誰かキヴォトスに生徒の肉体で落っこちた一般人がとるべき行動を教えてくれ 作:新品のタタリモップ
小鳥のさえずる声で目を覚ました。久々に健康的な時間で目が覚めたな、なんて思いつつあたりを見る……ん!?なんだここ!?どこ!?俺のきったねぇ部屋は!?バサッと音を立てながら身を起こして……昨日の出来事を思い出した。ああ、そうだった、ブルアカの世界に来たんだった。いや、「そうだった」で済ませていい事柄じゃあないんだけどね?
とにかく、最低限の状況はわかった。わかったから、状況整理をする前にひとつだけやりたいことがある。俺は再びベッドの上であおむけになり、天井を見つめて言った。
「知らない天井だ」
「“あ、ナナシもそのアニメ知ってるんだ”」
「わひゃっ!?」
いきなり声をかけられて変な声が出る。声のする方を見れば、先生が昨日とほとんど変わらない……いやよく見ると目の下にクマができてるな、とにかく先生がそこにいた。クマができているということは、昨日は夜遅くまで仕事をしていたのだろう。もしかすると昨日“も”、なのかもしれないけど。
「あ、すみません先生。昨日、俺だけ寝ちゃったみたいで」
「“ううん、大丈夫。こっちこそ驚かせちゃってごめんね”」
「いえ……」
適当に言葉を切ってしまった。もっと会話を膨らませられただろ、俺よ。アニメについて言及するとかすればこんな断絶ピリオド野郎にならなくて済んだはずだぞ。……そういえば、先生の言葉からしてこっちの世界にも某アニメがあるんだろうか。いや、たぶん似て非なるものだな、ブルアカのストーリーでゲーム開発部が言及してたゲームもちょっと違うものだったし。ブルアカは色々とパロってる部分もあるから、きっとその一環だろう。
「“それじゃ、朝ごはんにしよっか”」
「え?でも俺お金ないですよ?」
「“大丈夫、私が奢るよ”」
奢るな──!……じゃなくて、いいんだろうか。俺、迷惑かけっぱなしで今のところ何ひとつとして業務に従事してない状態なんだけど。コストカットの視点から言ったら一番最初に切られる病巣なんだけど。
「いや、悪いですよ。迷惑かけっぱなしなのに食事まで……」
「“じゃあ、そのぶん働いて返してもらおうかな”」
「……あんまり期待しないでくださいよ?いや本当に」
どうにも折れる気はなさそうなので、諦めて先生の後ろをついていく。服は昨日のままだけど、着替えとか持ってないししょうがない。いや、仕事ぶりはマジで本当に期待しないでもらいたいし、お給金が出るのに働きぶりで返すってどうなんだろう。俺の働きは間違いなく他の生徒よりも下だと思うんだけど。そりゃ俺だって年上なんだし他の子よりかは働けると思いたいけどさ、彼女ら普通に組織の運営やってる人間なんだから敵うわけないよ。社会経験ゼロとは比べるくもない有能ばっかりなんだもの。なんて考えていると、すぐにシャーレのカフェについた。先生がモーニングセットを2つ給仕ロボに注文してくれる。
給仕ロボがモーニングセットを運んできてくれるまでの間、俺は先生から軽く業務内容や自分の立場について説明を受けた。業務としては基本的に書類仕事。つまり書類の整理・確認・作成などが主らしい。なるほどね、だいたい理解した。
で、俺の書類上の扱いとしては、無所属から連邦生徒会の一般役員になりシャーレの要請をうけて入部する、という形になったそうだ。なるほどね、だいたい理解できなかった。先生は学籍を作るためにはどこかしらに所属しなきゃいけないとかなんとか言ってたけど、正直よくわかっていない。
そんな感じの説明が終わったところでモーニングセットが運ばれてきた。こんがり焼けたトーストにトマトの彩りが嬉しいサラダ、それとスクランブルエッグとウィンナー。なんとも典型的な朝食だ。こういうのでいいんだよ、こういうので。
「“いただきます”」
「い、いただきます」
さて、と。運ばれてきたモーニングセットを食べながら、俺は考える。今後の方針について。なんか流れでシャーレに所属してしまったけれど、これはよくない、非常によくない。なぜって、ここに居たらバタフライエフェクトを起こしてしまう可能性がどんどん高くなるから。だってシャーレだよ?主人公の所属する組織で、事件の中心になるなんてザラ、どころかそれが普通なシャーレだよ?各学園から注目を浴びまくっているシャーレなんだよ?そんな台風の目に俺みたいな異物が居れば、それはもう蝶の羽ばたきとかそういうレベルじゃなくなってくる。だから俺の当面の目標はシャーレ脱退だ。それも、可及的速やかに行わなければならない。え?昨日「よろしくお願いします」したじゃんって?いやほら、なんか一日経って冷静になるとやっぱり問題は解決してないし……生徒はいずれ巣立つものだし……。とにかく、俺の方針は原作に関わらない方向で行くのだからシャーレ脱退はマストなのだ。
なに?だったらいますぐ抜ければいいじゃないかって?いや、そうしたいのは山々なんだけど、今の俺って一文無しじゃん。無一文じゃん。このままシャーレ抜けますねって言って先生が「うんそっか頑張ってね」って言うと思う?俺は思わない。根底にあるのが俺の希望ではなく世界滅ぼしたくないぜっていう恐怖である限り、先生は
それに、シャーレの建物から抜け出せたとしても今の俺じゃ路頭に迷うだけだ。路頭に迷ったところへ先生がやってきて「ナナシも私の生徒だから」するのが目に浮かぶ。そしてそんなことされたら俺は先生に寄りかかり続ける寄生虫と化してしまう。バッドエンドだ。そんなお荷物を抱えていてはさしもの先生といえども原作のようなパフォーマンスは発揮できないだろう。普通にこの世界もバッドエンドだ。
ここまで読んで、「じゃあお前シャーレ脱退とか無理なんじゃね」と思ったそこのアナタ。安心してほしい、解決策はある。それは……金だ!!
いや、身も蓋もない話ではあるんだけどこれ真面目な解決策でして。考えるに、俺がシャーレから抜け出せないのは俺の無一文に起因すると思うのだ。流石に新生活を始めるのに十分な資金があれば先生も俺の門出を止めることはしないだろうし、止められたとしても先立つものさえあれば隙を見て逃げ出すことでなんとかなる。なんとかなれ。ならないと俺が困る。
で、そのお金を集める方法なんだけれども。なんとシャーレのお手伝い、お給金が出るらしい。なんでも「外部協力者ではなく連邦捜査部の職員」という形をとってくれたらしく、お手伝いや部活動ではなくちゃんとした仕事という扱いになるのだとか。職階的には先生直属の部下になるらしい。この説明はついさっき先生から聞いたものなので例の如くよく理解できていないけど、とにかく特例措置としてお給金がもらえるらしいことだけ理解していればいい……はずだ。たぶん。
とにかく、シャーレの仕事に従事して出来る限り節制し、新生活を始めるに足る金額へ届いたら堂々とシャーレ脱退を宣言すればいい。我ながら完璧な作戦だ、ほれぼれする。
「“ごちそうさまでした”」
「むぐっ!」
「“焦らなくて大丈夫だよ、ナナシ。まだコーヒー残ってるし”」
そうこうしているうちに先生は食べ終わってしまったらしい。慌てて残りのトーストを詰め込もうとする俺を、先生は微笑ましいものを見る感じで止めた。いや、もう完全に子ども扱いしてるじゃん。俺としては自分を大人だと思ってるからものすごく複雑な気分になる。俺は大人だ、って声高に叫んでやってもいいけど、今の肉体だとトランスエイジとか言われんのかな。……それ以前にその行動はだいぶガキだからやめておこう。俺も少しだけ急いで食べ終えて、俺たちはカフェを後にした。
さぁて、これから俺の仕事が始まるわけだ……けど、恐ろしく不安だな。大丈夫かな、仕事っていう二文字でもう胃が痛いんだけど。
〇
大丈夫じゃなかった。いやね、俺とて最低限のことはできるよ、というかできたよ。でも俺が書類一枚にかける時間で先生は10枚くらい普通に終わらせてやんの。しかもこっちがわかんないこと聞こうか悩んでたら向こうから声掛けてくれるし、理想の職場といえばそうなんだけどこれ確実に俺が足引っ張ってるよ。もう肩にのしかかる申し訳なさで肩こりになりそう。
今俺がやってるのは単純作業。データを打ち込んで表計算ソフトくんが全部はじき出してくれるだけの簡単なお仕事。先生はなにやら難しそうな書類をやっている。なんか法律関係とかもあるんだろうね、俺にはさっぱりだったよ。先生はルーチンワークが多いから慣れれば簡単だって言ってくれたけど、いつになったら慣れるんだろうな。……初日で考えることではないか。
ちなみに今日は当番の生徒はいないらしい。毎日誰かしら来ているものだと思っていたけれど、よく考えたら彼女らは俺とは違って学生なわけだし、自分のやることが多くあるのだろう。ニートだった上に学生時代勉強から逃げ続けていた俺でも、流石にそのくらいはわかる。先生の話だとむしろ当番の子が誰もいない時間の方が長いのだとか。休日や放課後に来るのだから当然といえば当然だ。
「“おつかれナナシ、そろそろ休憩にしよっか”」
「いえ、まだやれます!」
先生が休憩に誘ってくれたけれど、俺はお給金をもらっている立場。ほかの生徒よりも能力が低い以上はさらに頑張らなければならないだろう。ただでさえ先生の十分の一のペースなんだから。次の書類を見て、書かれているデータを打ち込む。
「“ナナシ、無理しすぎるのはよくないし、休憩に……”」
「いえ、なぜか調子が上がってきたので!」
朝からずっとキーボードを打っていたからか、タイピングの速度が早くなっている気がする。なんだかゲームでレベルアップしているようで少し楽しい。それに、だんだんと書かれているデータの読み方みたいなものもわかってきた。ペースが上がっているのを自覚しつつ、次の書類に手を伸ばす。
「“そ、そろそろ午前休憩の時間なんじゃないかな!”」
「え、そんなのあったんですか?」
「“……ないです”」
ないらしい。なぜか敬語になっている先生の気遣いは嬉しいけれど、まだいけると思う。歩合制というわけではないけれど、やはりお金が発生している以上はしっかり働かないと。そう思って次の書類に伸ばしかけた手を、先生に掴まれた。驚いて先生の方を見ると、なぜか縋るような目でこちらを見ている。
「……先生?」
「“ナナシ、私が休憩したいんだ……ダメかな?”」
「は、はい……」
あまりに必死な表情だったのでつい頷いてしまった。俺が了承したとみるやいなや、先生は小躍りしそうなくらいの陽気さでデスクを離れ、鼻唄混じりにコーヒーを淹れ始めた。あ、これたぶん気遣いとかじゃなくてマジのやつだ。本気で自分が休憩したかったやつだ。なんというか……申し訳ないことをしてしまった。
しかし、本当にデスクワークが嫌いなんだなぁ。いや、俺だって義務感でやってることだからなにも無ければそこのソファとかでグデグデになりたいけどさ。なんなら一生寝るか遊ぶかしてたいけどさ。……いま休憩中だしちょっとくらいソファに転がってもいいかな。やっぱりダメかな。
「“ナナシ、コーヒーに砂糖とミルク入れる?”」
「え?あ、大丈夫です」
俺がソファの魅力と戦っている間に先生は俺の分までコーヒーを淹れてくれていた。あれ?これ本来俺がやるべきなんじゃないか?上司にコーヒー淹れさせる部下ってだいぶ絵面がおかしいよな?
そんなことを考えている間にもあれよあれよと準備が進んでいく。え、先生その机いまどこから持ってきました?折り畳み式でいつもすぐ出せる位置にしまってある?はぁ、そうですか。その茶菓子は……あ、トリニティからの差し入れですか、そうですか。あの、なにか手伝うことは……もう終わった?なんかすいません。
「“それじゃ、ちょっと休憩しよっか”」
「あっはい」
瞬く間に出来上がったコーヒーブレイクのための空間。もう部屋が執務室というよりも休憩室といった雰囲気に仕上がっている。なんかアメリカ映画のパーティで使うようなお菓子スタンドまで出てるし……どう考えても“ちょっと”休憩する構えではない。鼻唄を歌いながらコーヒーをくるくるとかき混ぜる先生は上機嫌で、やっぱ自分だけ仕事しますと言い出せる雰囲気ではなくなってしまった。
もしかして先生の仕事が早いのって休憩するためなんじゃないか?だって仕事中の先生、こっちを見るときは優しい顔だったけどパソコンとにらみ合ってるときの目は完全に死んでたし。ミネ団長がシャーレ入りしたら「救護!」と叫んでパソコンを破壊するんじゃなかろうか。……流石に大丈夫か。
「“仕事はどう?”」
「あ~、正直言うと大変ですね、慣れないことばかりなので……」
「“そっか。でも、ほとんどミスしなかったのはすごいと思うよ”」
ありがとうございます、と返してからクッキーに手を伸ばす。いったん手を止めると疲れが一気に出てくるなぁ。脳が糖分を欲する、なんてよく聞くけどこんな感覚なんだろうか。それにしても、ミスが少ない、ねぇ。正直、そのあたりにはものすごく気を使ったから褒められてもなんだかなぁって感じだ。いやだって、間違いなく俺のミス=先生のミスってことにするじゃん、先生は。たぶんこっちがいくらゴネてもそうなるだろうから、致命的なものはもちろんとして細かいミスもできるだけしたくない。もしかするとこんなところからバタフライエフェクトが発生するかもしれないし、なによりこれ以上の迷惑はかけたくない。……というか。
「そういう先生は俺の十倍以上のペースでノーミスじゃないですか」
「“気づいてないだけだと思うよ。リンちゃんからよく苦情貰うからね!”」
「それ、たぶん自慢することじゃないです……」
リンちゃん、とは恐らく連邦生徒会長代行の七神リンのことだろう。そういえば、どんな指摘をされてたかまでは覚えていないけれど、メインストーリーでも先生が注意を受ける描写はあったような気がする。ここで俺が覚えていたら原作知識で無双……いや無理だな、その程度で無双できるわけない。なんかリンちゃんからしたら常識っぽかったし。
そこまで考えて、両手で持ったコーヒーカップに目を落とす。黒々としたそれは湯気を吐き出していて、まだ熱そうだ。先生は涼しい顔で飲んでいるけれど、やっぱり俺にはまだ熱い気がする。
ふと、思う。俺ってなにができるのだろう。この世界に来てまだ二日だけど、人に助けられてばかりだ。先生には衣食住の全てに加えて一部のお金まで工面してもらっちゃってるし、ユウカさんにはホームレス化を防いでもらった。助けてもらったと言えば聞こえはいいけど、俺はなにも返せていないし迷惑をかけただけ。このままここに居ても、厄介者以外の何者でもない。やっぱり、俺は居ない方が色々と都合がいい気がする。いや、もともと俺がいない世界なんだから当然っちゃ当然なんだけどさ。流石にいない方がいいっていうのは落ち込むなぁ。
「“ねえ、ナナシ。焦らなくてもいいからね”」
「え?な、なんですか藪から棒に」
「“顔に書いてあったよ。『自分は役に立ててない』って”」
本当にこの人妖怪じゃあるまいな。俺、顔に出やすいとか言われたことないんだけど、なんでこうも当然のように読み取って来るんだこの人。もうすごいとかじゃなくてちょっと怖いまであるぞ。いや、失礼なのは重々承知だけど流石にこうも心情を読み取られると恐怖の感情も出てくるよ。
「“誰でも最初から上手くはいかないよ。それに、ナナシがいることで私は助けられてる”」
ちょっと恐怖を覚えている俺にそう言う先生の顔は、嘘をついているようには見えなかった。だから、つい聞いてしまう。お世辞を真に受けてする質問なんて、迷惑なだけだってわかってるのに。
「……たとえば、どんなところで?」
先生は、間を空けずに答えた。
「“コーヒーがおいしくなる”」
「…………はい?」
即答した先生は、澄ました顔でまたコーヒーを飲んだ。え?この人コーヒーが美味しいっつったか?仕事とかじゃなく?いや俺だってまだ十分な戦力だとは言いづらいけどさ、普通働きぶりを褒めるところなんじゃないの???
「“それだけじゃないよ。クッキーもおいしい”」
「え、あの、仕事の方は……」
「“休憩中に考えたくない”」
「おい」
思わず敬語が外れちゃったけど……これ流石に俺悪くないよね。昨日『大人』がどうとか言ってた人のセリフじゃないと思うんだけど。生徒を導く先生の姿か……これが?いや、この先生はもうすでに未成年の足を舐める実績を達成してるんだったな、今更ってレベルじゃないか。
「“私にとっては、ナナシがいてくれるだけで嬉しいよ”」
「これでちょっと嬉しい自分が悔しい……」
「“あ、敬語やめてくれるんだ!”」
「…………です」
とってつけた「です」に先生が残念そうな顔をする。けど、敬語を外すのはちょっと……お世話になってる相手だし、目上の人間──聖人って人間の範疇だよな──だし。
でもまあ、なんだ。もしかすると、そこまで深く考えて悩んだりしなくてもいいのかもしれない。歩合制じゃないから仕事ぶりが悪くてもお給金の額は変わらないし、先生曰く慣れれば簡単らしいし。もちろん、お世話になってる身として不義理なことはできないけど、それでも一緒に休憩してちょっと楽しい時間にするくらいはできるみたいだし。……絶対業務内容に入ってない部分が一番のお役立ちポイントなのには思うところがないわけじゃないけど。
悩みが解決、というよりは悩むのが馬鹿らしくなってしまった。こういうところが先生の『先生』たる所以なのかも知れないな、なんて思いつつ、俺はようやく適温になったコーヒーへと口をつけて……
「にがっ!?」
え、なにこれめっちゃ苦い。先生がなにかしたのかと思って先生の方を見るけれど、普通に驚いたご様子。え、なんで?俺、コーヒーはブラック派だったんだけど。俺の舌はこんな子ども舌じゃないはず……あ、いや、そういえば身体ごと変わってるんだった。思い返してみればクッキーとかの甘味もやけに美味しく感じたような気がする。え?うそでしょ?味覚変わってんの俺。
今まで好きだったものを食べられないという絶望に打ちひしがれ、助けを求めるように先生の方を見ると……え?なんで微笑ましいものを見る目になってんの?……あ。
俺はここで気づく。客観的に見れば今の俺はブラックコーヒーの苦さに驚く子どもでしかないということに。……いやいやいや!先生ならわかってくれてるよ!微笑ましいものを見る目なのは、なんか、あれだよ!こう、ね!一応!一応弁解しとこっかなぁ!
俺は一息ついてからろくろを回すポーズをとった。
「……ふぅ。先生、これは背伸びしたとかじゃなくてですね。まずそもそも俺の身体はこうじゃなかったってところから説明し直そうと思うんですが……」
「“うん、わかってるわかってる”」
俺の説明をぶった斬り、にっこりと笑う先生。絶対わかってない反応だ!?いや違うんですよ先生!俺は昔からブラックコーヒーが大好きで!毎日飲んで胃に穴をあけかけたこともあったぐらいで!
「わかりますか!?本当にブラックコーヒーが好きだったんですよ!」
「“そうだね。あ、このクッキーおいしいよ”」
「話を聞いてください!わかりました!こうなったら俺がいかにブラックコーヒーを愛していたかをですね……」
「“まあまあ。ひとつ食べる?”」
「あ、ちょ、黙ってミルク入れるな!クッキーは……もらいますけど!…………なに笑ってんだ!?」
結局、これ以降先生が淹れてくれるコーヒーには適量の砂糖とミルクが必ず入っていた。確かに今はこっちの方が美味しいんだけど……なんか、なんか腹が立つぞ。
日刊ランキングに一瞬だけ載りました!!皆さまのおかげです本当にありがとうございます!!