誰かキヴォトスに生徒の肉体で落っこちた一般人がとるべき行動を教えてくれ   作:新品のタタリモップ

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よくわからない物の注文方法を教えてくれ

 移動中、電車内で銃の大切さ……というかどれだけそれが常識的なものなのか、ユウカさんから懇々切々と聞かされた。で、めちゃめちゃカルチャーショック受けた。なんと、統計的には全裸徘徊する人間の方が銃を持たない人間より多いという話は冗談でもなんでもないただの事実らしい。始めのうちはHAHAHAそんなまさかと流していたけれど、ユウカさんがあまりにも本気の目で言ってくるからマジだと気づいた。つまり、俺は全裸徘徊に等しい、否、それ以上に非常識な姿を晒して歩いていたことになるらしい。ウッソだろお前。

 いや、言い訳させてほしいんだけど、いくらキヴォトスが銃社会とはいえそんな、そんな全裸より非常識だとは思わないじゃん。日本だとモデルガンでさえ往来で露出させるのは非常識だったんだよ?いくらなんでもカルチャーショックが過ぎるよ、なんだよ銃持ってないから職質って。意味わかんないよ。

 今はユウカさんの愛銃(ゲーム上だと固有武器だったっけ)である『ロジック&リーズン』を片方貸してもらっている状態だ。借りてる方がリーズン君らしいんだけど、正直言うと違いがサッパリわからない。でも俺は賢いから黙っておいた。だって「なにが違うんですか」とか聞いたら語りだしそうな雰囲気があったんだもの。会話に困ったら聞くつもりだけど、まだそんなことないし黙っておくんだ。

 

「すいません、まさかそんなに非常識なことだとは思ってなくて……」

「まあ仕方ないわよ。知ってたのに忘れてた先生の方がよっぽど責任は重いと思うし、そんなに気にしないで」

「ありがとうございます……」

 

 で、今は電車から乗り換えてモノレールの中だ。車内は結構空いていて、席にも余裕があるおかげで座りながら話すことができている。なんか引きずられるままに来ちゃったけど、そういえば俺モノレール初乗りだな。……あれ、そういえばこれどこに向かってるんだ?なんかだんだん近未来的な風景になってきたんだけど。

 

「あの、ユウカさん、今ってどこに向かってるんですか?」

「そういえば言ってなかったわね。今私たちが向かってる……というかもう既に居るのはミレニアム自治区よ」

 

 ほぇ~、なるほどミレニアムね。そっかぁ、道理で近未来的な景色になるわけだ。お、あの飛んでるのなんだろ……ってミレニアム!?!?あのミレニアム自治区!?!?リアリィ!?!!?!?

 

「あ、あのあのあのユウカさん!ミレニアムの端っことかに行くんですよね!?」

「なんでわざわざ端っこに行くのよ……行くのはミレニアムの中心、ミレニアムスタディーエリアね」

 

 あぁ……(絶望)、終わった。ミレニアム自治区っていうメインストーリーの舞台に行くだけでも気が重いのになんだってその中心部に。いや、落ち着こう。俺は銃を買う(買ってもらう)ために訪れるだけだ。よくよく考えよう、ミレニアムスタディーエリアを俺は()()()()()。といっても別に意味深なそれではなく、単にゲーム内で見ることができたからだけど。

 ブルアカには『スケジュール』という機能があり、そこでキヴォトスの一部を簡略化した地図のようなものを見ることが出来る。俺が知っている限りでも10個のマップがあり、その中に『ミレニアムスタディーエリア』も存在した。さあ、思い出せ俺よ。あそこには何があった?たしか、ミレニアムタワーと、図書館と、モノレールの駅と、売店と……売店!!それだ!!ユウカさんは俺を売店に連れて行ってくれようとしているに違いない!

 そして俺が知る限りミレニアムのキャラに売店が大好きって人はいなかった。というかそんなおかしなキャラ付けがあったら流石に覚えてるはず。つまり俺が売店で他のキャラに出会う確率は、極めて低い!いやぁ、よかったよかった。というか、よく考えたら普段からミレニアムスタディーエリアに居そうなキャラってセミナーの人くらいじゃない?それもほとんど屋内で仕事してて出てこないだろうし、もしかすると下手に端っこへ行くよりも安全なのかもしれない。将棋でも入玉した方が強い場面ってあるし。

 

「この子コロコロ表情が変わるわね……」

「え、なにか言いました?」

「なんでもないわ」

 

 ちょ、どうして頭を撫でるんですかユウカさん?いや別に嫌ではないですけど……だからこそ困るというか、心地よさに負けそうになると言いますか。あ、なんでもっと撫でるんですか!?やめ、やめてぇ……。

 

 

 

 というわけで、モノレールは無事駅に着きまして。やってきましたミレニアムスタディーエリア!なんかもう、すごい、すごい近未来。なんかモノレールの駅からして至るところに液晶があったりガラス張りが多かったりで、本当にSF映画の世界に来たみたいだ、テンション上がるなぁ。いや、実際俺からしたらここって異世界なんですけどね。でもシャーレがあるD.U.は日本とそこまで大きくは変わらなかったし、あからさまな異文化ってテンション上がるじゃん。少なくとも俺は上がる。

 

「ユウカさん、あれはなんですか?あの飛んでるやつです!」

「ふふ、あれはね……」

 

 ユウカさんに色々と教えてもらいながら歩く。なんか逸れたらいけないからって手を繋がされたけど、たしかにあんまりキョロキョロしてるとはぐれそうだし正しい判断なのかもしれない。ちょっと恥ずかしいけどここが慣れない場所だっていうのは事実だし、なんかユウカさん幸せそうだし。

 そうこうしているうちにも歩いているわけなので街並みは変わっていき、売店らしき建物が見えてきた。まさか一文無しの状態でショッピングに行く日がくるとは思わなかったなぁ。まあそれを言い出したらブルアカの世界に来られるなんて欠片も思ってなかったわけだし、人生ってそんなものなのかもしれない。

 俺が人生の意味を悟り始めたころにはもう推定売店の入口が目の前にあって……あれ?通りすぎた?なんで?

 

「あの、ユウカさん。あの建物が売店なんじゃないんですか?」

「え?そうだけど……ああ、今日行くのは売店じゃなくて別の場所。もしかすると売店より安く良い物が手に入るかもしれないから、もう少し歩くけど頑張れる?」

「それは大丈夫なんですが……」

 

 結局、売店じゃないならどこに行くんだろう。あ、この先は『スケジュール』のマップだと見えなかった場所だ。早くも俺の原作知識が役立たずになってしまったけど、まあそうだよな、ミレニアムの中心部があんな狭いわけないもんな。キヴォトスって縦断するだけで日本一周レベルの距離になるらしいし、そんな場所で三大学園と言われているミレニアムはきっと面積もそれなりのものがあるはずだ。

 それにしても、本当にどこに行くんだ?穴場的なガンショップがあったりするんだろうか。もしかすると酒場みたいな場所に案内されて、合言葉を言うと奥の部屋に通してもらえるみたいな全人類憧れのヤツがあるのかもしれない。なんかワクワクしてきたな。

 歩みを進めていくとだんだんと工場みたいな飾り気のない建物が増えてきた。あ、もしかしてユウカさんは銃を作れる人間と交流があったりするんだろうか。それも憧れのやつだな、修理を依頼して「おいおい一体なにとやりあったらこんなことになるんだ」とか言われたい。で、ハードボイルドな感じに返したい。なんだかんだ銃ってロマンがあるからなぁ……ん?

 ちょっと待てよ?銃を作れる人間?ロマン?そしてミレニアム?……なんだか猛烈に嫌な予感がしてきたぞ?具体的にはストーリーに関わっているネームドキャラと出会う予感がヒシヒシと。

 

「あの、ユウカさ……」

「着いたわよ、ナナシちゃん。入りましょ」

「あっ」

 

 俺が確認しようとしたところでタイミング悪く目的地に着いたらしく、なにやらかまぼこ状の建物にスルっと入っていくユウカさん。当然手を繋いでいる俺も入らざるを得ないわけで、追従するようにあとに続いた。というか、続かされた。

 

「おや、ユウカじゃないか。悪いが予算の申請書直しはまだ途中でね、もう少し待ってもらえると……おや?見ない子を連れているけど、その子はいったい?」

「今日は予算の直しの話じゃないわ。この子の武器を見繕ってほしいの」

「そう?……なら申請書は後回し……」

「いや、そっちも早くやってほしいんだけど」

「それにしてもよかったですねウタハ先輩!まさかひとつも手をつけていないなんてことを解説するわけにはいきませむがっ!?」

「コトリ、ちょっと静かにしようか?ね?」

 

 そこにいたのは、白石ウタハ、猫塚ヒビキ、豊見コトリの3名──ミレニアムが誇る頭のいい馬鹿(マイスター)、エンジニア部の面々だった。……いや、売店じゃなかった時点で気づくべきだったのではないか、俺よ。ちょっとミレニアムの景色に浮かれすぎてたんじゃないか、俺よ。もう、なんかいいや。出会っちゃうぶんには不可抗力でしょ、アハハ。

 

「手をつけてないって……どういうことかしら?」

 

 あ、ちょっと待ち時間できそうだな。

 

 

 

 ユウカさんのお説教が終わって少し。まだ足がしびれている様子のマイスターたちから俺は銃についての説明をうけていた。まあほとんどコトリさんの解説ではあったけど。基本的なことからしっかり解説してくれたので、どんなものがあるかさえわからない俺にとっては非常にありがたかった。だって平和な日本でヌクヌクと暮らしてたんだよ?銃器の知識なんてちょっと知ってればいい方だって。実際、俺はほとんど全く持ってないわけだし。

 

「──以上です!いかがでしたか!?」

「すごくわかりやすかったです、コトリさん。ありがとうございます」

「いえいえ!説明や解説が必要なら、私に任せてください!」

 

 あ、今のセリフすごく聞き覚えある。具体的にはブルアカのガチャ画面で。うう……100連青封筒の悪夢が蘇る……。アロナぁ、もうその封筒を叩きつけるのはやめてくれぇ、背景をピンクにして笑ってくれぇ。

 

「それで、どんな銃にしたいかは決まったかな?」

「あっ、えっと、ハンドガンでお願いします」

「……ふむ、ハンドガンか。悪くないね」

「たしかにナナシの体格だったら最適解かも……銃に触った経験も少ないみたいだし」

 

 そう言って考え込むウタハさんとヒビキさん。うん、持ち運びが楽そうだからって理由で選んだんだけど悪くない選択だったみたいだ。あとヒビキさん、俺は銃に触った経験が少ないんじゃなくて無いんです。

 

「ならこれなんてどうでしょうか!?」

「……なんだかゴテゴテしたハンドガンね?どういうものなのかしら」

「よくぞ聞いてくれましたユウカさん!この『パーフェクトガーディアン』は護身のための機能をこれでもかと詰め込んだ、超高性能なハンドガンなんです!非常に大きい銃声は防犯ブザーの代わりになりますし、唐辛子スプレーやフラッシュグレネード並の光を一方向に照射するライト、さらにはテーザーガンモードや設定した連絡先へ救援メッセージと位置情報を届けてくれる機能まで!これひとつで護身は完璧と言っていいくらいの優れものです!」

「ああ、『護身グッズ』としては私たちの最高傑作と言ってもいい発明だよ」

 

 聞いている限りは、今のところ、かなりすごい発明だ。銃でやる必要があるのかという疑問は残るけど、これを持つだけで大抵の事から身を守れる気がする。ただ、ひとつ気になるのは……。

 

「あの、どうしてそんな隅っこに置かれてたんですか……?」

「はい、それはですね、この『パーフェクトガーディアン』は様々な護身のための機能を盛り込んだ結果、弾倉が非常に小さくなってしまい装弾数が3発しかないんです!結果として銃を注文していたクライアントに引き取ってもらうことができず、捨てるのも忍びないということで隅っこに置いていました!」

「だから『護身グッズ』()()()()、最高傑作……」

「要するに銃としては欠陥品ってことじゃないの……」

 

 なぜか誇らしげなヒビキさんにユウカさんが呆れたようにツッコミを入れる。ふむ、装弾数3発か。でも、これは……。

 

「一応、そのぶん特殊な弾薬を使っていて一発の威力は非常に高いんだが……流石に買い手がつかなくてね」

「……値段っていくらするんですか?」

「ちょ、ナナシちゃん本気!?」

 

 俺の言葉に驚くユウカさんだけど、そんなに驚くことでもない。俺からすれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。どこかに攻め入るような予定もないし、装弾数が3発だろうとそこまで問題はない。護身だけなら他の機能で十分におつりがくるし……もう早く帰りたいっていうのもちょっとある。

 

「買ってくれるのは嬉しいけど、ユウカの言う通り銃としては欠陥品だよ?本当にいいのかい?」

「そうよナナシちゃん、考え直した方が……」

「でも、それは『銃』で、『護身グッズとしては最高傑作』なんですよね?」

「ああ……それは保証するけど……」

 

 他でもない職人(マイスター)の言葉だ。変な話だけど、俺は初対面の彼女たちをある種信頼している。なぜって、画面越しとはいえその生き様を見たから。自分の好きに嘘を吐かず、ひたむきに生きていたその輝きを見たから。マイスターとしての彼女らの言葉に、嘘は含まれないと思う。そんな人たちが『護身グッズとしては最高傑作』と太鼓判を押した品がこれなのだ。ニーズにも合っているし、いちファンとして欲しくないわけがない。あと早く帰りたい。

 

「だったら、俺はその()が欲しいです」

「……わかった。少し試射してみてもらってもいいかな?データを取るのに協力してくれたら、『パーフェクトガーディアン』を無償で譲ろう」

「えっ!?いいんですか!?」

「ちょっとウタハ、流石に悪いわよ。お金はちゃんと……」

「いいんだよ、ユウカ。ナナシはマイスターとしての私たちを信頼してくれているようだし、この銃もきっと大事に使ってくれるからね。それに、仮にも最高傑作の作品に捨て値をつけて売ることはしたくないんだ」

「えっと、ありがとうございます!」

 

 このあと数十発ほど試射して調整してもらい、なんと本当に無償で『パーフェクトガーディアン』を譲ってもらってしまった。しかも合うものがないだろうからって、特製のホルスターまで作ってくれたのだ。ユウカさんはずいぶん気に入られたわね、と言っていたけどそうなんだろうか。そうなんだろうなぁ。……俺としては忘れてくれた方が嬉しいんだけども。

 

 

 

 side:ウタハ

 

「帰っちゃいましたね~」

「うん……いい子だった」

 

 そう言って作業室のドアを見る後輩たちは、たった今帰っていったナナシという名の少女のことを思い返している様子だ。短い時間しか話さなかったけれど、たしかに素直ないい子だったと思う。物事の覚えも悪くない。始めはたどたどしかった銃の扱いも、少し指導してやれば落ち着いた状態でならしっかり弾を狙った位置に当てられるよう成長していた。

 それになにより、マイスターへの敬意と信頼を持っていたことが私にとって一番の評価ポイントだ。あのあともコトリの解説を楽しそうに聞いていたりヒビキの作った衣装をすごいと褒めたりと、純粋な好意で接してくれていたように思う。

 

「『パーフェクトガーディアン』は少し複雑な銃だし、メンテナンスが必要だから来月にはまた会えるさ。それじゃ、そろそろ作業にもどろうか」

「はい!」

「うん」

 

 元気に返事を返してくれる後輩たちを微笑ましく思いながら、手をつけていない申請書からそっと目を逸らす。……逸らした先で、なぜか壁に穴が開いているのを見つけた。

 

「これは……?」

 

 ちょうどナナシが撃った的の真後ろにあたる位置に、ひとつだけ。なにかでくり抜いたように綺麗な穴が開いている。この壁はかなり頑丈で銃程度では壊れるわけがないし、そもそも飛来したものによる破壊ならばよほどの威力がないとこんな綺麗な穴は開かないはず……。

 

「ウタハせんぱーい!なにやってるんですかー!」

「あ、あぁ、すまない!今行くよ!」

 

 コトリがこちらを呼んだので、さして気にすることでもないかと思いそちらへと向かった。よくわからないが、予算の申請書に壁の修繕費を書かなければならなくなったのは確かなようだ。少しだけ気を重くしながら、私は作業へ戻った。




パーフェクトガーディアンの見た目はサイコ〇スのドミ〇ーターを小さめにして変形機構を無くした感じです。ナナシが撃つときは来るんですかね……
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