地獄!?転生先地獄なの!?なんで!?   作:アーチマン

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秘技・天繋ぎ



第三天シェハキム/第五天マティ

 

 

 

「やっと着いた……第三天シェハキム!」

 

 ーそうか。それでコイツはどうするんだ?

 

「きゅう……」

 

 

 前回から2時間をかけて彼らは新たな区域に到達していた。第三天シェハキム。そこは聖書に描かれた有名な楽園たる『エデン』を模している。広大な野原が生い茂り、果実のようなものが装飾のようにあたりの木に実っていた。

 

 因果、蛸の2匹はまるで物見遊山でもするかのように神殿領域の各地を転々としている。そして今、新たなメンバーがそこにはいた。

 

 

「…ん。…ぐっ?…ん?……はぁ!?」

 

「あ、起きた」

 

 

 鏡の悪魔。彼女はそういう悪魔だった。()の肉体に人の足を持ち、背には羽を携えている。一見すれば『猫妖精(ケット・シー)』に見えるが、二足歩行というわけではない。歴とした四足歩行の悪魔だ。そんな悪魔は今、蛸の悪魔の吸盤に捕らえられていた。そして因果の悪魔を見て目を見開いた。

 

 

「な、なんだこれは!? 私はいったい…! いや、お前は…! そうかお前、盗人だな!? 領域の食料を盗もうだなんてなんて命知らずなのだ! 今すぐにこの拘束を解き、許しを乞うのならお前の命が助かるように取り計らってやるから…そう、早くこの拘束を解くのだ!」

 

「え、うるさ…」

 

 

 この状況で命乞いではなく、上から目線の命令を通そうとするのは因果の悪魔としても予想外だった。彼が生まれてから今まで出会った悪魔という存在はその全てが命乞いをしていると彼は認識していた。だから命乞いしない悪魔は珍しかった。

 

 そしてそんな彼女に彼は興味を抱いていた。『因果観測』で覗いて知っていた結果ではあるが実物を見るとやはり迫力が違うのだ。

 

 

「こほん。まあ良い。では改めて初めまして、僕は『因果の悪魔』。君がとても魅力的な力を持っていたから勧誘しにきたよ。一緒に地獄から出てみない?」

 

「は、はぁ!? 地獄から出る? 私はそんなこと望んでいない! 私は『執行官』様と共にあるのだ! いつまでもずっと!」

 

 ー執行官!?

 

「だよねー。君の説得は成功したことないしなぁ…。でも強制転移は勘弁してほしいし……」

 

「いや待て…因果の悪魔…? あ、ありえない。だって…なんでここに侵入して…いや、ついに()()()()()()!」

 

「は? 何を言っている…?」

 

 

 『因果観測』。因果の悪魔は今ここで新たな観測を始めた。この違和感を解消しなくては何にもならないと判断したのだ。この場合の違和感は鏡の悪魔の発言である。

 

 五日前の彼の『因果観測』には『因果の悪魔』について誰かが何かを追求するところは確認できなかったのだ。

 彼が唯一観測した因果の悪魔について発言した言葉は枢機卿の発言だけである。

 

 

「これは…つまり()()()()なのか…! ……………おい、お前の勧誘に乗る。だからといってはなんだが私と契約してほしい」

 

 

 だからこれはあり得ざる事象。観測がおかしいのか、世界がおかしいのか、はたまた己が何かを見逃しているだけなのか。未来を見通すだけの彼では分かり得るものではなかった。

 

 だが一つ分かることがあるとしたら、彼は特殊なルートに入ったということだ。

 

 

「契約ね。内容は?」

 

「……私がお前に協力する、代わりに、例えこの神殿領域を破壊したとしてもザカエル様…『執行官』様は殺さないでほしいんだ」

 

 ー裏切るのが早いな。

 

「…ふーん。全然良いよ! じゃあそれで契約だ。僕は『執行官』をいついかなる時でも殺さない。代わりに君は僕たちに協力する。おぉ…初めて契約なんて結んだよこの子と!」

 

 ー良かったな?

 

 

 因果の悪魔は目の前の悪魔が、自身を何か変に過大評価をしているところを少し違和感に思ったが、トントンと進む話に気が緩んで全く考えることをしなかった。

 

 ちなみに彼に神殿領域を破壊する力はない。

 

 

「よし、君にはこれから移動役をしてもらうよ。反射物を移動するんだよね? 反射物の場所は僕も心得てるから、とりあえずシェハキム全域を今日中に巡回するよ! この戦い、勝ったも同然だね!」

 

「……」

 

 ー我は賢明な判断だと思うぞ。何故因果様にこの領域が破壊されると思ったのかは知らないが、今逆らっていたら良くて四肢をもがれて道具扱い、悪くて死だからな。

 

「…ふん」

 

 

 鏡の悪魔は苦虫を潰したように顔を背けた。そこには何かに怯える感情が浮き彫りになっていた。されど時間は前に進む。彼らは三者三様に第三天シェハキムの深い森の中に消えて行った。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

「哀れだね。あぁ、哀れだ。一騎当千の悪魔達のさらに上位の者達がこんな狭いところでどうしてこそこそと、ビクビクと、愚かで、小心者で、情けない醜態を見せ合いっこしてるの? 君たちは本来、地獄で幅を利かせる大悪魔なんじゃないの? どうしてそこに閉じ込められて……いや、閉じこもってるの?」

 

 ーおおう…付き合いの中で1番鋭い言葉を更新したぞ…。

 

 

 突然の話ではあるが、彼らは悪魔の監獄である第五天マティに潜入していた。彼らの第三天シェハキムでの工作活動は大成功の部類に入り、かなりの数の悪魔を脅…勧誘して裏切りを確約させていた。

 

 今の蛸の悪魔には、因果の悪魔に対する信頼しか残っていなかった。彼がここに来てからの不安は結果としての形で既に払拭されていたからだ。

 【使徒】とは交戦しておらず、見つからず、そして計画は成就しようとしている。これで信じなかったら誰を信じるというのか。

 

 鏡の悪魔ナルキッソスは今も因果の悪魔に怯えている。慣れてはきたが信頼には遠く至らないだろう。

 

 

「ガ?おおおまえぇ!!この『腐敗の悪魔』に向かって吠えるのか!!」

 

「君のは負け犬の遠吠えだね」

 

「ぉ、おい!挑発して暴れでもしたら…いや、別に良いのか」

 

 ー良くないぞ。何もよくない。

 

 

 第五天マティ。そこは【主】勢力に従わない強力な悪魔を収容し、交渉を促す場である。なのでそこには強力な悪魔が集うのだ。因果の悪魔はそこを狙った。

 ここは強力な悪魔と出会える格好の場であるのにも関わらず、強大な気配に怯えて悪魔は全然やってこない。つまり話し放題、暗躍し放題なのだ。

 

 鉄格子の代わりに樹木が張り巡らされている檻の中、悪魔の咆哮が木霊する。因果の悪魔の毒舌はナイフのようにキレていた。

 

 

「吠えるだけで何もできない。ただそこでストックとして生きるだけ。僕には分かるんだ。彼らには敬意が足りないってね」

 

「アァ!?」

 

「君たちは強い。地獄の中でもかなりの長寿なんでしょ?この場所だって君たちが取り締まるべきなんだ。なのにやつらはそこらの雑魚を丁重に保護している。博愛主義も極まれば害悪さ」

 

「……」「ソウダナ」「だからなんだ!?」「雑魚がしゃしゃり出るなぞ、心底腹立たしい」

 

「だから壊そう。この領域を破壊し、呑気に暮らす雑魚を本能のままに切り刻んで、君たちをそんな狭い場所に放り込んだ【使徒】どもをぶち殺そうよ!」

 

「ハ?」「無理ダ」「敵わない」「勝てない」「逃げ場などない」

 

 

 弱腰の悪魔達。彼らは一度敗北している。神殿領域の意向に逆らい、暴挙を起こしたその時に【使徒】に負けているのだ。だが、それでも彼らの悪魔としての本能はその身に宿っている。

 

 悪魔。世界で最も強力な種族。世界に我を通さんとするもの。彼らだって好きで牢屋にいるわけではない。いつか、いつかは【使徒】を打倒してやろうという意思はある。

 

 だが彼らはもう知っていた。勝てない、敵わない。なまじ理性を宿している分、考える脳を持っていた。本能と理性の狭間で、そして牢屋の中で悪魔達は苦しんでいる。

 

 

「生きているだけの(しかばね)

 

「ナンダと?」

 

「喋る、考える、呼吸する、心臓が鼓動している、血が巡っている。なのにそこから動けない、動かない。動かないならそれは屍だ。お前たちは死んだ。……だから僕が救ってあげると言ってるんだ」

 

「…続けろ」

 

 

 たしかに因果の悪魔は彼らのために行動しようなどと思っていない。だが結果を見ればその計画は彼らを救うことになるのだろう。

 

 確信の末、因果の悪魔は唆す。

 

 

「僕と契約しない?君たちをこの牢屋から出してあげよう。もちろん、『守護者』は足止めするからさ。君たちが安全にここから出ることを保証しよう」

 

「………」

 

「領域全体で暴動を起こす準備がある。君たちは第五天担当さ。【守護者】は来ないよ。優先度は僕の方が高いらしいからね」

 

「…なるほど」「見返りは暴動の加担か」「領域をぶち壊せる?」「やつらの吠え面を見てみたいナァ?」「たくさん殺せる?」「殺す!」「逃げたい。馬鹿げた所業をぶち壊したい」「殺して殺して殺して殺して!」「火を放ち、焦げたやつらの死臭を堪能するんだぁ!!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「肉を切り刻んでやる!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「全部壊す」「殺せ!殺せ!殺せ!」「殺せ!殺せ!殺せ!」「殺せ!殺せ!殺せ!」

 

 

 飴と鞭。これと理論が同じのことを因果の悪魔は活用し、見事監獄内の悪魔達を説得するに至った。蛸と鏡は目の前の事象に呆然としていた。まさか本当に説得が出来るとは思ってもいなかったのだろう。

 

 今の監獄の中心である因果の悪魔は笑った。彼は惨めな生き物の想いがよく分かるタチの経験を積んできた。それが今、地獄で熱狂と狂気の渦を巻き起こすキッカケになったのだ。どこか誇らしく、しかしどこか不可解だった。

 

 蓋をする。

 

 

「契約だ。僕は君たちがその牢から脱出することへの安全を保証しよう。君たちは監獄から出た後、暴れ回ってね?」

 

 

 最後の契約は結ばれた。計画の始動は明日。神殿領域を目指してから七日目のことだった。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

「遂にここまで来たね」

 

 ーあぁ、そうだな。しかし我はここまで無事に来れるとは思ってもいなかった。悪かったな、疑い続けてしまって。

 

「あはは。良いよ別に。疑おうが疑わまいが、結末は変わらないからね」

 

 ーまあ因果様の力を持ってすればそうなんだろう。明日は成功するだろうか。

 

「それは君の力次第とも言えるね。こんなこと僕が言うのもなんだけど…海が見たいなら頑張ってね?」

 

 ーあぁ、任せろ。

 

 

 





ペット
話し相手
ヒロイン
相棒
■■■

現代編(原作期)を同時進行で書くかどうか

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  • 無理すんな
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