「アドヴェント・ザ・ヴァンガード!!」
「スタンドアップ・My・ヴァンガード!!」
「リザードソルジャー コンロー!」《5000》
「ライド、うぃんがる・
燿覇がかげろう、輪廻はゴールドパラディンと、2人そろって前回のファイトとは全く違うクランに変わっていた。
「あれ、火穂の弟ってシャドウパラディン使ってなかったか?」
「そういえばそうですね……今はかげろうのようですが」
「あぁ、それね」
不思議そうな顔をしている正機と夜代の質問に火穂が答える。
「アキハは元々かげろうを使ってたんだけど、ある時期を境にシャドウパラディンを使うようになったんだ。で、今はシャドウパラディンのデッキが手元にないからかげろうに戻ったってワケ」
「へぇ~……そうだったのか」
「それに……」
「それに?」
「きっと今のアキハなら、あの子たちを生かしてあげられるハズだから」
「あの子たちって誰ですか?」
「こっちの話ですよ~」
夜代に返事をした火穂の表情は僅かながら、笑っていた。
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
話は昨日の夜に戻る。
「…………………………僕は……………………僕は………………ヴァンガードをしたい。あの人ともう一度………………ファイトしたい!!」
ファイトしたい。
燿覇の言葉にはその思いだけが籠もっていた。勝ちたいではなく、ファイトをしたい。これこそが燿覇の本当の気持ちだった。
「うん……わかったよアキハ。アキハの思い、伝わったよ」
火穂はそう言うと、部屋の外に出て紙袋を持ってくる。それは燿覇が、昼間に火穂に届けに行っていた物だ。
「じゃあ教えてあげる。燿覇が部長に勝つ方法。それはーーーーーーーーーーー
1人で勝てないなら2人で闘うんだよ」
「2人…………で?」
「そ、アタシとアキハの2人でデッキを作って部長とファイトするんだよ」
「でも、中途半端なデッキじゃあの人には……絶対に勝てないよ?」
「その辺は安心して!ちゃんと策は練ってあるし、それにデッキの土台には燿覇の前のデッキを使うから半端なことにはならないよ」
「僕のデッキ……あれを使うのか……」
燿覇が以前使っていたデッキ。それは燿覇がヴァンガードを心から楽しんでやっていた頃のデッキのことだ。
「でも、あのデッキは未完成だし……」
「大丈夫!その辺はちゃんと考えてるってば!!」
火穂が紙袋の中から何かを取り出す。取り出されたのは、『封竜解放』と記された箱だった。
「これは……何?」
「ヴァンガードブースターパック第11弾『封竜解放』!!今現在だと最新弾のパックだよ!」
「まさか……この紙袋の中身全部これ?」
「うん!!全部合わせて4箱あるよ」
この言葉を聞いた瞬間、燿覇は若干のめまいに襲われる。
「というか何で、篠宮先生がこれを持ってたの?」
「ん?それはね、篠宮先生の実家がカードショップを経営してて、封竜解放が安くなったって聞いたからまとめ買いしたんだー」
「そ、そうなんだ」
(安くなったっていったって、そんなに安くはないだろ!?)
「よしそれじゃあ、本題に入るよ!」
「あ、うん」
心の中でツッコミを入れながらも火穂の方に向き直る燿覇。
「アキハには、今からこのパックに入っているカードを使ってデッキの改良をしてもらうと同時に、今現在のヴァンガードの環境について学んでもらう!」
「………………え?」
「よし、それじゃ始めるよーっ!!」
「えぇーーー!?」
この後夜中の2時になるまで、デッキ製作と勉強会は続いたのだった…………
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
そして、視点は現在。ファイトへと戻る。
「オレのターン、ドロー。ライド、小さな解放者 マロン《7000》そして、うぃんがるはV後方へ移動する」
ふと輪廻は、燿覇の変化に気づく。
「お前……抹消者は知らなかったのに、解放者は知っているのか?」
そう、燿覇が解放者に対して反応をしめさなかったことだ。抹消者と解放者が出たのはほぼ同時期。つまり、抹消者を知らない燿覇は解放者のことも知らないはずなのだがーーーーーーーーーーー彼は何の反応もしなかった。
「知ってる、というより……教え込まれたんですよ。昨日、火穂にね」
「ほう…………」
「僕が知っているヴァンガードの環境はBT6弾の頃まで。それ以降の環境については全く知りません。ですが、火穂から現在のヴァンガードの環境まで教えてもらい、今ここにいるわけです。それに……」
燿覇は少しためてから、輪廻を指さす。その表情は楽しげに笑っているように見える。
「あなたの弱点ーーーーーーーーーーーというか、短所についても聞きましたよ」
「ふん……まぁ、そのぐらいのハンデ位与えてやる。でないと面白くないからな。ターンエンド」
輪廻は仏頂面で手を出し、譲るようなジェスチャーを行い腕を組む。
「それでは、僕のターン。ドラゴンモンク ゴジョー《7000》にライド!コンローはV後方へ。そのままブーストしてVでVにアタック!」《12000》
「ノーガード」
「トリガーチェック《ベリコウスティ・ドラゴン》トリガーは無し。これで僕のターンを終了します」
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
輪廻
ダメージ 1
手札 5
前列 ┃マロン(解)┃
後列 ┃うぃんがる(解)┃
燿覇
ダメージ 0
手札 6
前列 ┃ゴジョー┃
後列 ┃コンロー┃
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
「そういえばなんだけどさ」
「ん、どうしたの正機?」
2人のファイトを離れて見ていた正機は一つ気づいたことがあった。
「なんていうか、お前の弟……すげー楽しそうにファイトしてるな」
「……そう見えるかな?」
そうそれは昨日、自分とファイトしていた時とは全く違う燿覇の姿。いや、姿というよりも気配のような物だろう。それが全く違っていたことに正機は気づいていた。
「う~ん、少なくとも俺にはそう見える」
「そっかぁ…………」
小さくホッと息を吐いた火穂。そして、正機と火穂の会話を隣で聞きながら、夜代は1人考察する。
(彼が楽しそうにファイトしているように見えるのだとしたら…………それはきっと、火穂ちゃんの思いが彼に届いたのでしょうね…………)
昨日の火穂の姿を思い浮かべながら夜代は燿覇を見つめる。彼の表情は確かに笑っていた。昨日のような闇が見え隠れする笑顔ではなく、純粋に楽しんでいる笑顔で。
「オレのターン。立ち上がれ、我が剣。ライド、ブラスター・ブレード・解放者《9000》沈黙の解放者 ギャラティン《10000》を右上にコールする。そしてうぃんがるのブースト、ブラスター・ブレードでVにアタック」《14000》
「ノーガードです」
「ドライブチェック《
「ダメージチェック《バーサーク・ドラゴン》トリガーは無いです」
「ギャラティンでVにアタックだ」
「そっちはブルーレイ・ドラコキッドでガードします!」《17000》
「これでターンエンドだ」
相も変わらずの抑揚の無い声の輪廻。対して燿覇は安堵からか、軽く息をついて自分のターンを開始する。
「スタンド&ドロー。ライド、ベリコウスティ・ドラゴン!《9000》コンローのスキル発動!CB1とコンローを退却させることでデッキからG1以下のカードを1枚手札に入れます」
デッキの中を見ながらどれを選ぶか考える燿覇。
(ここは……相手に警戒心を与えてみようかな)
「僕が選ぶカードは……封竜 リノクロス」
「ほう……完全ガードか」
ここで燿覇は完全ガードを手札に追加する。これによって輪廻は常に、完全ガードに対する警戒を持つことになる。
「右上と左上にドラゴンナイト ネハーレン《10000》を2体コールして、右下に鎧の化身 バー《8000》をコール!」
空いているリアガードサークルを埋めるかのように展開をする燿覇。事実、場はバニラユニット(能力を持たないシンプルなユニットの事)でかなり固められている。
「あの、火穂ちゃん」
「はいはい、何ですか?」
ここで、夜代が一つ疑問に感じる。
「どうして彼、陽世君はネハーレンのようなパワーの高いユニットにライドしないんでしょうか?」
「あぁ~それですか~」
ここで恒例のファイト中質問コーナー。
「それについてはあくまでアタシの考えなんですけど……アキハの場合はベリコウスティ・ドラゴンはCB回復のスキルを持っているんで、相手にガードしなければと思わせたり、ドライブチェックによってパワーが上昇するかもしれないので、その分ガード値を余分に削る事ができるからだと思いますよ~」
「それなら、ベリコウスティの後ろにバーを置いた方が良いんじゃ?」
「それはもし、部長がベリコウスティのアタックを通してダメージトリガーを引かれた時にでも、リアのネハーレンがアタックできるように置いたんだと思います!」
「なるほど……ありがとう、火穂ちゃん」
「いえいえ~」
質問コーナーは終了し、ファイトに再び視点は戻る。
「さぁ、いきますよ!ベリコウスティでVにアタック!」《9000》
「ギャラティンのインターセプトと武装の解放者 グイディオンでガード」《19000》
パワー値9000対19000。トリガーを2枚引かなければ貫通できないうえ、G2ではトリガーチェックは1回のみなので、完全ガードとなる。
「くっ、トリガーチェック《ガトリングクロー・ドラゴン》getドロートリガー!ワンドローして、パワーは左上のネハーレンへ《15000》そして、左上のネハーレンでVにアタック!」
「ノーガード。ダメージチェック《ブラスター・ブレード・解放者》トリガー無し」
「最後にバーのブーストが付いたネハーレンでVにアタックします!」《18000》
「ノーガード。ダメージチェック《孤高の解放者 ガンスロッド》トリガーは無しだ」
この時ダメージゾーンに落ちたカードを燿覇は見逃さなかった。
(孤高の解放者 ガンスロッド……ブレイクライドスキルを持ったユニットか……厄介だな)
ブレイクライドとは、ダメージが4点以上の状態でそのスキルを持ったユニットに、G3以上のユニットがライドすると様々な効果を与えるスキル。それらを総称してブレイクライドと呼んでいる。
「オイ、ターンエンドか?」
「は、はいターン終了します!」
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
輪廻
手札 4
ダメージ 2
前列 ┃ブラスター・ブレード(解放)┃
後列 ┃うぃんがる┃
燿覇
手札 5
ダメージ 裏1
前列 ネハーレン┃ベリコウスティ┃ネハーレン
後列 ┃┃バー
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
「オレのターン、ドロー」
(さて、どう来るんだこの人は……)
輪廻の動きを見続ける燿覇。
そしてーーーーーーーーーーー
「孤高より解放されし勇士よ。今、我が前に勝利への道を見せよ。ライド、孤高の解放者 ガンスロッド!!」
盤面に姿を現した1枚のカード。ただのカードだというのに、燿覇には何故かガンスロットから何か不思議な感覚を感じ取る。
(な、なんだコレ……身体が……アツい)
一方、輪廻には大した変化がなく、唯一の変化としては自分の手札ではなく、燿覇の事を見ている点だろうか。
「王道の解放者 ファロン《9000》を左上に、小さな解放者マロンをその後ろにコールする。そしてうぃんがるのブースト、ガンスロットでVにアタックする。ガンスロッドはアタック時にパワーを2000追加だ」《18000》
「そこはノーガーーーーーーーーーーーーっ!!」
この時燿覇はまた、何かを感じ取る。それも嫌な何かを。
「封竜ビエラと左上のネハーレンのインターセプトでガードします!」《24000》
「ツインドライブチェック。《希望の解放者 エポナ》GETクリティカルトリガー」
(嫌な何かの正体はこれか……)
先ほどの感覚の正体を知り、冷や汗を流す燿覇。ガードをしていなければ間違いなく2点のダメージをそのまま受けていただろう。
だがーーーーーーーーーーー
(陽世 燿覇。お前はまだまだだな)
「トリガーの効果は全てガンスロッドに与える」
「え!?」
輪廻の、あまりに唐突な行動に驚く燿覇。
そして、2枚目のトリガーがめくられる。
「2枚目。《希望の解放者 エポナ》getクリティカルトリガー。効果は全てガンスロッドだ」《28000》
「な、ここでダブルトリガー!?」
燿覇のガードが、ダブルトリガーによって貫通される。
「ダ、ダメージチェック……1枚目《ドラゴンモンク ゴジョー》、2枚目《封竜 アートピケ》GETドロートリガー!パワーはVに。《14000》3枚目……《封竜シャーティング》GETヒールトリガー!パワーはVに追加してダメージを回復します!」《19000》
「……そっちもダブルトリガーか」
「そう、みたいです……」
燿覇はダメージを回復しながらも、やはりここで一気にダメージを与えられたのは痛いと考える。
さらに輪廻は追い討ちをかける。
「うぃんがる・解放者のスキル発動。うぃんがるをソウルに入れることで、ソウルからブラスター・ブレード・解放者をスペリオルコール」
「スペリオルコールか……」
スペリオルコールとは。メインフェイズ中に手札からユニットを出す通常のコールとは違い、ユニットのスキルなどで行われる特殊なコールの事だ。
「ブラスター・ブレード・解放者のスキル発動。CB2でお前の前列のリアーガードを退却させることができる。これにより、ネハーレンを退却だ」
「はい……」
ブラスター・ブレード・解放者により前列を退却させられたのはかなりの痛手だ。ただ、ブラスター・ブレード・解放者はパワーが低いため、アタックしてこない点は救いとも言える。
(とにかく、このターンでダメージとCBは回復できてドローもできた……なにより、暗くなっちゃだめだ!!プラスに考えないと!)
自分自身に励ましの言葉をかける燿覇。
「マロンのブースト、ファロンでVにアタック。ファロンはアタック時にパワーを3000追加する」《19000》
「それは……ガトリングクローでガードします!」《24000》
「……ターンエンドだ」
ここで輪廻のターンが終了し、ターンは燿覇に回ってくる。
(ここで流れを変えないと……)
このファイトの流れは明らかに輪廻が握っていると言っても過言ではないだろう。だからこそ、燿覇はこのターンに全てをかける決意を固める。
「僕のターン、ドロー!」
燿覇は決意を胸に1枚のカードを手札から抜き取る。
それは、燿覇にとって憧れの存在。
そしてーーーーーーーーーーーかつてヴァンガードを大好きだった自分と共に闘い続けた歴戦の戦士。
その名はーーーーーーーーーーー
「戦場を駆け巡りし紅き竜。そして、僕にとっての勇者。僕は今、再び君の名を叫ぶ!!
黙示録の炎で全てを焼き尽くせ!!ライド、ドラゴニック・オーバーロードっ!!」
ヴァンガードの歴史において深く名を刻みし大君主が盤面に姿を現す。
「さぁ行こう、オーバーロード。君となら僕は……前を向いて進める」
燿覇は笑う。純粋にファイトを楽しんでいた、『アンビギュアス』と名乗り出す以前の少年のように。
そんな燿覇の姿を見ながら火穂は笑う。
(燿覇はやっぱり……それでいいんだよ……
あんな力とカードなんてもう、必要ない。
≪≪≪≪≪≪≪≪続く
次話はもう少し速く書けて地の文が上手くなればいいなぁ……というわけでまた次回会いましょー。
あと、感想、ご意見お待ちしております~