ヴァンガード:DUAL HEARTS   作:アヤサキ

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今回は本格的なファイトはありませんが、若干描写は出しました。
それではどうぞ


第一章 入学編  キザシ
G01 ボクを取り巻く事情


「スタンド&ドロー」

 

これは……

 

「ライドフェイズをスキップ」

 

あの頃の……記憶。

 

「メインフェイズもスキップします」

 

あぁ。

 

「アタックフェイズ」

 

逃げられないのか。

 

「ガスト・ブラスター・ドラゴンで相手のヴァンガードにアタック。そしてLBスキル発動」

 

1度、犯した罪からは。

 

「CB1枚と、リアガードを3体退却。ヴァンガードのソウルにあるブラスターと名の付くカードの枚数分、パワーを5000、(クリティカル)を1つ追加します」

 

1度、目を背けた過去からは。

 

「ブラスターの枚数は6枚。よって30000と、(クリティカル)を6個追加……ガスト・ブラスターのパワーは41000。(クリティカル)は7個。さらに、アタック時に自動効果発動し、ソウルにブラスターと名の付くカードがあればパワーを3000追加する。これで最終的に、ガスト・ブラスターのパワーは44000になります」

 

なら……壊してしまえばいいのか。

 

「怨念の邪竜よ。同胞の魂と血肉を喰らい、我が前に立ちはだかる敵を撃滅せよ……『荒れ狂いし殲風(ガスト・ブラスト)』」

 

そうすればもうーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前はさ、強いよ。そう、すっげー強い』

 

あ……

 

『オレ達なんかじゃ届かないくらいにだ』

 

やめてくれ……

 

『でも、さ。オレはお前のことーーーーーー』

 

 

 

やめてくれぇぇぇぇ!!

 

 

 

『最低な奴だと思うぜ』

 

 

 

 

 

「ア……起……て……」

 

陽世 燿覇(ひなせ あきは)】はまどろみの中にいた。

まるで泥の中に沈んでいくような感覚をともないながら。

 

「アキ……起き………ば」

 

いっそ、このまま沈みきってしまいたいと思った。

どうせ、ここで目を覚ましたところでーーーーーーーーーーー

 

「起きろって言ってんでしょーが!!」

 

突如、スパーン!!と軽快な音が彼の脳内と、部屋中に鳴り響いた。

 

「うぎゃっ!!」

 

あまりの痛さに頭部を押さえ、燿覇は自分のことを殴った当人である少女を睨む。

 

「うぅ……痛いよ火穂……」

 

「うっさい。さっさと起きない方が悪いの」

 

彼女は【陽世 火穂(かほ)

燿覇の姉で、セミロングの青髪に碧眼。つり目で(多少身内びいきもあるが)美少女だが、男勝りな性格の上、面倒事に他人を巻き込む癖のある困った存在だ。

 

「ほら、今日は入学式なんだからちゃんとしないと」

 

「分かってるよ」

 

そう、今日は燿覇が高校に入学する日なのだ。

ちなみに、火穂は燿覇が入学する高校に通っていて、1つ上の先輩でもある。

 

「じゃあ、着替えるから出てってよ」

 

「はいはい。朝ご飯出来てるから早くしてね~」

 

火穂はそう言うと、そそくさと部屋を出ていく。

 

(さて、制服に着替えないとか……)

 

部屋の隅に掛けられた高校の制服。燿覇が通うことにした【皇天学院高校(こうてんがくいんこうこう)】は進学校ということもなく、至って普通の高校だ。選んだ理由も通学が便利という点でだけ。

 

そして制服を手に取り、着ていた服を脱いでから制服に袖を通して着替えを終える。

 

(少しだけ大きい……まぁ高校生活を送るうちに背が伸びてちょうど良くなるよね……なったらいいなぁ……)

 

「アキハ~。まだー?」

 

「今行く!!」

 

1階から火穂の声がしたので、返事をしてから通学用カバンを手に取り、階段を下へと降りた。

 

≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪

 

「アキハ~早く!」

 

1階に降りてリビングへ行くと、テーブルには料理が並べられていて、あとは食べるだけの状態になっていた。

 

「ほら、座って座って!」

 

「はいはい、わかってるってば」

 

火穂にせかされながらイスに座る。位置的には彼女の対面に座っているといった感じだ。

 

「それじゃあ、せーの」

 

「「いただきます」」

 

こうやって一緒に、いただきますの挨拶をするのは陽世家の決まりの様なもので、今は家を空けている両親から、このルールだけは必ず守るようにと言われている。

 

「ところでさ」

 

「ん?なに?」

 

突然、火穂が話し出す。

 

「アキハは何か部活に入る予定はあるの?」

 

「部活……かぁ」

 

部活……いわゆる青春の象徴。ただ、燿覇に部活に入る気はさらさらないのだが、ここでそう言うと面倒くさいことになりそうな気がした。なのでーーーーーー

 

「まだ決まってないかな。どんな部活があるか見てないし」

 

当たり障りのない答えを返す。これなら、部活に対して意欲的に聞こえなくもないから大丈夫な……ハズと信じて。

すると彼女は、にやにやしながら彼の目を覗き込もうとする。

 

「ほーう、ふーん、へー」

 

完全に疑っているかのような返事。だが、すぐに火穂は食事に戻る。

 

「ま、アキハのしたいよーにすればいいよ」

 

「う、うん、そうするよ」

 

背筋に冷や汗をかきながら、燿覇は「ごちそうさまでした」と言って食器をシンクまで運び、洗い、拭いて片付ける。

 

「じゃあ、僕は先にいくね?」

 

「えー、アタシと一緒に行かないの?おねーちゃんは寂しいぞー」

 

「寂しいなんて言う歳でもないでしょ……とにかく、先に出るからね」

 

「はーい、また後でね~」

 

「うん、後でね」

 

そう言ってカバンを手に取り玄関へと向かい、靴を履いてドアノブを握る。

 

「じゃ、行って来ます」

 

小さくそう呟いて、玄関の扉を開いた。

 

≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪

火穂side

 

(いや~遂にあのアキハが高校生か~)

 

アキハが家を出た後、アタシは食器の片付けをやっていた。

両親は2人そろって出張に出ていて、本来ならアタシとアキハもついて行くべきだったんだけど、アキハが高校に入学する少し前な上、アタシが今の学校が良いと言ったら両親は「家事をしっかりとし、2人で協力して生活する」ということを条件に残っても良いと言ってくれた。

そして、今に至るといった感じである。

 

(ちゃんと……やって行けるかな……あの子)

 

火穂の不安。それはアキハがしっかりと周りに溶け込むことが出来るかだ。

だがそれ以上にーーーーーー

 

(もう、あの子も吹っ切れてるよね……あれから半年は経ってるし)

 

アキハの心に、深く傷を刻んだ出来事。あれから時間は過ぎたわけだし、傷も癒えているはず。

 

「ま、アタシがやることは1つだけだよね」

 

片付けを終えて、アタシは玄関へ歩き出す。その時だった。

 

「あ、そういえば」

 

カバンを開いて中身を確認。そして、目的の物を見つける。

 

「一応……一応だけど……持って行っておいて、損は無いよね」

 

それは『赤いデッキケース』と『黒いデッキケース』の2つ。本来の持ち主を失い、さまよう存在。

 

「さ、行こっかな」

 

アタシは扉を開いて駆け出した。

 

 

≪≪≪≪≪≪≪続く

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