まずは、一般市民に扮して木の葉に潜入している砂と音の忍び。
どちらも当日朝に明かされた情報を元に、中忍試験会場にいない者には木の葉の暗部を配置。動き出した直後に対応させた。
約束通り音の忍びには『今回の件は茶番であり本気でやりあう必要はない』と伝わっている。
その場にいる砂の忍びに見せつけるため戦闘そのものは行っているが、見た目が派手なだけで木の葉にも音にも負傷者はほぼ出ない。
続いて、東口に口寄せされる大蛇。
こちらは倍化の術で巨大化できる秋道家の現当主を中心とし、奈良家と山中家を始めとした補佐役を多くつけている。
大蛇を口寄せしたのは大蛇丸だが、彼が育てて来た音の忍びと異なり忠実な部下というわけではないため自分勝手に暴れ出す可能性がある。
よって暗部の長にして元火影であるヒルゼンもこちらに参戦させた。
大蛇丸からも『暴れるようなら始末して良い』とも許可を得ている。
そして西口から侵入を試みる砂の忍びおよそ100名。
本当は砂の忍びも東口から、大蛇が暴れる隙に侵入する手はずだったのだ。
しかし大規模戦闘の中で飛び込まれると侵入を完全に防ぐのは難しいため、大蛇丸が適当な理由をつけて『逆の西側から攻め入る』ことを砂に提案し了承させてある。
こちらの砂の忍びは本当の敵で、死に物狂いで襲ってくる。
だから里の戦力のほとんどは西口に集中させた。
残るは、木の葉の中で暴れさせる役の我愛羅と火影を始末する役の大蛇丸。
後者は現在、部下を引き連れて試験会場中央の物見やぐらの上で綱手と向かい合っている。
大蛇丸は刀を抜いており、傍から見れば一触即発のように思えるが……。
「……飛雷神、だと!?何故ナルトがあの術を……!?」
「なるほど。観客が大勢いる場から人柱力を引き離すならそれがベストよねぇ。
……綱手、アナタ何も聞いていなかったの?」
「自来也とカカシの奴が『こちらで策を練るので任せておけ』と言うから……」
会場の様子を見下ろしながら普通に雑談していた。
「ハァ……相変わらずアナタは妙なところが鈍いわねぇ……。
日向の娘の螺旋丸、ナルトくんとサスケくんの飛雷神、そしてナルトくんの出生。
ここまで揃えばあの子たちの師が誰かわかるでしょう?」
「何!?サスケの奴も飛雷神の術を……っ!?
そういうことか!だが何故、どうなって……」
「アナタのお師匠だという化け物の仕業でしょうよ。
まぁ私も詳しくは知らないのだけれど……どうせ後で自来也を問い詰めるんでしょう?」
「そうするとしようか」
「わかったら後で私にも教えて頂戴な。ではこちらもそろそろ始めましょう。
だけど……本当にいいのかしら?」
「あぁ構わん。砂隠れだけでなく、木の葉を敵視する連中に思い知らせる良い機会でもある」
木の葉崩しにおいて大蛇丸は綱手を倒し仕留める役ということになっているが、本人にそのつもりがなく適当に時間稼ぎさえすればいい。
何なら示し合わせて幻術を映すだけでもいいだろう。
だが綱手は大蛇丸との全力での戦いを望んだ。しかも1対1でなく彼の後ろにいる部下4名と治したばかりの君麻呂も含めて、1対6だ。
おまけに『もし大蛇丸が勝てたのなら要求を一つ追加して良い』という条件付き。
無論、互いに一線は越えないとも約束している。
「あらそう、なら存分にやらせてもらうわ……!」
大きな餌につられて大蛇丸が動き出す。
彼も綱手の実力が、かつての彼女を大きく上回っていることを理解している。
それでもこの人数ならば十分に勝ち目があると判断していた。
ボゥッ!!
「「「「「「!?」」」」」」
その考えが甘かったと、綱手が炎を纏った瞬間に悟った。
彼女が強いことを理解していても、どれほど強いかを理解していなかった。
(なんて力……尾獣なんてとうに超えてるじゃない……!
それこそ砂と音の全てを注ぎ込んでようやく、綱手一人を止められるかどうか……!?)
そして木の葉の忍びは綱手を守るために死力を尽くすだろうし、綱手が生き残っている限り木の葉の忍びは何度でも蘇る。
綱手が火影である限り、木の葉崩しなんて最初から成功するはずがなかったのだ。
綱手が預かった天神武装は、本来ならとっくに第三段階に達していてもおかしくないレベルにまで燃え盛っている。
だが徒手空拳が主体である彼女は特別な武装を求める理由がなく、むしろ第一段階を極限まで鍛え上げた方が自分のスタイルに合っていると判断した。
だから敢えて段階を進めぬまま炎を練り上げて来た。
本来はチャクラをため込む印として研究していた『白毫』を活力の炎もストックできるように組み換え、自己強化及び自己活性の出力と持続時間を限界まで伸ばしてきた。
「故に長年ため込んできた炎が尽きるまで、私は不眠不休で戦えるし死ぬこともない」
「……ちなみに、どれくらいため込んでいるのかしらぁ?」
「そうだな……これから蓄積することを止めたとしても、普通に生きるだけなら30年はこのままだな」
「……『このまま』?……まさかっ!?」
今までで一番の驚きを見せる大蛇丸に、綱手は不敵に笑う。
「そういうことだ……私は一度たりとも、この姿が『変化』だと言った覚えはないぞ?」
ヒノカミが編み出し綱手に託された『天神武装』には『霊光波動拳』の要素も含まれている。
その使い手は出力を高めることで肉体が活性化し一時的に全盛期の姿……つまり『若い姿』になるわけだが、ならば活性化した状態を常に維持できるだけの出力があれば『その間は老化が止まる』わけだ。
綱手の実年齢は50を超えるが外見年齢は20代半ば。
これは若作りではなく、その頃に肉体が老け止まったからだ。
すなわち綱手は、己がそうあろうとする限り『不老不死』である。
大蛇丸が外道に落ちぶれてでも手に入れようとしたものを、綱手はとっくに手にしてしまっていたのだ。
「……どうやらこの勝負、意地でも勝たなくちゃいけなくなったみたいねェ……!」
「そうするといい。私に勝てたならば、ヒノカミを紹介してやろう」
「私に『死ね』と?」
「クク、冗談だ。……非道でない方法でなら、お前の不老不死の研究に手を貸してやる」
「二言はないわね?……行くわよ、お前たち!」
「「「「「はっ!大蛇丸様!」」」」」
遂に両雄が激突し、そのチャクラと衝撃が木の葉の里全土に響き渡る。
木の葉も砂も音も関わらず、里にいた忍び全てが『最強の火影』の力を思い知ることとなる。