『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第7話

千歳が説明のために一度支部に戻り、その翌日。

ヴィクトリアたちは千歳により一人ずつ転移能力で戦団の一室に運ばれる。

彼女とはなんだかんだ長い付き合いなので、ヴィクトリアも千歳のことは信頼している。

支部に運ぶ振りをして自分たちを罠にかけるとは疑っていない。

だが他の戦団の連中は話が別だ。

扉の向こうの大広間には、ヒノカミが集めるように指示した錬金戦団の関係者たちが待ち構えている。

 

「……」

 

「案ずるな、お主らは絶対に儂が守る」

 

ヴィクトリアの不安を感じ取ったヒノカミが肩を叩いた。

ヴィクトリアはホムンクルス。彼女は錬金の戦士。

明確にヴィクトリアたちに味方することは戦団への敵対宣言に等しい。

だからこそ彼女は今日まで戦団から距離を取り、極秘裏に協力していたのだから。

 

「……信じていいのね?」

 

「無論じゃ!悪辣な手段に訴えるようなら、戦団と一戦交えることも覚悟の上よ!」

 

「お願いやめて」

 

千歳が真顔で即座に止めた。

戦団の中で2番目にヒノカミのことを知っているのは彼女だろう。

ヒノカミの持つ、よくわからない力のことも。

ヴィクターだけでも大変な状況なのに彼女まで敵に回られたら本気で錬金戦団が終わる。

 

「……行きましょう」

 

「……うん」

 

アレキサンドリアに促され、ヴィクトリアは扉を開けた。

 

「お待ちしておりました」

 

大勢の職員を背後に従えた、神父のような格好の男性が彼らを出迎える。

 

「私は、錬金戦団亜細亜支部の大戦士長を務めております。坂口照星と申します」

 

「アレキサンドリア・パワードです。

 そして娘のヴィクトリア・パワード。

 ……この度は」

 

「いえ、その言葉の続きは結構」

 

戦団に招いたことの感謝か、夫が迷惑をかけていることの謝罪か。

いずれにしてもそれは言わせないと、照星は彼女の言葉を遮る。

 

「申し訳ありませんでした」

 

そして彼は帽子を取って深々と頭を下げ、背後の部下たちも一斉にそれに続いた。

 

「……え?」

 

「アナタ方への非道の数々、戦団を継ぐ者として謝罪させていただきます。

 ……すべて戦士・楯山千歳より聞き及びました。

 ヴィクター氏の怒りも……無理もないことです」

 

気付けば千歳も照星の隣に移動し、同じように頭を下げていた。

 

「許しを得ようなどとは思っていません。

 ですが汚名を雪ぐ機会をいただきたい。

 白い核鉄製作への助力、我らが全力を持って当たらせていただきます」

 

「……そう言って研究成果を盗むつもりじゃないの?」

 

「ヴィクトリア!」

 

「その懸念は最もです。

 ですがここにいる技術者たちは『ヒノカミのかつての部下』……。

 その一言でご納得いただけませんか?」

 

「……あー……」

 

つまり怒った彼女の怖さを知る者たちということだ。

回道とか言う不思議な力を持つからこそ、『治るんじゃからええじゃろ!』と拷問染みた折檻を行う姿が脳裏に浮かぶ。

 

(あ、何人か青ざめてる奴がいる)

 

これなら信用しても良さそうだ。

 

「集めたのは亜細亜支部の者だけか?」

 

「えぇ。本部が煽っていることもあり、他の支部の者たちはヴィクター氏への敵意が強すぎます。

 もっとも、戦団最大の勢力を誇る我が支部の協力がない状況では彼を討つどころか、今のところ彼の捕捉すらできていないようですが」

 

「……そうなの?チトセ」

 

「えぇ。大戦士長を筆頭に、戦団トップクラスの戦士の大半がココに所属しているわ。

 私たちがヴィクター討伐に消極的である以上、彼が討たれることはありえない」

 

「ですが我々がアナタ方に協力していると知ればそれを理由に糾弾してくるでしょう。

 なのでこの会談は我が支部の戦士たちにも秘密にしています」

 

言われてみれば照星の後ろにいるのは白衣を着た研究者ばかり。

戦士に見える者は一人もいない。

 

「これからのプランを説明します。

 アレキサンドリア氏はヴィクトリア嬢と共に白い核鉄の精製に専念してください。

 我ら支部の施設と技術者を自由に使っていただいて結構。ヒノカミも助力を」

 

「えぇ」「うむ」

 

「一つ目の白い核鉄が完成しているところ申し訳ないのですが、ヴィクター氏への投与は今しばらく待っていただきたい。

 敵視する人間が多い状況で彼から戦う力を奪うと、彼自身が危険です。

 ……余計な戦力・勢力はヴィクター氏に削っていただきましょう」

 

「うわ、腹黒。

 他の戦士たちを見殺しにしてもいいの?」

 

「死人が出る可能性は低いでしょう。

 我が支部に多くの優秀な戦士が所属しているからこそ、他の支部にとって戦士は貴重な人材です。

 それを使いつぶすような真似はしたくともできません。

 そしてエネルギードレイン能力を持つヴィクター氏相手では雑兵では役に立たない。

 おそらく、遠方からミサイル等の火器でちょっかいを出すくらいが関の山です。

 大量の資金と資材を費やして、ね」

 

「特に本部連中は口だけじゃからな。前線には絶対出ぬ。

 音頭を取る者がそれでは他も続かぬよ」

 

「なので普段から私たちのところにお鉢が回ってくることが多く……結果、戦力が偏ったのです」

 

「……アンタも苦労してるのね」

 

「ご理解いただけてなにより。

 私は我が支部の動きを隠しつつ、戦団本部から強制参加命令を出されないように立ち回り時間を稼ぎます。

 二つ目の白い核鉄が完成した直後にヴィクター氏と戦士・武藤カズキの両名を保護。

 黒い核鉄をこの世界から抹消し、その功績と本部の過去の失態を盾にヴィクター氏らの安全を勝ち取ります」




・元はヨーロッパの組織で世界中に支部がある。
・対ヴィクター戦で活躍しているのが日本人(亜細亜支部)ばかり。
・坂口照星の権力が大きすぎる。
以上より妄想を膨らませ物語に都合の良いように肉付けした結果、錬金戦団に関しては本作ではこのような設定となっています。
亜細亜支部はヒノカミが暴君として君臨したので真っ当な組織になりましたが、本部や他の支部は原作と大差がないという状況です。
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