僕は一般人です   作:~のほほん~

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番外編 トナカイ?

 

「「ジングルベールジングルベール、鈴がなるー」」

 

12月24日

そう、クリスマスイブ兼終業式

 

校長先生の話が終わり放課後に近づくにつれて、ざわめきが増していく。

中学といえど、男子も女子もそのイベントに少し浮足立っている。彼女ができた者、親と過ごす者、友人と過ごす者。

 

かく言う僕も今日は珍しく友だちと過ごす予定になっている。

母さんと姉さんは仕事であり、アクアは監督のところで何か重要なことをやっており、ルビーはアイドルのための練習があるからと断られてしまった。

振られてしまったことにちょっと泣いたのはココだけの話。

 

優香とゆら。

 

僕に存在意義(アイデンティティ)を教えてくれた、大切な友人たちだ。

彼女たちと過ごすことは全く問題ない。それどころか誘ってもらったことには嬉しく感じる。

まぁ、ただ

 

「何であいつと」

「クソ、調子乗りやがって」

「あいつ拉致らね?」

「いいね、校舎裏に埋めよう。そうしよう」

 

二人とも同級生に限らず、先輩、後輩からも大人気な女子だ。本人たち曰く、煩わしさを感じているらしい。だが、チヤホヤされるのは嬉しいとのこと。うーん。わからん。

そんな二人でも今日に近づく度に告白の回数が増えていったのは、流石に堪えたらしい。

 

そんな男子から大人気な女子二人と過ごす僕は、妬みや恨みに似た視線を受け続けている。

まぁ、わからなくもない。

 

イケメンならまだしも、容姿も平均的で、少し勉強ができるくらいの僕と釣り合わないと感じるのは当たり前な話だ。

 

嫉妬が僕の背中にブスブスと突き刺さるが、とりあえず気にしないようしておく。こういうのは反応したら負けだからな。うん。

 

「「きょうは!は楽しい!クリスマス!イェイ!」」

 

まだ学校ではあるのだが、ハイテンションな二人。それだけで目立ってしまうので、移動する分、視線が増える。

 

ていうか、優香の発音良すぎない?

 

ゆらも下手じゃないはずなのに、歌うとその差が明白になる。だが、ゆらはその持ち前の魅せ方で周りから可愛く見えるようにしているらしい。(本人談)

その視線の害が僕に向いてることに嬉しそうにしている当たり、いい性格をしているんだよなぁ

 

前を歩く、ノリノリな二人はテンション止まらずといった感じだ。

今日も今日とて、僕たちは仲良く過ごしている。

 

「そ・れ・でぇー?」

 

「ゆら?」

 

「今日はミヤコ「母さんは仕事だよ?」またぁ〜。会ってみたかったのにぃ」

 

「仕事が早く終われば来るかもだけど、最近忙しいからね」

 

そう。何と言っても明日のクリスマス当日が姉さん引退の日だ。

本当なら準備や進行の確認とやらなきゃいけないことがいっぱいなのだが

 

【…いや、あなたが全部やってくれたじゃない。あとは上の人との確認しか残ってないわよ】

 

母さんに呆れられてしまった。

そんなにやった記憶はないのだが、確認にしたら本当に何も無いため、みんなから振られ、仕事からも振られた僕は大事な友人達と過ごすことになった。

 

「にしても、私も真珠の家に入るの初めて」

 

「あれ?そうなの?」

 

「そうだよぉ〜。プリント渡しに行ってただけだから、中に上がることはないよぉ」

 

今日は我が家でクリスマスパーティーをすることになっている。我が家に招くのはこれが初めてなため、少しばかり緊張してしまう。

 

姉さんには絶対来ないように言っておいたが、

 

【プリクラの子達が来るの?】

 

【うん?そうだよ?二人とも僕の大切な友達だからね】

 

【真珠くんに虫が付くなんて、いや、でも友達って言ってるしーーーー】

 

何故かブツブツと呟き続ける姉さん。

 

どうしたんだろと思ったが、アクアからそっとしておいてあげて欲しいと言われたので、そっとしておいた。

流石は僕の弟。頼れる弟で僕は嬉しいよ。

 

【姉さん。ちょっと力強くない?】

 

【マシロニウムを補充中だから】

 

【いや、僕は良いんだけど、仕事は良いの?】

 

【むぅぅぅぅぅぅ】

 

正論を言ったら唸り始める23歳児に少し呆れてしまうが、僕もまったりと堪能するあたり、シスコンなんだなと再認識させられた。

 

当然、遅刻しかけた姉さんは母さんから怒られていたが。

 

 

 

「じゃあまた後で」

 

二人には後から家に来てもらうことになっている。流石に泊まりではないが、制服で過ごすのも味気ないとゆらが言い始め、一度帰宅することになったのだ。

 

まぁ、あの子のことだから何かしらいたずらを考えてるんだろうけど…

 

そんな信頼を胸に、僕は家で作る料理のことを考え始めた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「これでよしっと」

 

夜ご飯の準備を終えると、タイミングよくチャイムが鳴った。玄関へと向かい、扉を開ける。

 

「いらっしゃい、二人とも」

 

「やっほー、シロくん」

 

「お邪魔しまーす」

 

「二人とも私服可愛いね。ちょっとびっくりした」

 

ゆらは暖かそうなパステルカラーのニットにフレアスカート。それに合うようにロング丈のコートを着ている。

優香はシンプルなブラウスにダークカラーなパンツ。それに明るいベージュのダウンを着ていて暖かそうだ。

 

二人を部屋に上げながら、そう言うとゆらと優香は固まって信じられないようなものを見るように、僕のほっぺたを抓ってくる。

 

「夢?」

 

しぇれはしぶんのでやるんやよ(それは自分のでやるんだよ)

 

「ビックリした~、真珠が服褒めてくれるなんて。今日はホワイトクリスマスかな?」

 

「え?そんなに意外なの?」

 

「「うん、意外」」

 

意外だったらしい。おかしいな。そんな意外だろうか?

 

「不能なのかと」

 

「おい」

 

「ゲイなのかと」

 

「お願いだから学校でそんな事言わないでね?」

 

彼女たちにとって僕は何なのだろうか?そもそも、そんな意外でも

 

「告白されても振ってるから、女に興味ないとばかり」

 

「……」

 

思い当たる節がありましたね。はい。

でも彼女たちは僕に興味があるというよりも、人気な女子と仲良くしている僕を彼氏にしたかっただけ

 

なんか言っていて悲しくなってくる。

 

「…ほら、中に早く入ろう」

 

二人にハンガーを渡し、コートとダウンを玄関にかける。そこで僕はあることに気がついた。

 

「ゆら?その袋なに?」

 

「ふっふっふっ、これは後でのお楽しみだよ坊や」

 

「いや、誰よ?」

 

「え⁉真珠知らないの⁉」

 

「優香も乗らないでいいから」

 

今日も絶好調に小芝居を入れ始めるゆらに優香が乗っかり始める、「ノリ悪ぅ〜」とブー垂れる二人を他所に、中へと入っていく。

 

こうして、僕たちのクリスマスパーティが始まった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

あの紙袋の中をしっかり確認しておけばよかった。

うちにはゲーム機なんかはない。僕があんまり興味がないというのもあるが、そもそもゲームに弱い。そのため買い揃えることもしなかった。

 

だけど、そこら辺は弟がいる優香が強かった。人生ゲームやトランプ、ニンテンドーのゲーム機なんかを色々と持ってきてくれていた。

 

「はい、今日負けた真珠は一日それね」

 

「僕もそっちがいいんだけど」

 

「ぶふ、シロくんはそっちのほうがふっ、ふ似合ってるよ?」

 

「ゆら?もう少し隠そうね?」

 

僕は今トナカイ(・・・・)の仮装をしていた。ちなみに二人は可愛い感じのサンタ帽のみ。

おい、優香は何そんなに写真撮ってるの?

 

「消しなさい」

 

「嫌でーす。大切な思い出は写真に残す派でーす」

 

「……」

 

そう言われてしまうと弱い。

トナカイの耳に赤い鼻をつけられた僕はなすがまま写真に収められてしまう。

 

「うん!いい写真だね」

 

「僕が普通の格好してればね」

 

「え?こっちのほうがかっこいいよ」

 

「ちなみにどこらへん?」

 

「角生えてるとこ」

 

優香は将来、人間とは結婚しないらしい。だって角生えた人間なんているわけないし。

あ、ちなみに角生えてるのがかっこいいというのには共感してしまう。

 

「さて、とそろそろ夕飯にしよっか」

 

外を見ると夕暮れから夜に変わり、真っ暗な景色が広がっていた。

 

「お!待ってました〜」

 

「真珠のご飯、ちょっと楽しみだったんだよね」

 

二人は調理実習のときに食べた味が好みだったようで、クリスマスパーティがうちになった理由の大半が料理だったりする。

エプロンを付け直し、後ろで縛ってから準備を始めた。

 

作っておいたクラムチャウダーを温め直し、その間にローストビーフとサラダを盛り付ける。それからグラタンを電子レンジに入れ、温めボタンを押しておく。

 

「「………」」

 

「そんなに見られるとやり辛いんだけど」

 

「流石というか」

 

「女子力の差がありすぎて悔しくもないや」

 

二人はボケ〜と僕の動きを目で追っている。いや、運ぶの手伝いなさいよ。

 

そう促すと手伝い始める二人。なんだかアクアとルビーを見ているような感覚になって、少し楽しくなってしまう。

 

「ほら、ゆら」

 

「ん⁉」

 

「優香も」

 

「え?ん」

 

いつもアクアやルビーにやるように二人に味見をさせる。ゆらは最初こそ驚いていたが、グラタンの味がお気に召したのかスプーンを離してくれない。そのままくわえさせておき、優香にも同じように口に入れる。こっちは弟にしているからか慣れているみたいだ。

 

「うまぁ」

 

「ほんとに。お母さんのより美味しいかも」

 

「作りて冥利に尽きるよ。熱いうちに食べちゃおう」

 

こうして僕たちは食卓を囲む。美味しそうに食べてくれる二人を見ていると、嬉しくなってしまう。

 

多めに作った料理の大半は無くなり、二人とも満足げだ。時刻は20時近くになっており、そろそろ帰る準備を始める。僕も二人を送るために外に出ると

 

「うわ」

 

「ほら、言ったでしょ?」

 

「シロくんのせいだね」

 

「え、ほんとに?嘘でしょ?」

 

優香が言っていた通り、外は雪が振り始めており、ホワイトクリスマスになっていた。

 

街なかを歩くとイルミネーションと雪が織り交ぜり、幻想的な光景が続いている。

その光景に見惚れてたいけど

 

「あれ?なんか変な視線感じるんだけど」

 

「それのせいじゃない?」

 

頭を触ると何かが手に当たる。嫌な予感がして、直後記憶が蘇る。

そうだった。僕の今の格好って

 

「シロくんなのに。鼻だけじゃなくて全部真っ赤だね」

 

恥ずかしくて死にそうになっている僕と、楽しそうに笑う二人。

 

そんな二人がいるだけで

それだけで僕は幸せなんだから

 

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