僕は一般人です   作:~のほほん~

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妊娠

 

 

 

 

 

「なんでこうなった」

 

俺の名前は斉藤壱護。芸能プロダクションの社長をしている。弱小ではあるが、黒字がしっかりと続いているし、問題はなかった。このときまでは。

 

「妊娠しちゃった」

 

俺が見つけた原石。全ての直感が本物だと叫ぶ。

星野アイ。こいつは絶対に化ける。こいつなら俺の夢をドームライブを叶えられる。

と思っていたのだが、

 

「妊娠しちゃったじゃねぇよ!相手は誰だ!」

 

「え〜、内緒」

 

「なんでだよ!」

 

「だって社長、怒るじゃん」

 

「もう怒ってるよ!」

 

あぁ、クソ。こいつは何かをやらかす気はしてたが、まさか妊娠とは思わなかった。

 

「なんでもっと早く話してくれなかった」

 

「そ、それは」

 

クイクイと袖を引っ張られる。マグカップを持った真珠が心配そうにこちらに見つめていた。

 

「真珠ありがと~」

 

「坊主悪いな。今は胃が痛いんだ」

 

「ココアだよ?」

 

「貰おう」

 

コーヒーかと思ったが、どうやらココアだったらしい。

最近こいつが事務所に来てくれるようになってから事務所内の雰囲気が柔らかくなった。最初は他のスタッフの邪魔にならないかと心配だったが、杞憂だった。

 

それどころか他のスタッフの手の回らないところをこなしてくれたり、タイミングを見てお茶汲みをやってくれたりする。そのため今ではマスコットような存在だ。

 

「大丈夫?」

 

「大きな声出して悪かったな」

 

「ううん。おじちゃんも大変なんだね」

 

こいつは本当に7歳なのだろうか?俺が7歳の頃はもっとアホだった気がするのだが。

精神の早熟具合がやはり比ではない。こいつと出会ったのは二年前だった。

あの日、ミヤコのあんな表情は見たことがなかった。旦那として支える。当たり前のことだった。

 

ミヤコの姉の子供。最初はそんなに興味が湧かなかった。ミヤコから聞いた話では知らぬ間に子供ができており、夫は不在。まぁ、芸能界にいればよくある話の一つだった。この世界は弱肉強食。生き残るなんてのは本当にごく一部だ。夢を見て潰れていくのが当たり前な世界。

 

そんなところにいる俺の感性は少しズレている自覚はあった。

 

ICUの姿や怯えている姿を見ても、まぁしょうがないよなと思う程度だった。

 

あの時までは

 

『ミヤコさん、大丈夫だよ。みんなはママにちゃんとお別れが言えたんだね』

葬儀のあの日、真珠が発した言葉。

 

俺の思い違いだと言い聞かせた。

 

子供がそんなことを考えるハズがないと。

 

俺にはあの言葉が、

 

 

 

 

 

「おじちゃん?」

 

「あ、あぁ。なんでもない」

 

どうやら物思い耽っていたらしい。

貰ったココアを口に含むと胃のあたりが温かくなるのを感じる。あぁ、うめぇ。

 

感情が落ち着いていくのを感じる。

 

「とりあえずだ。アイ!」

 

「なに~?」

 

「いや、お前何してんの?」

 

「え?ストレッチだけど?」

 

「馬鹿か!妊婦がそんなに運動するじゃない!そもそもお前病院には行ったのか?」

 

「え、まだに決まってるじゃん」

 

こいつは。何でこんな悪びれないのだろうか?青筋が浮かぶが再度ココアを口に運び、感情を落ち着かせる。

 

 

だが、僥倖だとも言える。

つまり、まだアイの妊娠は世のどこにも出回っていないということだ。

 

「これどーぞ」

 

「おう。ありがとなって何だこれ?」

 

「病院のパンフレット」

 

いや、パンフレットっていつの間に?

というか七歳の子供ってパソコン使えるのか?最近の子はわからん。

しかもしっかりと地方の方の病院である。

 

「お前、いつの間にこんなもの用意したんだ?」

 

「さっき怒ってるときに、必要かなと思って」

 

「おぉ〜。さすが私の義弟。気が利くね〜」

 

「いや、お前はもっと早く調べておけよ」

 

「あ、こことか良いね〜。星が綺麗そうだよ社長」

 

そう言いながらこっちを振り向くクソアイドルだが。俺はこいつに対してどうやら激アマらしい。嬉しそうな姿を見ると怒りの感情はどっかに行ってしまった。

 

「はぁ、どれだ?」

 

「ここ、ここ、宮崎なんだってさ〜」

 

「まぁ、ここならバレないか。アイ荷物まとめとけよ。俺もミヤコに仕事を頼んだら迎えに来る」

 

飛行機や新幹線は身バレの可能性が高い。行くなら車だな。

 

「坊主、悪いがアイの準備を手伝ってやってくれ。必要な物があれば後でコンビニで買うからな」

 

「うん。わかった」

 

「うん!頼まれたよ」

 

「いや、お前の準備するんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所に戻った俺は軽くミヤコに事情を説明し、業務を任せる。

 

「というわけだ。少し宮崎に行ってくる」

 

「わかったわ。後のことはこっちでやっておくから」

 

「あー、あと真珠のやつ連れて行ってもいいか?」

 

「え?なんで?」

 

「ほら、あいつアイに懐いてるし、お前も仕事に専念できるだろ?」

 

「なるほどね・・・。で、本当は?」

 

「アイのやつが連れていきたいって聞かないんだよ」

 

「はぁ、わかったわ。その代わりあんまり無理させないであげてね」

 

「あぁ、わかってる」 

 

 

そこからは早かった。車の手配をし、ほとんど真珠が用意したキャリーケースを車へと運び込み、宮崎へと出発したのだが

 

「あ、社長!あれ美味しそう!」

 

「お姉ちゃん走っちゃ駄目だよ」

 

「おい、勝手に動くな。絶対帽子取るなよ!」

 

サービスエリアではしゃぐわ。

 

「んー、さっきのあんまり美味しくなかったね〜。ツ◯ッターにあげよーっと」

 

「いや、あげんな!」

 

ソーシャルメディアにあげようとするわ

 

「暇だねぇ」

 

「お姉ちゃん横になる?」

 

「そうしよっかな。あ、そだ。この間社長がね。また若い女の子を」

 

「おい、やめろ!変なこと吹き込むな」

 

「おじちゃん?」

 

「こいつ、ミヤコのことになると少し怖いんだよ!」

 

仲が良いかと思えば、真珠にいらんこと吹き込もうとするわ。というかこいつ本当にミヤコのことが好きだな!

そのまま宮崎に付くまでミヤコ語りを聞かされることとなった。アイは飽きたら寝てるし。

 

「ミヤコさんはね。ママとも似てるし優しい人なの。おじちゃんも遊びたいかもしれないけど、ミヤコさん以上に良い人なんていないんだよ?それに「ほ、ほら、坊主あの病院だぞ?」あ、着いたんだ」

 

病院に意識を向けさせることで何とか会話を終わらせる。

まだ着いてもないのに、こんなに疲れて俺は大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

 

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