーーーっ。
マジでもうチャクラがねぇんだっての。
なんで何度もおんなじ相手、しかも女と戦わなきゃなんねぇんだよ」
「文句言うんじゃないのシカマル!いくわよ、猪鹿ちょぉーーう!」
「ボリボリボリボリッ、ゴクン!」
テマリとカンクロウは優秀な下忍だが、それでも下忍だ。
中忍試験にて第二の試験まで突破した木の葉の選りすぐりの下忍たちに大勢で囲まれて覆すほどの力はない。
そして砂の担当上忍であるバキも、コピー忍者のカカシが相手では分が悪すぎる。
(万事休すか……!?)
苦無を持ち抵抗する構えを見せるが、流石の勝ち目のなさに砂の忍びたちは顔を歪ませる。
ドクン
「「「「「!?」」」」」
「う……ぐ……がぁぁぁぁーーっ!」
濃密な死の気配と胎動が響き、誰もがつられて目をやれば舞台の上で倒れ伏していた我愛羅の体が変化を始めていた。
砂がまとわりつき異形の腕が生え、次は巨大な尾が伸びる。
「まずい!こんなところで『完全体』になれば……!」
中忍試験の観戦に訪れているのは各国の大名や有力者だ。
下手に傷つけるわけにはいかず、殺してしまえば国際問題にまで発展し砂の里は滅びる。
だからこそ幻術で眠らせるだけにとどめ、争いが始まった今も誰一人として忍びでない関係者には手出しをしていない。
だが暴走した我愛羅にはそんな理屈は通用しない。そして我愛羅の中にいる化け物にもだ。
だから、カカシは既に布石を打っていた。
「お願いします!」
「『任された』」
第一回戦の後、サクラの治療を受けて最低限の力を回復しミナトを憑依合体させたナルトが我愛羅へと走る。
「ぎぃぃ……っ!」
「止まれぇ!!」
異形の腕をナルトに向けようとした我愛羅を、サスケが体当たりして組み伏せる。
そしてナルトが我愛羅に触れた。
バシィッ
一瞬光が走ったかと思えば、ナルトとサスケと我愛羅の姿が会場から消えた。
――――……
「ぐっ……なにが……、どこだ……!?」
「ここは木の葉の里より離れた地にある、人の住まぬ樹海の深部よ」
いよいよ力を使い果たし憑依合体も解除されたナルトは、サスケの肩を借りて急ぎこの場から離れていく。
一人残された我愛羅を待ち受けていたのは白髪の大男。
「なんだ貴様は……!」
「くくく、耳かっぽじってよぉ~~く聞けぃ!」
「北に南に西東!斉天敵わぬ三忍の、白髪童子蝦蟇使い!
『自来也』様たぁ~~ワシのことよォ!!」
リーとテンテンの参戦も考えましたが、そうなるとネジだけが置いてけぼりになってしまうので不参加としました。
治療室にいる彼の護衛に回っているとでも思っていただければ。