地獄!?転生先地獄なの!?なんで!?   作:アーチマン

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えー、悪魔図鑑No.28【超弩級戦車ゴリアテ】様。

ガチの被りであるとここに宣言致します。かなり特徴が一致してます。初めて見た時すごいと思いました。



地獄神殿領域ロストエデン

 

 

 

「ふーむ、これは…いるな」

 

 

 辺りを埋め尽くす白、白、白。白亜に染まった神殿群、舗装道路。近くには取ってつけたような広場がある。側から見れば神々しい。だが目を凝らせばその異常が見えてくる。

 『鏡渡り』で第六天に近い第四天の近郊に抜けた意気揚々な因果の悪魔一行は途端に出鼻を挫かれたようにそこで足止めされていた。

 

 異常。それは異形の像が乱雑に配置されていることである。道のど真ん中、広場の中、崩れかけの神殿の中にもそれらはあった。

 果たしてそれらは悪魔であった。今はもう過去形でしか語れない存在証明の像は白い塩でできていた。

 

 

 ーこれは…なんだ…? おい、何がいるんだ!?

 

「!? まさか、くそ! 合わせる顔がぁ…!」

 

「迂闊にして愚か。愚策にして奇策。奇妙だが脅威。主命を脅かさんとする者よ。私は神の敵を屠る者。神の(つるぎ)にして『執行者』、名をザカエルである」

 

 

 突如としてそれは広場の中心に現れた。影法師のように平坦に見えるその姿は依然として堂々たるものだった。全身は黒に覆われ、そこに垣間見えるのは細いがガチっとした肉体である。

 戦闘の意思は色濃く、今にも動き出しそうな雰囲気が感じられた。だが鏡の悪魔ナルキッソスの想い人。契約に基づき殺すことは不可能だ。

 

 第二使徒ザカエル。彼は行く手を阻む障害だった。

 

 

「へぇ、僕の名前は……名前…無かった」

 

 ーどうするんだ! もう見つかったぞ! これも予知の範囲内か!?

 

「うん…。まあ、そうかな………大丈夫だよナルキッソス、そんな顔してさ。殺したりしないよ」

 

「ッ馬鹿!! 気づかれるだろう!?」

 

 

 因果の悪魔の後ろに隠れていたナルキッソスは慌てふためく。他の誰かならまだ良かった。どうせ去るつもりの楽園なのだ。相手の反応など全く気にならない。

 だが彼は違う。使徒、仕事仲間、そして想い人。対峙するなんて以ての外、想定していた中で最も最悪の展開だった。

 

 楽園への忠誠心は随一の第二使徒ザカエル。彼から罵詈雑言を受けた時、ナルキッソスは耐え切れるわけがないのだ。

 

 

「やはりか、ナル。一体いつから裏切っていたのだ。拾った恩を忘れたか。…私はお前に過度な期待をしていたようだな」

 

「っ!! いえ!…私は、わたしは…! ザカエル様のためを想って…! 結果として裏切り紛いの行為をしたことは分かっています。でも! ザカエル様もお聞きになったでしょう! そこの彼は【因果】、タイムリミットがもう近いのです! 主命はいつ果たされるのですか! 悠久を生きる【主】は衰退に向かい、新たな魔王が誕生する! 私はそう確━━━━」

 

「愚者の入れ知恵をまだ信じていたのか! 操錯戒剣!」

 

「遅延」

 

 

 静かにブチギレたザカエルがその手を地に乗せる。起きたのは地面から隆起した白剣の波。辺りの塩の像を切り刻みながら放射状に侵食する悍ましい白波は、しかしその進行が止められた。

 

 止めたのは因果の悪魔。彼は人型、それも人間に限りなく近い身体だ。剣山のようなものに切り裂かれてはたまらない。彼はザカエルに構っている暇はないのだ。

 ナルキッソスを脇に抱えて言う。

 

 

「僕急いでるんだ。通してもらうよ」

 

「貴様らを殺せば万事解決だ。死んでもらうぞ」

 

 

 たった3秒の睨み合い。そして衝突が本格的に始まった。まず手を出すのは因果の悪魔だ。

 

 

「因果改編」

 

 

 彼は蛸の悪魔の触手をザカエルにぶち込んだ。回避不能の必中攻撃。目論見通りザカエルは広場から側面にある神殿の中に吹き飛んでいった。

 

 だが蛸の悪魔にも異変が起きた。触手が白く変色していた。いや、変色どころの話ではない。触手が一本、塩へと変えられていた。

 

 

 ー足がぁ!!

 

「再生は自分でやって。あと乗せて? とりあえず巨塔の近くまでは行っておきたいな」

 

 ーくそ! 分かった。

 

 

 蛸の悪魔は身体を塩に変えられるという酷い混乱と錯乱の最中、塩に変えられた自身の触手を砕き、再生させる。三日前に人間をたくさん頬張ったおかげでさほど時間はかからなかった。

 その間に因果の悪魔と意気消沈のナルキッソスは蛸の悪魔の頭に乗り、蛸の悪魔は文字通り発進した。

 

 直後にザカエルの怒号が響く。

 

 

「通させるわけないだろう!!」

 

 ーおい! 足止めにもなってないぞ!

 

「たこ、そのまま逃げててね。遅延解除・操錯戒剣」

 

 

 勢いよく広場に戻ってきたザカエルが蛸の悪魔を猛追しようとした瞬間、白波の遅延が解除される。そして広場に背を向けていたザカエルは自身の剣波に背後から串刺しにされた。伸びてくる剣の勢いに消えていき、埋まり、見えなくなるザカエル。

 

 放心状態だったナルキッソスだが、さすがにこれには目が覚めたのか、顔を青くしながら発狂し始めた。

 

 

「ぁ…あ、あああああああ!? おまえぇぇえええ!!! ザカエル様の命は契約で守られるはずだろうが!!」

 

「ん? 死んでないよ。それに殺さない契約は結んだけど、痛めつけない契約は結んでない。いや、ほんとに、あれで死なないってどうかしてるよね」

 

 ーだが致命傷だ。すぐには動けまい。予知であとどれだけの時間で来るか分かるのか?

 

「分かるよ。2秒後だ」

 

 

 蛸の悪魔が駆ける白い舗装された道、彼ら一行の少し先、ちょうど2秒ほどで到達する道が少し膨らんだ。隆起した。それは明らかな前兆だった。

 過去に学べばそれは突き刺すような剣山になるのだろう。それは60代後半もの数の目を持つ蛸の悪魔にもはっきりと分かった。

 だが彼は止まらない。彼はもう知っている。因果の悪魔が捉えた事象に命を落とすものなど存在しないということに。

 

 

「遅延」

 

「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」

「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」

「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」「遅延」

 

「全部遅延だ」

 

 

 蠢く先の道は完全に静止した。攻撃は飛んでこない。何も行く手を憚らない。因果の基礎能力は真価を発揮した。

 

 そしてもはやこの先全ての道を支配したと言っても過言ではない因果の悪魔はほくそ笑む。確勝ちだ。と。

 

 そんな彼とは対照的にザカエルは焦燥と絶望に呑まれていた。【使徒】である自身がたった三体の悪魔に手こずるどころか反撃を許し、今まさに道に通してしまっている。失態どころの話ではない。存在意義に関わる話だ。

 

 

「攻撃が無効化される。追いつけない。私では、主命を…果たせない…!」

 

「遅延解除・吼錯戒槍」

 

 

 焦るザカエル。そんな彼は焦りからか、遅延された領域へと無遠慮に足を踏み込んだ。そして地を穿つ槍が彼を貫く。何度も何度も何度も何度も。だが彼は死なない。倒れない。彼の胸に宿った宿命は身体の欠落で堕ちるものではないのだ。

 

 だがそんな中、ザカエルはナルキッソスのことを考えていた。頭の中はそれだけだった。66年前に地獄で拾った生まれたての鏡の悪魔。なんとなく、またともすれば本能が彼女の容姿を好ましいと思っていた。もちろん、性的なものではなく愛玩的なものなのだが。

 だが彼女の猫ボディは800年守り通した忠義、固く凍りついた精神と本能を解きほぐすほどの威力を持っていた。要は猫好きだったのだ。

 

 何を間違えてしまったのか。彼女に役職を与えたことだろうか。「未来最高」が口癖の愚者に引き合わせてしまったことだろうか。それとも、彼女を贔屓にしたことなのだろうか。

 今はもう、それを解き明かすのは至難の業だ。だが神に尽くす剣であるザカエルをここまで動揺させるのはそれこそ至難の業とも言える。

 

 

「ぐっがぁぁあ! ナルキッソス!!! 裏切りは最大の罪。罪には罰が下される! それがここのルールだ! 戻ってこい! 今ならまだ、私がとりなしてやる! 今ここで、私への恩を返せ!!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。自分勝手でも、私は貴方の命が惜しいのです。そのためなら彼らを逃す手助けでも楽園を滅亡させる手助けでも、いとも容易くやってみせるから…」

 

 

 悲痛の叫びは両名から発せられた。だがやはり懇願にも似たザカエルの要求は叶えられない。

 側から見ている因果の悪魔からすればとんだ大回りもいいとこだ。結局のところ、互いは互いを大切なのに理解はしていなかったのだ。急がば回れとはよく言ったものだと内心感心すらした。

 

 

「『執行官』、君は僕が知っている執行官の中で最も弱いパターンだ。ここ1週間で初めて見たよ。怒りに満ちた君には僕もかなりの負担が強いられる予定だったんだけど……楽なもんだよ。今の君はただ死なないだけだ。普段なら一度攻撃を防がれた時点で慎重になっていたのにね。やっぱり……愛なのかな? お互いがお互いの命を心配して、結果、雁字搦めに欠落した。」

 

「やっぱり愛はこの世で1番いらない感情だ」

 

「バイバイ、遅延解除・吼錯戒槍」

 

 

 無数の槍が執行官を貫いて貫いて、宙吊りにする。いくら四肢が欠落しようと死にはしないザカエルだが、心はそういう風にできていない。

 

 愛だ。

 

 ザカエルは因果の悪魔が言っていた言葉をうまく飲み込めなかった。愛……愛。かつての己には愛を理解する心はなかった。天上から降り注ぐ無償の愛(アガペー)すらも理解していなかった。

 何故なら本質は変わらないからだ。今の状況こそまさにその事例だと言えるだろう。

 助ける得の無いナルキッソスをどうにか助けたいという強い思いが、それこそが、愛なのだ。性愛ではなく、むしろそれは情愛に近い。

 

 無限にもなる善意が使命宿命を押し流してしまいそうだった。

 

 整理がつかないのだ。

 殺してしまおうという【使徒】の考えと、どうにかして助けたいというザカエルとしての意思が火花を散らしては反発する。

 

 

「ナル…」

 

 

 くべられた怒りの炎は、悲しみの冷や水でその猛々しさを減らす。

 彼はもう、とうに主命に準じていなかった。

 

 

「ナル…!」

 

 

 使命を忘れ、役割を忘れ、果てには愛に興じる始末。

 【使徒】というタガが外れる。

 

 

「なるきっそす…!!」

 

 

 本能が励起する。剥き出しの核心が強く()()を求めた。

 黒が溢れて止まらない。胸を渦巻く衝動が抑えられない。

 

 

「だって、()は……人間の悪魔だから」

 

 

 ネコは好きだろう?

 

 

 

 

 

「そろそろ第六天だよ。巨塔に着いたら鉄門があるからぶち破って侵入して」

 

 ー了解した。

 

「僕は最後の刺客を倒す」

 

「は…さいごの…ってザカエル様…か?」

 

「うん。死ぬまで追うのを辞めないんだろうね。でも殺せないから場外まで飛んでもらうよ」

 

 

 流れる景色の中、そして最後の刺客は現れる。

 

 

「ナルキッソスゥゥウ!!!」

 

「まるでストーカーだね。あるいはケダモノ。悪魔の中で1番人間らしいよ。嫌悪感しか湧かない」

 

 

 ザカエルはすぐに追いついてきた。地面から押し出される己の攻撃を足場にして、急激な加速を試した結果だった。

 

 第二使徒ザカエル。その能力は物質変質・物質操作である。物質作成スキルと言い換えても良い。彼の能力は生物・非生物を問わない。触れたものをどんなものにだって変えられる彼はまさしく強力な悪魔の一体だった。

 

 今現在、全く役に立たない能力だが、まだその底は見せていない。そして今まさにその力の全貌を因果の悪魔に知らしめすことになる。ならない。

 

 

「因果、改編」

 

 

 リセットしよう。ただし、お前だけ。余裕を持っている因果の悪魔だが、悠長にしていられるわけではない。タイムリミットは確かに存在する。

 反抗勢力が全滅したとき、『守護者』が追いついたとき、彼の計画は頓挫する。因果の権能にだって制限があるし、根比べは分が悪い。

 だから殺さないとなるともう退場させるしかない。その準備ももう済んだ。

 

 

「お前は今、ラキアにいる」

 

「!? ふざけ━━━

 

 

 そしてザカエルは書き消えた。刺客は消えた。彼は鏡の前、宣戦布告を聞いたラキアの一室に戻っていた。反乱の影響で転移門が使えなくなった今からではもうザカエルは因果の悪魔に追いつけない。

 

 それは酷い幕劇の終わり。さも壮大な覚醒シーン要素を含んだザカエルの話をこんな消化不良な展開で終わらせるなど、なんともつまらない結末だった。

 因果の権能はドラマも感動も、感情も鮮烈も生み出さない。そんな究極の現実こじつけ能力なのだった。

 

 

「ふぅ…生物を操るのは難しいな」

 

 ーさすがだ! すごい! 最高だ!

 

「ふふん! まあね!」

 

「…………」

 

 

 緊張感のカケラもない。ナルキッソスはもう何も分からなかった。目の前にいる因果の悪魔が恐ろしくて仕方がなかった。心が荒んで、今にも死にたくなっていた。

 何故自分は生きている。恩人を無碍にして、恩を仇で返した。卑劣極まりない醜悪な自分は、何故生きる?

 

 

「なぜ、私は………もう、いやだ。なんで私は生きてしまっているの…」

 

「ん? 『執行官』を死なせないためだったんでしょ? 現に彼は生きてるし、僕の観測では彼が死ぬ未来も二割くらいはあった。これは契約の結果で、君は彼を救ったんだよ。心は別として。生きる理由が見つからないなら殺さないよう頑張った僕のために今度は君が頑張ってよ。役割というのはいつどんなものが来るのか分からないからね」

 

「はは…もう足にもなれない私が…か。そんなのちっとも…笑えない」

 

 

 締まりが悪いがこれにてナルキッソスとザカエルの溝が深い話は終わりを迎えた。

 

 因果の悪魔一行はそれから、本当に少しの時間が経ったあと、驚くほど何の妨害を受けることなく第六天ゼブルの巨塔、『神の塔(エナキメンテ)』の根本にまで到達した。

 

 

 





瓦礫から自身の肉体すらも作ることができるザカエルくん
ザカエルくんは第三形態まで進化を残しているのだ。

現代編(原作期)を同時進行で書くかどうか

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