『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第9話

「防人……いや、キャプテンブラボー。

 何があろうと仲間を守り抜こうとしたその気概、あっぱれじゃ。

 後先考えずに動いたことは褒められるべきではないが、儂は手放しでお主を称えたい。よくやったぞ」

 

「……ありがとう、ございます」

 

「火渡。

 いかなる理由があろうと共に戦う仲間を殺そうとしたことは許せぬ。

 しかし友を想うその心は清く美しい。

 よって……1/3殺しで勘弁してやる」

 

「……不条理だ……」

 

乱入者が現れて数分後。

ブラボーの隣にはヒノカミによってボコボコにされた火渡が転がっていた。

その上での説教を受けているのである。

殺されかかった身だが、カズキは火渡という男に同情した。

 

「さてそれから……」

 

「ぴぃっ!?」

 

「斗貴子さん?」

 

ヒノカミが振り向きカズキ達に視線を向けると同時に、ヒノカミの背後で千歳とブラボーが火渡を介抱し始めた。

実になれた手つきだ。

 

「おおきゅうなったな。

 ここしばらくは顔を合わせておらなんだが、元気そうで何よりじゃ」

 

「は、はい。

 ひのかみさまもごけんしょうのようで……」

 

「……斗貴子さん?」

 

普段のクールで凛々しい彼女はどこへ行ったのか。

ヒノカミという女性から身を隠すかのように、カズキの後ろで縮こまり震えている。

無理もない。かつてホムンクルスの事件に巻き込まれ心因性のショックから記憶を失ってしまった彼女だが、その直後にヒノカミがホムンクルスに加える暴虐の数々を間近で目にしてしまい、別のトラウマが刻み込まれてしまったのだ。

やがて弱い自分と決別するために錬金の戦士になることを決め、歩み続けてきた結果今の彼女があるのだが……残念ながらこの調子では完治は程遠いだろう。

 

「で、少年。お主が武藤カズキか?」

 

「え?あ、はい。……アナタは?」

 

「儂は『ヒノカミ』。錬金戦団亜細亜支部の、元技術局長じゃ。

 暫く戦団を離れておったが、此度の事件を聞きつけ舞い戻ったのよ」

 

「あ……」

 

それは自分がヴィクター化したことを指しているのだと気付いて表情が陰り、会話を聞いていたブラボーが叫ぶ。

 

「ヒノカミ!彼は、まだ人間です!!

 どうか……どうか彼の命は!!」

 

「落ち着いて、防人くん」

 

飛び出そうとしたブラボーを千歳が押しとどめ、カズキの背中で震えていた斗貴子もカズキの前に飛び出してヒノカミの前に立ちはだかる。

 

「案ずるな。少年を人間に戻す準備なら先ほど整った」

 

「「「……は?」」」

 

カズキ・斗貴子・ブラボー・火渡が呆気にとられ硬直した。

 

「隠していてごめんなさいね、防人くん。火渡くん。

 ヒノカミさんは戦団を離れた5年前から外部の協力者と共に、ヴィクターを人間に戻す方法を研究していたの。

 それがつい先日完成したのよ。当然、武藤カズキくんにも応用できるわ」

 

「「「……はぁぁあっ!!?」」」

 

「しかしその協力者がちと訳アリでな。

 故に連絡役の千歳にしか明かしておらなんだ。

 じゃが二人目の黒い核鉄の持ち主が現れたとなればなりふり構っておれんので、照星に協力を仰ぎ支部の技術者連中の力を借りておったのよ。

 反対する者も出るかもしれんからと、極秘でな」

 

「では、俺の情報開示要求に対して大戦士長が消極的だったのも!?」

 

「余計なことを知って先走らんようにするためじゃ。

 このような事態になるのなら主らには伝えておくべきであったな」

 

「……なんだよそりゃ……」

 

結局ただの勇み足で馬鹿をしでかしただけ。

まさに骨折り損のくたびれ儲け。火渡は地面に体を投げ出した。

ちなみに比喩表現なので骨は折られていない。ヒビは入ったけど。

 

「という訳で、武藤カズキくんは支部に来て頂戴。

 ヴィクターに関する情報開示と対処についての会議も同時に行う予定だから、他の戦士たちも集めているわ。

 防人くんや津村さんも参加してね」

 

この人数では千歳が一人ずつ運ぶわけにもいかないのでブラボーの運転してきた車で向かう。

カズキたちは途中で旅行から抜けることを申し訳なく思っていたが、友人たちはカズキたちの表情が明るくなっていることに気付き、ブラボーも同行するということで快く送り出した。

戦団支部に到着し、大戦士長や件の協力者が待つという大広間に案内されたが。

 

「……おい。協力者ってのは、まさかそのホムンクルスのガキのことじゃねぇよな?」

 

「「!?」」

 

「そのまさかじゃ。彼女が協力者の一人、ヴィクトリア。

 そしてもう一人が彼女の母にしてヴィクターの妻、アレキサンドリアじゃ」

 

「フン!」「よろしくね」

 

「ヴィクターの、家族!?」

 

紹介された協力者とは、幼い少女の姿をしたホムンクルスと、車椅子に座っている女性。

 

「……そっちの女はホムンクルスじゃねぇだろ?

 100年前の人間が生きてるって……おかしくねぇか?」

 

「まずはそこから説明しよう。

 ……全員集まっておるな?

 皆心して聞け。これはかつての戦団が犯した許されざる罪の話じゃ」

 

すでに事情を知らされている技術者に加え、集められた職員と錬金の戦士たちの前に照星が踏み出す。

 

「事はヴィクター氏に黒い核鉄を移植する当時に遡ります」




この世界の斗貴子には顔の傷がありません。
トラウマもホムンクルスとはあまり関係がなく殺意も控えめで、必死に強がってるツンツン少女です。
……ブラボーたちを救いつつ、斗貴子に戦士になってもらうために、ヒノカミに失態をしてもらった形になります。
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