ということで書いてみました。どちゃくそ亀更新の気配がぷんぷんします。矛盾も出そう。でも知ったこっちゃありません。勢いが全てです。世の中勢い。ルビコンでもそうだった。
温かい感想とかくださるとモチベあがると思います。それでは、開幕。
第1話
『メインシステム、戦闘モード起動』
無機質なCOM音声と共に、その巨体は起き上がった。
クリアになったはずの視界は、今しがたのダイナミックな着地で舞った埃でにわかに霞んでいる。
地を踏みしめる音が反響する。外装を突き破った衝撃で関節にダメージが入ったようだ。あまり良くない駆動音を直感する。
初めて吸い込む、都市の新鮮な空気――などはない。恐らく硝煙と錆鉄に支配された、清涼の欠片もない匂いに満ちている。何より、自分がいるのは他でもない、機械の内部だ。
「座標は、グリッド135」
通信が入った。厳かで低い肉声。
「誤差はあるが許容範囲だ。この先のカタパルトを使え」
記念すべき最初のミッションは初心者歓迎、短い道なり散歩らしい。
事前にマニュアルは学習済みだ。実践での機体操作に慣らしながら前進していく。
狭い通路を抜け広い空間に出る。敵影を捕捉した。
「ガードメカは排除しろ。動作確認になる」
言われるがままトリガーを引く。普及型のアサルトライフルから放たれた一発は正確に敵機を射抜き蒸発する。
奥に四機密集しているのを確認。瞬時に自己判断し、マルチロックシステムを起動。右肩に装備したミサイルが発射され、それぞれが的確に掃討を実行する。
機先を制した結果得られた最小限の弾数消費と無傷の制圧に、これといった感想もなくブースターを吹かす。
アクセスしたカタパルトに乗り込むと、通信が入った。
「この惑星でコーラルを手にすれば、お前のような脳を焼かれた独立傭兵でも、人生を買い戻せるだけの大金を得られるはずだ」
発進準備完了。
強烈なGが襲い掛かる。異常な加速度を伴い、機体が前方に投げ飛ばされる。
間もなく姿勢が安定した。自由に、優雅に飛ぶ鳥になった気分だ。
余裕が生まれ、意識が外に向く。すると、眼前に広がる景色に息を呑んだ。
鮮やかな雪化粧を纏った山岳地帯。退廃の裏に儚さを隠し持った街並みが、祝福の如き陽光に照らされ輝いている。とても汚染市街とは思えぬ美麗な光景に、目を奪われた。
ここが……この惑星が――。
「……観光気分は程々にしておけ。だが、不要な緊張がないのはいいことだ」
機微を指摘される。出来る限りこちらを尊重した言葉だった。
「仕事を続けるぞ。ACの残骸を漁り、生きている傭兵ライセンスを探せ」
快適な空の旅が終わる。再び重力に囚われた錆鉄は、絵画のような舞台に土足で踏み込んだ。
放出される熱は、火照った身体で白い息を吐く人間のようで。
「名無しのお前が、この惑星で知らしめることになる名前を」
手綱を握るハンドラー・ウォルターからの通信。操縦桿を握る手に力が入る。
身分証の獲得。現目標にして、始発点。
自分が何者になるのか、これから決まる。
「行くぞ――――621」
惑星、ルビコン3。
かつて大火に焼かれ、なおも火種の燃ゆる戦場に。
それは、ひっそりと降り立った。
すぐに見えたのは、ルビコン解放戦線のゲリラ部隊。指示を待つより先に、621は行動を起こす。
「なるほど、妙案だな」
潔い方向転換。敵機配置の薄い山裏へとノズルを切る。
ゲリラの規模は定かではない。戦闘向きのパーツを装備していないことや本来の任務に鑑みれば、戦闘を避けるという選択肢は十分考えられる。
状況を慎重に見極める余裕が、621にはあるようだ。
「迂回の時間を持て余さないよう、お前に一つ補足を伝える」
補足。欠けている情報? 抽象的な発言に、621は反応を見せる。
「お前の他にもう一人、先行してルビコンに密航したやつがいる。これから何度か行動を共にすることになるだろうが……どうにも能天気な性格でな。お前と上手くやっていけることを願っておこう」
淡々とした口調だったウォルターが、初めて言葉を濁したように感じられた。彼の言う通りなら、なかなかに癖のある同胞ということだろうか。
自分一人ではない。その事実の大きさを掴めないでいると、
「いずれにせよ、まずはこのミッションをクリアしないと始まらない。気を引き締めろ」
どうやら早速、1つ目の残骸が見えたようだ。決して短くはないアクセス時間を、兵士に見つからないか緊張を抱きながら待つ。
「……このライセンスは失効済みか。次を当たれ」
トーマス・カークという名前が一瞬見えた。企業か解放戦線か、将又封鎖機構か。一人の独立傭兵が、無惨にもここで儚く散ったということだ。
「……! 封鎖機構の巡回だ。そのままやり過ごせ」
突然現れたSGも特に問題はない。未だ、621の存在はこの戦場で明るみになっていない。
次のマーカー地点は約3000メートルの距離。しかし、封鎖機構の登場でゲリラがざわめきだったおかげで難なく辿り着いた。
「企業所属では足がつく。避けるぞ」
G7、ハークラー。ベイラム・インダストリーと呼ばれる企業の所属機体だったようだ。
ウォルターによって示されたマーカーは2つ。どちらも目当てのものではなかった――。
「621、もう一つ反応を検出した」
輝点が1つ追加される。距離は1500。造作もない。
あくまで隠密に、621は歩を進めていく。その慎重さと技術に、既にウォルターは舌を巻いていた。
――思わぬ特技が、こうも早く見つかるとは。
ライフル10発、ミサイル4発、パーツの損傷は着陸時のみという驚くべき消耗状況のまま、621は3つ目の傭兵ライセンスを漁り始める。
「登録番号、Rb23。傭兵ランク圏内。失効もしていない。識別名は――」
照射。それは突然の変化であり、本能的な回避を促す予兆である。
光源を探す素振りも見せず、621は遮蔽物に飛び込んだ。
「捕捉されたか。この一帯にしてはやけに厳重な気もするが……構わん、迎撃しろ」
二翅の轟音を発しながら飛翔する大型武装ヘリに、全く臆することはない。道中の密行が嘘のように、621は迎撃を開始する。
機関砲の雨をブーストで躱し、ミサイルとライフルを同時発射。前者はともかく、後者は有効射程まで接近が必要で、勢いを失った弾丸は鋼鉄に容易く弾かれた。
左右に三基ずつ、翼のように備え付けられたポッドから、計36発の応酬。咄嗟の判断で直撃は避けたが、爆風による損傷は免れない。
「爆撃は上昇で回避しろ。地上では巻き込まれるぞ」
そうは言ってもだ。十分な回避行動を取るには少々燃費が悪い。低品質なジェネレータに文字通り足を引っ張られている。
しかし、相手の装備を考えてもそれが最良の手段であることは間違いない。攻撃が途切れた一瞬でENを回復し、全消費覚悟で肉薄する。
左腕に装着したパルスブレードをチャージ。斬撃。
強い衝撃を受けたヘリは負荷に耐えきれず、姿勢制御システムが一時的にダウンした。
好機を逃さず最大限の弾幕を張る。
「増援か……。621、同型のヘリが2機、そちらに向かっている」
努めてそうしているのか、あくまで素なのか。ひどく落ち着いた声から発されたのは単純な絶望だ。
「慌てることはない。さっき話した
それまで持たせろ。そう聞こえるのと同時、ヘリが動きを見せた。
同じ轍を避けたいのか、先程の機関砲とミサイルが同時に放たれる。こちらを弾幕で牽制し、あわよくば捻じ伏せてしまおうという魂胆だろう。
しかし――図体の大きさも相まって――単調な動きだ。慣れてしまえばこちらの対応も洗練されていく。伊達に調整を繰り返してきてはいない。
弾が途切れた。ここで隙が生まれる。踏み込むなら今だ。
アサルトブースト噴射。ミサイル発射。ライフルの射程圏内、四発打てばブレードの間合い。
入った。すかさず左腕を振りかぶり――
眼前に弾頭が迫っていた。
「……」
あまりに突発的な出来事に一瞬、呼吸が乱れる。強引な緊急回避で機体が軋む。
右肩に掠った。
小さな足のように取り付けられた発射口。隠し玉の存在が露呈し、一層肉薄が難しくなった。装備が1つ多いかどうかで弾幕には大きな差が生まれる。途端に足が竦んでしまうのも無理はなかった。
離れていてはジリ貧。近づこうにも相手の顔が見える頃には機体が塵になってしまう。
八方塞がりな状況。どうにか突破口を模索する621の脳内を急速に思考が巡り巡る。
瀕死覚悟で突っ込むか? 満身創痍では次の任務どころじゃない。弾切れを待つ? あの質量に積載された量を? 今の機体状況じゃ先に墜ちる。退避は……捌き切れるかもしれない、だが別の敵と挟み打ちされれば悪化する。どのみち増援が来れば打つ手は潰える――。
絶望的な立場を冷静に分析するほど、胸中に筆舌に尽くしがたい感覚が湧き上がる。どうにもできない無力、抗いようのない死の直感。
それは次第に膨れ上がり、1つの負の感情を抱かせた。
そして――。
救援は今、どうなっている……?
眼の前の戦いとは外れたことに考えが及んだせいだろうか。
その一瞬が隙となり、事態は大きく動いた。
「……ッ」
単調な回避行動を繰り返していたACに、これまでにない衝撃が加わる。
死角から頬を殴られたような痛みが何を意味するのか、考えるまでもなかった。
敵性反応は、二つ。
先に到着した増援は、
二体の魔物に睥睨されながら、肢体を辛うじて起こす。関節の損傷甚大、右膝が上手く立たない。応戦の手段は――ミサイル損失、ライフル残弾50%。万全なのはブレードのみ。
回路がイカれて漏電する身体では、これ以上まともな戦闘ができない。
ヘリの機関砲がゆっくりと回り始める。逃げ場のない雨を予感した621は初めて抱いた激情に苛まれながら、それでも傍から動揺は見て取れない。
「621」
ウォルターからの通信。
「よく持ちこたえた。初めての戦場、この戦力に対してここまでやれたなら上出来だ」
労いの言葉は、冥土の土産にも聞こえてくる。
しかし、
「あとはあいつに任せておけ」
唐突な爆発音。新たな敵性反応。
ウォルターは増援が2機だと言っていた。まだ姿を見せていないもう一機が合流したのだろうか。
ACは徐ろに顔を上げた。
「気前のいいお膳立てだな、ウォルター」
通信。ウォルターの苦味走る声ではない。快活な青年らしき声と、これは……和やかなクラシック?
「そんなものはない。お前は言われた通り敵を墜とせ」
「妙に焦ってんのは仲良しごっこの延長か。まあいい、待たせた分は真面目にやるさ」
随分と砕けたやり取りに耳を傾けていると、あることに気づく。顔を覗かせたヘリの様子がおかしい。既に制御を失い、悲鳴と共に炎を上げていた。
「聞こえてるか兄弟!」
目を凝らすと、装甲に何かが粘着している――。
「怖かったろ。もう大丈夫だ、お前は死なねぇ」
いや、違う。まさか、あれは……
「このワルツが俺たちの凱歌だ。よく覚えておけ!」
半壊したヘリにへばり付く異物。声の主が乗り込んでいるであろうそれは、なんとACだった。
動揺から覚めたヘリたちが、こちらに向けていた機関砲を旋回させる。散弾は撃破に至らず、大きな的となったヘリに着弾し爆発した。
その直前、ACは猿のような跳躍で飛び移る。
そう、飛び移ったのだ。そのまま、別のヘリに。
「羽根付きに乗るたぁ運が悪い」
展開したブレードを頭上に掲げる。高速で回転するプロペラが自ずと細切りにされていく。当然、ヘリは制御を失った。
とても自分と同じ機種に搭乗しているとは思えない。下から攻撃しにくいなら上に乗ってしまえ。単純ではあるが、その機体性能でそれを実行する胆力が凄まじい。
もう一度同じことを実行しようとするACだが、そう上手くはいかないようだ。
「しゃらくせぇ。――おいハンドラー、なんでこんな粗悪品を寄越しやがった!」
「前のはお前が壊したんだろう……すぐに用意できる環境でもなかった」
全速で距離を取るヘリに、青年の悪態の矛先は飼い主に向けられた。舌打ちとともに着地する。
「距離は……耐久力を考えると……無茶すりゃパパっと片付くか」
何事かつぶやくと、こちらに語り掛けてきた。
「悪ぃな兄弟。ちっとばかし手伝ってもらうぜ。なに、初めての共同作業ってやつさ」
冗談めかして言うなり駆け出した。具体的なことは聞かされなかったが、合図を待てば良いと解釈した。
「頑張れよポンコツ!」
切迫した様子で、しかしその状況をどこか楽しそうに。青年は敵までの道のりを蛇行する。
まるで、友と遊戯に励む放蕩のようだ。
小回りよく動くACに、大型のヘリはやりにくそうにしている。火力を押し付けようにも、先の同胞と同じくブレードの返り討ちにされるビジョンが躊躇わせる。
しかしそれは、こちら側も思うような肉薄ができないということだ。
「ぐっ……はは、やけになったか!」
埒が明かないと判断したのか、乱れ打ちに切り替わる。爆風によるダメージが蓄積するが、特に大事無いようだ。
ACは器用なことに、ライフルを盾にすることで機関砲による損傷を抑えている。
ただ、それでも均衡は長く続かないものだ。
建造物を背に、ACはヘリと向き合う。追い詰められた鼠の絵図。
「ひっどいねぇ。弱い者虐めなんざ大人の所業じゃねぇ――両手を上げれば見逃してくれるかい?」
そう言って、彼は本当に万歳をする。ガチャリと、ライフルが地を削る音が響いた。
ただ仕事を全うする使命感か、これまで受けた仕打ちへの苛立ちか。ヘリはお構い無しに全弾発射する。
それは、短慮と言わざるを得ない判断だった。
「……っ!」
嗤う声の、漏れる気配がした。
ミサイル射出、正面のランチャーを相殺。右肩のポッドを左手、左腕のブレード本体を右手で掴む――引き千切る。左右に展開された敵ミサイルへ投擲。派手な爆発が、両者の間に巻き起こる。
その攻防、わずか0.8秒。
「今だ兄弟!」
青年の合図。
視界が炎に覆われたヘリは状況把握が遅れた。背中が明確な隙となっている。
誘われた鼠は、そっちだ。
ヘリよりも高い、上空から舞い降りる殺気の影。
ブレード、展開。
「……!」
重力のままに落下する機体諸共、その莫大な質量を以て、621はパルスブレードを叩き付けた。
ジリジリと装甲が焼け裂かれていき、断ち切れる。
着地したACの頭上で、両断された巨体は大きな音を立てて爆散した。
「惑星封鎖機構SG。大型武装ヘリ三機の撃墜を確認した。二人共、今日の仕事は終わりだ」
ウォルターの通信。ミッションの完了を疑っていなかったかのような、落ち着き払った口調。
しかし、
「また派手にやってくれたな。これだから資金が逼迫するんだ」
「赤字なんてなんのそのさ。コーラルでたんまり元は取れる」
「過程に問題がある。あれほどの戦力が投入されたのはお前が暴れ過ぎたせいだ。特に、命令無視は看過できない」
「致命的じゃなかったからだ。目を付けられるかは時間の問題でしかないし、あんたの戦術サポートには歯向かってない。現場の合理的判断を尊重できないのは、オペレーターとしてどうなんだよ」
悪友のようにいがみ合う二人を、621は呆然と見つめていた。自分にはフラットな態度を取るウォルターが、今は小童に困らされるただの老人に聴こえる。
彼は1つ、わざとらしい溜息をついた。
「……もういい。とりあえず、そいつに自己紹介をしてやれ。これから肩を並べることになる、お前の新しい後輩だ」
初めて青年が――青年のACがこちらを見る。すぐに視線を外し、足元のライフルを拾い上げた。
「へ、お前は運が悪く、そして良い。何せアイツの飼い犬として生まれた代わりに、大層頼りがいのある兄貴と巡り会えたんだからな」
ひとしきり眺め終えると――銃口を向けられた。
「モンキー・ゴード。俺のことはそう呼んでくれ。お前は?」
名前? 名前か……。
621は沈黙する。察したウォルターからデータが送られてきた。
これが、この惑星で通す初めて名前……数字ではない、確かな意味を宿す渡り鳥。
621は、応えるようにライフルを構える。
見つめ合う二人はさながら鏡合わせ。ノイズ混じりのワルツは、静止した時を引き延ばしてしまう程の穏やかさがあった。
発砲。二つの弾丸は時間を強引に突き動かし、両者の頬を掠め、そして互いの背後に現れたMTを貫いた。
華々しい業火と轟音があがる。それはこの惑星の縮図である一方、出会いに対する祝福でもあった。
そんな忙しなく虚しい彩りの中、その名は告げられた。
肉声によく似た、冷たい音で。
――――おれの、名前は
我々にはありとあらゆる幻覚があります。その1つが美女621です。
ええそうでしょうとも。ウォルターパパとの親子愛。戦友とのいちゃラブACデートなどなど。どれもまさしく「素敵だ…」。でも自分じゃ既出のみなさんの作品以上のものは書けない。でもACの二次書いてみたい…。
じゃあ少年621で貫くっきゃない!漢だからこそ描ける暑苦しさ、泥臭さがありましょう。うちの621は段々逞しい男になっていくんだい。かく言う自分も6が初AC。弱体化前バルテウスは吐きそうになりましたとも。
そんなわけで、今まで少数派だったであろう幻覚を交えつつ、この筆の都合だけで好き勝手キャラを生き残らせていくというのが目標になります。例えば「意外と見た目が○○な○○○」とか、「○○系○○○○な○○○○」とか。
そして、完結できるかわかりませんが完結するなら、後半はかなりオリジナルな展開になると思われます。そういう意味で原作崩壊御法度主義の方はご注意ください。