地獄!?転生先地獄なの!?なんで!?   作:アーチマン

13 / 29
故司祭と楽園計画

 

 

 

 神殿領域の発見から3日経った。彼、因果の悪魔とその下僕、蛸の悪魔は気を取り直して『地獄の悪魔』捜索に乗り出していた。

 彼らの目的はあくまでも『地獄の悪魔と契約し地獄から脱出すること』である。断じて名探偵の私欲を満たすことではないのだ。

 

 地獄を巡り、偶に見つける悪魔を脅して情報を抜き殺し、扉渡りもした。だが全くといっていいほど地獄の悪魔に関する情報は掴めなかった。

 

 

「はあ、なんか飽きてきたな…この風景」

 

 ー………。

 

 

 蛸の悪魔は触手を使い地面をヌルヌルと歩いていた。その上でうつ伏せで顔だけ前を向く因果の悪魔がそう呟く。

 だが、今や乗り物と化している蛸の悪魔はなにか気まずそうに終始無言を貫いていた。その事の発端は昨日にある。

 

 昨日、なんやかんやあって蛸の悪魔は因果の悪魔に対して反逆を企てたのだ。墨を吐き、触手で頭を叩き潰そうとした。

 

 

 "ーオラァ!"

 

『え』

 

 

 結果を言えば叩き潰せた。因果の悪魔の頭は黒墨と合わさってデミグラスソースのようになった。

 

 だが蛸の悪魔の想定が甘すぎた。因果の悪魔を殺すのなら一ミリたりとも気取られてはならない。因果の悪魔はセルフ復活する。

 

 そして、因果の権能によって蛸の悪魔は自身の墨で溺れさせられそうになった。まあ調教みたいなものである。

 

 

「ねえ、たこってさ…地獄の悪魔見た事ないの?長生きでしょ?流石に一回くらいは見たことあるよね?」

 

 ーある…ありますね…一度だけ…

 

 

 蛸の悪魔は怪しんでいた。かの因果の悪魔の強さを。悪魔とは普通、高位であればあるほど殺傷能力が高い。

 

 当たり前の話である。恐れとは基本、常に死を指しているからだ。悪魔への恐れはそのまま命の危険性と同義。

 それなのにこの高位悪魔(因果の悪魔)は攻撃手段が乏しい。本当は弱いんじゃ…。そう思うのも何となくわかる。

 

 

「どんな姿だったの?やっぱり燃えてた?」

 

 ーそうですね…。上半身が人間で下半身が馬のような、いわゆるケンタウロスのような形をしていました。

 

「へー」

 

 

 3日前の神殿領域での鬼ごっこの影響もあったのだろう。蛸の悪魔の精神状態はおかしくなっていた。

 

 というか彼はあの時、巨人との対話が不可能だと判断して因果に付いたのだ。あの巨人の理性が高く、殺されない保証があったのなら、彼は容易く因果の悪魔を裏切っていた。彼は強者主義なのだ。

 

 

「いつまで続くんだろ…この生活。早く地獄から出たい…」

 

 

 何だこいつ。蛸の悪魔はそう思った。お前は我の上に乗って寛いでるだけだろ!限りなく強くそう思う。

 だが口にはしない。もう溺死体験は嫌だった。彼は水は大丈夫だが墨では呼吸が出来ないのだ。

 

 ふと、蛸の悪魔の探知に悪魔が引っかかった。

 

 

 ーむ?何か来る。

 

「野良悪魔かな?」

 

 ーいえ、どこか理性を感じるな。真っ直ぐこちらに歩いてきている。

 

「そうか…嫌な予感がする」

 

 

 いつもと違う出来事というのは総じてなにかの始まりである。それが自分にとって良い事なのか悪い事なのか、強い不安に駆られた因果の悪魔は念の為、自身の身体を起こし権能で因果を覗く。

 

 瞳が銀色に輝く。

 

 

 「うわ、絶対触れちゃだめなやつだ…」

 

 

 彼は未来へ繋がる因果を覗いた。

 

 そこで見たのはどこか所作を感じる牛や豚、馬などの動物系の悪魔やドロドロな人のような異形型の悪魔、キメラ型の悪魔だった。

 そして何よりも目を引くのは先頭を歩く悪魔、それはどこか司祭のような格好をしていた。

 

 3日前を思い出して身震いする。

 

 

「たこが探知した悪魔の数は7体で合ってる?」

 

 ー7体だな…

 

「ふむ…だったらあまり脅威ではないけど…一応逃げる?」

 

 ー了解した

 

「あいつら絶対白い領域の住人だよね…」

 

 

 またしても彼らは逃げ出した。それほどまでに3日前がトラウマだったのだ。探索は少し滞るが自身の安全には変えられない。

 彼にはスレ民との約束があるのだ。そう簡単にくたばる様なことはしない。

 

 走りながら蛸の悪魔が聞く。

 

 

 ー何が見えた?

 

「うん…司祭みたいなやつが悪魔集団を率いてこっちに歩いてきてた。明らかにあの領域の悪魔だよ。怖すぎ」

 

 ーなるほど、全速力で行くぞ!

 

 

 蛸の悪魔は悪夢から逃げるため、走るスピードを上げる。もう死ぬのは嫌だったし、何より面倒なことなど大嫌いだった。

 

 だが、蛸の悪魔が走りだして大体3分ほど走っただろうか。彼らは逃げた先で先ほどの悪魔の集団と鉢合わせていた。

 

 

「は!?なんで!?逆方向に逃げたはずだよね!?方向音痴なの?」

 

 ー相手にそういう力を持った悪魔がおるのでしょう…

 

「悪魔ってなんでもありなの?」

 

 ーお前が言うな。

 

「お初にお目にかかります」

 

 

 先頭の司祭型悪魔が騒がしい手振り羽振りで喋る。

 

 

「ワタクシ、ここ周辺の巡回をしている天秤の悪魔と申します。あなた方とは対話を試みたい所存なのです」

 

 

 天秤の悪魔は近くで見ると異質さが現れていた。まるまるとした動物のような目、ピノキオのような尖った鼻、硬く発達した顎。手の甲の部分は皿になっていて、背が異様に高く、その上に司祭のローブを被っていた。

 

 神聖というよりメルヘンな雰囲気を出す相手を見た因果の悪魔。

 そんなふざけた格好の悪魔を見た因果の悪魔はその銀に輝く目を見開き相手を睨みながら思いの丈を叫ぶ。

 

 

「嘘だ!!!」

 

 ーちょっ!?やめろ!!

 

 

 蛸の悪魔は焦る。彼奴等は明らかに白い領域と関係のある悪魔である。だというのにこちらから拒絶する様な言い回しをする因果の悪魔に身体が震えてくる。

 

 そんなことするとまたあの恐ろしい悪魔が襲ってくるかも知れない。そう考えると蛸の悪魔は震えが止まらなかった。

 

 

「そのように言われましても…。これは主の御意志、全ての悪魔に対する愛のある提案、救いなのです」

 

 

 天秤の悪魔は怒った様子など無く冷静に…それどころか慈しみを含んだ声で話しかけてきた。

 

 

「はあ…提案…?」

 

 ー救い…?

 

「興味がおありですか?お有りですよね?悪魔だって救われてもいいのだと、悪魔が10年生きられる素晴らしい地獄だってあって良いのだと!」

 

 

 天秤の悪魔は微笑む。どことなく薄っぺらさを感じる笑みだった。

 因果の悪魔一行はそれぞれ違う要素が気になったようだ。

 

 

「ええ、ええ…お教えしましょう。主の悲願たる楽園計画を」

 

「あ、いいです。間に合ってます…。ほんとにもう、()()()ので」

 

 

 因果の悪魔の雰囲気が変わる。強大なプレッシャーが辺りを満たす。

 

 

『因果観測』

 

 

 因果の悪魔は先ほど、自身の権能で因果を覗き、計画の内容、戦闘が起きた時の出方、相手の能力を把握していた。

 

 因果の悪魔の権能は相手を知れば知るほど強くなる。能力の発動条件はこれから起こることの「認識」であるからだ。

 因果を見るということは戦闘準備みたいなものだ。彼の能力射程は物理的な領域に収まらない。

 

 そして彼は基本、悪魔など信用しないので撃退する気しかなかった。つまるところ既に戦闘準備を終わらせていた。

 

 天秤の悪魔にそっと手を向ける。

 

 

「因果改編」

 

 

 この場の悪魔達は空間が軋む様な、異様な錯覚を受けた。

 

 この空間、彼の認識下の因果が書き換えられ、現象が上書きされ、現実が侵蝕される。

 

 瞬間、巨大でしなやかな触手が天秤の悪魔たちを捕らえて()()。予備動作無し、触手の軌道も捉えられず、攻撃を認識することも許さない。

 

 

「動くな、動いたら殺す」

 

 

 場を支配したのは因果の悪魔だ。その姿は高位の悪魔たるに値するものだった。

 

 

「…な!!」

 

 ー……え?は!?なんだこれは!?

 

 

 天秤の悪魔は驚きのあまりに周囲を見渡す。だがそこにあるのは捕らえられた仲間のみ。なんの異常も感じられなかった。

 まるで触手が初めからそこにあったかのようだった。

 

 因果の悪魔の権能は主に「因果の操作」に関するものでできている。基本的に未来を対象とするそれは場合によっては過去にすら作用する。

 

 彼の権能は相手への理解が深いほど自由度が増す。そして因果の悪魔が今一番理解が深いのは蛸の悪魔である。

 蛸の悪魔の過去因果を改編するのはお手のものであった。

 

 

「ひとつ、聞きたいことがある」

 

「交渉は決裂ですか…。しかたがないですね…。あなたたち、力を見せつけてやりなさい」

 

 

 吊るされている天秤の悪魔がそう言うと同時に、触手に囚われていた不定形な悪魔が膨張を始める。

 そして膨張圧で悪魔に引っ付いていた触手を引きちぎった。

 

 自由になった不定形な悪魔は━━

 

 

「因果改編」

 

 ドゴン!!!

 

 

 ━━自由となった永遠の悪魔は轟音と共にちぎったはずの触手に叩き潰されて()()。音速とも言える大質量の鞭打ちが地面を叩き、轟音が轟()()。風圧が髪にかかる。それはもう戦闘になってすらいなかった。

 

 相手の攻撃命中率は100%で、攻撃を認識することも出来ず、予兆を感じることも出来ない。防御のしようがない。反撃のしようがない。

 

 

「グアアギ!」

 

「オオオオオオオ!」

 

「ぶぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」

 

 

 永遠の悪魔が潰されたことで焦りを感じた他の悪魔も触手を引きちぎろうとした。だが鞭のようにしなる硬く軟い触手を引きちぎることは出来なかった。

 

 悪魔達の焦りが地獄を木霊する。そこには取り繕うべき外面はなく、ただただ本能のままに命を守ろうとするだけの肉塊があった。

 

 

「天秤以外は捻り潰して」

 

 

 因果の悪魔がどうでも良さげに死の宣告を行う。蛸の悪魔は置いてけぼりでよく分からないが捕らえている悪魔が敵だということは分かっていたので、触手を締め、悪魔達を絞り殺した。

 絶叫がリズムを奏でる。血が舞い散り、辺りを濡らす。

 

 

「あ…き、貴様!!」

 

「聞きたいことがある。答えなければ殺す」

 

 

 因果の悪魔は蛸の悪魔の頭上で触手に吊るされている天秤の悪魔に問う。冷たい声だった。可愛らしく整った顔がより一層恐怖を駆り立てる。

 

 

「地獄の悪魔はどこ?」

 

「…何を」

 

 

 因果の悪魔は先ほどの因果観測にて『楽園計画』の計画に地獄の悪魔がいることを把握していた。だが場所は分からない。

 どうしても地獄の悪魔の居場所を知りたい彼はやはりこのことを()()

 

 

「言え」

 

 

 因果の悪魔の透き通った銀色の瞳を見る。その瞳はあまりにも超然と輝いていた。さすがの天秤の悪魔も分かってきた。コイツは上位の悪魔だと。

 

 上位者のプレッシャーが天秤の悪魔を襲う。背筋が凍り、恐怖に体が縮こまる。冷や汗が止まらない。命の危機を感じ取った彼は命を少しでも繋ぐために話をすることにした。そこに一縷の望みをかけた。

 

 

「か、彼は…」

 

「ありがとう。もう良いよ」

 

「っ! あ、あぁぁ!お待ちk」

 

 "因果改編"

 

 

 無慈悲な宣告。天秤の悪魔は認識不可能な必中攻撃を受け、答える間もなく圧殺された。轟音と共に血の混じった砂埃が舞う。

 

 因果の悪魔は思わずニヤける。

 

 因果観測。それは未来を知ることだけが用途ではない。情報を答える可能性が少しでもあるのであれば彼はたとえ相手が口を割らなくとも情報を事前に知ることができるのだ。

 

 無論、偽の情報も掴まされるだろうがそれは観測した情報の資本数の割合で判断していた。

 

 

「ふむふむ、楽園計画か…」

 

 ーい、因果…様、何か分かったのですか?というかやつらに喧嘩を売っても…いえ、なんでもないです。

 

 

 よく分からない内に全てが終わっていたことを理解し、因果の悪魔(彼の主人)のヤバさと残虐性を再確認して縮こまっている蛸の悪魔が訝しげに聞く。

 

 

「うーん…まあとりあえず、地獄の悪魔のいる場所は分かったよ」

 

 ーおお!流石は因果様!

 

「ふふん!」

 

 ーそれで、それはどこなのですか?

 

 

 煽てられ、ドヤ顔になった因果の悪魔がもったいぶった動きで答える。

 

 

 

「人類のいない地、失われた楽園、失楽園。あの楽園計画の中心にして巨人の番人がいる、悪魔の楽園さ」

 

 

 

 血飛沫で濡れた、藍色の髪の悪魔はそう言ってわらった。

 

 

 





 原作のない二次創作は二次創作と呼べるのかについてを考え、アンケートを取ることにした。

 構成が出来てるから余裕で書けるよ!

現代編(原作期)を同時進行で書くかどうか

  • 書け
  • 無理すんな
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。