同人エロゲにTS転生したので処女を守ってたら楽しくなってきた 作:ぴゅせー
聖処女フィリ・アーカイブ。
その名を知らない冒険者は少ないだろう。
数百年前、ひょこっと人里に降りてきたエルフの少女。
エルフという、捕まえれば一生遊んで暮らせる金が手に入る希少な種族でありながら、今まで彼女を捕まえた者は誰ひとりとしていない。
というのも彼女が人里に降りてきた頃は、その特徴的な長耳を巧妙に隠していたのだ。
どころか、今の彼女からは考えられないほどに慎重で、自分の身を守ることに重きを置いていたらしい。
そうして、強くなってしまえば今の彼女に手を出せる人間はそういない。
そんなかつての彼女は、今の彼女とはだいぶ違って見えるだろう。
今の彼女は自己犠牲精神の塊だ。
この世界は女性に厳しい世界である。
そんな世界で被害を受けている女性の存在を知ったら、彼女は躊躇うことなくその救出に向かう。
それこそ先のゴブリン出現の報のように、話を聞いたら即座に出発してしまうのだ。
もしも失敗すれば、自分も同じ目に遭うと解っていながら。
何も知らない無垢なエルフが、現実を知り慈愛によって人々を助ける道を選んだ。
多くの人間はそう考えた。
なお性癖。
本当は、ただ単純にエロイベに興奮しているだけだとしても。
そんなこと、周りには解りようがないのだ。
否、解っていたとしても脳が理解を拒むだけなのだ。
実際、長年エロイベ突撃ガールを続けているフィリの本性が知られていないのは、それ以外に理由はない。
後は単純に、定期的に拠点を変えるために、しばらくすればそういうフィリのアレな側面は忘れられて美化された部分だけが残るというのもあるだろう。
もちろん、フィリが定期的に拠点を変えるのは、世界各地のエロイベを堪能するためだ。
しかし彼女がそうすることで、世界に様々な影響が起きる。
これもまた、彼女を聖処女たらしめているのだ。
――フィリがゴブリン退治を速攻で請け負ったというのを、彼女が出て言ってからエロイベが起きない聖人おじさんは聞いた。
「また、フィリちゃんは無茶をするねぇ」
「はい……大丈夫でしょうか」
話を持ってきた町民が、非エロ聖人おじさんと言葉を交わす。
自分がフィリに頼んだこととはいえ、あれほど勢いよく飛び出して言っては、町民も心配になるのだろう。
「フィリちゃんの実力なら、ゴブリンに負けることはありえないよ」
「ですが、万が一ということはありますし……」
「まぁねぇ、この世界は少しばかり女の子に厳しい事が多いから」
そういいながら、聖人おじさんはため息を付く。
聖人おじさんはとても善良でベテランの組合員だ。
そしてだからこそ、多くの女性が理不尽によって貞操を失ってきたのを見てきている。
先日の触手の苗床にされた女性冒険者もそうだ。
彼女は新進気鋭の冒険者で、将来を嘱望されていた。
それが今では、冒険者をやめて故郷に帰るのだと周りに話しているという。
アレ程の経験をしたのだから、致し方のないことではあるのだけど――
何にせよ、この世界はとても理不尽にできている。
本来なら問題なく討伐できるはずの相手に、あまりにも非条理すぎる不運によって女冒険者が敗北する。
どういうわけか、そんな話がこの世界にはありふれているのだ。
「私は……早まってしまったのかもしれません」
「娘がゴブリンに襲われているのかもしれないのだろう? だったら、それは無理からぬことだ。君が責任を感じることじゃない。今はフィリちゃんを信じよう」
なにせ、彼女は聖処女フィリなのだから、と。
聖おじと町人はそう納得する。
聖処女フィリ。
この理不尽極まりない世界にあって、今なお貞操を守っていると言われる美少女エルフ。
信じられないことだ。
無論、本人の口から貞操のことが語られたことはない。
ただ、そうであると信じたくなるほどに、彼女は天真爛漫で、聖処女であった。
なお頭の中は色ボケお花畑である。
天真爛漫とはむっつりスケベという意味ではない。
「フィリ様は……どうしてあそこまで多くの女性を救おうとするのでしょう」
「……解らない、彼女には譲れないなにかがあるみたいだけれど、それくらいだ」
フィリは、そんな女性たちの味方だ。
被害にあっている女性がいれば、必ずそこに駆けつけて救い出す。
そんな伝説を、各地で残し続けている。
今この街の現状は、とても象徴的だと言えるだろう。
フィリが訪れた街は、気がつけば周囲から女性を襲うモンスターが消えているという。
それはフィリがそういったモンスターがいる場所にやってきて、女性を救い出しているからだ。
しばらくそうしていると、フィリは自分が問題を全て片付けたがために仕事を失う。
そうなったら、少し経ってフィリはその街を去るのだ。
なにせめぼしいエロイベがもう残っていないのだから。
「私には、フィリちゃんのその精神が、彼女の重荷になっていないことを祈るくらいだ」
聖おじは思う、彼女の在り方は、この仄暗い世界においてはあまりにも輝きすぎている。
仮にもし、今の在り方を保てないくらいの事件が彼女を襲ったら、果たして彼女はそれに耐えることができるのか。
彼女が聖処女でいられるのは、貞操を守っているからだ。
もしもその防波堤――貞操だけに――が失われたら、彼女はどうなってしまうのだろう。
そう、思わずにはいられない。
――まぁ、実際はすでに彼女の精神は性癖によって歪められていて、輝きもクソもないのだが。
「あの、ところで気になっているのですが……フィリ様は自分の評価をあまり意識しておられないようなのですが、アレはなぜなのでしょう」
「ん? アレかい?」
ふと、そこで話は切り替わる。
それはフィリの自己評価の話だ。
彼女は聖処女として周囲から崇拝されていることを自覚していない。
町人はそうおもったのだ。
「単純だよ、
「忘れている……? 失礼ですが、エルフとは記憶を忘却しない種族なのでは?」
一般的に、エルフとは覚えたことを忘れない種族として知られている。
それが講じて、蓄えた知識を使って思索に耽るのがエルフである、というのが常識だ。
人であれば脳の機能からしてそんなことはありえないのだが、エルフとは神秘の種族。
だからこそ、その当たり前をフィリが欠如しているとは思えない。
「フィリ様は、かつて邪神を滅ぼし、その名を大陸中に知らしめました。彼女が、聖処女の名を知らないとは思えません」
フィリが聖処女と呼ばれ始めた頃、その呼び名は多くの場所で使われていた。
今となっては一部の人間だけがその呼び名を知るところではあるが、それでも一度広まった呼び名をフィリが忘れることはないだろう。
なお、邪神とはゲームにおけるやりこみ用の裏ボスであり、本編とは何ら関係がない存在である。
出なければ、エロイベに繋がる美味しい存在をフィリが倒すはずがない。
逆に邪神を倒しても、モンスターがいなくなるわけでもないし、さっさと倒しておいた方が後顧の憂いも断てる。
フィリは倒した方がメリットが大きいと判断したのである。
「正確に言うと、思い出さなくなっているのさ」
「思い出さなく……?」
「我々は聖処女の名前を文献で知ることができるが……彼女がその文献に目を通さなければ、それはもう彼女にとって随分昔のことなんだよ」
「あ……」
つまり、フィリはこう思っているわけだ。
聖処女? ああ確かに昔、そんなふうに呼ばれてたこともあったっけ。
……え? あの呼び方まだ使われてるの? うわ、はっず……
――と。
なお、実際には聖処女がまだ使われていることを知らないので、こんな反応をしたことはない。
が、なんとなく町人は想像できてしまった。
「自由奔放な彼女らしい理由だろう?」
「え、ええそうですね。ですがしかし……」
と、そこで町人はその話を聞いて思ってしまった。
きっと彼女にとって、それは確かに昔のことだが、“ちょっと昔”程度のことなのだろうな、と。
フィリが聖処女と呼ばれるようになったのは百年前のことだ。
これがもっと昔のことなら、それこそ文献などを読んで聖処女の名前を思い出すこともあるだろう。
だが、今はそうではない。
彼女の感覚では、百年前は文献を読んで思い出す必要のない、ちょっと昔程度のことなのだ。
なんというか、それは――
「フィリ様のそれは、お年を召したご老人のような――」
ババァ! みたいであった。
「おっと、それ以上は、麗しいレディには失礼だぞ?」
そして聖おじは冷静にそれを咎めるのだった。
聖人おじさんは聖人であった。
フィリはエルフとしての特性故に、前世の記憶を覚えているし、原作である『淫蕩救世日誌』を思い出せる。
だがしかし、この世界を生きる一介のエルフであるということが、エルフとしての人生を思い出すことを阻害している。
周囲から聖処女として扱われながらも、その実態を把握していない理由は、結局のところそういったものだった。
アホだけど、周囲から聖人と思われる。
TS転生者の鑑みたいなやつですよこいつぁ。
だいたいこんな感じの話が続くと思いますので、
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