誰かキヴォトスに生徒の肉体で落っこちた一般人がとるべき行動を教えてくれ 作:新品のタタリモップ
さて、俺だ。ナナシだ。昨日先生のところへ相談しに行って、なんかその場の勢いもあってか原作に干渉することを決めてしまったナナシだ。え?じゃあなにからやっていくのかって?……そりゃあ、ねぇ。色々あったり、するんじゃないですか?でもまだその時期じゃないと思うんですよね、うん。
ああいや、あの選択にはまだ後悔はしてないんだけどね?やっぱりいきなりやるのはハードルが高いっていうか。明日からやる感じでいいんじゃないかなって。ほら、あんま大きく干渉すると原作知識役立たなくなるし。ここぞというときにね、こう、ドカーンと一発、な?わかるだろ?
……そうだよチキってるよそれがなにか悪いかよ!!というかチキってるのもそうだけど、どこでどう介入するか全然思いつかないんだよ!!『火と灰に染まる日』の巡航ミサイルは阻止したいけど、そんなの俺一人じゃ無理じゃん。もう最初っから詰みじゃない?ていうかブルアカの完成度が高いせいであれを防ぐとあっちがダメになったりする。先生が撃たれることさえ百合園セイアをポジティブセイアにするための必要な事件なんだよ?無理だよこんなん、どうすりゃいいんだよ。
はい、ということで俺はなんか思いついたら干渉しまーす。今の時点だとなんにも思いつきませーん。精々がもうネームドキャラを避けるのはやめるってくらいでーす。……まあ、友達でもないのに距離をガンガン詰めてくるのはレアケースだと思うし、俺から関わりたいキャラがいるわけでもないからほとんど今まで通りだとは思うけどね。
さて、そんな俺が居るのは合宿所の脇にある森。いや、なんか朝早くに目が覚めちゃって、まだ日も昇らない時間なんだよね。薄暗いんだけど、カブトムシとか居たら捕まえたいなと思ってきてみた。昔から好きなんだよね、カブトムシ。蜘蛛とかムカデなんかの気持ち悪い虫とは違う、かっこいい甲虫のなかでも一番カッコイイと思う。捕まえたら飼えないか先生に打診してみようかな。
「……ナナシ?」
「あれ、アズサ?なにしてるの?」
「それはこっちのセリフだ。なぜこの時間に森にいる?」
「カブトムシ捕まえたくって」
「????」
不思議そうな顔をするアズサ。もしかしてカブトムシがなにか知らないのかな。というかキヴォトスに居るのかも怪しい部分ではあるか。ゴールデンマグロみたいな名前のよくわからない魚介がいる世界だし。
「……とりあえず、悪意がないのはわかった」
「それで、アズサはなにしてるの?」
「トラップを作っていた」
そう言ってアズサが銃で示した先にあったのは縄と木で作られたトラップ。確か、くくり罠というんだったっけ。おぉ、と感嘆の声をあげながらその周りをぐるぐると回る。すごいな、本当の罠ってはじめて見た。
「……ナナシも、なにか作ってみる?」
「え?いいの?」
「うん、これから合宿所の裏口に仕掛けるから。……よければ、だけど」
「やらせて!」
アズサの提案を二つ返事で承諾して、一緒に移動する。……そういえば、アズサはアリウスが攻めてくるときの対策に罠を作ってるんだよな。もしかして爆薬とか触れたりするのだろうか。作ってバクハツってな、ガハハ!
「それで、今日はどういう罠を作るの?アズアズさん」
「アズア……?えっと、IEDを利用した即席のブービートラップを作る」
「おぉ……」
俺の質問に少し困惑しながらも、なんでもないかのように答えるアズサ。よくわからないけどすごそうだ、これがプロってやつなのだろう、たぶん。IEDは確か即席爆発装置、だったっけ。とにかく爆弾を作って仕掛けるらしい。よし、頑張るぞ!たしか原作だと仕掛けた罠類が終盤で役立ってたりしたし、これも干渉していることになるのかな。……ちょっとお腹痛くなってきたから関係ないってことにしよう、うん、そうしよう。そんなことを考えているうちに合宿所の裏口に着いた。
「ナナシはまず私が作るのを見てて」
そう言うと、アズサは手際よく作業を始めた。流石に訓練を受けてきただけあって動きに迷いがない。解説しながらの作業なのにすいすいと進んでいくし、俺が入れた質問にも正確に答えている。なんだかすごくカッコイイ。
「じゃあ、同じようにやってみて。私が見てるから、危険はないはず」
「わ、わかった……」
言われて、恐る恐る作業を始める。今回作るのは刺激に反応して動作するタイプで、アズサは好んで使うのだとか。ドアなんかの地形条件に依存しないところがいいのだという。
「あ、ナナシそこは──」
「あっ、そっか。えっと、つまり──」
そうして作業することしばらく。なんとか俺もアズサと同じものを作ることができた。いや、マジで大変だった。ある程度用意された簡単爆弾組み立てキットみたいなものだったのに結構な難易度だ。電気配線の知識なんかないからイチからこれ作れって言われても絶対無理。ふぅ、でもなんとか事故らなくてよかった。
「ナナシ、安心するのはまだ早い。トラップは仕掛けないと意味がない」
「あ、それもそうか」
汗を拭ってへたりこんでいた俺にアズサから声が掛かる。そりゃそうだ、こんなものをポンと置いておいたからと言って引っ掛かるヤツがいるわけない。いや、いるかもしれないけどそれは相当慌ててる人か俺みたいな素人だ。俺の場合興味本位で触って起動させちゃいそうだな、爆発に巻き込まれるとかマジでゾッとしないから気を付けよう。
「ナナシなら、この爆弾をどこに仕掛ける?」
「う~ん……ドアの裏、とか?」
刺激に反応するものだから、ドアを開いたときに刺激が与えられるようにすればいい。そう思っての解答だったんだけど、アズサは「惜しい」と言って自分が作った方の爆弾を持って作業を始めた。
「ドアの裏だとドア自体が盾になる。だから、こっちの方がいい」
言いながらドアが開いた瞬間に爆発するよう、ドアの開く側の壁に爆弾を設置していくアズサ。そっか、たしかに爆風が届かなかったら意味ないもんなぁ、よく考えられててすごい。
「じゃあナナシ、もう一個はどこに着ける?」
「えっ、と……」
言われて考える。そうだなぁ、考えられるのは追い打ちか、爆風を重ねるかだと思う。でも爆風が重なるかなんてわからないし……。
「ここ、かな」
「……理由は?」
「ここに逃げそうだから」
俺が指し示したのは屋外、裏口のドアのすぐ脇。反対側にはすぐの場所に木があるし、爆風から逃げるならこっち側だと思う。まっすぐ下がるかもしれないけど、それだと既に仕掛けてある爆弾の意味がないし。
「うん、いいと思う」
「やったっ!」
「トラップの基本は予測。教えるから一緒に仕掛けよう」
そうしてそのあともいくつか爆弾を仕掛けてから部屋に戻った。ある程度爆弾の構造もわかったし、簡単なやつなら自分でも作れるかも知れない。今度ウタハさんとも話してみたいな。
〇
さて、朝にそんなことがあったわけだけど、ここは補習授業部。ただの学生以上に本分が勉強である集団であるが故に、結局今日もやることは勉強になるわけでして。なぜか先生がどこかに行ってしまった中、俺たちは第2次補習授業部模試を執り行った。で、その結果なんだけど……。
第2次補習授業部模試、結果──
ハナコ──8点
アズサ──58点
コハル──49点
ヒフミ──75点
ナナシ──58点
とまあ、こんな感じになった。わずかに、わずかに足りなかった……っ!!ヒフミの点数が原作より高いのは教える側の人数が増えたことで自分の勉強をする時間をとれたのが理由だろう。俺、この世界に来てはじめてマトモに役に立ったかもしれない。代償として俺の上り幅が大幅に抑えられてるけど、これ実は単に眠さでケアレスミスを連発しただけだ。朝早くから動くもんじゃないね、誰だよ早起きは三文の徳って言った人。
「あ、先生!」
そんなことを考えつつ眠気とショックで机に突っ伏していると、ヒフミの声が聞こえた。ようやく先生が来たらしく、ヒフミは希望が見えてきたと喜んで先生に点数を教えている。コハルもアズサも嬉しそうに話している様子だ。
「ナナシちゃんもケアレスミスが無ければ私と同じくらいの点数なんです!みんなすごく成長してます!」
「“うん、みんな頑張ったね”」
「はい!この調子でしたら思ったより早く目標に届くかもしれません!」
「“ところで、ナナシはどうして潰れてるの?”」
「あ、あはは……今回の模試でウェーブキャットさんを手に入れるつもりだったらしくて……」
なるほど、という先生。あ、おいやめろアズサ、ほっぺを突っつくな。生きてる、生きてるから。ハナコはなんで背中ぽんぽんしてるの?いや、なんか安心するからいいんだけど……なんか、なに?子ども扱いされてない?
「うがーっ!寝られるか!!」
「な、ナナシちゃん、この後も勉強するので寝るのは……」
ヒフミの声を遮って、ピンポーン、とチャイムの音が響いた。これは……裏口側のドアチャイムか。表口のドアチャイムがわかりにくいから裏口の使ったのかもな。というか一体誰が……ああそうだ、シスターフッドの伊落マリーが来るイベントあったな、そういえbいやちょっと待ってマズイ今裏口には……!!
「侵入者か、大丈夫、準備はできてる」
「アズサちゃん、何言って……?」
瞬間、合宿所にドカン!と大きな爆音が響いた。同時に伊落マリーのものと思しき悲鳴も。……やっべ、完全に忘れてた。お、俺しーらない。
「ブービートラップ。誰かの侵入を感知したら起動するようにしてある」
「アズサちゃん!?」
「あとはナナシが仕掛けた方だけど……」
伊落マリーの困惑した感じの声が聞こえた直後、ドカンッ!と先程と同じくらい大きな音が響く。アズサの発言で俺に集まる視線。どうしよう、この状況から入れる保険とかあるのかな。……保険に入るべきは伊落マリー側だけど。
「うん、上手く行ったみたい。やったねナナシ」
「……ッスゥー」
「ま、まさかナナシちゃんもやったんですか!?」
やっちゃったな、これ謝るべきだよな。俺は一縷の望みに賭けて先生に縋ってみる。
「あの、先生。これについての責任とかってぇ……」
「“流石にナナシがとってね”」
ですよね~
このあとめちゃくちゃ謝罪した。ちなみにマリーさんはめちゃくちゃいい人だった。申し訳ねぇ……。
作者には爆弾の知識も罠の知識もありませんので悪しからず。