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◆神の塔 第二層の中央広場
「千日手だ」
そう愚痴るのは因果の悪魔。
現在、『枢機卿』と戦闘を初めて幾ばくかが経った。彼は蛸の悪魔の背に乗り、うなる青銅の触手から逃れ続けていた。
対するは『枢機卿』ザキエル。彼女は完全にこの場を支配していた。無限に等しい植物の身体を持つ彼女は、因果の悪魔達では倒すことは不可能。それは彼女もよく知っていた。
だから彼女はまず植物で第二層の広場を取り囲んだ。彼女にとってこれは消化試合、ならば唯一恐るべきは因果の悪魔の逃走。それを阻止するために彼女は出口を全て塞いだのだ。
ーどうするんだ? その感じからして未来はそう悲惨ではないのだろう? 逃げ続けておけば良いのか?
「まあ、ちゃんと見えてるからそんな問題ではないけどね。さっきのは言ってみたかった言葉かな」
「吐きそう…酔う。これは、私に対する、嫌がらせか?」
彼らは狩られる獣でありながらどこか楽観的だった。何か自身の命が脅かされないことに絶対の信頼があるように見える。
そしてそれを不思議に思ったのがザキエルだ。何故ヤツラはこうも自身に対して恐怖しないのか。今までの敵は己を知れば知るほど絶望していたというのに。
無限の肉体、攻撃手段は豊富、本体はこの層にはいない。彼女はこと持久戦となると無類の強さを発揮する。彼女は長い生の中で彼女よりも格の高い悪魔と何度も戦ってきた。だが全てにおいて持久戦に持ち込み、完封してきたのだ。
その時の敵の顔はいつも今にも死にそうな、絶望の顔を浮かべていたというのに、目の前の悪魔たちはまだまだ希望はあると信じきっている。
「無知蒙昧、愚鈍、哀れなり」
手始めに木龍をザッと20体生み出す。1匹で新幹線にすら匹敵する大きさの木龍はそれぞれがそれぞれで軌道を描き、因果の悪魔の元へ突進する。
だが全て避けられる。どんなに過密に攻撃をしようとも必ず小さな隙間をくぐっては駆け抜けていく。
面食らうのはザキエルだ。しかし衝撃は怒りへと変わる。
ならばと次に繰り出すのは辺りを埋め尽くす植物に紛れた青銅の蔦による飽和攻撃だ。
広場全体を取り囲むありとあらゆる樹木、植物から青い光線のように膨大な量の蔦が放射される。
ーこれはどうする!?
「足の回復準備、前に
「わかった」
青き光線のごとき蔦の刺突が因果の悪魔たちを取り囲む。その刺突には彼らを殺すだけの力があった。残り1秒で彼らを串刺しにせんとする殺意の中で彼は唱える。
「因果、改編」
瞬間、彼らはザキエルの手前10mにワープした。いくら全体から向けられた攻撃といえども、さすがに人の形をとっている彼女の周辺には来ない。明らかに届かない安全圏に手が届くのが因果の権能なのだ。
彼は40秒前の過去から、最短距離でザキエルに迫った世界線へとまさしくワープしたのだ。
「!? 愚か!」
突然目の前に現れた因果達を前に驚いていたザキエルだが、すぐさま意識を切り替え、大量の樹木で彼らを包み込む。そして逃げられない彼らに青銅の蔦による刺突を行う。
決まった。彼女はそう思った。
だがその思考はすぐに覆される。彼らを覆った樹木が弾け飛んだのだ。因果の悪魔…に足代わりとして使われている蛸の悪魔の触手によって。
木屑と植物、そして少し生臭い空気を押しのけ因果の悪魔は跳躍する。彼は人型だが腐っても悪魔。身体能力は人の比ではない。
ザキエルの周囲に侍る植物の束を超え、樹木を超え、因果の悪魔は迫る。
その距離2m。彼は拳を握った。
「因果パンチ!!」
それはただのパンチ。何の悪魔の力も働いていないただの殴打。だが…
「!?!?!?!?」
その拳はザキエルの頭を正確にぶち抜いた。
首が捥げるザキエル。彼女は痛みに悶えた。
一方、頭をぶち抜いた因果の悪魔は蛸の悪魔と合流していた。すぐにその背中に乗る。すると蛸の悪魔が上擦った声で口を開いた。
ーおぉ! 倒したか!?
「いや、アレは本体じゃない。人の形をしてるだけで本質は周りに生えてるそこらの植物と同じなんだ。けどアレの中にはかなり神経過敏な植物が通ってるから今頃悶えてるんじゃないかな。今のうちに三層に登ろう。あまり時間があるわけじゃないからね」
「三層には、何があるんだ?」
「第七天の入り口、そして…地獄の悪魔がいる」
大地、否、床を覆う樹木が大きく脈動する。周辺を貫く青の鋼線が放たれる。しかし、何も見えない状態での攻撃では因果の悪魔には当たらない。
頭の無い少女の頭が再生する。その瞳なき
「三層、不可能。因果抹殺、因果抹殺、抹殺抹殺抹殺」
「…もう戻ったのか。とりあえず様子を見てもう一度頭を破壊するから、その時は飛んででも三層に向かってね。飛べるんだよね?」
ー!? なぜ…
「君が知ってることを、僕が知らないわけないじゃないか」
"因果収束"
飛んでくる青の鉄線を蛸の悪魔は避ける。否、避けたのは彼の意思ではない。身体が勝手に動くのだ。
蛸の悪魔はすでに因果の悪魔の術中にいる。始まりの戦いで天使の悪魔の楽器を操ったように、蛸の悪魔も身体を操られていた。
しかし、決して悪いことではない。因果の悪魔が観測した最も効率的な動きをトレースできるからだ。蛸の悪魔では避けることが至難である攻撃の嵐であっても、「至難」程度であれば因果の力で完璧に避けることができるのだ。
「…! 命中、不可」
雪崩れ込む木龍の頭を蹴って跳ね、追尾する青の鉄線を振り切り、迫り上がる樹木の壁すらも飛び越える。
「自切用意」
その言葉のあとすぐに蛸の身体に青の鉄線が刺さる。反作用で前に飛び出る因果の悪魔。因果に操られている蛸の悪魔はその触手を使ってまるでテニスのように因果の悪魔を叩き飛ばした。
ザキエルの方へ。
「待━━」
「因果キック!」
飛んでいく最中、身体を回転させライダーキックのような体勢となった因果の悪魔の蹴りがザキエルの頭を貫く。本体から伸びた視神経と聴神経がブチッと千切れる音が聞こえた。
狂乱。そしてザキエルはその痛みゆえに停止した。
一方、因果の悪魔はまたしてもすぐさま蛸の悪魔と合流した。蛸の悪魔は足を自切して拘束から逃れていた。
「よし、今のうちに行こう、そうしよう」
ー飛ぶのは、かなり久しぶりだな。
因果の悪魔が笑う。蛸の悪魔が力む。そうして飛び出そうとした瞬間、鏡の悪魔は感知する。
その絶対的な恐怖を。
「やめろ!!!!!」
「!? な、何?」
ーなんだ、どうした!?
凄まじい勢いで叫ぶナルキッソス。あまりに狂気的な声で制止されたからか、蛸の悪魔は止まる。
不可解すぎる。因果の悪魔は訝しげに思った。彼の「因果観測」において、ナルキッソスが制止をかける未来は見えなかったのだ。
何故またしても未来は変わったのか。己の力に懐疑的な目を向けつつも、再度「因果観測」を使おうと目を光らせ━━━━
━━闇を見た。
何も見えない。何かに覆われたようにどんな未来も見えなかった。成功を収める未来、失敗に沈む未来、全ては泡沫のように消えてしまったかのように彼は思った。そして気づく。
己は
そして「因果観測」は終了し、彼は蛸の悪魔に声をかけようとして…そして、凍りついた。動く動かないではない。背筋が凍ったなどと陳腐な言葉で表せられる状況ではない。その存在自体が凍り付いたかのように止まったのだ。
目の前に
ソレは、こちらを見ている。
ソレは、こちらに意識を向けている。
気づけば、広場は闇に染まっていた。
ソレは、飢餓に苦しむ人のなれ果て、徒党を組んだ愚者のような。全てが骨のように白く、その身にかけるマントは宇宙よりも黒く、昏い闇のようだった。
頭部はペスト医師のマスクのような、くちばしが鋭い骨のようなものになっていて、2本の曲がったツノがその存在を主張している。
手も足も、そして胴すらも干からびた人間でできていた。当然顔もついている。
世界が霞むほどの
かつてない恐怖。
因果の悪魔は弱々しく膝をついた。顔は青く染まり、冷や汗が止まらない。心臓は今にも爆発してしまいそうだ。見られている。視られている。その事実だけで頭がおかしくなりそうだった。
「 」
血。目と鼻から血がドバドバと溢れてきた。力が抜ける。本能が死を告げる。絶望を通り越し、呆れを通り越し、今、無境の空を体現した。
何人も動いてはならぬ。
考えてはならぬ。
身を小さくしろ
頭を垂れ、祈り、通り過ぎることを待て。
闇が世界を支配する。そんな中、掲示板が彼に告げた。その悪魔の
「闇の、悪魔…」
ゲコッ
ボトボトとへし折れた樹木が落ちてくる。真っ二つに斬られたザキエルがただの木彫りのように落ちてくる。
かの者の
吐血する。腕の付け根からの出血。目と鼻からの出血。対応しなければ死ぬ。だが何もすることはない。
目をつけられるくらいなら、死ぬ。
この時、因果の悪魔は本気でそう思った。
全てが静止した闇の中、「闇の悪魔」は降臨した。
☆☆☆☆☆☆
266:名無しの転生者
あぐあげあぁぁぁ!?
おげ
やばi3
267:名無しの転生者
まずい、気が当てられる
撤退する
268:名探偵
や
269:名無しの転生者
闇の悪魔だ!終わった、この事態を恐れたがゆえの今回の脱出計画だったのに
270:名無しの転生者
やめろやめろやめろやめろ
ちがう
271:名無しの転生者
まずいぞ、掲示板が精神汚染されてる。バトル漫画世界じゃないものは一刻も早く離脱しろ。取り返しが付かなくなるぞ。
272:名無しの転生者
あの、ばとるまんがでもきびしのですが
273:名無しの転生者
ん? なんか過疎ってね? なんでや?
274:名無しの転生者
いや、お前メンタル強すぎだろ。
275:偽パワ子
ワシはギャグ漫画じゃからのぉー。鼻血が出る程度じゃ!
276:運営
想定されていない異常が発生しました。直ちに各利用者は掲示板の利用を自粛し、精神の健全を優先して下さい。
277:名無しの転生者
お?なんだこれ。初めてみた
278:名無しの転生者
おい、Live止まったぞ。
279:名無しの転生者
あああああああ
280:名無しの転生者
ァァァァァァァアアアアお?
281:名無しの転生者
僕は何もやってない
全部偽物のせいなんだ
282:名無しの転生者
ごめ、吐く、ち
283:名無しの転生者
なんか目から血が出てきたんだけど
284:名無しの転生者
おおお、思考が纏まった被害者のレスから順に流れてくるのな
285:名無しの転生者
なん、ここのまともは、いじようしやか?
286:名無しの転生者
ふーむ、かなり修羅場潜ってきたはずの俺が一瞬走馬灯見たぞ
287:名無しの転生者
【悲報】Liveみてない勢のワイ氏、見事にゲロを吐く
288:名無しの転生者
あなははあさはははは
289:名無しの転生者
少し前から来てたからLive知らなかった勢、以外と生き残ってそう
290:運営
汚染レベル6に到達したスレッドが確認されました。一時的に全ての利用者の精神から掲示板機能の割合を著しく低下させます。
何卒ご迷惑をおかけ致しております。
291:名無しの転生者
へんへ、いや
292:名無しの転生者
すげぇ! 汚染レベル6とかほんとに存在したんだ!?
293:名無しの転生者
おおおおお!! このスレは伝説に残るぞ!!
294:名無しの転生者
あああああああああああああああああああああ!!!
295:名無しの転生者
汚染レベル6ってまだ8つくらいのスレッドしか出してないよね?
296:名無しの転生者
>>295そのうち2つが封印されたんだよな。
297:名無しの転生者
ここですか?封印指定間近のスレというのは…
298:名無しの転生者
詳しいな。ワイは全然分からんぞ
299:名無しの転生者
かなりの古参がいるな…
300:名無しの転生者
おぇ、たすけて
301:名無しの転生者
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい
302:名無しの転生者
おおおお! 乗り込めぇえええ!!
303:名無しの転生者
ここが件の会場か!!
304:名無しの転生者
盛り上がってるかベイベー!
305:名無しの転生者
お、おおう…。たしかに開いた瞬間、不安と焦燥感と恐怖が…なんだここ、ホラーの概念が煮詰まってんのか?
306:名無しの転生者
あぁーー、SAN値の音〜〜♪
307:名無しの転生者
しいがいやわたしまだだだまいまたけいやだおとうさんやめてきえてしね
308:チェンソー世界の悪魔
あ、しんだ
###:運営
封印指定到達を確認。 完全凍結を実行します。それに伴い、利用者の皆様の心身の健全を守るため、浄化を同時に行います。よって転生者掲示板を12時間停止することに決定致しました。
皆様のご理解のほどよろしくお願いします。
☆☆☆☆☆☆
恐怖の祭典。恐るべき闇の中、ソレは因果の悪魔を見つめていた。スタスタと歩いてくる。近づいてくる。
闇の悪魔
地獄の支配者にして、超越者。そして根源的恐怖の名を持つ悪魔。
彼らは王だ。魔境たる地獄の王。逆らえば死ぬ。逆らわなくても死ぬ。出会えば死ぬ。死なないためには出会わないことが唯一の手段である。
この場における5体の悪魔のうち、4体の悪魔たちは跪き、敵意がない小物であることを証明しなければならない。
蛸の悪魔はその頭を限界まで下げ、鏡の悪魔は伏せの姿勢を崩さない。因果の悪魔も膝から崩れ落ち、顔は下を向いている。
「 」
闇の悪魔が因果の悪魔の首を掴んだ。そして持ち上げる。目と目が合う。合わされる。狂気。逸脱した感受と沸騰した理性が彼の精神を削る。
「あ、ぁぁぁあ…」
目を見開く。血走る。泡を吹く。再生能力を持つ悪魔であるのに、血は止まる気配を見せない。
「ぁ、あ、ぁぁああああああああああああああああ!!!」
"因果観測"
その目は死の底で強く輝いた。
闇の中、ナニカいる。一際大きな異形の悪魔。干からびた肉体の悪魔。
闇の悪魔
闇が観測を覆う。何も捉えられない。見えない。見えない見えない見えない。
ビチャという音がして、観測は終わった。
闇の中、ナニカいる。一際大きな異形の悪魔。干からびた肉体の悪魔。
闇の悪魔
闇が観測を覆う。何も捉えられない。見えない。見えない見えない見るな
「 」
何かを言われたような気がして、観測は終わった。
闇の中、ナニカいる。一際大きな異形の悪魔。干からびた肉体の悪魔。
闇の悪魔
闇が観測を覆う。何も捉えられない。見えない。見えない見るな見るな。
「 」
何か多くの存在がこちらを覗いているような気がして、観測は終わった。
闇の中、ナニカいる。一際大きな異形の悪魔。干からびた肉体の悪魔。
闇の悪魔
闇が観測を覆う。何も捉えられない。見えない。見るな見るな見るな。
「カッ! ァア!!」
吐き気を催すナニカをされた。侵された。観測は終わる。
見るな。見るな見るな見るな見るな。
これ以上見るな。
僕を見るな。
夜の闇は寂しい。誰もいない。気づかれない。誰も、世界の誰もが僕を知らない。知らない顔をする。
「どうしたの?」
そこには僕と同い年の女の子がいた。名前は…なんだっけ?
彼女は深夜に家出した僕を、見つけ出したのだ。一つ屋根の下で暮らしているわけではない。ただの友達の彼女がだ。
何を話したのだろう。両親のこと、義父のこと、イジメのこと、もしかすると彼女の話かも知れない。
ただ僕は家出の理由を彼女に話した。
彼女は言った。
「私が━━━━━
闇の悪魔の胸元の飢えた人間の頭が口を開ける。
「」
「」
「」
「」
「 あ 」
「」
「」
「」
「」
「…あ」
何が起こったか、誰にも観測できなかった。ただ、ナニカに身体が抉られた。
因果の悪魔の左目、心臓、右脇腹、両足が抉られた。
━━━そして、首が取れた。
身体が闇の悪魔の手から抜け落ち、頭だけが残る。因果の悪魔は残る右目で闇の悪魔を見た。
酷い悪夢を見ている気がした。現実感がなく、意識が浮遊していた。闇はこちらを見ている。覗いている。
反撃は許されず、完膚なきまでに潰された。四肢は捥がれ、心臓は潰され、首も斬られた。ソレに付けられた傷は無かったことにはできない。
あ、しんだ。
掲示板の阿鼻叫喚を感じる。掲示板は書き消えた。真に一人になった。孤独。血が流れすぎた。
寒い。寒い。背筋が凍ったのか、孤独に寒さを感じているのか。否、彼は命を諦めた。生命の源が凍えたのだ。
因果の悪魔は目を閉じる。彼はここで終わるのだ。
★★★★★
497:名無しの転生者
全ては原作救済のために
★★★★★
「ぁ…死にたく━━━━━
そして地獄の辺境、悪魔の楽園、神の塔に収まる第六天ゼブルの第二層にて、闇の中、因果の悪魔は死を迎えた。
抗えるものではない。