とにかく、今回もお願いしまーす!
「紅茶ですけど、いいですか?」
「あ、はい」
カードショップ『Shinonn』に来店した燿覇。今彼は、ファイトテーブルに備え付けられたらイスに座っていた…………ちなみに、夜代も同じように目の前でイスに座っている。
「えっと……どうして楠之葉先輩がここに?」
単純な疑問を聞いてみると、夜代は持っていたティーカップをテーブルに置く。
「私、ここの店でアルバイトさせて貰っているんですよ。で、今日は部活を休んで来ているんです」
「そ、そうなんですか」
夜代は話し終わると、再び紅茶を飲み始める。
燿覇もそれに倣って紅茶を飲む。
「陽世君は、どうしてここに?」
当然の質問が燿覇に飛んでくる。
「なんとなく……ですかね」
半分は嘘で半分は本当。完全な嘘ではないからギリギリセーフなはず。すると、なぜか夜代は楽しそうに笑う。
「なんとなく……ということは、この店に来たことあるんですねー」
燿覇は内心驚くが、輪廻から聞いているかもしれないと考える。
「はい。この間、玄枷先輩に連れて来られて、ファイトさせられました」
「入学式の日ですか?」
「はい」
「へぇ~この店でやったんですね」
「……玄枷先輩から聞いてないんですか?」
「なんにも聞いてないですよ?」
「そうですか」
燿覇の中で、夜代に対する警戒度が上がった。
(この人、雰囲気はふんわりしてるが、意外と感が良いな)
「陽世君」
「なんですか?」
「何か、悩んでますか?」
「え?」
あまりの不意打ちに驚きを隠しきれない燿覇。それに対して夜代は笑っている。
「陽世君って、ファイト中に考え事してる時、右手の人差し指で髪をくるくるするんですよ。それで、聞いてみたんです。どうやらアタリみたいですね?」
指で自分の髪をくるくるする夜代。彼女の言葉にため息を吐く。無意識でやっていたから本人ですら気づいていない癖を、たった2回のファイトで見抜かれた……感が良いどころの話ではない。
「正解です。ちょっとだけ……悩みがあります」
「それは、ヴァンガード部が関係している……違いますか?」
「全く持ってその通りです」
もうだめだ、この人怖い。
燿覇がそんなことを思っていると、夜代はカウンターへ向かい、カバンを持ってくる。
「それは?」
「私の私物ですよ~」
そう言うと、夜代はカバンから、何かを取り出す。それは……正真正銘、デッキケースだ。
あまりに突然の行動に呆気に取られる燿覇。
「えっと、何をするつもりなんですか?」
当然のように疑問を口にする燿覇。夜代はそんな燿覇に、笑顔のまま答える。
「ファイト、しませんか?」
「……えっ」
完全に突拍子もない答えに、燿覇は再び呆気に取られる。この人の行動は完全に読めない。
「ヴァンガードについて悩んでいるのなら、ヴァンガードをやって気晴らしするのが1番ですよ!」
「は、はぁ……」
燿覇は苦笑いになりながらカバンからデッキケースを出そうとするがーーーーーーーーーー
(かげろうのデッキがない…………)
カバンの中には黒色のデッキのみ。つまり必然的に『チカラ』を使ったファイトになってしまう、ということだ。
だが、燿覇は否定したのだ。『チカラ』を使うことを……だからこそ、その自分が再びこのデッキを使うわけにはいかない。
そう思っているとーーーーーーーーーー
「使ってもいいですよ?シャドウパラディンのデッキ」
夜代からまた予想外の一言。何を言っているのか彼女は分かっているのだろうか?
「…………『チカラ』を否定した僕が、このデッキを使うわけにはいきません…………」
暗にファイトするつもりは無い、と伝えるつもりでそれだけ言ってイスを立とうとする燿覇。
「怖いんですか?『チカラ』に支配されるのが」
「……怖いですよ」
「だったら、乗り越えればいいじゃないですか」
「そんなに簡単に出来たら……苦労しませんよ」
「陽世君の場合、やらないだけなんじゃないんですか?」
「ーーーーーーーーーーっ」
不快な感覚が燿覇の中へと、踏み込んでくる。
(何も……知らないくせに!!)
苛立ちが高まり、爆発する。
「…………分かりましたよ、やりますよ……ただしーーーーーーーーーー」
カバンから黒色のデッキケースを取り出し、ファイトテーブルへと叩きつける。
そんな燿覇の行動にも、夜代は全く動じず笑顔のままだ。
「どうなったって、知りませんよ」
「構いませんよ?負けませんから」
2人はデッキを置き、ファイトの準備を始める。
この時、夜代はこっそりとスマホを見ていた。
(さて、ここまでは……火穂ちゃんと輪廻君の計画通りですね)
画面に映し出されているのは、スマホアプリのチャット画面。そこに書かれた文章はーーーーーーーーーー
『アキハは挑発すれば乗ってきますよ!ヤベェ、超チョロい!!ぐらいのレベルで』
『乗せた後はお前に任せる。頼んだぞ夜代』
『俺の敵討ちお願いしますよ!!』
仲間達からの激励とアドバイス。
(やるからには……負けられませんよね)
夜代は燿覇を見る。
この間の正機とファイトしていた時と同じく、喜楽を感じない笑顔と、冷たい雰囲気を発している。
夜代は心の中で呟く。
(勝てるかは分からない。それでも、やるしかない)
目の前にいる……あの頃の彼と同じように、『チカラ』を否定することでしか克服できなくなっている彼を救いたい。あの時と同じ後悔をしないために。
(楠之葉 夜代……やってみせます!!)
『チカラ』対『凡人』。
否定した『チカラ』を使う彼と、『チカラ』を持たない彼女の思いが交差する。
「スタンドアップ・ヴァンガード」
「スタンドアップ・My・ヴァンガード!!」
「フルバウにライド」《4000》
「ビビッド・ラビットにライド!」《4000》
否定することを正しいと信じる彼と、否定することは正しくないと信じる彼女の、思いのぶつかり合いが始まる。
(陽世君……アナタは、アナタの『チカラ』を否定しちゃいけない!)
伝わるか分からない、思いのぶつかり合いが。
燿覇君はクール系主人公でも、熱血系主人公でも無く、邪道矛盾単細胞系主人公です!(自分で言ってて意味不明)
最近思ったことは、感想って励みになってたんだなという事です……
最後に……
マーハちゃんは最高です!!