バニーガールはガンプラバトルの夢をみない-ガンダムビルドダイバーズIN:LE-   作:樽薫る

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ep07「みんなが求めた戦争だ」

 

 ジャブロー・エリア……ガンダムシリーズにおけるジャブローを模したディメンションだ。

 

 そのエリアの各所で戦闘が行われているようで、爆発と黒煙がちらほらと見える。

 空に跳びあがったZガンダムが、即座にビームよって撃ち落とされた。

 その狙撃用ライフルでビームを撃ったテキーラガンダムは、攻撃によって居場所がバレた故に、別のガンプラから即座に攻撃を受けて爆散。

 

 

 このエリアで行われているのは生き残りをかけてのバトルロイヤル。

 参加条件は同フォースに所属する二人一組のタッグチームであること……。

 

 それがこの、コンビネーションアサルトカップだ。

 

 

 地上は背の高い木々の生い茂った森が広がっており、敵機の姿は見えにくい……かといって空に上がれば先のように撃ち落とされる。さらに、撃ち落とした者は居場所が即座に発覚し、攻撃を受ける。

 中々どうして立ち回りが難しい戦場であるが故に、バトルロイヤル形式でありながら多対一の状況になりづらいものとなっていた。

 まぁそれも、“並のダイバーなら”の話ではあるのだが……。

 

 

 上空に黒い閃光。

 

『この状況で空いくかフツー!? どこのバカか面おがんでやる!』

『いやまてあれは……!噂通り本当に参加してるなんて!?』

『あれが、黒騎士!?』

 

 閃光……キハールリッターがMA形態で上空を往く。

 その背に乗ったムーンドウォートは、背にトマホークを担ぎつつ、両手に<175mmグレネードランチャー装備57mm高エネルギービームライフル>を持っている。

 持ち前のセンスか、それとも“教え”が良かったのか、高速で飛行するキハールリッターの背からビームにて敵機を落としていくアリス。

 

 キハールリッターとムーンドウォートへと放たれる対空砲火は、アニメさながらである。

 

「おねーさま的にファンタジーな感じのムーンドウォートに“コレ”はありなの?」

『ま、まぁガンプラは自由だし……それにほら、メイドさんに二挺銃はマストなのよね』

「そういうもの?」

『わかってくれとは言わないけど、えっとぉ、そ、そういうものだよ……っと、そろそろ降りるよっ!』

「りょーかいっ!」

 

 高火力のビームが放たれれば、ムーンドウォートはキハールリッターの背から離れ、MA形態だったキハールリッターは空中で回転しながら回避。

 さらに“GN×ソード(ガンソード)へGN粒子をチャージしつつ”回転しながらMS形態へと可変。

 即座にビームが放たれた方へとガンソードを向けると……。

 

「狙い撃つ、とか言ってみたり……っ!」

 

 放たれた高火力のビームが、目標───『ガナーザクファントム』を撃ち貫いた。

 

 対空攻撃を回避しながら、素早く地上へと降りるキハールリッターとムーンドウォート。

 

『さっすがおねーさま!』

「へ、へへっ、そ、それほどでもっ……」

 

 満更でもない声音で言うハーゼであったが、その顔はいつもの漆黒の鎧により隠れていて見えない。

 アリスとの会話は比較的慣れた様子で普通にしているが、やはりそれとこれとは別なようで、こうして二人きりだからこそ話せているが他人が割り込んだらおそらくいつも通りなのだろう。

 彼女を皆に知ってもらいたい、というアリスとしては複雑なのだが、ここばかりはゆっくりとやっていくしかないだろう。

 

 モニターの黒い鎧を見て、アリスは一応先に『またバニーでやって』と言ったが全力で拒否られたことを思い出す。

 

「んー」

『え、なな、なにかご不満?』

「ちょっと……」

『ひょえっ、ななな、なぜっ……!?』

 

 まぁあまりにも“子供っぽい理由”なので、言わないという判断する“生後一月のELダイバー(アリス)”。

 今の所コーイチとアンシュしか、彼女のことを知らない。

 そこらへんからどうにかして広げられないかな、なんて妙な思考をしているから……隙が生まれる。

 

『アリス……っ!』

 

 瞬間、ハーゼの声が聞こえ我に返ったアリス。

 キハールリッターがムーンドウォートの前に出るなり、放たれたビーム攻撃をガンソードで弾く。

 

「しゃ、射撃!?」

 

『黒騎士、今日こそ叩かせてもらうぜ!』

『ELダイバーのお嬢ちゃんも一緒になぁっ!』

 

 聞こえる声、黒騎士ことハーゼになんらかの因縁を持つ相手、とも思ったがアリスはここ数日で“色々な相手”から情報を得て知っている。

 彼女は割と恨みを買っているのだ。

 強いダイバーは比較的そういうものなので仕方ないそうだが、やはり黒騎士という像がそれをさらに加速させてるとかなんとか……そう“美人のおねーさん”は言っていた。

 

『……!』

 

 他人が間に入った故か、喋ることなくハーゼはキハールリッターのガンソードを構える。

 敵機がどこから来るかはわからないが、近くにいるのは確かだろう。

 周囲は木に覆われていて見えないが、ハーゼにはいかようにもやりようがある……そしてアリスも。

 

「おねーさま! この前“G-Tube(ジーチューブ)”で見た技、試すから……!」

『……!』

 

 頷くハーゼ。

 彼女に任され、嬉々とした笑みを浮かべてアリスはまず二挺のビームライフルを上空に投げる。

 そして素早く背のトマホークを引き抜くなり、両手で持って大きく振りかぶった。

 

「ムーンドトマホゥク! ブゥメランッ!」

『それ違うG……』

 

 ぼそっと呟いた言葉は誰にも聞こえるでもなく、アリスが投擲したトマホークは高速回転しながら木々をなぎ倒していく。

 

『なっ、バカなぁっ!?』

『兄貴ぃ!』

 

 その木々の隙間に敵機はいたのか、爆発が起こった。

 ほどなくして敵機が集まるだろうが、どちらにしろこの戦いはアリスの訓練も兼ねているのだから、むしろ良いことなのだろう。

 帰ってきたトマホークを取るなり背にかけるムーンドウォートが、先ほどなげたビームライフルを素早く取る。

 

「どうおねーさま!」

 

 モニター内のハーゼはなにを言うでもなく、頷いた。

 それで十分、それだけできれば言うことは無いと、アリスは満足気に頷く。

 すると、轟音と共に、少し離れた場所の木々がなぎ倒されていくのが確認できた。

 

「えっ、なに?」

『あれは……』

 

『よくも兄貴をぉ! 黒騎士、今日こそはその首貰い受ける! てかおねーさまって言った今!?』

 

 セントラルディメンションなんかでよくアリスがハーゼ(黒鎧)を『おねーさま』と呼んでいる姿が見られることから、最近は『黒騎士=女』というのが割と浸透してきたはずだが、やはり知らない者はそうして驚く。

 いや、浸透してきても実際に見るまで信じない者もいるので当然ではあろう。

 そもそもGBNが始まって数年、ダイバーたちはずっと黒騎士を大男だと思っていたのだ。

 

 ともあれ、敵は動揺しながらも真っ直ぐと接近してくる。

 

「っ!」

『回避を……!』

 

 絞り出すようなハーゼの声が聞こえ、アリスは素早く回避のためにムーンドウォートをその場より跳ねさせる。

 キハールリッターとムーンドウォートが逆方向に飛ぶと、一発の砲弾が二人の間に着弾。

 

 さらに、木々をなぎ倒しながらそのガンプラが現れる。

 

 一見すればただの『ドム』。カラーリングも見た目も……だがその全貌を現した時、その背部に巨大なユニットを装備しているのが確認できた。巨大なユニット、そして巨大な砲塔。

 両腕に持った<ヒート・ハルバート>で木々をなぎ倒してきたことは明白だ。

 

「えっとあれは……ドムだ!?」

『ドム・ノーミーデスだ!』

 

 本来であれば『ドム・ノーミーデス』の本体は『ドム・トロピカルテストタイプ』ではあるのだが、そのドム・ノーミーデスは通常のドムを本体として使っているようだった。

 二方に別れたハーゼとアリスの内、ハーゼの方を向くドム・ノーミーデスだが、同時に後部ユニットで背後にいるムーンドウォートを跳ね飛ばす。

 背を向けるなり攻撃をしかけようと踏んでいたアリスは、想定外のリーチの攻撃を受ける。

 

「きゃぁっ!?」

『ッ……!』

「だ、大丈夫おねーさま!」

 

 その声を聴きながら、ハーゼは安心していた。

 別に“敗北条件がタッグどちらかの撃墜”だからではない。純粋に彼女を心配しているのだ。

 数少ない友達であるからというのも勿論だろうが、友達の少ないハーゼにとって彼女はただの友達と済ますには重すぎるなにかを抱いているのも確かなのだろう。

 

 だからこそハーゼは、少し“キレた”。

 

「ッ!」

『黒騎士、その首もらったぁ! バイストン・ウェルに逝けぇっ!』

 

 ───作品がぁ違うでしょうがっ!

 

 ガンソードに装備されたGNドライブが高速で回転、GN粒子の濃度を高めれば、ガンソードの刃からビームサーベルが伸びる。

 だが、そのビームサーベルは“ただのビームサーベル”というにはあまりにも“長かった”。

 カスタムされ片刃になっているGNソードⅡロングが刀とするなら、それは“大太刀”と言って良い。

 

『物干し竿だとぉ!?』

 

 袈裟斬りにされたドム・ノーミーデスはそのまま爆散。

 ハーゼは即座にキハールリッターを加速させてムーンドウォートの元へと向かうが、それほど距離も離れていないし大したダメージでもなかったのか、損傷もないままムーンドウォートはそこにいた。

 すぐ目の前で止まろうとするも、ハーゼはハッとしてGNフィールドを展開する。

 

「くっ……!」

『おねーさま!?』

 

 ガンソードから展開されたGNフィールドが、放たれた数十ものビームを弾く。

 

 放たれた方向を即座に確認すれば、そこには……。

 

「ドーベンウルフ……ゲーマルク……!?」

 

『みつけたよ黒騎士ぃ!』

『その化けの皮剥いでやるぜ!』

 

 次々と湧く敵、誰も彼もが黒騎士ハーゼを狙う。

 

 ───なんでみんな私がいるって知ってんのさぁっ!?

 

 別に大した理由ではない。

 セントラル・ディメンションのロビーで『次の大会に備えてコンビネーションの特訓しよう!』だとかアリスが言うものだから、そりゃ聞き耳を立てられて当然なのである。

 友達同士の付き合いもなく、相談もなく、一人でGBNを今まで楽しんでいたハーゼが自覚できないのも無理はない。

 なにはともあれ、そういった経緯で黒騎士がこのコンビネーションアサルトカップに出場すると判明したわけだが……幸いだったのは“出場締切”後にそれが発覚したことだろう。

 

 その前にハーゼが出ると判明すれば間違いなく荒れていた……大会が。

 

「……!」

『はやっ……このゲーマルクがなにもできずにぃっ!?』

 

 ガンソードにてゲーマルクの胴体を切り裂き、そのまま加速し斬り抜けつつも、即座にもう一機ことドーベンウルフをモニターで確認。

 そのドーベンウルフから胸部拡散メガ粒子砲が放たれたが、一旦距離を取って拡散ビームの隙間を縫うようにして回避……それが止むなり、ガンソードからビームを放つ。

 三日月型のビームがドーベンウルフへと真っ直ぐに飛ぶが、ドーベンウルフはそれをギリギリで回避し、右腕と背部ユニットの一部だけを失うだけで済む。

 

『せめて一太刀!』

 

 残った左手で腰部のビームサーベルを引き抜き、そのまま腕を“射出”する。

 だが、ハーゼはもちろんドーベンウルフがそのような機能を持っていることを知っているわけであり、その手で来ることも頭には入っているわけだ。

 一気に前に向けて突っ込むハーゼ。

 

『ミサイルもくらぇぇ!』

 

 さらにドーベンウルフの背部ユニットから放たれる誘導ミサイル。

 前からはビームサーベルが迫り、真上からはミサイルが降り注ぐであろう状況だが、ハーゼが焦ることもない。

 その程度の修羅場ならいくつもくぐってきていし、それほど回避が難しい状況でもないだろう。

 

「これぐらい……!」

 

 くぐもった声で呟き、機体を操作。

 キハールリッターがガンソードを逆手で持ちつつ加速する───前方へと。

 

 迫るビームサーベル……キハールリッターの胴体を地面と向き合うように垂直にし、潜り抜けるように回避。

 ビームサーベルを回避するなり、即座にそのまま胴体が上を向くように回転をかける。

 真上から迫るミサイルに向き合う形だが、左腕を前に出すと、そのラージシールドに装備されたスプレッドビームを乱射。

 放たれたそれは迫るミサイルを迎撃するには十分であり、さらに密集するミサイルは誘爆し全滅。

 

『なら拡散ビームを……』

 

 だが、遅い。

 

『……はやっ!?』

 

 すでに接近していたキハールリッターは、胴体を上に向けていた体勢からドーベンウルフを相手に正面を向くように回転し、体勢を整えつつ───ガンソードを振るう。

 逆手のまま振るわれたガンソードの刃先にはビームが伸びており、その一撃は敵機の胴体を深々と斬り裂いている。

 

 倒れたドーベンウルフを余所に、ハーゼはコックピット内のモニターでアリスを確認。

 

『おねーさま!』

「アリス……」

 

 別方向から他のダイバーが来ていたらしく、それは既にアリスが斬り伏せていた。

 ほどなくしてドーベンウルフも、アリスが倒したガンプラもデータとなって消えるのだが、ハーゼとしてはかなり思わされるところもある。

 あの二機との戦闘中にまるでアリスを気に掛けられなかったことだ。

 今回はアリスがあっさりと敵ダイバーを倒したから良かったものの……。

 

 ───慣れないなぁ、誰かと一緒って……。

 

 これから慣れていくしかあるまいと、モニター内のアリスを見やるが彼女は見られていることに気づきつつも、その意味が解らず首を傾げる。

 そういうところも相変わらず絵になるし、かなりドキッとさせられもするのだが、鎧を纏ったハーゼはおくびにも出さない。

 

 などと考えつつも、ハーゼは敵機の接近に気づいた。

 

「くる……!」

『あ、うん!』

 

 ハーゼの声に応えたアリスがトマホークを構えれば、木々を突きぬけて現れる新たなガンプラ───それは『青いギラーガ』だ。

 それに驚愕するハーゼだが、次なる攻撃を察知しキハールリッターを上昇させる。

 アリスとは離れてしまう形になるが、致し方あるまい。

 

「アリス……!」

『大丈夫おねーさま!』

 

 ───大丈夫じゃないっ、そのギラーガはっ!

 

 次の瞬間、さらにハーゼにビームが奔る。

 ハーゼは素早い操作でそのビームをラージシールドで防ぎつつ、攻撃された方向を確認。

 

 ビームを放ったソレは上空を飛んでこちらへと向かってきていた。

 先ほどまであった対空攻撃がほとんどなくなっているのは、参加者が減ったからか、それとも敵機とぶつかっていてそれほど余裕もないからか……。

 

 ……ともあれ、その敵機を見やり、ハーゼは内心で驚愕した。

 

 ───あの機体、なんで『AVALON』がっ!?

 

 フォースランキング一位、チャンピオン『クジョウ・キョウヤ』をリーダーとするフォース『AVALON』の副隊長が駆る『インパルスガンダムアルク』をハーゼは覚えていた。

 だからこそ驚愕する。

 GBNというゲームに対してガチガチの姿勢を取るAVALONの副隊長が此度の大会に参加していることに……さらに、それだけではない。

 

「ッ!」

 

 別方向から放たれるビームに気づき、空中でアクロバティックに回避。

 

『やるねぇ黒騎士!』

「百鬼……!」

 

 一年前に話題になり瞬く間にGBNのトップレベルに躍り出たフォース『百鬼』の『ヤクト・ドーガ・ソーン』が、<フェダーイン・ライフル>を構えていた。

 まさかのトップフォース二つの参加に動揺するハーゼではあったが、今はそこを気にしている場合ではないだろう。

 まずやるべきことは一刻も早くその二人を倒すか巻いて、地上で百鬼の『煌・ギラーガ』と戦闘になっているアリスを助けることだ。

 

『エミリア、AVALONまで出てくるたぁね!』

『ま、まぁ気分転換に……でも、女の子三人、こういうのも悪くはないわね!』

 

 

 ───女の子扱いしてもらうんですかヤッター!

 

 

 真面目にものを考えていたが、想定外のことに内心歓喜するハーゼだった。

 

 まぁ三人共『女の子』という歳でもないのだろうが……。

 

 




あとがき

今回は紹介等無しで続く、という感じです
この大会が終わったらもうちょっとハーゼを掘り下げていく予定です。リアルなんかも含めて

それでは次回もお楽しみいただければです
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