地獄!?転生先地獄なの!?なんで!?   作:アーチマン

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 バプテスマのヨハネが現れ、ユダヤの荒野で教を宣べて言いった

「悔い改めよ、天国は近づいた」

 ━マタイの福音書第三章より━



第一章:蛸と罰
善意(なごり)/祓魔の後


 

 

 

 あれはいつだったか。

 

 

『ありがとう』

 

 

 嬉しそうな、そして照れたような、そんな顔をする君。

 小学校でいじめを受けていた君を、僕はどうしたんだっけ?

 

 助けたような気がする。無視したような気もする。

 

 どうして?どうしてだろうね?

 ただ一つ、僕の中にあったのは漠然とした疑問だった。助けたことではなく、この丸々とした人生にである。

 

 僕はいつも不思議に思っていた。善いこととはなんだろう。

 

 

『善いこと?そりゃあ、弱きを助け!強きを挫く!……とまでは言わないけど、困ってる友達の助けになってあげることかな?お父さんを助けるでも良いぞ!!ほら!手を!!ハリィィィィィ!!』

 

『善いことはねぇ…相手と自分が幸せになれるようなことすることじゃない?…いや、お母さんは良いのよ?なんっでも相談に乗るわ!』

 

 

 両親の答えはどこか似通っていた。だから当時の僕は善いこととは"嫌"をしないことだと認識した。

 

 いや、確かにそれでも良いけど今なら少し違うということは分かる。

 当時の僕はいじめを止めようと奔走した訳でもなく、友達のことを心配していた訳でもなく、特に何かしようとしたことはなかった。

 

 ただ僕は"嫌"なことを行わなかっただけだ。たとえ僕以外の人から"嫌"なことをされている人がいたとしても。

 

 でも━━

 

 

『ありがとう』

 

 

 そう言われたのを僕は覚えている。

 

 あれ?僕は何をしたんだっけ?

 

 

 ふと背後で、コンコンコンとノックが鳴る。

 

 

 びっくりして振り返る。するとそこには扉があった。ドアノブの付いた藍色の扉。

 

 

「■■くーん、あーそびーましょー!」

 

 

 声がした。幼く、底なしに明るい大きな声が。

 

 どこかで聞いたような、どこか■■するような、どこか満たされるような、その声が。

 

ぱちぱち、ぱちぱち

 

「…!」

 

 ━━瞬間、世界が形づけられる。

 

 目を見開く。

 僕は小さな家の中にいた。見覚えがある家だ。

 ここは………僕が中学生になる前の、両親が死ぬ前に住んでいた家だ。

 

 

「■■くーん、あーけーてー!」

 

 

 静寂の部屋に高い声が響く。

 

 

「君は…」

 

 

 小学生の頃、いじめを受けた……受けた?

 いじめがあって……僕は……その子を……助け…た…?

 

 あれ?…いじめを受けたのは━━━━

 

 

「誰だ?」

 

 

 扉は何も語らなかった。

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 

 旅立ち。それは新たな生活の始まり、新たな選択の連続、そして、新たな人生の始まりである。生物は皆、餌を求めて、番を求めて、安住の地を求めて旅に出るのである。

 

 

「今思ったんだけど、たこってさ…どれだけ長く生きてるの?」

 

 

 先ほどから蛸の悪魔の上でうつ伏せのまま質問を繰り返す彼の名前は因果の悪魔。この間、天使の悪魔を地獄にて滅ぼし現世に直送、のち現世をパニックに陥れた張本人である。

 

 あれから1日が経った。彼はチェンソーマン世界の『悪魔』というものを知るため、何かしらの方法で情報を得ようと考えた結果、蛸の悪魔を捕まえ、それに質問攻めをしていた。

 

 

 ーあ、はい。70年ほど生きてます…

 

「ふーん」

 

 ー……。

 

「ねえ、そんなにさ、足に目が付いてて酔わないの?」

 

 ー酔う?悪魔は酒に酔わないですし、船酔いするほど柔な身体はしておりません。

 

「ふーん」

 

 ー………。

 

 

 なんだコイツ!!!

 

 蛸の悪魔はうんざりしていた。質問されるのはまだ良い。まだ良いのだが反応があまりにも淡白すぎやしないか!?興味がないなら質問をするな!!

 

 蛸の悪魔は知能が高い悪魔である。思考能力は人間のそれであり、臆病で狡猾、さらには年月を重ねた経験があった。

 事実、因果の悪魔は前世含めても15ほどのひよっこであり正しく祖父と孫ほどの差があった。

 

 

「あ、そうだ、たこは地獄の悪魔の場所って知ってる?」

 

 ーいえ、知りません。

 

「僕も知らない」

 

 

 彼はもうウンザリだった。先ほどから延々と質問攻めを受け続ける苦痛。頭の上にいる悪魔からの一方通行のせいで会話のキャッチボールが成立しないというもやもや。

 ーこれならまだ悪魔を狩る方が楽しい。彼はそう思う。

 

 

「あ、悪魔だ」

 

 ー! うるぉああ!

 

 

 筋肉質な触手がしなる。豪速で放たれた触手はトマトの悪魔を叩き潰した。気晴らしの犠牲者の赤い体液(トマト汁)が飛び散る。

 

 

「えぇ…話聞かないの?」

 

 ーあれはトマトの悪魔です。我はヤツが喋っているところを見たことがありません

 

 

 驚きに目を見開いていた因果の悪魔。どうやら何か思案しているようだ。おそらく下らないことであろう。彼はそう思った。

 

 そのままだんだんと気だるげになっていった因果の悪魔は蛸の悪魔に問う。

 

 

「そんな速く触手振るって付いてる目とか腕とか傷まないの?」

 

 ー大丈夫です。ほんとにはい。気にしないで下さい。

 

 

 蛸の悪魔が早口でそう言う。

 

 もう20分は続いたとされる質問の嵐。これ以上の質問は頭がおかしくなりそうだった。もうやめて下さい…。

 

 だがそこは因果の悪魔、彼は生きてきた年月の少なさゆえか悪魔としての本能なのか空気が絶望的に読めなかった。

 もしかすると読まなかったのかも知れない。

 

 

「ふーん。それよりさ、君って好きな食べ物ってあるの?悪魔って恋とかするの?悪魔って人類の敵なの?」

 

 ーちょっと静かにお願いします悪魔探してます話しかけないお願いします。

 

「えー、つまんなー」

 

 

 因果の悪魔は退屈だった。彼はスレッドが終わりを告げてから今に至るまでずっと掲示板を利用していなかった。いや、出来なかった。

 

 それはひとえにスレの立て方が分からないからである。スレ民はうっかり彼にスレ板を立てる方法もスレ板を検索する方法も教え損ねていた。新人との接触経験が少ない故の事故である。

 

 

「地獄って草原が続くだけの場所なのか…凹凸はあるけど…。つまらん……本当につまらん…いや、危険なことよりはマシだけどさ…」

 

 ーいえ、一応草原以外もありますよ。ただ一番安全なのがここというだけです。

 

「あるんだ…よし!行こうか!あの扉渡れば良いの?」

 

 ーお待ち下さい!話聞いてましたか!?迂闊に扉を開くと危険です!

 

 

 蛸の悪魔が警告する。彼はこの地獄の数少ない中堅の1人である。その言葉はそこらのぽっと出の悪魔(因果の悪魔)よりも格段に説得力があった。因果の悪魔は退屈だったが危ないのは嫌なのですぐに扉は諦めた。

 

 だがやはり因果の悪魔は退屈だった。せめてもう一度スレッドを開けたらなと切実に思う。だがやり方が分からない。分からないし知るあても無いので彼はもう当てずっぽうで試すしかなかった。

 

 とりあえず、パッと浮かび上がった言葉を叫ぶ。

 

 

「出でよ地獄を脱出するスレ!出でよ地獄を脱出するスレ!出でよ地獄を脱出するスレ!」

 

 ーうわびっくりした。

 

 

 ピコン

 

 【終わりなき】地獄を脱出するスレ【旅路】

 

 

「あ!出来たーーー!」

 

 ーうわ、大丈夫ですか?頭。

 

 

 なんと彼は何となくでスレ立てしてしまった。なんだかんだ終わりよければ全て良し。スレ民大歓喜。これには因果の悪魔もニッコリ。世界は少し幸福になったのだ。

 早速彼はスレを使う。

 

 

 

 

 

 

 

★☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

1:チェンソー世界の悪魔

出でよ地獄を脱出するスレ!

 

2:名無しの転生者

お?

 

3:名無しの転生者

おっとっと?

 

4:名無しの転生者

イッチだ!悪魔イッチが帰ってきたぞー!

 

5:名無しの転生者

正直、あと数日は帰ってこないと思ってた

 

6:名無しの転生者

そのスレは、我が友、李徴子ではないか?

 

7:名無しの転生者

イッチ!スレ立て出来たんか!

 

誰も教えてなかった気がするんやが

 

8:ショタコンの勇者

はあはあ!

私はもう君がいないとダメな身体になっちゃったよ…

マイスウィートハニー…

 

9:名無しの転生者

良かったでイッチ

死んでしまったかと思ったわ

 

10:チェンソー世界の悪魔

>>7そうだよ!誰も教えてくれなかったじゃん!

 

退屈だったんだけど!

 

11:名無しの転生者

いやごめんて

 

12:名無しの転生者

すまんすまん

うっかり忘れてたわ

 

13:名無しの転生者

久々のビギナーだったから…つい…

 

14:ショタコンの勇者

え、かわいい

 

15:名探偵

お?イッチやないか

まあまあ早かったな

 

16:名無しの転生者

ごめんて

謝るからゆるして?

 

17:世話焼きの獣

助けて

 

18:名無しの転生者

それよりもイッチ!

なんか進展あったか?

 

19:名無しの転生者

イッチや…

昔のことなんてひきずるもんじゃない…

ゆるして?

 

20:名無しの転生者

面倒な男は嫌われるゾ

 

21:ショタコンの勇者

>>20 ショタが嫌われるわけないだろころすぞ

 

22:チェンソー世界の悪魔

>>18ないですね

ただ、強いていうなら蛸捕まえました

 

23:名無しの転生者

>>21ひえ

 

24:名無しの転生者

>>21狂ってやがる…

 

25:名無しの転生者

>>21見ておるか?

あれがショタ以外を切り捨てた人間の末路じゃ…

 

26:名無しの転生者

>>25怖いですね…

 

27:名無しの転生者

今北産業

 

28:名無しの転生者

>>22蛸…?

 

29:名無しの転生者

>>22蛸の悪魔のことだよな?

 

30:名無しの転生者

>>22屈服させたのか…

 

強い(確信)

 

31:名無しの転生者

>>22逃げたのに捕まったのか…

 

方向音痴属性持ちか?

 

32:名無しの転生者

>>22たこさんを虐めないで!

 

33:チェンソー世界の悪魔

今ペット兼移動用の足兼話し相手にしてる

 

34:名無しの転生者

悪魔をペットに…

なるほど理解しました

蛸の悪魔の寿命はもってあと数年です

 

35:名無しの転生者

おいおい…

 

話し相手はワイらがおるやろ?

 

36:名無しの転生者

。゚(゚´Д`゚)゚。

 

37:名無しの転生者

浮気…か…

 

38:名無しの転生者

因果の悪魔はね、

友達なんて作らないし

悪魔は信用しないし

独り孤独にスレだけやってなきゃいけないの。

 

39:ショタコンの勇者

ペットか…

 

なるほど

 

40:名探偵

…ダメだこいつら

イッチ…こんなやつらには見切りつけてええけど掲示板にだけは見切りつけんといてな…

 

41:名無しの転生者

>>40無理だろ、この有様だよ?

 

42:名無しの転生者

>>40まあ、イッチはワイらに頼らざる得ない

つまりそういうこと

 

43:名無しの転生者

>>40スレ民はイッチになど媚びぬ

 

掲示板の恥晒しめが!!

 

44:名無しの転生者

好き放題しなくて何が掲示板かねえ!?

 

45:チェンソー世界の悪魔

名探偵さん…

 

意外と僕この雰囲気好きです

 

46:名無しの転生者

おやおや?

 

47:名探偵

…お、おう…そうか…

 

48:名無しの転生者

>>45なんだろう

脳が痛い

 

49:名無しの転生者

>>47なんでか分からんが脳が震える

 

50:名無しの転生者

>>47どうすんだよぉ!

この空気!

 

51:チェンソー世界の悪魔

???

どうしたの?

 

52:ショタコンの勇者

イッチが私を選んでくれたイッチが私を選んでくれたイッチが私を選んでくれたイッチが私を選んでくれたイッチが私を選んでくれたイッチが私を選んでくれた

 

53:名無しの転生者

このスレって何のスレだっけ???

  

54:名無しの転生者

地獄<ワイは??

 

55:名無しの転生者

なんだろう…誰の記憶だろう…

 

56:名無しの転生者

ふむ、

これが照れ民と過剰に訓練されたNの者か…

 

57:チェンソー世界の悪魔

何の話ですか?

 

58:名探偵

知らんくて良いものや

 

59:名無しの転生者

この時間帯めんどいのしかおらんな…

 

 

 

 





祝!UA50000突破(してみたかった)

そしてごめん。これは時間稼ぎみたいなものです。3月から投稿スピードが上がると思います(仮定)。それまでお待ち下さい。

 こちらもよろしく!
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