『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第3話

『そこまで。

 ……5分ですか。意外と持ちましたね』

 

「いやぁ、活きのいい若者を見るとな。

 ついついどんな手を使ってくるのかと楽しみになってしもうた」

 

『アナタも若者でしょうに……』

 

武装錬金を解除したヒノカミは、部屋の外で見学していた照星と通信越しに呑気に会話している。

彼女の目の前には息を荒くした火渡と防人が四つん這いになって項垂れていた。

 

「クソ……そんな武装錬金アリかよ……!」

 

『言ったでしょう?アナタでは『相性が悪すぎる』と』

 

「ンなレベルじゃねぇだろ!

 ……マジで消されるかと思った……!」

 

「文句を言いたいのはオレの方だ……いっそ火渡と組まない方が善戦できたんじゃないか……?」

 

『いえ、大差はなかったと思いますよ。

 彼女がその気になれば5秒で終わっていたでしょうから』

 

「……不条理だ……」

 

錬金戦団最高の攻撃力の武装錬金を持つ天才戦士。

その自負は徹底的に打ち砕かれた。

例えこれからどれだけ己を鍛えようと、武装錬金の扱いに習熟しようと、絶対に勝てない相手がいると思い知らされた。

 

「火渡、これで認めてくれるな?」

 

「あぁクソ!勝手にしろ!!」

 

「うむうむ。ではすまんが先に戻る。

 急いで出立の準備をせねばならんからなー」

 

ヒノカミは部屋の扉を開けて疲れた様子も見せず軽快に出ていき、入れ替わりで照星と千歳が入って来た。

 

「……照星サン。なんでアイツが技術科なんだ?」

 

「彼女自身の意向もありますが、その方が戦団のためになると判断されたからです。

 『誰でも使えてホムンクルスにダメージを与えられる簡易武装錬金』。

 『装備した者の自己治癒能力を高める治療専用の核鉄』。

 『ホムンクルスと人間を見分けるセンサー』。

 これらはすべて彼女の発明品です」

 

「「「はぁっ!?」」」

 

照星が挙げた道具は、彼らも見習い時代に世話になったものだ。

どれも近年開発されたものだが、長き戦団の歴史における革命的発明だったと聞いている。

お陰で戦団における戦士や戦士見習いの死者数が激減したとも。

彼女は火渡たちと同い年だと言った。つまり彼女はまだ20歳。

 

「彼女が戦団に参加したのは10歳の頃です。

 あまりの実力故、見習いを経由せず即座に戦士と認められました。

 前線で活動したのはわずか4年ですが、その間に彼女は戦士の一生における平均撃破数を超える数のホムンクルスを倒しています。

 若くして戦団最強の戦士と呼ばれたこともあったのですが、彼女は技術科に転向しました。

 反対は大きかったんですが僅か数年で先ほど挙げた数々の発明を行い、その頭脳を失うのは惜しいと、戦場から遠ざけられたんです」

 

「そんなスゴイ人だったんですか……!?」

 

「……カッコイイな!」

 

「医者としても超一流ですよ。

 彼女の治療を受けて、負傷を理由に戦士を引退した者は今のところいません。

 特に彼女の作る生体義肢は本物と寸分たがわぬ出来で、戦団の医療機関を通じて一般社会にも普及しています。

 それによる膨大な利益が戦団を支えているのです。

 ……わかりましたか?戦士・火渡。

 あれが本物の『天才』です」

 

「……くっそぉ!!!」

 

彼らが知るはずもないが、ホムンクルスと人間を見分ける方法は『死神の世界』で知った霊圧の有無。

義肢は浦原から学んだ『義骸』の技術を応用している。

何百年も進んだ未来の『ヒーローの世界』で記憶していた知識もあり、まさに彼女の頭脳は『数世紀先』を行っている。

本人が居れば否定しただろう。

『自分は天才でなく努力型だ』と。

背景が特殊すぎて信じてもらえないだろうが。

 

「今回彼女の同行の許可を取るのも、非常に渋られたんですよ?

 ですがアナタ方、将来有望な戦士の糧になるならと特別に許可が下りたんです。

 ……放っておけば勝手をしそうだという事実もあったんですが」

 

何しろ彼女は自由奔放なので。

功績の割に彼女の知名度が低いのはそのせいでもある。

錬金戦団の関係者とは大半がホムンクルスの被害者。

激しい憎悪に燃えており、一体でも多くのホムンクルスを倒すためなら部下や一般人を犠牲にする輩までいた。

そういう人物は真っ先にヒノカミの犠牲になった。

彼女は技術者や医者として多くの人々を救ったが、身勝手に粛清した戦士や幹部の数も尋常ではない。

それでも彼女が未だ高い地位にいるのは『それ以上に優秀で強い』から。

具体的には、離反されたら戦団の処理能力が半壊し、それを鎮圧しようとしたら戦団の戦力が半壊する。

触らぬ神に祟りなし。

付いたあだ名が『鬼のヒノカミ』。

 

「真っ当な人間であれば頼もしい味方になってくれますがね。

 ……彼女を怒らせたら、私の比ではありませんよ?」

 

「「「!?」」」

 

問題行動を起こした部下に躾と称して笑いながら暴行を加える照星をして、自分の比ではないとはどれほどなのか。

3人のルーキーは明日からの長期任務に、敵ではなく味方に怯えながら臨むことになった。




錬金戦団のやり方が合わず、ヒノカミが相当暴れました。
そのせいで彼女は『暴君』と認識され恐れられていますが、錬金戦団亜細亜支部は真っ当な組織になっています。

以前設定紹介で書きましたが、OMTの副作用で主人公の記憶力はかなり高いです。
完全記憶とまではいきませんがそれに匹敵します。
……だから過去の世界での大切な人たちとの思い出も、全部覚えています。
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