一応日常パートなんですが……不満に思う方もいると思います。
それではどうぞご覧あれ~
ヴァンガード部の部室で行われていたファイト。
それが終わると同時に、燿覇は教室を飛び出していった。
「な、何があったんですか?」
「……さぁな」
一体どうしてこうなったのか、状況がつかめない夜代と輪廻。
それは周りにいた新入生達もそうだった。
「なぁなぁ、何があったんだ?」
「誰だかわかんないけど部員に勝って、叫びながら教室出てった」
「なにそれ。勝って嬉しかったのか?」
「いや、そういう感じじゃなかったと思うぜ」
ざわざわと騒がしくなる教室。
その時だった。
「集まってくれた新入生の皆!悪いけど、今日の入部テストはここまで!また明日きてね!」
火穂が教室にいた新入生全員にそう呼びかけながら外に出した。
こうして、教室に残ったのは輪廻、夜代、正機、火穂の4人だけになる。
ちなみに、正機はまだうつむいたままだ。
「……どういうことなのか説明しろ、火穂」
輪廻は火穂を睨むようにして見る。一方、火穂は目線を下に向けている。
「……説明、ですか?」
「あぁ。お前の弟についてーーーーーーーー「あー、負けたー!ちきしょー!!」」
輪廻が話している途中で正機がガバッと起き、叫ぶ。
「正機」
「ん?なんすか部長?」
「うるせぇ」
「あ、はい」
怒られたためかシュンとする正機。そして、輪廻は話を続ける。
「オレは昔、お前の弟と同じようなファイトをするヤツを見たことがある」
「………………」
「教えろ。お前の弟は何者だ」
輪廻に問われる火穂。しかし火穂は質問に答えるどころか、輪廻に視線を合わせようとすらしようとしない。
すると輪廻は、自分のカバンを持って出口へと歩き出す。
「輪廻君。どこか行くんですか?」
「アイツを追いかけて直接聞く。今から追えば間に合うだろ」
「なるほど……じゃあ、コレを持って行ってあげてください」
夜代はそう言うと、カバンを輪廻に渡す。
「一応聞こう。これはなんだ?」
「さっきの彼のカバンだと思うので、渡してあげてください」
とても良い笑顔で言い放つ夜代。対して輪廻は不満そうに燿覇のカバンを見る
「……オレは小間使いか」
「カバンを渡しに来た。と言えば、会っても不自然になりませんよ?」
「……なるほどな」
夜代の説得(?)に納得(?)したのか輪廻はカバンを取り、走っていった。
輪廻がいなくなり、教室には3人だけが残る。
「火穂ちゃん」
名前を呼ばれて火穂は、恐る恐るといった様子で夜代のことを見る。
だが、夜代に怒った様子はなく、微笑みながら火穂に近づく。
「言いたくないことは言わなくてもいいです。でも、自分の中に溜め込むことだけはやめてください。私たちは同じ部の仲間で、友人なんですから」
「ーーーーーーーーっ!」
夜代は手を伸ばし、火穂の頭を撫でる。しばらく夜代が撫でていると、火穂はポツリと呟く。
「私はあの子に……燿覇に思い出して欲しかった……ヴァンガードの楽しさを……でも、それは、ただの自己満足だったんです……だって、燿覇にあんな顔を……辛そうな顔をさせてしまった………うぅ…ああ、あぁぁぁぁぁっ!!」
「よしよし……」
泣きながら膝から倒れる火穂。普段の明るい彼女からは到底予想できない姿だ。
夜代は火穂を慰め続け、正機は、泣いている彼女を見ながら悔しいと思った。
(俺は……なにもできねぇのか……)
3人がそれぞれ違う思いを胸に秘めながら、時間は過ぎていった。
≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪
教室を走って出て行った燿覇。彼は今、学校の裏門にいた。
「はぁ…はぁ……」
息を切らしながら肩を上下させながら門に寄りかかる。
(……もう、大丈夫だと思ったんだけどな……)
ついさっきまでおこなっていたファイトを思い出す。
最初は火穂から挑発されて始めた。だが次第に熱中していきーーーーーーーー終盤は本能でファイトをやっていた。
「それは……まだ良いとして……やっぱりアレはだめだな……」
『アレ』
それはファイトが終わった後の周りからの反応と視線だ。
ファイトが終わるたびによそよそしくなる周りの人々。
そして燿覇に向けてくる視線。
羨望。嫉妬。恐怖。絶望といった様々な感情の混ざり合った視線。
過去にそれらを送られ続けてしまったせいか、そういった視線と周囲の空気に対して敏感になってしまっていた。
「とりあえず、帰ろう……」
自宅に帰ろうとするが、ここであることを思い出す。
「あ……カバン忘れた」
そう、通学用のカバンを置きっぱなしにしていたのだ。ただ、飛び出した以上戻るのは精神的にキツい。
(仕方ない……明日誰もいない時間にでも取りに行こう……)
諦めて帰ろうと裏門を出る燿覇。すると、後ろから肩をたたかれる。
「ん?ーーーーーーーー」
「よう、陽世弟」
「なっ!?」
肩をたたいてきた人物は、ヴァンガード部部長。玄枷輪廻だった。
「まさか裏門にいるとはな。まったく、無駄に走らせやがって」
「な、なんでアナタがここにいるんですか?」
動揺する燿覇。輪廻は息を落ち着かせながらその手に持っていた物を燿覇に押し付ける。
「……これを届けにきた」
押し付けられた物をよく見ると、それは燿覇のカバンだった。
「あ……ありがとうございます。それじゃあ」
カバンを受け取り、礼を言うと帰ろうとするとーーーーーーーー次の瞬間、輪廻が腕を掴んで引き止める。
「礼はいらん。その代わり少し用事に付き合え」
「へっ!?」
「それは肯定ととって良いのか?」
「いや、僕帰ろうとしてるんですがーーーーーーーー」
「却下。来い」
「えぇぇぇ!!」
人の話を聞こうとしない輪廻に燿覇は引きずられながら連れ去られる。掴まれた手を外そうとするがガッチリ掴まれていて外すことができない。
そしてどういう訳か、路地裏に来ていることに気づく。
「あの……どこに連れて行くつもりなんですか?」
「着けばわかる」
「そんな適当な……」
そんなこんなで引きずられること数分。急に輪廻の歩みが止まる。
「ここだ」
輪廻はそう言い、指を指す。指さされた先を見ると、そこには『カードショップShinonn』と書かれた看板とカードショップらしき店が目に入った。
「ここは……」
「とにかく入るぞ」
「え、ちょっ」
輪廻と燿覇が店に近づくと自動ドアが開き、2人は中に入る。
店の中は路地裏にあるにしては広々としており、ヴァンガードのパック売り場やシングルカード売り場、ファイトエリアが完備されている。
「凄い……」
「そこに座れ」
「は、はい」
輪廻に促され、近くにあった椅子に座る。
そこで1つ疑問が生まれる。
「そういえば、店員さんがいないみたいですけど……入って大丈夫だったんですか?」
そう、先ほどからどこを見ても店員らしき人影が見えないのだ。店のバックルームにでもいるのかと思ったが、客が来たのに出てこないはずはないだろう。
「それなら心配ない。ここの店員とは知り合いだからな」
「そ、それで大丈夫なんですか……」
「大丈夫だ」
(この人、案外と適当な人だな)
割と失礼なことを思いながら、輪廻に対する警戒心を薄くする燿覇。
「さて、本題に入るぞ」
突然、店の中の空気が変わる。
ついさっきまでは特に何もなかったが、今は空気に身体を押しつぶされるような感覚を感じている。
「オレは、お前に聞きたいことが2つある」
心臓を握り締められるかのような感覚が燿覇の身体を走る。
「……なんですか?」
息苦しさを感じながらも、それを表に出すことなく返事をする。
「まず、お前は【
「……どこでその名前を聞いたんですか」
質問の内容を聞いた途端に燿覇の声色が低くなる。
その様子を見て輪廻は溜め息をつく。
「昔そいつのファイトを見たことがあったのさ。ついさっきまでは、名前すら忘れていた」
そう言って輪廻はテーブルに肩肘をつき、頬杖をしながらニヤリと笑う。
「だが、お前のファイトを見て思い出した。そして同時に確信した。お前がアンビギュアスだとな」
「……残念ですが、僕はアンビギュアスではありませんよ」
「まぁ、今は納得しておいてやる。次の質問もあるしな」
頬杖をやめて今度は、椅子の背もたれにもたれかかる輪廻。
「次はなんですか?」
輪廻を鋭い目つきで見る燿覇。明らかにさっきより警戒が濃くなっている。
「【イマジナリーカード】という言葉を聞いたことはあるか?」
「【イマジナリーカード】?」
燿覇は、聞いたことのない単語に首を傾げる。
「別名【想像上の切り札】と呼ばれていてな、本来存在しないカードーーーーーーーーパックやトライアルデッキなどに封入されていない特殊なカードの総称みたいなモノだ」
「それが……一体何だって言うんですか」
「オレはそれを、お前が持っていると思ったのさ」
「……確信は?」
燿覇の言葉を聞いた輪廻は両手を上げる。
「確信など無い」
輪廻の一言に呆れ気味に大きく溜め息をつきながら、燿覇は頭を抱える
(本当に何なんだこの人は……)
「しいて理由をあげるなら……ファイト中のお前の豹変だな」
「ーーーーーーーーっ!!」
やはり気づかれていた。
あのファイト中の自分の変化を。
「【イマジナリーカード】には精神に影響を与える効果がある。だからこそ、そう思ったのさ」
「……………………」
「で、どうなんだ? 持っているか、持っていないか。どっちだ」
沈黙。2人しかいない店内には、静寂だけが存在していた。
その静寂を破ったのは燿覇だった。
「【イマジナリーカード】かはわかりませんが……本来存在しないカード……のようなものは持っています」
「本当か?」
「はい。でも、デッキケースの中にあるので……」
「それならカバンの中を見てみろ」
「え?」
言われた通りにカバンの中を見ると、そこには黒いデッキケースが入っていた。
「な、なんでコレが……」
「どこぞのお節介焼きが入れたんだろ……」
「お、お節介焼き?」
「それはいいからカードを見せろ」
「は、はい」
急かされて燿覇はデッキケースを開き、1枚のカードを渡す。輪廻はそのカードを見ると、眉間にシワをよせ険しい顔になる。
「お前はオレをおちょくっているのか?」
「え? いや、言われた通りにカードを見せてるじゃないですか」
「……何も書かれていないぞ」
「なっ!?」
輪廻から奪うようにしてカードを取る燿覇。
確かにカードには何も書かれていなかった。
(おかしい……前に見たときはちゃんとしたカードだったはずなのに……)
白紙になっているカードを見つめる燿覇。すると、輪廻は自分のカバンを探り始める。
「以前はイラストとテキストが見えていたんだな?」
「はい……といってもファイトする時ぐらいしかこのカードは見てなかったので……確かなことはわかりません」
「そうか……なら」
輪廻はカバンからデッキを取り出し、テーブルに置く。
「実際にファイトしたほうが早そうだ」
「は?」
本気でなに言ってるんだこの人は、と思う燿覇。
ただ、輪廻本人は至って本気のようだ。
「あの、僕はもうヴァンガードをやるつもりはーーーーーーーー」
「お前はそれでいいのか。陽世弟」
言葉を遮り、まっすぐに燿覇を見る輪廻。彼の顔と、その瞳には真剣さが垣間見えた。
「それでいいのかって……何がですか?」
「オレにはお前が逃げているように見える」
「逃げる? 僕がですか?一体何から逃げてるっていうんですか?」
「ヴァンガードからだ」
輪廻の言葉を聞いた時、燿覇の中でブチリと、何かが切れた。
「ふざけるなよ!!僕のことを何も知らないくせに!何でも知ったかのように!!」
テーブルを両手で叩き、怒鳴り散らす燿覇。先ほどまでの彼からは考えられないほど荒れている。
「オレはお前について何も知らない」
「だったらーーーーーーーー」
「だが、それでも一つだけ言える」
「お前はヴァンガードが嫌いなのか?」
輪廻の言葉が燿覇の心に突き刺さる。鋭い刃となって。
(僕は……ヴァンガードが嫌い?……違う……僕は……)
燿覇は心の中で考える。そしてーーーーーーーー
「……わかりました……ファイトしましょう」
「……そうか」
「ただし、これで僕が勝ったらさっきの逃げているという言葉を取り消してください。それと、僕にこれ以上関わらないでください」
「いいだろう。その条件でやってやる」
輪廻がそう言うと2人は、お互いのデッキをシャッフルしテーブルに置いてマリガンを行う。
「じゃあ、始めましょうか」
「あぁ、始めようか」
2人はVサークルのFVに手を置いて、睨み合いーーーーーーーー開戦の合図を叫ぶ。
「「スタンドアップ『My』ヴァンガード!!」」
「フルバウにライド!」
「ライド、伏竜の抹消者 リンチュウ」
通常の合図とは違う言葉。それを聞いた燿覇は、突然嫌な予感を感じる。
(間違いない……この人、強い!)
燿覇の額を伝う汗。それに対して輪廻は余裕の表情で笑う。
「せいぜい楽しませてくれよ……
「僕は……
己の思いを賭けた戦いが、幕を開けた。
≪≪≪≪≪≪≪≪続く
やりすぎ感ハンパないと書いてから思った。
ですが、自分ではこれがベストだと思っています。
ただ、びっくりしたのが思った以上に早く書けたことですね。
次回からのファイトパート頑張っていきます!
それではまた次回会いましょう~