『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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本作品は基本的に原作コミックのみを扱っていますが、今回だけ過去編を描いた外伝に少し触れています。


第4話

瀬戸内海に位置する赤銅島。

ここでホムンクルスによるものと思われる失踪事件が多発しており、大規模な行動を起こす前触れと判断した戦士長・坂口照星が、3人の部下に対処を任せることにした。

その任務にヒノカミが割り込んだ形だ。

3人はそれぞれ与えられた役割を演じつつ調査を行うことになっていたのだが。

 

「まさか本当に子供たちがホムンクルスだったなんて……」

 

数日後、夜中に集まった3人とヒノカミが隠れて話し合う。

島に入って間もなく、ヒノカミが遠目で見た瞬間に子供たちを『ホムンクルス』と断定。

教師として赴任した千歳がホムンクルスを識別するセンサーを内蔵した眼鏡で直接視認し、確定となった。

センサーの有効射程距離は数メートルと非常に短いが、その実績から判別精度を疑う者はいない。

 

「そりゃ儂の判別能力を機械で再現したものがそのセンサーじゃし。

 儂の方が本家本元で精度が高いんじゃよ」

 

「なんでそんな能力持ってんだよテメェ……」

 

「それは秘密じゃ。『その方がカッコイイから』な!」

 

「くそう、カッコイイ!」

 

うまく説明できないことのいい訳として防人の口癖は非常に便利だったので、この短期間で何度も使わせてもらっている。

超常的な力を発揮するとはいえ錬金術はあくまで科学。

魂やら霊やらを彼らが受け入れるとは思えないので。

 

元が生物であろうと、ホムンクルスは機械仕掛けの怪人。

生物なら持っているはずの『霊力』がないため『霊圧』を発していない。

霊圧探知機なら『死神の世界』ではありふれたものだ。

専用の材料や設備がなかったので、粗悪品を作り出すことすら難儀したが。

 

「後は、誰が主犯かだな」

 

後顧の憂いを絶つためにも主犯を見つけ出し、研究施設や資料もすべて破棄しなくては。

手当たり次第に駆除していては、錬金の戦士の潜入に気付いた主犯が逃げ出してしまうかもしれない。

 

「そこは地道な調査しかなかろうな。

 主らはそれぞれの立場で引き続き情報収集を頼む。

 尾行や島全域の実地調査は儂がするでの」

 

千歳は教師、防人は名家の使用人と戦団があらかじめ演じる役割を用意していたが、急遽任務に割り込んだヒノカミはそれがない。

旅行に来るような場所ではないので背景がなければ島民やホムンクルスたちに怪しまれてしまうところだが。

 

「では、問題が起きなければまた明日の夜に」

 

「っ、消えた!?やっぱりヒノカミは忍者なんだ!」

 

彼女は夜一譲りの隠密活動で島に入ったことすら誰にも気付かせなかった。

あらかじめ聞かされていても、時折自分たちのことも陰から見ているなど信じられない。

 

「武装錬金……じゃ、ないよね……?」

 

「特性が違うからありえねぇよ。

 ……マジでなんなんだアイツ」

 

更に数日間の監視と調査により、小学生の振りをしていた少年型のホムンクルスが首謀者と断定。

速やかに確保し、他のホムンクルスを一掃して任務は終了となった。

しかし討伐現場をホムンクルスのクラスメイトだった少女に見られてしまい、怪我を負わせてしまった。

この島の医療機関は戦団とは無関係なため、秘匿のために彼女も支部に連れていきそこで治療することになった。

 

「あの子は?」

 

「大丈夫。ヒノカミが見てくれてるわ。

 少なくとも命に別状はないって」

 

「そっか……まだまだだな、俺たち」

 

「……チッ」

 

防人たちは支部の休憩室で今回の任務を振り返っていた。

真っ先にホムンクルスに気付いたのも、首謀者を見つけ出したのも、誰よりもホムンクルスを多く倒したのも、すべてヒノカミだった。

自分たちより長く戦団で戦ってきたベテランだとしても、同年代相手にここまで差をつけられれば堪えもする。

 

一方、医務室にて治療を終えた件の少女と応対していたヒノカミだが。

 

「……思い出せんか?」

 

「……はい」

 

「そうか……無理もないな」

 

ホムンクルスの首謀者を追い詰めたのは奴の研究室。彼女はそこに居合わせてしまった。

非道な実験の現場やらホムンクルス共の食い残しやらが散乱しており、10歳の何も知らぬ少女が目にするには刺激が強すぎたのだろう。

その光景を過去の自分の記憶と共に封印してしまったらしい。

 

「さすがに心因性の病は儂でもな……暫くは戦団(ウチ)で面倒を見よう。

 巻き込んだのは儂らじゃ。不自由はさせぬと約束する。

 お主の保護者にも儂らから説明しておこう」

 

「ありがとう……ございます……」

 

ヒノカミは自身の失態を恥じていた。

久しぶりの現場だったとはいえ一般人を、それもあろうことか子供を巻き込むとは。

原因は防人たちのミスによるものだが、それをいい訳にするつもりはない。

端的に言えば、この時の彼女は苛立っていた。

 

「……後ろの。入るつもりならとっとと入って来い」

 

「……へぇ、気づいてたんだ」

 

「ひっ……!」

 

扉を開けて侵入してきたのは手枷をつけられた少年。

今回の事件の首謀者である人間型ホムンクルスだ。

尋問のために生かしたまま連れ帰ったが、どうやら独房から脱走したらしい。

遅れて施設にサイレンが響く。

 

「見るな。暫く目を塞いでおれ」

 

ヒノカミはシーツを少女に被せ、彼女を庇うように立ちはだかる。

 

「へぇ、おねぇさんが戦うんだ。

 でも戦士なんでしょ?だったら核鉄持ってるよね?」

 

島の事件で目の前のホムンクルスを捕らえたのは火渡だった。

彼はヒノカミが戦う姿を見ておらず、その力量を把握していない。

彼女が隠密行動を担当していたことは知っているので、戦闘力は他の3人に劣ると思い込んでしまった。

 

「……これじゃろ?」

 

そういって懐から彼女の核鉄を取り出す。

 

「ちょうだい!!」

 

ホムンクルスは牙を向き、爪を伸ばして襲い掛かった。

ヒノカミの顔面を切り裂こうとするが、彼女は微動だにしない。

 

「……え?」

 

振るったホムンクルスの爪が折れた。

ヒノカミは薄皮すら傷ついていなかった。

 

「貴様にこれは使わんよ。……すぐに終わってしまうからな」

 

そういってヒノカミは再び核鉄を懐に戻す。

彼女は生身の腕をホムンクルスの首に添え、乾いた小枝のようにへし折った。

 

「へぎゅ?」

 

「どれだけ壊しても壊れないサンドバック……憂さ晴らしには丁度良いわい」

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